法と正義の間

April 09 [Tue], 2019, 6:00
先日、このところ性的暴行が無罪になったり不起訴になったりという案件が目立つ、という話を書きました。



加えて、その後も気になるのは、子供への性的暴行の無罪判決が続いていることです。

さらにショッキングなのは、それが家庭内での性的暴行、父親が娘に対して行ったもの……つまり、女の子に対する性的虐待の案件だということ。

ひとつは2017年6月に、当時12歳だった自分の長女(実子)と性行為に及んだ父親に対してこの3月28日に静岡地裁で出た判決。

検察によると被告人は、約2年間にわたり(つまり10歳ごろからということ?)週3回程度の割合で父親から性交を強要され続けたとのこと。

これに対して伊東顕裁判長が下した判決が、無罪。理由は「家が狭くて家族7人で住んでいたにもかかわらず、被害者の声に家族が気づかなかったはずはなく、不自然、不合理」というもの。

ちなみに検察側は、被告人の父親が児童ポルノの物品を所持していたことも告発したようですが……無罪。

では、警察、検察に被害を訴えた12歳(当時)の少女は、虚言を弄していたということでしょうか?

少女が嘘をついていたというなら、その目的は何でしょう。たとえば父親が嫌いだから、陥れようとして(?)性的虐待を受けたという虚言を弄した、とか?

仮に、そこまでの悪知恵がある少女なら、もしそれで父親が有罪になり収監されたら、残った家族が困ると気付くのではないでしょうかね。

父親はしばしば、家庭内で強権的な存在になるわけですから、父親を恐れて、あるいは「世間体」を気にして、家族が口裏を合わせて事実を隠していたという可能性も十分あります。

父親が罪に問われた場合、家族が生活に困ることを考えて、少女の「犠牲」を黙認していた可能性だって大いにあるのではないでしょうか。

そうしたことについて、はたして法廷でまともに検討されたのでしょうか。

「家族が多くて家が狭かったから」というだけで、少女の訴えを一方的に嘘だ、と断じた判決は正しかったのでしょうか?

何より、少女が嘘をついていなかった場合、この無罪判決で彼女がまた「元の生活」に戻らざるを得ないということが何を意味するのか、考えただけで恐ろしいです。

実の父親に性的関係を強要される状況で、警察に、司法に、つまり「おとな」や「世間」から見捨てられた、という思いを抱いて今後生きて行かなければならないとしたら。

この世は本物の地獄、家族も社会も敵、と思った人の将来を思うと……



もう一つは、3月26日に名古屋地裁岡崎支部での裁判。被告人は17年8月に勤務先の会社内で、9月にはホテルで、抵抗できない状態に乗じて19歳の長女(実子)と性交に及んだとのこと。

検察の告発によると被害者は「中学2年のころから父親に性的虐待を受け続けており、当該事件の折も専門学校の学費を負担させているという負い目から、心理的に抵抗できない状況にあった」とのことです。

これに対して鵜飼祐充裁判長は、当該の日時における性交の事実は認めた上で「性交は意に反するもので、抵抗する意志や意欲を奪われた状態だった」ということまで認めています。

それにも関わらず、判決は無罪。

裁判長は、「以前に性交を拒んだ際に受けた暴力は、恐怖心を抱くようなものではなく、暴力を恐れて拒めなかったとは認められない」と指摘しています。

これ、意味わかりますか? 一方では「意志に反する性交で、抵抗する意志や意欲を奪われた状態」と認めながら、他方では「拒めなかったとは認められない」って、完全に論理が破綻してませんか?

しかも長年にわたり継続して、父親が実の娘に性交を強要していたこと、そのために暴力を振るったことまで認めている……にもかかわらず、それについてはおとがめなし、だという。

また、「以前には弟らの協力で回避したりした経験もあった」とのことから「従わざるを得ないような強い支配、従属関係にあったとまでは言い難い」と。

いやいや、個人では抵抗できないような支配、従属関係にあったから、弟たちの協力で父の強要を回避せざるを得なかったんでしょう、普通に考えたら。

一度それで回避できたことがあったんだから、嫌だったらまたそうすればよかっただろ。

ということなんですかね。

この裁判官、大丈夫ですか? 性的関係を頻繁に迫って来る父に対して、回避するためにいつも兄弟と一緒にいられる状態をキープしておけと?

それ以前の問題として「実父が娘に対して性的関係を強要したこと、実行したこと」自体が罪に問われないというのは、おかしいと思いませんか? 抵抗が十分だったかどうかとか、そういう問題じゃない。

じゃあ優しくすれば、そして拒まれなければ、父が実の娘と、それも未成年者の娘と性交しても良いということになりますよ。

誰がどう考えたっておかしいでしょ!

他人の未成年者と性交したら罪に問われるのに、実子となら無罪って、何ですかそれ!

これが今の日本の法廷の実態ですよ。

とても信じられない。

ちなみに、日本には近親相姦を罰する法律はありません。某副首相は「強姦罪という罪はない」と言いましたが、近親姦罪というものもないんです。

保護が必要な未成年者を、保護責任者が性的に虐待することを禁じた法律はあるようですが、なぜか年齢制限が付いていて、対象となる被保護者は17歳以下となっています。

しかし、この案件では、性的被害が始まったのは中学2年のときということですから、この法を適用しようと思えばできたはずですが、法廷ではされなかったようですね。

まあ、さきほど見たような、無理やりなこじつけにさえなっていない、矛盾した理屈をこねくり回して加害者を無罪にするような裁判官ですから、被害者に有利な法適用はしないでしょうね。

おそらく、法整備も必要なのでしょうが、それ以前の問題。法を執行するのは、しょせん人間なんですから。

問われているのは「法律」以前の「正義」なんだと思います。

性犯罪、児童の性的搾取、親子の問題について、こんな無茶苦茶な法適用がなされてしまうこと自体に問題があるのは間違いない。

そして、それは性犯罪において、極端に加害者に有利な判決が次々となされている、社会状況とも関係があるのではないかと。

いま、この国の「正義」ってどこにあるんですか?



二番目の案件に関しては、検察が控訴するというニュースが入っていますが、はたしてどうなるか。

そもそも、ひとに暴行したら厳しく罪に問われるし、ガンガン刑務所にぶち込まれるのに「性的暴行」となったらなぜ、こうも頻繁に、しかも不可解な形で無罪とか不起訴になるのか。

暴力が認められていてさえ、ですよ。

「性的」の文字がついたとたん、裁判所は及び腰(?)になって、加害者を保護しようとしているようにしか見えない。

今日の毎日新聞電子版のコラムには「日本の裁判官は性犯罪についてまだ勉強中」という言葉がありましたけど。

勉強中の裁判官に判決を任せるなんて、医学部1年生の学生に手術をさせるようなもの。

性犯罪の被害者が、少なくとも現在のこの国では、ほぼ全員が女性だ、という事実とも関係あるのかもしれません。

なにしろ日本は、ジェンダーギャップ、女性差別においては、イスラム法の強い一部の国を除けば、世界一遅れた国なんですから。

学校で、まともな性教育も、またジェンダー教育も、これまでほとんど行われてこなかったツケが、こういうところに回ってきているのではないかと私は思います。

日本の保守派の政治家や論客には、性教育もジェンダー教育も不要、と主張する人がたくさんいますけれどね。

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