サントラ「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」

June 16 [Sun], 2019, 23:55
・ハリウッド版ゴジラ第二作。
監督をして「モンスターオペラ」とした本作は、各怪獣のモチーフを明確にして、これらが入り乱れながら展開する聞き応えある音楽劇となった。
正直、効果音で大半はかき消されているので、サントラ盤で聴いてこそ意味のあるスコアと言える。

・前作「GODZILLA」では、フランス人作曲家アレクサンドル・デスプラが、意外なほど?緊迫感ある独自のモチーフを作曲した。
このモチーフは、ゴジラそのものに当てたというより、状況解説的やアクションテーマとでもいうべきものであり、デスプラのスペースオペラ「ヴァレリアン」でも雰囲気の似た曲を作曲している。
デスプラは伊福部昭によるモチーフを使わないことで、新しいゴジラの世界観を構築し、成功したといえる。

・デスプラに代わり、この続編の音楽をオファーされたのが若手のベアー・マクレアリーである。

ハリウッドの作曲家がゴジラ映画を作曲するのは、デビッド・アーノルド(エメリッヒ版「ゴジラ」)、J・ピーター・ロビンソン(北米公開版「ゴジラミレニアム」)、キース・エマーソン(「ゴジラ FINAL WARS」)、デスプラに続いて5人目である。

マクレアリーはデスプラと異なり、伊福部昭のゴジラのテーマ、更には古関裕而のモスラのテーマをオリジナルスコアに導入したのである。

悪名高いエメリッヒ監督版の「GODZILLA」でも、デビッド・アーノルドはすべてオリジナルのゴジラのテーマを作曲したことから、伊福部サウンドが響くのはハリウッド版ゴジラで初めてのこと。
更に、日本の和の要素を取り入れていることも相まって、日本版ゴジラへの敬意が感じられるスコアである。

ゴジラのテーマのアレンジが良い。
「ソリャ!ソイヤ!」という祭りの掛け声を挿入するなど、和の要素を味付けしているのである。
「Old Rivals」においては、ゴジラのモチーフではなくこの「ソリャ!」や「ゴ!ジ!ラ!」という掛け声自体がモチーフとして活用するなど実に巧い使い方である。

東宝ゴジラですら、歴代の作曲家たちはゴジラのテーマに大きなアレンジを加えることはなかった。必要に応じて独自のゴジラテーマを作曲して映画の世界観を構築し、ここぞという場面で伊福部テーマをそのまま使うケースが大半。
服部隆之や大島ミチルなど。


マクレアリーの挑戦は、新しい音楽を作るという気概を感じられた。

・かたや、ライバルであるギドラのテーマは、マクレアリーのオリジナル。
キングギドラのテーマといえば、もちろん伊福部昭の作曲した攻撃的なテーマが有名である。
他にも、渡辺俊幸が「モスラ」、「モスラ3」においてそれぞれ重厚でオーケストラルなテーマを提示している。

マクレアリーも非常に重厚なテーマを作曲した。


明確な輪郭のメロディーではないが、その背後に流れる般若心経が強烈なインパクトを放つ。
本願寺北米支部の僧侶のお経をレコーディングしたというから、これはホンモノである。

よくこんなことを思いついたものだと感心する。
正直言って、実際の映画では効果音でかき消されてはいるが、サントラで聴く分には実に楽しい。
逆に、このアイディアがなかったら、ただの重厚な雰囲気なスコアというだけになっていただろう。
「Rise of Gidorah」、そして聞いているだけでゴジラとギドラが死闘を繰り広げていると分かる「Old Rivals」など好スコアである。

・モスラのテーマは、男臭いゴジラ、ギドラ、後述のラドンのテーマと一線を画した、美しく女性的モチーフ。
古関裕而の「モスラの歌」のメロディーを大々的に使用している。マクレアリーなりにアレンジを利かせているのが更に良い。
重厚なスコアの中で清涼飲料水的効果のある楽曲だ。
香港で録音したという二胡や中胡が美しい。

・本作中、最も燃えるスコアは「Rodan」である。
5分にもおよぶラドンとの闘いを彩るアクションスコアであるが、久しぶりに血沸き肉躍るアクションスコアである。
バーバリックなパーカッション、重厚なブラスに、ここでも「ロ!ダン!」という掛け声(アメリカではラドンではなく、ロダンという名前だそうだ)の挿入がめちゃカッコいいのである。

余談であるが、「ラドン」に伊福部昭は2種類のテーマを与えている。
ひとつは第1作「ラドン」(1957年)のテーマで、ストラビンスキーのような激しいリズムとスリリングさを持ったマーチ風の激燃えテーマであった。


もう一つが、ゴジラシリーズにラドンが参戦して以降のトランペットによる明確なメロディーのテーマで、こちらの方が有名。
ただ、このテーマでは、2019年の本作には全く合わないため、マクレアリーはオリジナルのテーマを作曲したわけだが、これが大成功である。
現在のアクションスコアの主流というべき激しいパーカッションにシンプルで重厚なメロディーラインで、移り変わりの速い空中戦を支えた。
掛け声を使うことで、ゴジラのテーマと世界観も統一できており良い。

・芹沢博士の重要なシーンを彩る合唱曲の出来も出色である。メロディーも美しく、この辺りも伊福部昭を彷彿とさせると言えなくもない。

・このほかにも、ヒロイックでミリタリックなモナークのテーマが用意されている。


・マクレアリーは、昭和ゴジラのメロディーを現在のブロックバスター映画のサウンドトラックとしてアダプトさせていくことに注力したというが、見事に成功しているだろう。

マクレアリーは、正直今どきの騒々しいアクション映画の作曲家というイメージで、あまりサントラを聞いてこなかったが、良いセンスをしている。
今回を契機に「God Of War」を初めて聞いたが、明確な旋律を持ち、パワフルでエモーショナルな管弦楽曲で感銘を受けた。


本作のサウンドトラックは、稀に見るパワフルな怪獣映画音楽といえる。
デスプラの前作や、デビッド・アーノルドのゴジラも立派なシンフォニーであるが、伊福部昭のパワーには至らなかった。
本作が伊福部昭のパワーや土俗的なリズムに肩を並べたとは全く思わないが、本作はそこに迫る勢いを感じた。少なくとも、ヘンリー・ジャックマンの「コング」や、ラミン・ジャワディの「パシフィックリム」、そしてシンゴジラ含めても近年の怪獣映画音楽としては傑出した出来であろう。

欲を言えば、いざアクションとなると音が重厚一辺倒で、オーケストラの豊かな音色がない点であろうか。

マクレアリーの今後の活躍に期待。


・メロディー指数:7/10
・シンフォニック指数:5/10
・燃え指数:8/10
・rodonは何度聴いても燃える。
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<当ブログについて>
フルオーケストラを駆使した映画音楽を主に紹介します。
紹介文の最後に、「メロディアス指数」「シンフォニック指数」「燃え指数」を記載しています。それぞれの項目について10点満点で評価します。「燃え指数」とは、主にアクションシーンの音楽を対象に、血沸き肉躍るようなパワフルで躍動的な音楽を評価するものです。その他、作品によって適宜追加する指数があります。
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