アモーレス・ぺロス

June 16 [Sat], 2007, 13:55
「アモーレス・ぺロス」 2000年 墨(メキシコ)

★★★★


『バベル』は賛否両論のようですが、私はめっちゃ好きだし昔観た『21g』も、
そんなに大好きと言う程でもないけど、役者がみんな上手かった印象が残っています。
で、この監督さんのデビュー作『アモーレス・ペロス』は未見の上、近所のTUTAYA
には置いてないので、今回「1日限りの特別上映」に行ってきました☆

最低の愛とか許されぬ愛を描いた濃厚な人間ドラマ。

冒頭、メキシコシティのストリートを、急ぐ車の後部座席・・・「血が止まらない
よ・・・」と泣き顔の青年。誰?誰が撃たれたの?助手席には、ご存知ガエル扮す
るオクタビオが、後ろから追ってくる車をかわすのに必死。無謀とも言える運転で、
何で追われているの??と掴みはOK!
この出だしはいいと思います。
その後信号を無視して急カーブで曲がると・・・・。
オクタビオ(ベルナル)の兄嫁スサナ(バウチェ)への直向?で、一人合点な恋心
が本人やその廻りだけでなく、全くの他人まで運命を大きく狂わせるのです。
この交通事故によって交錯する3つのドラマ。

第一話。
オクタビオが事故を起こすまでの経緯を描いています。
「闘犬賭博」なんて、実際にあるのかしら?
ドック・レースなら、賭けても面白そうだけど、犬の殺し合いを見て面白い!と思う人
いるのかな?勿論、お金を賭けるから面白いのでしょうが、元々、犬って他の犬を
食い殺す生き物なの?
オクタビオの犬(正しくは兄の犬だけど)は「闘犬」として育てられた訳でもない
のに、めちゃめちゃ強くて向かう所敵ナシの殺人犬なのよね・・・。
いや殺犬犬?(笑)納得いかないなぁ・・・・。
あんなに血に飢えた犬なら、人間にも噛み付いて大人しくしてないでしょうに。

私は子供の頃自分より大きな犬の頭を撫でたら、手をいきなりかじられ・・右手が
犬の口の中にすっぽり・・・というプチ・トラウマ的な体験がある。
でも、その犬は本気で噛まなかったのか、歯の当たりが良かったのか、無傷ですん
だし一瞬の出来事で泣く間もなかった。(※後で考えたら上着の裾を噛まれたのか
も・・記憶違い?でもその時一瞬はすっごく怖かった)
そ〜いう恐怖体験って、幼いながらもショックを削除しようとするのか、今でも犬
は全然怖くもないし、嫌いでもないのですが・・・。
ただ、獰猛な犬は、猿轡でもはめてないと普段も危ないよ、と言いたいのです。

ところで、メキシコの一般階級の家って日本とそっくりですね。
天井も低いし、壁を隔てて、直ぐ隣の部屋・・・。オクタビオは兄ができちゃった
結婚して嫁に子供もいるのに、母の家にパラサイトしたまま。
そもそも、働いてもいないみたいだしね・・・・・。狭い家で、同居すると異性と
して意識するのも仕方ないかもしれないけど、スサナは兄の奥さんなんだよ。
昔から好きだった?嘘だね。
この家の兄と弟には「兄弟愛」みたいなものが微塵もない。
弟は、スサナを手にいれるため、邪魔な兄を金で「半殺し」にさせる。また最後の方
の兄の葬儀でも、涙1つ溢さず、兄の遺体の前で嫁に口説き文句を言う始末。
始末におけない。
私は、こ〜いう「仁義」を欠いた人間が大嫌いだ。
端折った部分もあるのだろうが、オクタビオのせいで死んだあの人の良さそうな友達
は?事故で、脚を失うモデルの事は?
自分だけ、兄嫁と駆け落ちして幸せになる事しか考えてない。
事件の加害者の大半は、こうなのかもしれないが・・・・。人間の本性を浮き彫りに
していると言われているが、彼のような人間には、全く共感をもてない。
(※兄も、ロクデナシなので同情する余地のないように描かれている)

第二話は、やりきれない悲しいお話だ。
一話と違い、セレブリティな階級のカップル。
スペインからやってきたモデル、バレリア(トレド)は、仕事も成功し、不倫相手の
ダニエル(ゲレロ)も妻と別居を決意し、マンションで新たな同棲生活を始める。
若くて美しくて、ダニエルが借りたマンションのサッシからは、バレリア本人が、セ
クシーなポーズで決めた、大きな広告用ポスターをビルの屋上から垂らしてあるのが
一望できる。自意識の塊のようなバレリアが喜ぶだろうと選んだ部屋だった。
このバレリアにも可愛いペット犬がいて、このペットが2人の生活に大きく絡んで
くるが、まずは例の事故だ。
瀕死の重傷を負った彼女だが、奇跡的に助かるものの片足が動かせず酷い裂傷を縫い
固定する器具も事故の凄惨さを物語っている。
「五体満足での契約」だったと、モデル会社からは契約を打ち切られ元に戻れるのか
不安な中、ぽっかりと開いていた床穴にペットが落ちてしまう。
床から、時々鳴き声や走り回る音が聞こえるものの、助け出す事もできない。
業者とか呼べばいいのに・・・。

このカップルも、次第に口論が絶えなくなり、ペットの心配しかしない女からの電話
にうんざりしたダニエルは、思わず妻の元へ無言電話をする・・・。
この辺の心理は、理解できる。
バレリアが部屋でみていたファッション雑誌に、ブラピが載っていたので、この監督
さん、元々ブラピのファンなのかも。
そうそう書き忘れる所でしたがオクタビオの母役は、「バベル」のブラピ宅の乳母で
す。

しかし、運命は時に残酷だ・・・。
バレリアは、その美しいおみ足が自慢だったのに、治るどころか壊疽が進み切断する
事に・・・。車椅子にのってマンションに戻ると、向かいのビルにはもうあのポスター
は、はずされてあった。妻と娘を捨てた男は、今後彼女の深い心の傷と向き合ってい
かねばならない。人生とは「美味しい」事ばかりじゃないんだよ、ダニエル。
誰にでも不意に訪れる可能性のある出来事。
身につまされる。ダニエルは、輝いているバレリアを愛していたから、八つ当たりに
耐えられなくなって、妻の元へ戻るかもしれない。
そして第三話。
私はこの話が一番好きかも。
ホームレス(家はあるけど^^)で汚い格好のくせに、スーツを着込み指輪もしてい
るような謎の初老の男エル・チーボ(エチェバリア)。捨てられたり、死にかけてい
る犬などを介抱し、何匹も連れてリアカーのようなものを引いて歩く、殺し屋だ。
普段、この手のおじさんがジロジロ何かを見ていても、誰も不審にも思わない。

オクタビオの犬もチーボが事故現場から、連れてきて手厚く介抱してやるのだ。
金で人を簡単に殺すが、傷ついた犬をみるのは堪えられないらしい。
このチーボは、昔は大学教授で普通に結婚し娘を設けたが、ある反政府運動に関わり
家族を捨ててゲリラ活動をしていた男だ。
その後捕まり、長い刑務所暮らしの果てに悪徳刑事の“雇われ殺し屋”となったようだ。

自分が捕まった日に娘には「パパは死んだ」事にして再婚した妻の死亡広告記事が・・。
遠巻きに、墓地へ行くと最後に観たのが2歳だった、娘らしき人物の姿を見つける。
悪徳刑事からの新しい依頼の調査の傍らで、娘の居場所を探し出し、家に入って暮ら
しぶりを覗く。
チーボは、初めて失ったものの大きさに気づく。
そんなある日、住まいに戻ると飼い犬が全て、あのオクタビオの犬に殺されていた。
ちょっと待ってよ。

あの犬の体の中にはまだ弾丸が入ったままなんじゃないの?どうしてそんなに元気な
の?賭博の日々で、「味」を覚えちゃったの?
チーボは、犬に自分をみた。
一生懸命に生きている罪のないものから、何の感情もなく殺して、生命を奪う。
チーボとその犬は、同類なのだ。

共存して生きる事を知らない。
かつて「人間」だった頃は、共存して生きていたのだが・・・もう忘れてしまった。
彼が人間だったのは、遠い遠い昔の事だから。

しかし、チーボは依頼した兄と、殺しのターゲットの弟を拉致し自分の住み家に縛り
つけ、殺さない。
「殺したかったら、自分の手でやれ」といわんばかりに、拳銃を置いて去る。

娘の家に再び忍び込んで、金を置き、自分の存在を話す。
「お前を忘れた事は、1日もなかった」と・・・・・。
良く言うわ。
長年忘れていたくせに、よく言うよなぁ・・・でも、感極まって詭弁を弄する事は
誰にでもある。誰でも自分の生き方を正当化して語り、“間違い”でさえ、都合よく
語るものだ。
チーボは、娘に自分がずっと愛してきた事を告げて、詫びた事で救われるだろうが
メッセージを聞いた後の娘は、混乱するだけだろう。
あの犬を連れて、歩き出すチーボ。このラストがいいんですよねぇ・・・。
何処へ向かい何が見えるのか、わからない。救いなのか絶望なのか。

三者三様のエゴ、人間の狡猾さ、愛がもたらす苦悩と孤独を描き出した秀作。


製作年度 1999年
上映時間 153分
監督 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演 エミリオ・エチェバリア 、ガエル・ガルシア・ベルナル
 ゴヤ・トレド 、アルバロ・ゲレロ 、バネッサ・バウチェ
 ホルヘ・サリナス

【映画館での観賞】
  • URL:https://yaplog.jp/tonton119/archive/325
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