カポーティ

November 26 [Sun], 2006, 23:58
「カポーティ」 2006年 米

★★★☆



暗い映画でした。
「ティファニーで朝食を」の原作者で脚本も手がけた有名な作家、トルーマン・
カポーティ(ホフマン)が、後年ノンフィクション小説の名作「冷血」を書き上げる
までの6年間を描く。
実在したカポーティを真似ているのでしょうが、私には全く馴染みのないお方。
それでも、特徴のある話し方や、オカマっぽい仕草、仲間に話すジョークの数々
は中々インパクトがあり観甲斐があったので、ホフマンの演技がなかったら、
途中で飽きて寝ちゃったかも・・
なのでホフマンに助けられたわ。

1959年11月カンザス州ホルカムでクラッター家の家族4人が、惨殺死体で発見される。
翌日、NYで事件のニュース記事を見た作家トルーマン・カポーティはこれを次の
小説の題材にしようと決心。
幼馴染みで彼の良き理解者の女流作家ネル・ハーパー・リー(キーナー)を伴い現地へと向かう。

華やかな世界の友達も多いトルーマンだがゲイで同居している恋人のジャックがいる。
ネルとはお互いに良き理解者、同性の友人のようなものか?

遺体を置いた部屋を訪ね、4つ並んだ棺の蓋をあけて遺体を覗きこむ、トルーマン。
彼はその時の興奮を、彼氏に電話で話している。
「世の中の嫌な事を忘れそうなぐらい、残酷で気の毒な遺体よ」
真実を暴く事で、この本を書いたらきっと売れる!!!
そうした執筆意欲が沸き起こっている最中、容疑者の男2人組が捕まる。

ペリー・スミス(コリンズ・Jr)とリチャード・ヒコック(ベレグリノ)。
彼らは最初の裁判で、弁護士に「有利だから、証言もパスした」らしい。


案の定、状況証拠から自白なしで彼らは死刑有罪。
死なれては本が書けない!
トルーマンは、彼らが収容されている刑務所に賄賂を渡し、好きな時に接見でき
るように計らう。
敏腕弁護士をつけて上告、裁判でタラタラと長引かせておき、その間に彼ら(いや
何故かペリーだけ)から上手く話を聞きだそうという腹だった。

しかし肝心のペリーは一ヶ月もの間飲まず食わずで衰弱しきっていた。
“心神喪失”の線を狙っていたのか、自分の犯した罪の重さに・・・というよりは
むしろ、自分の生まれ育った環境を呪っての自殺行為か?

トルーマンが、コンビニ(あれ?当時はまだないか^^)で、離乳食を買い漁り
ペリーにスプーンで食べさせてあげる事から、彼の固く閉ざされた心のドアを
ノックして入っていこうとする。

自らは、本が書きたいだけ・・・・の筈だった。
あんな残忍な顔や頭を吹き飛ばされた遺体を見て、憎むべき犯人達だ。
こんな極悪人どもをおもしろおかしく書いたって誰が気にするものか・・・・・。

社交界の華やかな世界にも精通していたトルーマンには、彼らがどうなろうと
本さえ書ければ良かった筈だった。

しかし、踏み込みすぎたのね。
ペリーが幼くして母を失くし姉とは生き別れ、兄は自殺その後施設に預けられ
悲惨な生活を強いられたと知り、封印した筈の過去がトルーマンの中で
渦を巻く・・・。トルーマンも、母が男にだらしない女で・・・そして自殺し
深い傷を負っている。

「例えば彼と僕は同じ家にいて、彼は裏口から、僕は表玄関から出てきたような
   もの」
危ない考えだが2人は対なのだ・・・。
深い孤独を抱えた者が、裏街道を生きて渡るか、表舞台で陽の目を浴びるか
それは2つに1つなのだ。
どちらかしかないのだ・・・。普通には生きれない(生きている人も少数はいる
だろうけど)
犯罪者も人の子。
犯罪を犯した時は「極悪人」だが、普段は「善人」の顔をしている。
ホテルに缶詰状態のトルーマンを心配したのと、ほうっておかれていじけた?の
とでジャックはスペイン行きを半ば強引に進め、そこで1年を過ごした。

途中はかなり端折った描き方である。
前半のカンザス地方の刑事とその夫婦との交流は長々と描きすぎた割りに
後半何も関ってこない^^

スペインで、アメリカの当時の新聞に掲載されはじめた「冷血」だったが
肝心の殺した時の様子や、死刑執行の後の話は当然書けないでいる。

しかし、ペリーから「会いに来てはくれないのかい?アミーゴ」などと頻繁に
手紙が届き、メルも、(偶々遊びに来ていた)ジャックも、トルーマンも、
「これ以上関っては危険だ・・・」そう気づいていた筈。

が、新聞社からは既に刊行されている「冷血」の後半部分を、とせっつかれるし
トルーマンも、ペリーから逃げてはいけないのだ。
死罪決定の男をその有名な手で書いて、世間の同情を浴びたおかげで死刑
判決が何度も延期・延期になってきた。
そのペンで、遺族(家族全員殺されたけども)らの気持ちも、犯人の寿命も
振り回せる立場にいる・・・・!

やがて、頑固に殺害の時の話を避けてきたペリーが、その日の事を具体的に
告白する時がやってくる。
このペリーが、自分の中の闇を見透かされたような気がしたからといって衝動的に、
4人を撃ち殺した事には一切、同情できない。
韓国映画あたりだと、ここで犯人の不条理なまでの悲しみがクローズ・アップされ
るが、実在の人物で実際に起きた事件だし、脚色しきれなかったのかも?
いや、あまりにも大袈裟なわざとらしいお話には観客ももう飽きている。
(と、思うけど・・・私見でした^^)

最終的に、ペリーの深い闇を知る事で自分の首を真綿で絞めていくトルーマン
だが、犯人の死刑が延期されるたびに完結しない「冷血」を思い、またそんな
自分の卑劣さを呪い、ペリー達をへびの生殺し状態におきながら何もできない
自分を恥じ、そんな苦悩と葛藤が終盤で結束する。

ペリー達はトルーマンが最後は助けてくれると期待していただろう。

最終的に、書き上げた「冷血」は見事な出来で名作と称えられたが彼はその後
一切執筆しなかったという。

芸術を仕上げるためには、犠牲はつきものなのかもしれない。
また、彼の心は繊細で、ガラス細工のようなものだったともいえる・・・・。
そんな事で(失礼!)アル中になっていたら、私なんかとっくにお陀仏よ。
心の闇や孤独は誰にでもあるんだから。

笑っただけで、殺したなんて許されないです。なのでペリーらには全く同情
できず、逆にこれから沢山楽しい事もあった筈の、殺害された家族が気の毒で
なりません。

トルーマンがペリーらに肩入れすればするほど、では、殺された家族の立場は?
と思いました。

フィリップ・シーモア・ホフマンは大変上手かったです。アカデミー主演男優賞
も伊達じゃない。今日の彼は、マッド・ディモンに時々見えました^^

ところでホフマン、39歳なんですって〜〜〜しんじられな〜〜い!!

監督 ベネット・ミラー
出演 フィリップ・シーモア・ホフマン、キャサリン・キーナー
クリフトン・コリンズ・Jr 、
   クリス・クーパー 、ブルース・グリーンウッド 、ボブ・バラバン

 【映画館での観賞】

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