雀の追尾 (秀吉×ほたる)

October 01 [Tue], 2013, 23:55
下天の華、ゲーム中の秀吉独白。
正体バレ後。


―――雀の追尾 (秀吉×ほたる)


「ふむ……」

ひとりにぎやかな声行き交う城下をぶらつきながら、秀吉は艶やかな後姿を思い描いていた。

まるで野の鳥のような艶姿。
毎日まいにち秀吉が送る恋文を律儀に受け取っては、彼女は足早に去っていく。


「こりゃあちっと、下手を打ったってことかねぇ」

ぽりぽりと後頭部を掻きつつも、その顔に憂いはない。
実際、後悔はないのが秀吉の本当のところだ。

早々に彼女の正体を言い当ててしまったことはまずかったかもしれない。
野で見つけた小鳥の腹を、慣れないうちに指でつついたようなものだ。
小鳥は警戒心でその羽根をかたくしてしまった。

主である信長のように、真実として露見するまで黙って嘘に付き合ってやればよかったのかもしれない。


「ま、でも仕方ないわな」


からりと言って、秀吉はひとりフフンと笑った。

自分が興味を持ったのは、姫としての彼女ではなく、姫として潜入している彼女なのだから。
内側に触れたいのならば、外側ばかりを撫でていては駄目なのだ。

まあ警戒という殻にこもった彼女からは距離ばかりとられているのだが。
こちらから近づくと気まずそうな顔をするものの、避けられてはいないのだから嫌われてはいないのだろう。


「じゃ、とりあえずお近づきの口実に何か見繕ってくるとしますかね」


思い付くのは櫛、簪、掛布、甘い菓子なぞもいいかもしれない。
いつも贈るように文のひとつも添えて渡せば、まず会話はできるだろう。
彼女のことだ、遠慮するかもしれないがそこは譲る気など毛頭ない。

攻撃の初手をそう決めた秀吉は、どことも決めていなかった爪先の行く先をまずは市でも女性を客に扱う一角へと定めた。


難攻不落ほど面白い。
戦ではなく色恋事なら尚のこと。

そう笑って、秀吉は足取り軽く人ごみに混じっていった。


【終】
  • URL:https://yaplog.jp/tommy_2063/archive/247
Comment
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー 絵文字 プレビューON/OFF

不正な自動コメント投稿を防ぐため、チェックボックスにチェックをしてください。

利用規約に同意
 X 
禁止事項とご注意
※本名・メールアドレス・住所・電話番号など、個人が特定できる情報の入力は行わないでください。
「ヤプログ!利用規約 第9条 禁止事項」に該当するコメントは禁止します。
「ヤプログ!利用規約」に同意の上、コメントを送信してください。
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:トミー
  • アイコン画像 性別:女性
  • アイコン画像 血液型:O型
読者になる
オトメゲーム大好きな社会人。
一般ゲームも。

2013年10月
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
最新コメント
アイコン画像ながしん
» お久しぶりです。 (2015年11月18日)
アイコン画像ながしん
» 梅咲けば(三十五) 風間→千鶴 (2014年02月14日)
アイコン画像ながしん
» 梅咲けば(三十四) 風間→千鶴 (2013年12月09日)
アイコン画像ながしん
» 梅咲けば(三十二) 風間→千鶴 (2013年10月30日)
アイコン画像ながしん
» 梅咲けば(三十) 風間→千鶴 (2013年07月29日)
アイコン画像ながしん
» 哀愁… (2013年07月15日)
アイコン画像ながしん
» あいかわらず。 (2013年07月02日)
アイコン画像ながしん
» 梅咲けば(二十七) 風間→千鶴 (2013年06月23日)
アイコン画像ながしん
» 梅咲けば(十七) 風間→千鶴 (2013年02月07日)
アイコン画像柚子
» 梅咲けば(十六) 風間→千鶴 (2013年01月21日)