トランシルヴァニア

March 09 [Sun], 2008, 0:17
「トランシルヴァニア」 2007年 仏

★★★★

似た者同士の巡り会い・・・・。

ルーマニアのトランシルヴァニア地方。
吸血鬼で御馴染みの地名だけど、実は全く知識もない知らない国。

同じヨーロッパ人だが、言葉の通じない女性2人が通訳を連れてトランシルヴァニア
にやって来る。
シンガリナ(アルジェント)とその親友マリー(カサール)だ。
シンガリナは、全ての指にシルバーの指輪を嵌め、手のひらには目の刺青をしている。
かなりエキゾチック。
南フランスに不法滞在していた恋人のミラン(カストルディ)を追って彼の故郷である
この地にやってきたのだ。
民族的な踊り、酒場の盛り上がりよう・・・。全身を使って踊る・跳ねる。

異国の民族性を色濃く描いてあり興味をそそる。

一方では、チャンガロ(ユーネル)が、世界各国を流離う行商人役。
出た〜〜〜!ビロル・ユーネル。

「愛より強く」でインパクト大の男役で魅了した、セクシーな中年の俳優さんだ。声も
ハスキーで、白髪まじりの髪も、ニヒルな笑い顔もとてもカッコイイ。

2人は酒場で出会う。
「君のような美人さんが、こんな町になんでいる?」
「ラブよ」英語で話す2人。大真面目に「愛が全てよ」と言い切るシンガリナに心惹か
れるチャンガロ・・・・彼にもかつて大真面目に愛こそ全てだと思っていた頃があった
のかもしれない。以下、私の感じたままの解釈を述べる。この作品には、台詞が余りない。
心情を感じ取るのは、観る者の捉え方でいいのだ、と思う。後の監督のインタビュー記事
も敢えて読まない。(そもそもあるかどうかもわからないが^^)監督の意図するものと
観た私が感じた物が一致する訳がない。

シンガリナは、ミランと再会を果たすもボロボロにふられる。
気性の激しい女が、その下っ腹に入れた刺青に胎児の絵を描きにんまりしていた女が、
愛する男に手ひどくふられた時・・・・。

折りしも、祭りで賑わう仮面を被った人垣の群れを逆流するように歩きながら泣け叫ぶシ
ンガリナ。同じ女として、(私も気性が激しい^^)共感を覚えずにはいられない。
ミランが「良くここまで来たなぁ」と抱きしめてくれる事を信じていたシンガリナ。
そこで告げる筈だった、妊娠の事・・・・・。

まぁ、連絡も寄越さないような男なんだから、追いかけても仕方なかったんじゃない?
追うと逃げる。
しつこく追えば追う程、逃げる。
あんな振り方は酷いなぁ・・と思いつつ、はっきり言って貰えて逆に良かったのかも。
適当にはぐらかされていたら、いつまでも気持ちの整理ができない。
酒場の占い師は「貴女の待つ男も、事情があって貴女の元を去ったが、泣いている」
そんなような事を告げたけど、ホント、イカ様だよねぇ。
尤も占いなんて信じる方がおかしいけど(そういう私も大殺界に怯えて暮らしたけど)

シンガリナは、人一倍強く「愛」を信じていた。それが偽りだと知った時、何かが壊れ
た。酒場で踊りながら、皿を割っていくその姿は、自傷的で「愛より強く」のヒロイン
とかぶって見える・・・(監督は違うし製作国も別だが)

シンガリナを労わるマリーの心配をよそに、ある日忽然とどこかへ消えてしまう。
ミランのいる地に、居座りたかったのか?物乞いをしてきたロマの少女、ストリート・
チルドレン(チャウシェスクの子)と、共に生きようとするが、少女は束縛が疎ましく
なりこれまたシンガリナを置いて去ってしまう。
シンガリナも、父親のいない子供を生もうと決意していた矢先に、少女が去っていった
訳がわからず・・・「私が母親の代わりになってあげようとしたのに」
見た目の派手さと違い、淋しがり屋で、誰かに依存しないと生きていけないような脆さ
を感じた。(誰にでもあるけどね)
ところで、シンガリナはルーマニアの母国語は話せない筈だが、少女とは何語で会話し
ていたのかな?英語以外は、良くわからずじまい・・・。劇中出てくるお金の単位もわ
からない。

そこに、チャンガロが現れ彼女を拾って、雪の多い町へとあてのない放浪の旅をする。
「悪魔祓い」をしてロマの恰好に身を包むシンガリナの事を、何故か世話を焼くチャン
ガロ。「悪魔祓い」をして貰った教会の神父に「ペテン師め、一銭も払わないからな!」
と捨て台詞を吐くところなど、クスクス笑える。

チャンガロこそペテン師だ。
チャウシェスク独裁政権後、金目になる物を持っていても、生活する金がない民から安値
で買い漁り、儲けにしていた。う〜ん、騙し取って金を払わない訳ではないから「ペテン
師」扱いは、語弊があるか。

一箇所に定着する事を嫌うチャンガロ。
ホテルにさえ泊まろうとしない。

彼の過去は一切触れられてはいないが、何か深い傷が過去にあるような設定だ。彼の翳り
のある顔に、やはり「愛より強く」の続編をイメージしてしまう。愛を信じて立ち直った
が、手に入れられなかったのだ。
訳アリ女と訳アリ男。

出会うべくして出会った2人。
身重のシンガリナを、不器用な男が彼なりに一生懸命に尽くすところも、可愛い。

だだっ広い雪野原には北国にいる私には、寒い処をご苦労様です、としか言えない^^

途中、産気づくシンガリナ。お〜い、こんな辺鄙なところでどうするんだぁ!!
近郊に住むロマの人々の手を借りて、車の中で無事に出産するシーン。

田舎なので若い者など居ない。
出産に立ち会う3人の老婆をシンガリナが「魔女め〜〜消えうせろ〜〜」と詰るシーン
も笑える。

男は、そういう時、弱いね。
ひたすら、強がっている女が、現実に「強い」事を目の当たりにする訳で・・・・。

チャンガロは、自分のために地元の楽士達を呼ぶのだが、酒に酔い自分の頭をビール瓶
で何度も叩き割る。
楽士達は、途中で演奏をやめ「音楽は生きるために必要なものだよ。苦しむためのもの
じゃない」とお金も取らず、踵を返していく姿がいい。中には脚を引きずる男性もいた。

「金を払えばいいってもんじゃない」

大切な事は、金銭やプライドよりも、もっと高いところにある。

チャンガロは、他の男の子を産んで母となったシンガリナと向き合っていけるのか?
自由奔放に生きてきた男が、身を固める覚悟ができるのか?

酒場で只管、考える彼の姿。シンガリナを放っては置けない。が、自分がいなくとも彼女
なら強く生きていけそうな気がする。彼女が居なくては生きていけない。いや、元の自分
に戻るだけだ、簡単な事だ。
異国の地で旅を共にしただけの、いわば「通りすがり」の女。
なのに、頭から離れない。・・・・酒場で熊の縫い包みを見て、シンガリナへの手土産に
買う。縫い包み?子供のために?まだ生まれたばかりなのに?

その辺が、戸惑いを現していたように思う。
熊は、あの夜現れた2人の共有した少ない思い出の1つ。

意を決して、シンガリナの元へ戻ると今度は彼女が去っていた。
ちょっとのタイミングの差で、すれ違う男と女。
しかし、チャンガロは直ぐに彼女の滞在先を探り当て、会いに行く。
遠くへ去った訳ではなかったが、それでも、男の方から会いに来てくれた事に、素直に喜
びにっこりと微笑み幸せを全面に出すシンガリナの、笑顔が美しい。

一時、迷った男だけど貴方の方から、会いに来てくれたのだから、全て水に流すわ。
これから始めよう。新しい人生を。私達が共に生きていくために歌はある。

旅情的で、心にズシンと来る魅力ある一作。
捉え方は、人それぞれだとは思うが、気性の激しい女の変化や、くたびれ人生に灯りを灯そ
うか、どうしようか迷う中年男の戸惑いを描いた秀作。

アーシア・アルジェントは「サラ、いつわりの祈り」で、大好きになった女優さんだ。
ビロル・ユーネルも、渋くて今後も目が離せない。

監督 トニー・ガトリフ
出演 アーシア・アルジェント、ビロル・ユーネル、アミラ・カサール
    マルコ・カストルディ

【DVD鑑賞】
  • URL:https://yaplog.jp/tonton119/archive/439
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