Rorschach

April 01 [Fri], 2011, 17:28
【演:K.K.P. 演出・脚本:小林賢太郎 出演:久ケ沢徹/竹井亮介/辻本耕志/小林賢太郎 公式HP:http://kentarokobayashiproduce.net/menu.html

 広大な海に浮かぶその島で、開拓につぐ開拓を進めて暮らす人々がいた。
 彼らはついに世界の果てにそびえる『壁』につきあたり、更なる開拓のために『壁』の向こうを目指すことになった。
 しかし、ロケット『パイオニア号』の完成と打ち上げに沸く記念祭の中、なぜか3人の青年たちは大砲を打つという役割を振られ、そのための準備と訓練を行うことになるのだが――

 小林賢太郎プロジェクト、K.K.P.の第7公演【ロールシャッハ】。
 タイトルの《ロールシャッハ》とは、投影法を用いた人格検査《ロールシャッハテスト》に由来する。
 小林賢太郎氏の作品を前にすると、舞台タイトルが一体どこに着地するのかが楽しみのひとつとなるのだが、その期待を裏切らない『捻り』がたまらなくいい。
 言葉遊びの要素ももちろん健在。
 常に小ネタが飛び交い、細かなアドリブが挟まれ、笑いが起こる。
 舞台ならではの遊び要素満載の劇中劇や、第5回公演で見せてくれた抜群のチームワークによるテンポの良いセッションは一見の価値ありだ。
 無線機を通じた、姿のない相手とのやり取りに至ってはもう、切り返しも含めて、ギャップ萌えという単語すら浮かんでくる。
 ステレオタイプでありながら個性的。
 パラレルというファンタジー的要素が盛り込まれていながら、現実的。
 賑やかに華やかに見えていながら、じりりとした不安感を忍ばせていて、小さな四人の個人的な内面が、より大きな場所に作用する物語、なのだと思える。
 誰もが抱えている不安とか、誰かに聞いてほしいけれど口にする勇気が持てないもどかしさとか、うまくいかない自分への憤りとか、自己表現の難しさとか。
 四人が四人ともに同じ場所で同じ時間を過ごすことで、反響し、影響を受け、変化していく過程が、微笑ましくも温かい。
 例えば、何かを為そうとする時、そこには別の隠されていた『事実』があるとして。
 何も知らなければ、ただ純粋に『そうだと信じた』ままに突き進めていただろう現実がある。
 でも知らないままに誰かの思惑で動くことよりも、知ることで自分の道を選ぶことができるなら、ソレはたぶん辛くても幸せなことだとも思える。
 そうして、自分で迷いながらも決定する時、傍に同じ思いの仲間がいてくれるという『幸せ』は代えがたいとも思える。
 エンターティナーが提供するエンターテイメントの魅力は、生の舞台で直接彼らの台詞や空気に触れることでより一層強く印象付けられる。
 ラストに用意された『衝撃』。
 ささやかな違和感が、さりげない演出が、最後の最後に大きく展開するこの驚きが小林賢太郎なのだろう。

 イクラはキャビアにはなれない。
 イクラなら鮭を目指せ。

 そうして、彼らが目指して出した結論と結果とを、彼らを見守っていた自分は拍手で称える。
  • URL:https://yaplog.jp/takatsuki/archive/625
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