美酒たちの競演 PART13

August 28 [Sun], 2016, 13:42


中部イタリア震災の被害の全貌が、いまだ明らかになっていない現在ではありますが、語学学校「イル・チェントロ」では、予定通りにワインセミナーがありました。

今回のテーマは、「北イタリアと南イタリアの、白ワイン」というちょっと茫洋としたものではありましたが、出て来たワインは、いずれも秀逸。

まず最初は、上の写真の一本。「ソアーヴェ・クラッシコ DOC 2007 カンポ・ヴルカーノ」です。作り手は「イ・カンピ」というところ。北イタリア、ヴェネト州の白ワインですね。使用ブドウは、ガルガネーガ85%に、トレッビアーノ・ディ・ソアーヴェ15%となっています。

ソアーヴェといえば、スーパーや、どうかするとコンビニでも売っていそうなぐらい、日本でも普及している銘柄ですが、その質も値段も、それこそピンキリ。この「イ・カンピ」のソアーヴェは、値段はそこそこですが、クオリティは、まちがいなく一級品です。しかも、国際的な評判を得るために、敢えてアメリカ人好みの仕立てにせず、あくまでもベーシックでクラシックな「ソアーヴェらしさ」を追求したワインです。

生産者の一族と、講師のファブリツィオは面識があるそうですが、「真面目すぎるぐらい真面目で、仕事に対して誠実な人たち」と評価していました。下の写真は、4代目当主のフラビオ・プラさん。



ワイン名に付いている「ヴルカーノ」というのは、「火山」という意味で、このワインに使われているブドウの単一畑名でもあります。畑は標高200m余りのところにありますが、5千万年前の、海底火山の噴火によってできた、火山性の土壌で、カリウムなどのミネラルが豊富です。モンテ・レッシーニ山から吹き下ろす風の影響で、昼夜の寒暖の差が非常に大きな環境だとか。

グラスに注ぐと、こんな感じになります。ソアーヴェらしい、薄い麦わら色。



香りは、フルーティーな中に、鉱物を感じさせるニュアンスがあります。そして時間が経って、温度が上がり、空気にも触れてくると、白いバラが花開いたような、素晴らしいフラワリーな香りが立ち上ります。

口に含むと、たっぷりとした果実味と、優しく柔らかな酸味が、妙なるハーモニーを奏でます。その奥に、複雑なミネラルの味わいも。そして、どこか白い高山植物の花の香りがスーッと鼻に抜けるような、何とも言えない爽快で長大な後味が残ります。本当の白ワイン好きの人なら、誰でも絶賛するであろう、まさに一級品でした。大満足!

続いての一本は、これも北イタリア代表。北東の端、スロヴェニア国境に近いフリウリ・ヴェネツィアジュリア州、イゾンツォ川に沿った地域からのワインです。



こちらのブログを以前からご覧になっている方には、「あ、このボトルは見覚えがある」と気づかれた方もいらっしゃるかと。6月12日にアップした「長い長い午餐会」の記事にも出て来たワインです。「ラ・ベッラノッテ」の、「コンテルーチョ ピノ・グリージョ・ラマート ヴェネツィア・ジュリアIGT 2010」という一本。私が忘れられないほどの衝撃を受けた、あの「銅色」のワインです。

グラスに注ぐと、こういう濃い色をしています。



なぜこんな色になるかというと、ブドウの実の皮や種の成分を浸出させる「マチェラツィオーネ=マセラシオン」という工程を、白ワインとしては珍しく、短期間やるからです。そして、このワインに100%使用されているピノ・グリージョのブドウ(写真下)は、皮が白くなく、かなり紫がかっているため、その色が抽出されるのです。



香りは、やはり独特。焼いた栗の実のような、ハチミツのような、焦がした黒砂糖のようなニュアンスがあります。私も初めてのときはびっくりしましたが、今回のセミナー参加者の人たちからも「へえーっ」というような、驚きの声が上がっていました。口に含んでも、この種のワインにしかない、普通の白ワインとは違う、濃厚な味わいがあります。

今回は、サービス温度が最初は少し低すぎたようでしたが、手で温めたりしているうちに、本来の香味がぐんぐん前に出てくる感じ。あくまでもソフトな酸味と複雑なミネラル味。そしてそれらを上回る、カラメルのような香味と甘み。ほんのかすかによぎる、苦み。インパクトは強烈ですが、ぱーんと主張するというよりは、深く遠く、飲む者を不思議な感覚に誘うような、瞑想的なワインだと思います。

今回のセミナー参加者のみなさんは、「食事をしながら楽しむというよりは、このワインは単体でじっくり楽しみたい」という感想を漏らしていました。

ちなみに、生産者の「ベッラノッテ」のポリシーは、有機肥料栽培、無農薬、除草剤不使用、酸化防止剤を極力少なく、というものです。「ビオ認証」こそ取っていませんが、雑草に覆われた畑の様子を見れば、その方針は良くわかります。



さて、次は「南の白ワイン」です。まずはシチリアから。「チェントンツェ」という生産者の「インツォリア テッレ・シチリアーネ IGT 2015 クルーリ」というワイン。ブドウの種類は、シチリアの地場品種、インツォリア100%です。



本当に小さな小さな生産者が造っているワインで、生産量は年間1万本ほど。こんな無名でマニアック(?)な作り手のイタリアワインまで日本に入ってきているというのは、時代も変わったものだな、と。

グラスに注ぐと、こんな風です。



薄い麦わら色で、わずかに金色の反射があります。ラベルに、半分に切ったかんきつ類のイラストが描かれている理由は、香りを取るとわかります。何ともフレッシュな、柑橘系のくだものの香り。シチリアの果樹園の木陰を吹き抜ける、爽やかな風のようなイメージ。

口に含むと、豊かで快活な、果実味と酸味が口の中に満ちてきます。混じりっ気のない、明るくピュアな感じは、シチリアの田舎の、純朴なお嬢さんを思わせます。非常に気持ちの良いワイン。これで2千円を切るお値段のようですから、コスパも抜群。さすが南イタリアです。希少なワインですが、これも大変気に入りました。

そして最後は、ナポリを州都とする、カンパーニア州のワインです。「ディ・メオ」という生産者の、「コッリ・デイ・チェーリ フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ DOCG 2005」という一本。ブドウは、フィアーノ100%。



ただ、このワインが生まれたイルピニア地方は、カンパーニア=南イタリアとはいっても、ナポリ湾岸の温暖な土地とは違って、内陸の山岳地帯に分け入ったところ。かなり冷涼な気候になります。畑の景観は、こんな感じ。



グラスに注ぐと、金色を思わせる、かなり濃い黄色。ちょっと、パイナップルジュースみたいです。



香りは、非常にフルーティー。ブドウというよりは、まず、黄色い桃を中心とした、フルーツコンポートのようなアロマがふわりときます。奥の方に、かすかにローストしたクルミのようなニュアンスが。

飲んでみてると、非常に滑らかな口当たりの中に、やはり桃を思わせる果汁の香味が。トロピカルフルーツのようなニュアンスもありますが、暑苦しくはない。酸味はごく優しく、美しい綾をなしています。深い後味は、オークの小樽で10か月間熟成した上に、相当の時間を、ビンの中で過ごしたせいでしょうか。間違いなくおいしいです。でも、南イタリアの白ワインで、5千円を超えるという価格は、決して安くはないです。醸造・熟成に手間暇かけているということに加え、この地域に北イタリアや外国の資本が入ってワインブームが起き、畑の値段が上がっているのとも関係あるのかもしれません。まあ、仕方ないですね。

4本、イタリアの白ワインを飲みましたが、どれも非常にレベルが高く、かつ飲み疲れしない、好ましいワインばかりだったと思います。そして、それぞれが全然違った個性を持った、バラエティー豊かな白ワインだったので、飽きることもありませんでした。白ワインを通じて、イタリアという国の「多様性」を、十分に実感することのできた2時間半でした。
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