追悼ヒース・レジャー「キャンディ」

March 02 [Sun], 2008, 1:55
「CANDY キャンディ」 2007年 豪

★★★★



ヒースが亡くなる前に鑑賞していたら、また別の視線で観れたのでしょう。
今となっては、ジャンキーのダニエルが、ヒースと重なってしまい悲しくなる。

(※ヒースは薬物中毒死ではないし、ジャンキーだった訳ではありません。)

この映画はあくまでも、男女の愛の物語。
キャンディ(コーニッシュ)と出会い、ジャンキーだったダン(レジャー)は天国に
いるような気持ちになる。
ヘロインは、やった事がないので(当たり前か^^)残念ながら、どんな感じなのか
全くわからないけど、数あるドラッグの中でも一番中毒性が強く禁断症状は地獄のよ
うだと聞いた事がある。

この映画も、「天国」「地上」「地獄」と章が分かれていて、若いジャンキー・カッ
プルの出会いから始まり快楽に溺れる恍惚の世界(抽象的に描かれてあるけど)ヤク
欲しさに犯罪・売春にまで手を出し、やがては苦悩と苛立ち、お互いを傷つけあう愛
憎の日々そうしてゆっくりと地獄に堕ちていく様を、静かに描いている。

2人でいれば何も怖くなかった。
ヘロインさえあれば、2人は幸せだった。
未来は光り輝いて、自分達の手の中にあるように思えた。
かたや詩人を夢見るニート、かたや中流家庭に育った一人娘で画家の卵・・・。
芸術家には、ドラッグにはまる人が多い。
詩を書き、絵を描いて2人は誰にも邪魔されない彼らだけの世界で愛を確かめあった。

人間には幾つもの落とし穴があると思う。
危ない場所には近づかないように歩いていかなければ誰でもその落とし穴に落ちる可
能性はある。
軽い気持ちで始めたドラッグを、いつの間にか常習するようになって、気がつけば
体がもうコントロールできなくなる。

頭の中を常にこのドラッグが駆け巡る。
ヤクで覚えた快楽の虜になってしまう。
性を支配されてしまう。やめようと思ってもいない内は、まだ幸せ。
警察に捕まらない限り、体が蝕まれようが仕事もせず家賃も払えなくなろうが本人達
の勝手だもの。
このままじゃいつか破滅する、愛する家族を悲しませる・・・そう判ってもやめられ
なくなった時には人は、泣きながら注射を打つ、と言う。

鏡を見て、老け込んだ顔、髪の艶も失い、目の下には隈ができ、美しい女性であれ
ば尚更、絶望に立たされるのではないだろうか・・・?
気がつくと、もう元には戻れない。
失ったもの(時間とか、信頼とか諸々)の大きさに気づいた時は遅すぎる。

ダンは、自分から強くキャンディにヘロインを勧めた訳ではなかった。
注射は効かないから鼻から吸った方がいいよ、なんて一応はとめようとする。
しかし、ダンは彼女のためなら何でもした。彼女が嫌がるならドラッグもやめる。
やめないなら、自分もやめない。
でも自分からやめさせようとか自分もやめなきゃ・・・とは考えない。
いつも、キャンディの意志に任せている。余り自分の意思を持たない人間のようだ。

ドラッグを買うお金のために、恩人である大学教授のキャスパー(ラッシュ)に小
金を借りに現れたり、キャンディの親から借りようとしたり・・・。
ヤクが無くなると、質屋のオヤジとたった50ドルで寝るキャンディ。
「キャンディがそれでいいのなら」

自分を、不甲斐ない男だとは感じないダン。
こんな男、絶対に許せない筈なのに・・・何故か憎めず、こうした愛の形がある事
も、この作品で理解できるようになった気がする。
昔、私は男に貢ぐ女を説教しまくった。「どうしてそんな男がいいの?」
わからなかった。だけど余計なお世話なんだなぁと今更にして思う。

誰を好きになっても、相手がどんな男であっても、他人がどうこう言う話ではない。
(だけど、自分の大切な友達が、破滅的な男にのぼせ上がったら止めたいのが人情)

キャンディの女友達は一切出てこない。孤独な女の子だったのかもしれない。
親に堂々とダンを紹介し、結婚までしてしまう。
キャンディの家のトイレで、きめて寝てしまうような男なのに。
母親への反抗心も根強く感じる。

キャンディは、美しい。だから親にも自慢の娘だったに違いない。親の気持ちにな
ると気の毒でならない。とくに父親は、どんなにえぐられるような気持ちでいただ
ろうか?母親は、きちんとしないキャンディに小言を言う人らしく、彼女なりに娘
を愛していたのだろうが、自分の“理想の娘”ではない事への苛々を隠せないでいる。

ダンの方はとっくに親から勘当されていた。ジャンキーには不思議とまわりもそうい
う仲間が集まる。特に悪い事をしているとは、彼の認識にはない。だからキャンディ
とドラッグにはまっても、彼女の人生を駄目にしているとは気づかなかったのだろう。

いや、気づいてもヘロインでその不安を消し去っていたのか。
結婚生活を支えるのは、売春宿で働くキャンディの稼ぎのみとなる・・・。
はたから見れば立派な「ヒモ」だが、普通のヒモは女を下に見ている。汚い仕事をさ
せ、自分は清純な女の元へと通うような(しかもその清純な女もやがて汚れる・・・)
女たらしがほとんどだと私は勝手に思っている。
その点ダンは、「キャンディ一筋」なので、まだ可愛いっちゃ可愛い。
根っからのロクデナシではないだけか?

また、男女の考えの相違が気になった。
女が体を売る事を、男どもは「気持ちいい思いをして稼いでいる」と解釈している。
男が女客相手に寝て体を売るのには、何の抵抗もないからだ。
女は嫌々ながら仕方なく仕事している筈だ。何の抵抗もなく売春する女は居ないと思う。
好きでもない、気持ち悪い男の相手をするんだから。
ダンは、キャンディの人生を壊す気などなかった。が、世間知らずのままジャンキーに
なってしまい、世間知らずのお嬢様をジャンキーにしてしまった。

ご飯も作れない、何もできない娘を。

そうして、彼らは妊娠・死産という現実、ヘロインをやめるための苦痛を「地上」で
味わう・・・・。
何だかやり切れない。彼らを「自業自得」と言ってしまえばかたがつく。
だけど、そう思っても見捨てられない2人がいる。ヒースが演じているから余計だ。

その後、自棄になった2人は懲りずにヤクを続ける。街頭でキャンディが体を売るよう
になるが、思うように金にならずヤクも手に入らない。

もう、やめよう・・・・田舎で暮らそう。
遅すぎた決断。「地獄」は目の前まで来ていた。

ヘロインを急にやめたせいか、自分のしてきた事と向き合う事となりキャンディは
精神のバランスを崩してしまう。

家の壁、窓、床一面に「詩」のようなものを書いたキャンディは、異常だった。
キャンディが精神病院に入院し、「お前がどうなろうと知った事か。お前のできる
事を、キャンディに必要なすべてをしろ!」と、それまで静かに傍観していたキャ
ンディの父親の目が怖かった。

そしてギャスパーの死。
中毒患者には必ず、こういったツケが回ってくる。
仕事したくない、遊んでいたい。で、悪さばかりしていても、ドラッグにさえ手を
出してなければ、破滅まではそうそうしない。更生しようと思えば、それなりに変わ
れる日が来る。
しかし、そこはやはりヘロインの怖さなんだろうな。
中毒患者は常習しているので、少々の量を超えてもそう死んだりしない免疫ができ
ているという。
ギャスパーは、自殺したのかもしれない。行方不明になった男と何らかのトラブルが
あったのか?

数年後、ダンはレストランの厨房で皿洗いをしていた。全くクリーンな状態でいる事は
彼にとって全てが目新しい生活だった。

そこに、厚生施設を退院したキャンディが現れる。
さよならは、ダンの方から言った。「君は救われたのだから、その事を大切に」

キャンディは無事に立ち直り、元の眩いばかりの美しい人に戻っていた。
彼女の人生を再び壊す事はできない。
愛していればこそ・・・・。

それは、ダン自身がヘロインをきっぱりやめたくはないという本音が見えた。
彼が本当に愛したのは、キャンディ(ヘロイン)だったのだ。と言う解釈もできるが・・?

ダンの目の奥を見て、キャンディは小さく頷き、店を出て行く。彼らの甘い生活は
破綻し、終焉を迎えた。

ラスト、キャンディのささやくような「詩」が、静かなメロディと相まって何とも
言えない気分に陥った。

別れを言う時の泣き顔のヒースが、上手くて心底惚れ惚れする。
中毒患者は、髪がねっとりとなり薄くなると言うが、このヒースもやけに髪が薄い。
これが演出ならば、凄い。片方の目が赤いのは「スモーキン・エース」のエース役
もそうだった。



監督 ニール・アームフィールド
出演 ヒース・レジャー、アビー・コーニッシュ、ジェフリー・ラッシュ

【DVD鑑賞】

めちゃめちゃ、レビューを書くのが難しい作品でした。
結果、淡々とSTORYをなぞるだけとなってしまいました・・・・。

アビー・コーニッシュは、「プロヴァンスの贈り物」「エリザベス:ゴールデン・
エイジ」で、私が愛するセロン様に似ている!と思った程、綺麗だし可愛いし演技も
中々のもの。顔の吹き出物は、演出かな?
彼女の演技も上手いです。
ジェフリー・ラッシュも「エリザベス:〜」に出演していました。
オーストラリア人だけで製作されたのだそうです。
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