書くこと

April 12 [Thu], 2012, 21:49
私は昔から本が好きで、中学生のころから文章を書き始めた。
書き溜めたノートは15冊以上ある。
中学から高校くらいまでがノートで、大学からはルーズリーフだったりネット上で書いたりしている。
最初のころのものは、今読み返すと読むに耐えない。
そろそろ思い出にとっておこうよりも、焼いてしまおうかの気持ちが勝つ気がする。
中学生が書いた詩なんて、大体において読めたもんじゃない。
本人がそう思うのだから、他人ならなおさらだろう。
けれど、とパソコンのディスプレイから視線をはずして考える。
あの時から続けてきたのだなぁ、と。
15年くらい、間が空いてもずっと書き続けてきたのだな、と。
それは、自分と向き合う時間でもあった。
ふと何気なく読み返すと、その時自分が何に悩んでいたか、そして何をきっかけにそれを脱したかが読み取れたりする。
何となくはじめたことが、こんなに長い間自分を支えてくれることになるとは思わなかった。

私はずっと本が好きだった。
小説を読んでいる時間が、漫画を読んでいる時間が大好きだった。
いじめられっこだった私は、ピアニカに落書きされるより、プール授業でパンツなくなるより、段差で転ばされるより、悪口を言われるより、図書室で読みかけの本を隠されるのがつらかった。
もっと小さいころは、ひとりで家まで帰る時間が大嫌いだったけれど。
幼稚園から中学卒業まで、いじめられていない期間があっても友達がいた時間はほとんどない。
私は嫌われる生き物なんだと、思っていた。
あの体の中を冷たいものが走るような感覚を何度味わっただろう。
悪口を聞こえよがしに言われたとき、昨日まで普通に話してくれた相手が今日こちらを向いてもくれないとき、机にスプレーのりが吹き付けられていたとき、段差のあるところで後ろから押されるとき、本を隠されたとき、石で頭を殴られたとき。
すっと体の中心を、冷たいものが走るんだ。
そして時間差で、怒りが来る。
私に非がないとは言わない。
けれど、こんなことをされる理由なんて何もない、と。
こんな卑怯なことをするやつに、負けてたまるかと。
悔しくて悔しくて、ひとりでいっぱい泣いた。
そういう時間に、私を支えてくれたのは、本だった。
親、そしてほんのごく一部の理解者を除いて、当時私の周りは敵ばかりだった。
教師も敵だった。
味方のふりをした、理想的な正義を振りかざした敵。
その悪夢のような現実から私を救ってくれたのは、物語の力だった。
色んな世界で、色んな経験ができ、色んな感情を経験した。
悲しいことや悔しいことがあっても、頑張る人達がいた。

「負けてたまるか」

私は休まずに学校へ行くこと、極力相手の攻撃にダメージを受けないふりでいること、無事に卒業すること、そのために努力しようと思った。
文章を書くことをはじめた。
私の世界を作りたいと思った。
何度も唇をかんでこらえた。
心を支えてくれる人が、後輩に数人、クラスメイトにも数人。
表立って助けてくれはしないけど、それでもいたんだ。
それも大きかった。
人と話す時間に飢えてもいたから。
それでもやっぱり、しんどかった。
私にダメージの大きいやり方も、相手は心得ていた。
卒業まで、明確な終わりはなかった。
卒業式、静かな達成感があった。
卒業アルバムには、怖い顔で卒業証書を受け取る私がいる。

高校に入学したら、いじめは一切なくなった。
「合わなかった」
それだけだったんだと思う。
今なら、そう思う。
友達が出来た、恋人が出来た。
時々、トラウマが顔を出した。
人と楽しい時間を過ごした後に、ひとりでワンワン泣いた。
溶け込めないと感じたからだ。
大勢の人とワイワイ何かをすることに耐性がなく、無理して過ごし「浮いている」とひとりで思った。
少しずつ、人の中にいることになれた。
誰かとケンカすることが、とても苦手だった。
明日から声をかけても振り向いてもらえないのじゃないか、と怖くて仕方なかった。
「嫌われる生き物」なんだという思い込みが顔を出す。
それでも、合わない人と過ごして時間を無駄に過ごすのはごめんだという、冷淡な一面もあった。
自分にとって「価値がない」と思う人との関係はばっさりと切っていった。
もちろん、社会人になってからは必要な付き合いはしている。
胸のうちを明かす人はごく一部だけれど、それで私は幸福なのだ。
結婚をした。
遠出をした帰りに、少しずつ泣きながらいじめの話をした。
「大丈夫」と言ってくれる存在が、とても有難い。

私はもちろん今でも同じく本が好きだ。
本はいつでも私に物語の力を痛感させてくれる。
リアルさに驚いたり、その芯の強さに驚いたり。
やさしい気持ちにしてもらったり。
そして文章を書く、ということがこんなに自分と向き合う作業だということは、書いてみなければわからなかったと思う。
読むこと、そして書くことは私を成長させてくれた。
私は、もうひとりで泣くばかりの女の子ではないのだ。
下手くそな詩を書いていた私を思い出す。
もう少しの間、このノートをこっそりと残しておこう。
私の小さな闘いの、相棒として。
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