神のロジック 人間(ひと)のマジック

January 20 [Sat], 2007, 23:55
【作:西澤保彦 文藝春秋(文庫) 本体価格600円】

 場所も目的も分からない完全管理の『学校』に、世界中から集められた『ぼくら』は、ワークショップ(実習)という名目で奇妙な犯人当てクイズをさせられている。
 そんなギリギリながらも辛うじてバランスを保っていた6人に、新入生が加わることとなった。
 異様な空気の歪みを感じたその瞬間、『学校』に潜む『邪悪なモノ』は目覚め、悲劇は動き出す――

 表紙裏には『驚愕の結末と周到な伏線』いう煽り文句。
 こう書かれてしまっては期待が膨らむと同時に、いやがうえにも身構えてしまうのだが。それでもあっさりと騙されてしまった。
 これはちょっと気持ちがいい。
 そして、奇妙な『徹底的に管理された学校』という施設の背景や構造が、これでもかといわんばかりに巧みに描写されていく。
 私物は一切持ち込めず、あり得ないほど不味い料理を食べ、テストの成績でしかお菓子やジュースを買うお小遣いがもらえないというシステムは、いかにも意味ありげだ。
 舞台装置としての異常と日常のギリギリの境界線の引き方がいい。
 そこにいる生徒たちもまた個性的ではあり、一番の新参者である『ぼく』の知らない出来事を共有しては、さりげなくソレを提示してくるのだ。
 実習と称して渡された『犯人当て』はもとより、自分たちは何のためにここにいて、何のためにこんな『教育』を受けているのか、それぞれが推理を披露していくのも面白い。
 もちろん、謎はひとつやふたつでは済まない。
 言葉を交わし、互いが胸の内に秘めている感覚をそっと打ち明けることで、更に別の可能性も浮上してくるのだ。
 しかも、小出しにされる情報と、様々な友人たちの推理が展開されていくうちに、漠然と、世界を覆う不吉な影に捕らわれる。
 そうして、事象に対する視線や思考方法が鍛えられていくのだ。
 だが、全ては、真実へと辿り着く為の前準備だったのかもしれない。
 幻と現実、真実と虚偽の境目を知ることが怖い。
 物語の着地点を知った時、真相への驚きとともに、何とも言えない不安定な揺らぎを感じてしまった。
  • URL:https://yaplog.jp/takatsuki/archive/373
Comment
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー 絵文字 プレビューON/OFF

不正な自動コメント投稿を防ぐため、チェックボックスにチェックをしてください。

利用規約に同意
 X 
禁止事項とご注意
※本名・メールアドレス・住所・電話番号など、個人が特定できる情報の入力は行わないでください。
「ヤプログ!利用規約 第9条 禁止事項」に該当するコメントは禁止します。
「ヤプログ!利用規約」に同意の上、コメントを送信してください。
P R
最新コメント
アイコン画像ひかる
» ポツネン氏の庭 〜The spot garden of Mr.Potsunen〜 (2011年02月23日)
アイコン画像とんぼがえり
» ポツネン氏の庭 〜The spot garden of Mr.Potsunen〜 (2011年02月06日)
アイコン画像ひかる
» フィッシュストーリー (2010年01月03日)
アイコン画像51
» フィッシュストーリー (2010年01月03日)
アイコン画像ひかる
» ダークナイト/THE DARK KNIGHT (2008年08月30日)
アイコン画像ちきん
» ダークナイト/THE DARK KNIGHT (2008年08月26日)
アイコン画像日本インターネット映画大賞事務局
» 日本インターネット映画大賞・外国映画部門 (2008年02月09日)
アイコン画像ひかる
» 朱色の研究 (2008年01月25日)
アイコン画像らぶほん
» 朱色の研究 (2008年01月16日)
アイコン画像日本インターネット映画大賞
» バイオハザードV/BIO HAZARD V (2007年12月29日)