善き人のためのソナタ

June 07 [Thu], 2007, 20:36
「善き人のためのソナタ」 2007年 独

★★★★★



胸を打つ・・・・そのソナタを聴いた人には悪い人はいない。
そのソナタを書いた人も演奏する人も、聴いて、そっと涙する全ての人に。

まず、驚いたのがベルリンの壁崩壊前の、東ドイツの国政だ。
徹底的な、「盗聴・監視」体制。
人々には自由なんてない。あるのは、西への憧れと、憧れている事をひたすら
隠して暮らす事。
そして、バカのように「人民を監視するための金」を多大に使い、ちょっとでも
怪しい(西より=怪しい)人間は徹底して監視したり逮捕して尋問だ。

あ〜こんな馬鹿みたいな国に生まれなくて本当によかった!!!
東ドイツは、後にこんな風に「馬鹿げている国でした」と全世界に向けて発信
しているのだから、すっかりそれはもう“過去”の事になったのだろうな。

何の自由もなく、政府による恐怖政治下。
1984年、壁が崩壊する5年前の東ベルリン。
共産主義体制の中枢を担っていたシュタージ(国家保安官)の実態を暴き、1人
の盗聴する側の男と、される側の普通の熟年層カップルの男女を同時進行で描く
事によって、より、ドラマチックに仕上がっている。

優秀なシュタージ、ヴィースラー大尉(ミューエ )は真面目を絵に描いたよう男。
国家に人生を捧げ、その孤独で無味乾燥な生き方に疑問を持つ事も無く日夜
「西より」の人間を挙げる事にまい進していた。
彼は、若い生徒たちの前で尋問の「講習」もする。優秀な人材を育てるため自分
もそうしてきたように下の者に、徹底的に教え込み洗脳するのだ。
しかし、時代は今からおよそ20年前。
上司に平気で反論する輩も少なくはない。
もう、絶対的な思想を押し付けて生きていくには、北朝鮮のように国交を断絶で
もしなきゃ無理なのだろう。
人間は、頭から押さえつけられた政治に疑問を持たずに何年も怯えて暮らすだけの
生き物じゃない。少ない情報からでも、動く人が必ずいる。悪政はいつか必ず滅ぶ
のだ。

ところで、ヴィースラー大尉が大変興味深い事を講義で言っていた。
尋問する時には、睡眠を奪い考える隙を与えず同じ質問を何度も繰り返す。
と、シロだと答えは言い方を少しずつ変えて話すがクロは一字一句変えずに同じ文
句で話すのだと。
自分で「作った答え」だという証拠らしい。妙に納得^^
そして、何度も質問した上に家族を拘束すると脅すと、シロは怒り出すがクロは
泣くらしい。
何かの時のために覚えておきましょう(笑)警察の裏をかかなきゃ!(何でやねん!)

尋問で落とす事に一種の快感すら覚えている鬼のヴィースラー大尉は同期で出世頭
の部長から劇作家のドライマン(コッホ)と同棲相手で女優のクリスタ(ゲデック
を監視して、ボロを出したら速攻逮捕するように命じられる。
かつて芸術家達の自由な発想は脅威だと考え、潰してきたヘムプフ大臣の命令だ。

早速、白昼堂々とドライマンのアパートの到るところへ盗聴器をつけるが、向かい
に住む女性に「この事をチクったらお前の娘を、職場からクビにするぞ」と脅す。

誰も怖がって言えない訳だ。シュタージのやりたい放題。

向かいのアパートに監視部屋を設け、部下と交代でほぼ半日以上を盗聴器に耳を
傾けて過ごす。(公式ページには屋根裏とあるけど・・・はて?)
盗聴された方はたまったもんじゃないが、何にも気づかず普段どおりの生活を送
る訳で、当然あっちの方も丸聞こえ・・・・。悪趣味〜〜。

ドライマンは、過激な思想(シュタージから言わせると過激なだけだが)の作家
仲間がいたが、できるだけ今の平和な暮らしを壊したくない。
ドライマンの敬愛する、イェルスカはシュタージに本を書く権利を剥奪されていた。

イェルスカがドライマンの40歳の誕生日パーティに贈ってくれた曲のタイトルが
「善き人のためのソナタ」

ドライマンは、こんなに美しい曲を書くイェルスカに心を痛め、またどうする事
もできない苛立ちも覚え、そっとその曲を奏でる。
と、盗聴器のヘッドフォンから流れるその曲に・・・いやそれまでのドライマン
の優しい心にも触れ・・・号泣するヴィースラー。
この辺が、もう涙びちょびちょです!

自分の生きてきた道はもしかしたら間違っていたのではないか?
ドライマンもクリスタも「善き人」で、その2人の愛を切り裂く事も、彼らが才能
を惜しげもなく披露する事も誰も邪魔してはならないのではないか?

ヴィースラーは独り暮らしで家に帰っても簡素な家具のみ。
お粥にケッチャップ?みたいな素っ気無いご飯を1人で食べ、日本人の私達からみ
たら「何が楽しくて生きているの?」というような生活だ。
彼は「西側に傾倒している人間は反政府の危険人物」だと信じ込んできた。

この時ヴィースラーは、咄嗟に思ったのだった。
この2人は、守りたい。今まで刑務所に送ってきた罪もない人の分まで・・・・。

クリスタに執拗なヘムプフの強引な「口説き」にも胸が痛んだし、それを知ってしま
うドライマン(ヴィースラーが陰で手引きをするのだ)の姿にも胸が痛んだ。

何より、ヘムプフとの逢引に向かうクリスタの前にヴィースラーが、「貴女の1ファ
ンです。貴女は貴女らしく、自分の信じた道を歩むべきです」と告げるシーン。

なんて善き人なんだ!!
クリスタのような女性は(女優に限らず)沢山いたのだろう。
「断れば、お前やお前の恋人の職を奪ってやる」と脅されて・・・・。
そうして静かなソナタのような物語にも、ドキドキハラハラの展開が訪れる。
イェルスカの自殺によって、腐った政治に対する怒りがドライマンの目を覚まさせる。

西ドイツの新聞社に「東ドイツは自殺者の数を公表しないが世界一のレベルで自殺者
が後を絶たない」
そういった告発を目の前で進められていたが、ヴィースラーは一貫して嘘の報告書を
提出するのだった。
数年後、ベルリンの壁は壊され自由を手に入れるための闘いも終わった。
そんなある日、ドライマンは自分のアパートも実は監視されていて、誰かが見逃して
くれていた事を知る。
あの後、郵便係に降格したヴィースラーは(1つ1つ封を綺麗に開け、中だけチェッ
クするのだ!第一次大戦時か刑務所みたい!)壁崩壊後、チラシ配りをしていた。
背筋をピっと伸ばしポストへ投函して歩く姿は、往年の鬼の尋問官を思い起こさせる
がしかし今ではすっかり「ただの人」

遠巻きに見つめるドライマンは声をかけようとしてやめる。
今更、何を言おうというのだ?
声をかけて欲しくない、とあの背中は言ってるではないか・・・。

しかし孤独な穴に落ち込んだ男を、今度は自分ができる範囲で救う番だ。
本屋に立ち並ぶ、「善き人のためのソナタ」というドライマンの本は、扉に
「HGWXX/7に捧ぐ」(※これはヴィースラーのコード・ネーム)
とメッセージが添えられていた。
ヴィースラーは、ドライマンを(クリスタは残念な結果でしたが)救った次点で既に
満足していたと思いますが・・・・。


原題 DAS LEBEN DER ANDEREN/THE LIVES OF OTHERS
製作年度 2006年
上映時間 138分
監督 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演 ウルリッヒ・ミューエ 、マルティナ・ゲデック
   セバスチャン・コッホ 、ウルリッヒ・トゥクール
トマス・ティーマ 、ハンス=ウーヴェ・バウアー

【映画館での観賞】

追記(どうでも良い追記)
ドライマンを演じた人、アントニオ・バンテラスに見えたしクリスタはモニカ
・ベルッチにちょっと似てた気がする^^
ワタクシ事ですが、風邪を引いてしまいました( ̄/ ;\ ̄)ズルズル
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