チーム・バチスタの栄光 [上][下]

July 01 [Thu], 2010, 22:13
【作:海堂尊 宝島社(文庫) 本体価格476円】

 東城大学医学部附属病院で発生した連続術中死。
 バチスタ手術専門の天才外科医たちによる集団、“チーム・バチスタ”で起こったこの原因不明の連続死に対し、病院長は不定愁訴外来の田口医師に内部調査を依頼するが―― 

 第四回このミス大賞受賞作品にして、映画化され、TVドラマにもなった《東城医大》シリーズにして桜宮サーガの記念すべき第一作となる作品。
 昼行燈と称され、愚痴外来と言われている、東城医大の不定愁訴外来の田口公平と、ロジカルモンスターこと白鳥圭輔の邂逅ともなった作品でもある。
 扱われるのは、バチスタ手術における複数の術死にまつわるものだ。
 成功率の低いハイリスクな手術での《術中死》は、本来ならばよほどのことを除いて不審を抱くものではない。
 にも拘らず、調査の依頼がなされる。
 医療過誤か、殺人か。
 調査の人選から始まり、この経緯や、関係者の持つ危機感、不可解感、違和感などが、文字の情報として提示されていく様に先ず引き込まれた。
 調査の合間に挿入される逸話もまた面白い。
 医療者たちの本音と建前を紛れ込ませながら、裏と表が行き来するような感覚となる。
 一筋縄ではいかないキャラクター達に田口を通して触れながら、どこに何が隠れ、どこに何が隠され、どこに何が潜んでいるのか、それらは最終的にどんな姿で魅せてくれるのかを新鮮な気持ちで楽しめた。
 医療ミステリーという分野は、ひとつのジャンルとしてすでに確立されているものだ。
 けれど、かつてその現場にいた、あるいは現在もその現場に居続ける者によって描かれた時、その切り口は非常に斬新かつリアルな質感を生み出す。
 小説という形態によって、行間にキャラの内側を垣間見せ、微妙なニュアンスを含ませ、過去と現在と主観と状況と印象を巧みにあやつってくるから面白い。
 流麗かつ、テンポとセンスの良い会話に引き込まれ、重くなり過ぎないようにと調整された演出と専門領域にありがちな小難しさを消化し、エンターテイメントとして演出できてしまう手腕が素晴らしい。
 登場人物たちも、映画やドラマとは雰囲気を異にしている者もおり、他メディアを見たのちならば、《愚痴外来のグッチー》という人物像への印象の変遷も楽しめる。
 オチも含めて、実に惹かれる一冊である。

<読書記録⇒5月期に読んだ本(含漫画)の厚さ:計24.2cm>
  • URL:https://yaplog.jp/takatsuki/archive/618
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