梅咲けば(三十五) 風間→千鶴

December 31 [Tue], 2013, 18:03
風間現代転生話。
ノーマルED前提。



《設定》
風間 男女共学高校三年生。生徒会長。
千鶴 他校の女子高一年生。
新選組の面々 近藤道場に通う。



−−−梅咲けば(三十五)

午前の打ち合いを終えた後の昼食の席。
風間は少々辟易としていた。
皆を労って回っていた道場主がいつの間にか熱心に風間の話を聞こうとしていたからだ。

剣道の経験はどのくらいか、誰に師事したのか。

矢継ぎ早な質問をしてくる近藤は悪い男ではないようだが、暑苦しい。
風間はうんざりと息を吐いた。

「ほう、勿体ないなぁ。風間君は部活にも入っていないのか」

「生徒会の業務がある。それほど暇ではない」

訊きたいことだけを訊くだけ訊いて、ようやく息を吐くことにしたらしい。
風間の素っ気ない態度を気にもせず、近藤は床几に置いていた皿からひとつ、草餅を取った。
先程千鶴がやってきて配っていったものだ。

一口餅を頬張って、ふむと近藤が満足げに目を細める。
ほのかな甘みと鮮やかな野の草の匂いを、すでに食べ終えた風間は知っている。

「とはいえ、たまには他の人間と打ち合うのもいいだろう。週末だけでもいいし、うちに来てみないか」

「切磋琢磨は性に合わん」

「そう言わずに。きっと互いにいい刺激になる」

結局は、風間に道場に通えと言いたいらしい。

「その気はない。頷きようもないことだな」

先程から繰り返しているやりとりに、風間はふいと視線を逸らした。


探すのは一つ。


ぴょこぴょこと揺れる一房の黒髪。
居並ぶ男たちの間をすり抜け、茶を組み、菓子を勧める千鶴の姿。

居所を定めるでもなくくるくると立ち動くその少女を見つけて、風間は彼女の周囲を観察した。

沖田を始め、名も知らない男が彼女に声をかけ、笑い、礼を言う。
少し前の自分なら、どの男が「過去」から繋がっているのか知りたがったかもしれない。

だが今はそうは思わない。
はにかんだり微笑んだり慌てたりと忙しい千鶴の表情を眺めていると、それで良いように思えた。


しかしそんな風間の余裕も、千鶴がひとりの男の隣に居場所を定めるまでのことだった。


何かを話しながら、土方が千鶴の頭に手を置いた。
驚いた様子の千鶴が、幾度か撫でられるうちに何かを堪えるように俯きがちになっていく。

周りの人間たちには、千鶴が恥じらっているように見えたのかもしれない。
だが風間にとっては、それだけのことではなかった。

千鶴は、「昔」の土方にそうされたことがあったのだろうか。

今、彼女は何を感じているのだろう。
寂寥。
感傷。
憧憬。
あるいはこのどれでもない何か。

それを千鶴に与えているあの掌が、途轍もなく疎ましいものに思えた瞬間。
風間は意図せず立ち上がっていた。

異質な存在に馴染んできていた周りが、風間の突然の動きに注目するがそんなことはどうでもいい。

ずかずかと歩いた風間は、千鶴を撫でる土方の手を無遠慮に掴んだ。
唐突な風間の襲来に、土方が流石に驚いたように顔を上げる。

千鶴も状況についていけずにか、ぱちぱちと瞬いて風間を見ていた。

「どうした」

「触るな」

短く言った風間に、土方が眉を寄せる。

「何だ?」

単に様子がおかしい風間を訝って尋ねる土方の表情に苛立ちはない。
それが何故だかますます癪に障って、風間はきっぱりと言い放った。

「こいつに触るな。俺のものだ」

権利は厳然と示されなければならない。
風間としては、当然と思われることをしたまでだった。

だが何故か、土方は意表を突かれた顔で黙り込んだ。
千鶴も石のように動きを止め、近くに立つ男たちもぎょっとした顔でこちらを見ている。

知ったことかと風間が土方を睨み下ろしていると。

土方の目が、ちら、と千鶴を見た。

風間もつられてそうすると、千鶴の頬が、徐々に赤く染まり始める。
ついに真っ赤に染まったその頬に、土方はひとつ呟いた。


「……ああ、なるほど」


何かを納得したその呟きに、千鶴が悲鳴を上げて土方に取りすがった。

「違うんです…!」

「離れろ」

苛立ったままの声で言って、風間は千鶴の襟首を少々乱暴に引く。
小さな悲鳴を上げて土方から離された千鶴の目が、非難がましく風間を見上げる。

「おい、止めろ」

嗜めるような土方の言葉がまた癇に障る。

「うるさい。お前の指図は受けん」

「止めとけって言ってんだ」

わかったから、と呆れたように言いながら、土方は千鶴から少し距離を取る。
それを確認して、風間はふんと息を吐く。
千鶴はといえば、また一触即発なのかとハラハラした表情で二人を見守っている。

そこに、ふむ、と傍観者の声がした。


「色事、か……」


小さな呟きではあったが、千鶴の肩を跳ね上げさせるには充分な言葉だったようだ。
発したのは、土方でも勿論風間でもなく、第三者である男。

三色団子の桃色の玉を咀嚼しているその男を見上げて、土方が笑った。

「なんだ、斎藤か。お前がこんなことに興味を持つなんて珍しいな」

「いや……俺よりも」

団子を呑みこんだその男の涼やかな目が、何故だか千鶴のほうを向く。
風間がそちらを見るか見ないか、という時に、もうひとりの男の声がした。


「ふうん……面白いこと見つけたなぁ」


言葉と共に、千鶴の背後から長い腕が伸びてくる。
それはするりと猫の尾のように、千鶴の細い首と肩に回って納まった。

土方が「ああ……」と面倒そうに声を洩らす。


「土方さんがちょっと触ったぐらいであれだけ怒るんだから、こんなことしちゃったら、どうなるんだろね」


見上げてくる沖田の笑う目と千鶴越しに目があって、風間はピキ、と自分の額に青筋が浮かぶのを感じた。


【終】
  • URL:https://yaplog.jp/tommy_2063/archive/285
Comment
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー 絵文字 プレビューON/OFF

不正な自動コメント投稿を防ぐため、チェックボックスにチェックをしてください。

利用規約に同意
 X 
禁止事項とご注意
※本名・メールアドレス・住所・電話番号など、個人が特定できる情報の入力は行わないでください。
「ヤプログ!利用規約 第9条 禁止事項」に該当するコメントは禁止します。
「ヤプログ!利用規約」に同意の上、コメントを送信してください。
ながしん
さて、沖田さんにたいして、風間さんはどうするのか…じみに妄想しています。個人的には、土方さんが「ああ、なるほど」ってなっとくしちゃったところが「え、ほんとに?」だったんですが、それはそれで、萌えました。
千鶴にそんなつもりはなくても、やっぱり二人はお似合いにみえるんだな、(わたしの妄想かもしれませんが!)たぎります。

ちょー余談ですが、わたしが薄桜鬼が好きになったきっかけの、舞台版がいよいよ風間篇です。風千ー、とちょっとたぎっております。

さむいですので、お体おきをつけください。
February 14 [Fri], 2014, 23:58
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:トミー
  • アイコン画像 性別:女性
  • アイコン画像 血液型:O型
読者になる
オトメゲーム大好きな社会人。
一般ゲームも。

2013年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
最新コメント
アイコン画像ながしん
» お久しぶりです。 (2015年11月18日)
アイコン画像ながしん
» 梅咲けば(三十五) 風間→千鶴 (2014年02月14日)
アイコン画像ながしん
» 梅咲けば(三十四) 風間→千鶴 (2013年12月09日)
アイコン画像ながしん
» 梅咲けば(三十二) 風間→千鶴 (2013年10月30日)
アイコン画像ながしん
» 梅咲けば(三十) 風間→千鶴 (2013年07月29日)
アイコン画像ながしん
» 哀愁… (2013年07月15日)
アイコン画像ながしん
» あいかわらず。 (2013年07月02日)
アイコン画像ながしん
» 梅咲けば(二十七) 風間→千鶴 (2013年06月23日)
アイコン画像ながしん
» 梅咲けば(十七) 風間→千鶴 (2013年02月07日)
アイコン画像柚子
» 梅咲けば(十六) 風間→千鶴 (2013年01月21日)