ホウィップル病 

August 10 [Fri], 2007, 0:35
ホウィップル病

ホウィップル病(腸性脂肪異栄養症)は、まれな細菌感染症によって起こる疾患で、小腸の内膜がダメージを受け、小腸以外の器官にも影響を及ぼします。

ホウィップル病は、主に30?60代の男性に起こります。トロフェリマ‐ホウィッペリという微生物による感染症が原因です。この感染症は、通常は小腸に起こりますが、それ以外の、心臓、肺、脳、関節、眼などの器官も侵されることがあります。

症状

ホウィップル病の症状は、下痢、関節の炎症や痛み、発熱、皮膚の着色などです。重度の吸収不良のために体重減少が起こり、貧血による疲労と脱力が起こります。このほか腹痛やせき、肺を包んでいる胸膜の炎症による呼吸時の痛みといった症状がみられます。胸膜の間に体液がたまり、胸水(胸膜疾患: 胸水を参照)と呼ばれる状態になります。リンパ節は腫大します。ホウィップル病患者では、心雑音が聞こえることがあります。錯乱、記憶喪失、異常な眼の動きなどがみられると、感染症が脳にまで広がったことを示唆します。この状態を治療せずに放置すると、症状が進行し死に至ります。

診断と治療

小腸か腫大したリンパ節の生検(組織の顕微鏡検査)を行って細菌が発見されれば、ホウィップル病と診断されます。

ホウィップル病はテトラサイクリン、アンピシリン、トリメトプリム‐スルファメトキサゾールやペニシリンなどの抗生物質を6?12カ月間投与すると、治癒します。症状はすみやかに治まります。しかしながら、最初は抗生物質に反応しても、この病気は再発することがあります。

腸リンパ管拡張症

腸リンパ管拡張症(特発性低タンパク血症)は、小腸内膜に供給されているリンパ管が拡張して閉塞を起こす障害です。

消化管のリンパ管はリンパ球と呼ばれる白血球を運んでいて、出生時に拡張します。まれですが、このリンパ管が後になって、膵炎や心臓を包む膜が硬化する収縮性心膜炎などで拡張することがあります。腫れたリンパ管からリンパ液が腸壁に漏れ出て、脂肪やタンパク質が血液中に吸収されるのを妨げます。

診断と治療

腸リンパ管拡張症の人は下痢を起こします。吐き気、嘔吐、脂肪便や腹痛も起こります。体のどこかにあるリンパ管が詰まると、その場所に浮腫を起こします。

血中タンパク質濃度は低下するため、浮腫が起こります。血液中のリンパ球数は減少し、コレステロール値は正常か低めです。

診断は、小腸の生検を行ってリンパ管の拡張が認められれば確立します。さらに、便中のアルファ1‐アンチトリプシンと呼ばれるタンパク質を測定することにより、腸管で失われるタンパク質の程度がわかります。

治療

腸リンパ管拡張症が特定の状況下で起きている場合は、その基礎疾患を治療します。低脂肪食を摂り、リンパ管を通過しないで血液中に直接吸収される中性脂肪をサプリメントで補うことで、症状が改善されます。

熱帯スプルー 

August 10 [Fri], 2007, 0:31
熱帯スプルー

熱帯スプルーは原因不明の疾患で、熱帯や亜熱帯地方に住む人にみられ、小腸の内膜が異常を起こし、吸収不良とさまざまな栄養素の欠乏を起こします。

熱帯スプルーは、主にカリブ海地方、南インド、東南アジアでみられます。現地住民も旅行者も発症しますが、小児はまれにしかかかりません。原因は不明ですが、感染症を示唆する証拠が見つかっています。

症状と診断

熱帯スプルーの典型的な症状は、色の薄い便、慢性の下痢、体重減少です。また、特定の栄養素の吸収不良による症状も起こります。ビタミンB2が欠乏すると、舌がただれます。血液凝固に重要なプロトロンビンが欠乏すると、けがをした後に出血が長びき、あざができやすくなります。鉄やビタミンB12、葉酸が欠乏すると貧血が起こり、疲労と脱力を起こします。

この疾患が起こりやすい地域の住民やその地域に最近旅行した人に、貧血と吸収不良の症状がある場合に熱帯スプルーと診断します。小腸のX線画像では、異常がみられることもそうでないこともあります。小腸の内視鏡生検(内視鏡で組織サンプルを採集して顕微鏡で調べる)では、いくつかの特徴がみられますが、それはこの病気に特異的な異常ではありません。寄生虫や細菌が原因ではないことを確認するために便の検査を行います。

治療

熱帯スプルーが疑われる人は、抗生物質で治療します。テトラサイクリンまたはオキシテトラサイクリンが数カ月間投与されます。栄養素のサプリメントが、特に葉酸とビタミンB12が必要に応じて投与されます。治療によって通常は完全に回復します。

セリアック病 

August 10 [Fri], 2007, 0:28
セリアック病

セリアック病は、非熱帯スプルー、グルテン性腸症、またはセリアックスプルーとも呼ばれ、小麦や大麦、オーツ(カラス麦)に含まれるタンパク質のグルテンに対する遺伝性の不耐症であり、小腸内膜に特徴的な変化を起こし、吸収不良を起こします。

セリアック病は、イタリアとアイルランド南西部では300人に1人の割合でみられます。しかし、日本や中国、アフリカでは、非常にまれにしかみられません。これには遺伝的要因が関連していて、セリアック病患者のおよそ10%では近親者に同じ病気になっている人がいます。グルテンはタンパク質の1種で主に小麦に含まれ、大麦、ライ麦、オーツなどでは含有量が比較的少量です。セリアック病の人では、このタンパク質がある種の抗体産生を促進すると考えられています。この抗体が小腸内膜にダメージを与え、絨毛の突起を平坦にしてしまいます。その結果、平坦になった小腸内膜は栄養素の吸収不良を起こします。しかし、グルテンが含まれた食品の摂取をやめると、正常な小腸内膜のブラシ状の表面とその機能は回復します。

症状

セリアック病は小児のころに発症する場合と、成人になるまで発症しない場合とがあります。症状の程度は、小腸がどれだけ影響を被ったかで決まります。

典型的なパターンを示す成人の例では、下痢や栄養失調、体重減少が起こります。しかし、消化器症状が何も現れない人もいます。セリアック病患者全体のおよそ10%に、小さな水疱(すいほう)を伴い痛みとかゆみのある湿疹がみられ、疱疹性皮膚炎と呼ばれます。

小児では、グルテンを含む食物が与えられるまでは症状が現れません。子供によって、軽い胃の不調を経験する程度から、痛みを伴って腹部が膨張し、便の色が薄くなり、異臭がして量が多くなる脂肪便を起こす子供もいます。

セリアック病による吸収不良から起こる栄養素の欠乏は、さらに別の症状を起こしますが、それは小児で特に現れやすい傾向にあります。一部の小児は成長障害を起こし身長が低くなります。鉄欠乏による貧血では、疲労と脱力が起こります。血液中のタンパク質濃度が低下すると、体液の貯留と組織の腫れ(浮腫)が起こります。ビタミンB12の吸収不良では、神経障害が起こり、腕と脚にチクチクする感覚を生じます。カルシウムの吸収不良は、骨の成長異常を来し、骨折のリスクが高くなり、骨と関節が痛みます。また、カルシウムの欠乏は歯の変色を起こし、むし歯の痛みを増加させます。セリアック病の女児では、エストロゲンなどのホルモン産生が低下し、初潮がありません。

診断

前述の症状がみられる場合に、セリアック病を疑います。セリアック病の人がグルテンを含む食品を摂取したときに産生される特異抗体の濃度測定は、診断に役立つ新しい検査です。診断は、小腸の生検を行って、初期に絨毛が平坦化していることと、グルテンを含む食品の摂取をやめた後に小腸内膜が改善していることにより確定します。

治療と経過の見通し

セリアック病の人は、少量のグルテンでも症状を起こすので、グルテンを含む食品をすべて避けなければなりません。グルテンを含まない食事への反応は迅速に起こります。グルテン摂取をいったん停止すると、小腸のブラシ状の表面とその吸収機能は正常に戻ります。グルテンはさまざまな食品中に広く含まれているので、セリアック病の人は避けるべき食品の詳細なリストと栄養士の助言が必要です。たとえば、グルテンは市販のスープ、ソース、アイスクリーム、ホットドッグなどにも含まれています。

グルテン入り食品を避けても、症状が継続する場合があります。このようなケースでは、診断が正確でなかったか、難治性セリアック病と呼ばれる状態に進んだかのいずれかです。難治性セリアック病は、プレドニゾロンなどのコルチコステロイド薬で治療します。まれですが、グルテン入り食品を避けても、薬物療法でも改善しなければ、静脈栄養が必要となります。小児では初診時に非常に重篤な状態になっている場合があり、グルテン除去食を開始する前にしばらく静脈栄養の期間が必要になります。

グルテンを避ければ、セリアック病のほとんどの患者は良い状態を保てますが、長期間セリアック病が継続すると、わずかな割合ですが腸にリンパ腫を形成し、死に至る患者もいます。グルテン除去食を厳格に守ることで、腸の癌やリンパ腫などの長期間にわたる合併症のリスクを減少させられるかどうかは不明です。

乳糖不耐症 

August 10 [Fri], 2007, 0:26
乳糖不耐症

乳糖不耐症とは、乳糖分解酵素の欠乏によりあらゆる乳製品に含まれる乳糖が消化できない状態で、下痢や腹部のけいれん痛を起こします。

米国では3000万?5000万人に乳糖不耐症がみられます。乳糖は、牛乳や乳製品に広く含まれている糖で、小腸の内層の細胞で産生される酵素のラクターゼで分解されます。正常なら、ラクターゼは糖の複合体である乳糖を、ブドウ糖とガラクトースとの2つの要素に分解します。この2つの単糖類は腸壁から血液中に吸収されます。ラクターゼが欠乏すると、乳糖を消化吸収できなくなります。その結果、高濃度の乳糖が腸管内の液体を引き寄せ、下痢を起こします。吸収されない乳糖は小腸を通過して大腸に入り、腸内細菌によって発酵し、腹部膨満と酸性便を起こします。

乳糖以外の糖に対する不耐症も起こりますが、その頻度は比較的まれです。たとえば、シュクラーゼという酵素が欠乏すると、ショ糖が血液中に吸収されなくなり、マルターゼやイソマルターゼという酵素が欠乏すると、麦芽糖(マルトース)が血液中に吸収されなくなります。

症状

乳糖不耐症があると、牛乳や乳製品を消化できません。すべての乳製品は乳糖を含んでいるからです。乳糖不耐症に早く気づいた人は、意識してあるいは無意識に乳製品を避けます。

乳糖不耐症がある小児は下痢を起こし、牛乳が食事に含まれていると体重が増えません。成人では、腹部膨張、腹痛、下痢、吐き気、腸がゴロゴロ鳴る腹鳴が起こり、乳糖を含む食品を食べた後、30分から2時間程度で急激に排便します。一部の患者では重症の下痢のために、体内から食べものが急速に排泄されてしまい、必要な栄養素が吸収されない場合もあります。しかし、乳糖不耐症によって起こる症状は、普通は軽症です。対照的に、セリアック病、熱帯スプルー、腸の感染症は重症です。

診断と治療

乳製品を食べた後に症状が出る場合に、乳糖不耐症を疑います。3?4週間、乳製品を除いた食事を続けて症状が消失すれば、診断が確定します。特別な検査は必要ありません。

乳糖不耐症は、乳糖を含む食品を避けることでコントロールできます。また、ラクダーゼには処方せんなしで使える錠剤や液剤があり、牛乳に加えることができます。さらには、乳糖を減らした牛乳などの食品もスーパーマーケットで入手できます。乳製品を避けなければならない人は、カルシウムのサプリメントを摂取して、カルシウム欠乏を防ぐ必要があります。

消化器の病気---吸収不良 

August 10 [Fri], 2007, 0:18
消化器の病気---吸収不良

はじめに

吸収不良とは、さまざまな理由により食品の栄養素が小腸で適切に吸収されない状態のことです。

正常な状態では、食べものは消化されて主に小腸で吸収され血液中に入ります。吸収不良は、食べものの消化を妨げる異常や、栄養素の吸収を直接妨げる異常がある場合に起こります。

食べものが消化酵素や胃酸と適切に混じり合わないと、消化がうまくいかなくなります。不十分な混合による問題は、手術で胃を部分切除した人などに起こります。吸収不良の中には、食べものを分解するのに必要な消化酵素の量と種類を十分に産生できない場合があります。たとえば吸収不良の原因でよくみられるものは、膵臓(すいぞう)の病気により膵臓で分泌される消化酵素の量が足りない場合や、あるいは小腸で乳糖分解酵素の欠乏が起こった場合です。胆汁の分泌量が不足すると、胃酸が多くなりすぎたり、小腸で常在菌以外の菌が過剰繁殖したりして消化を妨げます。

血流中への栄養素の吸収は、小腸の内側の内膜を傷つけるような障害の影響を受けます。小腸内膜は、絨毛(じゅうもう)と呼ばれる小さな突起と微絨毛と呼ばれるさらに小さな突起で構成されていて、それらの突起は栄養素の吸収に都合の良いように、巨大な表面積をつくり出しています。小腸の大部分を切除すると、吸収のための表面積がかなり減少し、短腸症候群となります。また、細菌、ウイルス、寄生虫による感染症、ネオマイシンなどの薬やアルコール、セリアック病やクローン病はいずれも小腸内膜を傷つけます。リンパ腫(リンパ系のがん)によるリンパ管の閉塞や、小腸の血流の減少など、小腸壁の他の層に起こる障害も栄養素の吸収を妨げます。

症状

吸収不良の症状は、吸収されない栄養素の消化管通過の増加、または不適切な吸収による栄養素の欠乏によって起こります。

消化管での脂肪の吸収が不十分だと、便は軟らかく量が多くなり色が薄くなります。この状態は脂肪便と呼ばれ、悪臭がします。この脂肪便はトイレ容器に浮いたり、便器壁に付着し、流しても流れにくいものです。ある種の糖類の吸収が不十分だと、急激な下痢や腹部膨満が起こります。

吸収不良はすべての栄養素の不足か、またはタンパク質、脂肪、糖類、ビタミン、ミネラル類の選択的な欠乏症を引き起こします。吸収不良があると、通常は体重が減少します。吸収不良の症状は、欠乏している栄養素によって異なります。たとえば、タンパク質不足は、全身のむくみ(浮腫)、皮膚の乾燥、脱毛を起こします。

診断

健全な食生活にもかかわらず、慢性の下痢や栄養素の欠乏、かなりの体重減少がみられる場合には、吸収不良を疑います。吸収不良は、若い人よりも高齢者でははっきりしなくなり発見が難しくなります。

検査室での検査が診断の確定に役立ちます。2?3日分の便を採取し、脂肪の量を直接測定するのが、脂肪の吸収不良を診断するのに最も信頼がおける検査です。吸収不良がある場合のほとんどの例で便に脂肪がみられます。1日の便中に6グラム以上の脂肪が含まれているのが、吸収不良の基準です。その他の検査では、乳糖やビタミンB12などの特定の栄養素の吸収不良を発見することができます。

便のサンプルは顕微鏡で調べますが、肉眼でも観察します。未消化の食品の断片がある場合は、食べものが小腸を急速に通過したことがわかります。黄疸(おうだん)がある人で、便に過剰な脂肪が含まれている場合は、胆汁の産生や分泌が低下していることを示しています。ときには寄生虫やその卵が顕微鏡下で観察され、寄生虫感染症による吸収不良であることがわかります。

小腸内膜の異常を発見するのに、生検(組織の小片を採取して顕微鏡で調べる検査)が必要なこともあります。その場合は、内視鏡(柔軟な観察用のチューブで光源と小さなハサミなどを備えています)を口から小腸まで挿入して、組織を切除します。

膵臓の機能を調べる検査は、膵臓の消化酵素の分泌不足によって吸収不良が起きていると考えられる場合に行います。しかし、この検査は複雑で、時間がかかり、患者の体に負担をかけます。1つの検査法では、口から小腸へチューブを挿入し、膵臓の酵素が含まれている腸液を採取して酵素量を測定します。別の検査法では、消化に膵臓の酵素を必要とする物質を飲んでもらい、尿中の分解産物を測定します