はなだいろ

October 27 [Tue], 2009, 22:44
「はなだいろ」…というか元/ちとせが好きで、よく聴いています。歌詞に沿っているかは…うーん、ちょっとこじつけくさいとこもありますけど、そこは見なかったことに。

はなだいろと言えば、カントーではカスミが一番好きでした。

…A型って話が飛ぶらしいです。スルーしてあげてください。


書いといてなんですが、にとりんの目は青だったよな……
*

(怯えては笑ってたあの頃を こわさないでいたのなら−)



「あら」
「ひゅっ!?」

 にとりが川を下っていると、あの厄神様が河原で佇んでいた。
 今月でもう三度目だ。一度会うと癖でもつくのか。いや、そんなばかな。

 もしかして無意識に狙っているのかもしれないな。にとりは思った。
 厄神様のあのつややかな緑色の髪と澄んだ瞳は、初めて見たときから羨望の対象であったし、いくつか言葉を交わすうち、その声も好きになった。二度目、三度目と会ううちに、ちょっとした仕草に魅入るようになって……言ってしまえば、心奪われてしまったのだ。

 仲良くなりたい。その気持ちに間違いはなかった。けれど、昔から研究一辺倒でコミュニケーション不足、そのうえ人見知りで臆病なにとりは、厄神様と目を合わせて会話することもままならない。ふたりは、いまだ『初対面ではない』程度の関係にとどまっていた。

「あなた、また会ったわね」 
「は、はい…」

 厄神様は、たぶんにとりより年上で、そして大人だった。見るからに怯えているにとりを前にして、戸惑いつつも不愉快そうにしたことなど一度もない。
 だから、心臓が痛いくらいに鼓動しても、水の中で足が震えても、にとりは決して自分から立ち去ることはしなかった。厄神様が立ち去るまで、ぎこちなくそこにいた。
 
 今日もいつものように。そう思っていたが−

(ななな、なにその表情!?)

 厄神様の様子がいつもと違う。
 いままで厄神様の表情と言えば、ちょっと驚いたような表情(にとりが水中から浮上してきたときによく見られる)か、静かに見守るような表情か、あるいは無表情の三つであった、のだが。

「……」

 厄神様がにとりを見つめてくる。切ないような、苦しいような眼差しだった。勇気を出して、見つめ返してみると、厄神様はうつむいてしまった。

 なんだこれは。

「や、厄神様?」

 にとりの声に、厄神様はちょっと顔を上げた。

「…ごめんなさいね。こわいでしょう、私のこと」
「へ?」
「あなたがこの川をよく泳いでいることは知っているの。だけど、私の仕事にはこの川が必要で…。あまり会うことはないように気を使っていたのだけれど、今日もまた会ってしまって」
「あ、あの…」
「いつも気持ちよさそうに泳いでいるのに、私が邪魔をしてしまって。ほんとうに、ごめんなさい」
「厄神様!」

 にとりの大声に吃驚したのか、厄神様は話すのをやめて、にとりを見つめてくる。
 にとりは深呼吸した。発明品の試運転以上に緊張していた。

「私、どんな話をすれば良いかわからなくて、緊張しちゃうだけで…。その、こわいなんて、お、思いません! むしろ−」

 言え。言うんだ河城にとり。
 こわくなんてない、きらいなわけないって、厄神様に間違いなく伝わるように、はっきりと、自分の気持ちを−!

「厄神様のことは、大好きです!!」


 …川のせせらぎが、耳に痛かった。  


(はっきり過ぎたああああ!)


「…あの」
「ひゃあああ! だからあの、厄神様が謝ることなんてひとつもないであります! 私が好きで会いに来…ッ! す、すきっていうのは、その!」
「は、はい!?」

 にとりはがっしと厄神様の手を握った。もうやけくそだった。厄神様も混乱しているようで、払うことを忘れている。

「また、会ってください! こんどは私もなにかお話しできるように、し、しておきますから!」

 言うだけ言って、返事も聞かず、にとりは川を全速力で上っていった。疲れ果ててしまわないと、この暴走は止まらないような気がしていた。

(でも、すっきりした…。うん、これでよかった!)

 この日から、河城にとりの座右の銘は「当たって砕けろ」になったとかならなかったとか。
 



(−愛さずに 愛されずに 暮らしていたのだろう)






「『また』、ですって。変な子…」

 河原にひとり、鍵山雛は佇んでいた。流れてくる川を見つめながら、溯っていったあの子に思いを馳せる。
 ああ、厄を祓い損ねてしまった。手を握ったのだから、いつもより多く憑いてるかもしれないのに。

「『こんど』、祓えばいいかしら」

 −また、会ってください!

「…うれしい、なあ」

 声が震える。
 初めてまっすぐ見つめ合ったあの子のきれいな縹色は、私を恐れてなんかいなかった。
 
(無防備に泣いてしまう自分に出逢うなんて)




君のまなざし はなだいろ







「はなだいろ」(ハナダイロ)/元ちとせ
  • URL:https://yaplog.jp/syakkuri/archive/15
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