ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

2018年03月31日(土) 11時01分
解説:メリル・ストリープとトム・ハンクスが共演し、スティーヴン・スピルバーグがメガホンを取った社会派ドラマ。実在の人物をモデルに、都合の悪い真実をひた隠しする政府に対して一歩も引かない姿勢で挑んだジャーナリストたちの命懸けの戦いを描写する。『コンテンダー』などのサラ・ポールソンやドラマシリーズ「ベター・コール・ソウル」などのボブ・オデンカークらが出演。脚本を『スポットライト 世紀のスクープ』で第88回アカデミー賞脚本賞を受賞したジョシュ・シンガーらが担当した。 シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ:ベトナム戦争の最中だった1971年、アメリカでは反戦運動が盛り上がりを見せていた。そんな中、「The New York Times」が政府の極秘文書“ペンタゴン・ペーパーズ”の存在を暴く。ライバル紙である「The Washington Post」のキャサリン(メリル・ストリープ)と部下のベン(トム・ハンクス)らも、報道の自由を求めて立ち上がり……。

おーこれすっかり忘れてみてましたがスピルバーグ監督作品でした。
さすがのうまさですね。
史実なのにわかりやすく簡潔です。

もう少し私がこの頃のアメリカの歴史に詳しかったらもっと楽しめたに
違いないですが
それでも実にわかりやすく描いてました。

この作品でオスカー常連のメリル・ストリープが主演女優賞にノミネートされています。
彼女の抑え気味の演技はオスカーはなかったと思いますね。
でもとにかく今回は、彼女の服も素敵なの。
年齢的に体型が気になるところではあるのに体型をカバーし
心情や状況にあわせて服が選ばれていて
ラスト、新聞社ではきりっとシャツにタイトスカート、
セレブリティのときは真っ白いドレス。
体型がわかりにくいのにしゃきっとしてるセンスにスタイリストさんが知りたいーと思いました。

夫の事業を引き継ぎ
夫が健在であれば今もセレブリティな奥様でいたに違いなかった彼女が
作品の中で自分を問いながら
社会を問いながら政治を問いながら成長していくのが
私は作品としてのメインと考えています。

しかしこのストーリーは
あらすじのとおりベトナム戦争は負けると知りながら
若者を派遣し続けていたんだよ、ということを
良心の呵責に耐えかねた人間が起こした
マスコミを巻き込んだクーデター。

それをどのように彼女の人生と重ね
マスコミとは?言論の自由とは?政治って何?誰のもの?そんな大きなテーマを背負っています。

これ作られた日にちからすると
トランプ政権になってからなのでしょうかね?
彼も特定のマスコミを排除もしますし
また主演のメリル・ストリープを馬鹿にしていた発言もありました。

スピルバーグが現在の政権に
マスコミにメッセージを送っているような気さえします。
国民の心を動かせるのはマスコミしかない、
そして映画もその1つだと。

史実ですが映画らしく骨太に地味ながら完成度の高い作品になっているのは
さすがのスピルバーグ。
そしてメリル・ストリープの演技も一役買っています。

ラストはライバル社であったニューヨークタイムズ他
各新聞社が結託して
最高機密文書について報じたときの胸のすく思い。
最高裁で勝つ瞬間、
ラストのウォータゲイト事件への引き続きを感じさせる終わり。

どこで泣くのかという感じですが
私は新聞各社がすべてこの事件について一斉に発信した時に
メリル・ストリープとトムハンクスが一緒に各社の記事を見る時に
涙が出ました。

スピルバーグ、うまい。すごい。

悪は1度も画面に登場しないニクソン。
声とシルエットだけですが他は
ケイともめる弁護士たちも最後は彼女を味方し(というか世論で勝てると思ったからでしょうが)
映画らしいでも史実ということに
世の中捨てたもんじゃないと思いながらも席を立ちました。

国民の未来ある若者の命を軽んじていた国で
良心の呵責に耐えかね
善を善と整然と語れる環境、民主主義とは?
そんなことを思いました。

★★★★☆(4.5)

ナチュラルウーマン

2018年03月16日(金) 10時53分
解説:『グロリアの青春』などのセバスティアン・レリオが監督と脚本を担当した人間ドラマ。最愛の恋人をなくし、いわれのない偏見や差別にさらされながらも誇り高く生きるトランスジェンダーの主人公を映す。主演を務めるのは、自身もトランスジェンダーのシンガーであるダニエラ・ベガ。フランシスコ・レジェス、ルイス・ニェッコらが共演している。 シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ:ナイトクラブで歌っているトランスジェンダーのシンガー、マリーナ(ダニエラ・ベガ)は、チリの首都サンティアゴで年齢差のある恋人オルランドと同居していた。マリーナの誕生日を祝った晩、家に戻ると急にオルランドの意識が遠のき、そのまま他界する。彼が亡くなったことでマリーナは予想外のトラブルに見舞われ……。 シネマトゥデイ (外部リンク)

今年度アカデミー賞外国語作品賞の作品です。
予告を観てもあまりそそられなかったのですが
アカデミー賞の外国語作品賞は作品賞よりも良かったりするので鑑賞しました。

LGBTの実際の俳優さんを使っての渾身の作品でもあります。
外国語作品賞もなんだか
政治っぽくなっちゃってるのかなあ。
今回、主演女優賞に輝いたフランシスマクドーマンドの
スピーチがオスカーのとき話題になりましたが
これもそんな流れなのかなあ。
確かにフランシスマクドーマンも良かったけど
サリー・ホーキンスのほうが演技としては良かった気もして
今年度はやはり「強い女」なんでしょうね。セクハラでハリウッドも問題になってたし。
そこでLGBTの差別に恋人の死後に苦しむマリーナは
オスカーほどでもない気がしました。

作品自体はオスカーという目で見なければ悪くないです。
やはりLGBTの差別や偏見も今でこそ日本も寛容ですが
以前はひっそりと生活していたのかもしれませんし
肌の色は気にならなくともLGBTは嫌だな、という人もいます。
日本人が有色人種というのもあるけれどね。

この作品では
LGBTの俳優さんを使ってます。
上半身、裸になるシーンが何度かあるのですが
よく了承したなあ、と思います。
この映画にかけるこの俳優さんの意気込みが伝わってきます。

恋人の突然死は不幸ですが
その恋人があまりにも無責任すぎて勝手に死んでしまって、とそんな気になります。
ちょいちょい幻想で出てきたりするけど
彼は火葬されてしまい作品の中ではすぐになくなっています。

LGBTを恋人に持っていた元妻、息子などが
マリーナに嫌がらせをしたり暴言を吐いたり
こんなに世の中ひどいのかと悲しくなりました。
実際に自分の夫がそうだったらやはりショックなのかもしれないです。
せめて若い女であってほしかったな、と思っちゃうかな。
そんな映画はわりとありますよね。

ただこの作品は元妻の視点ではなく
LGBTとして生きていく一人の人間についての物語。

作品の途中でイライラしてしまいますが

力強く生きていこう、と決めるマリーナに
なんとなく元気がもらえます。

LGBTの置かれてる立場を知るには非常に良い作品だったと思います。


★★★☆☆(3.5)

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス

2018年03月14日(水) 20時12分
解説:美しい風景や動物たちを描いた素朴な作風で知られるカナダの画家モード・ルイスの伝記ドラマ。絵と自由を愛したモードの人生を、彼女を支え続けた夫との関係を軸に描き出す。モードを『ハッピー・ゴー・ラッキー』などのサリー・ホーキンス、夫を『6才のボクが、大人になるまで。』などのイーサン・ホークが演じる。ドラマ「刑事ヴァランダー2 白夜の戦慄」などのアシュリング・ウォルシュがメガホンを取った。
シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ:カナダ東部の田舎町で叔母と暮らし、絵を描くことが生きがいのモード(サリー・ホーキンス)は、魚の行商をしているエベレット(イーサン・ホーク)の家で住み込みの家政婦として働き始める。幼少期にリウマチを患い身内に冷たくされてきたモードと、養護施設で育ったエベレットは互いを認め合い、やがて夫婦になる。ある日、モードの絵の才能を見いだす女性が現われ……。 シネマトゥデイ (外部リンク)

サリー・ホーキンス目当てで行ってきましたが
本当に素晴らしい作品でした。

あらすじのとおりなのですが
サリー・ホーキンスはシェイプ・オブ・ウォーターよりもしかしたら良かったかもしれません。
リウマチの小柄なモードそのものだったように思います。

実はこのモードの画家としての作品は
この映画で初めて知り
ネットで見て知ったという程度。

しかし彼女の不遇から
彼女が独立し家政婦として雇われ
口が悪く
同じように人から相手にされずに生きてきた夫となるエベレット。

当初は体が悪く家政婦としても女性としても
何の魅力もなかったモードに
少しずつ二人は心を通わせていきます。

当時は雇用者であったため
えばりちらしていて常に上から。
本当に嫌な奴と思ってましたが
最終的には彼女と夫婦になってお互い喧嘩しながらも
ないものを補い合いながら慎ましく懸命に生きてる姿がほほえましくも思えてきます。

モードがひょんなことから
NYに住む女性がリゾートに遊びに来て
彼女の絵画を気に入り
どんどんと有名になっていきます。

ずっと不幸な人生でしたが
やっと彼女の大好きな絵が認められるようになり
そして今まで使用人と雇用人との関係が夫婦となってから
一切の家事をエベレットがするようになり
不器用な彼なりに愛するモードのために努力する姿にも
またほっとします。

このままずっと慎ましくひっそりとした
でも二人が幸せで
名が売れても贅沢をしない二人がとても好感が持てます。

モードを有名にしたNYの女性がある日
モードへの問いへのモードの答え。

「私は多くを望まないの」ということを話すシーンがあり
大人になりそれなりの欲が出てしまう
自分を恥じてしまったりして。

作品の中での悪者は
モードをいじめてきた周囲の人間だったり、
親戚(兄、叔母)だったりするわけですが
1つ1つの小さな出来事を
小さな歩みのモードが自分なりに解決していく姿。
自分の子どもが障害者だと告げられ
勝手に金持ちの家に売られたとき
夫がこっそりのその子供を探してきてあげたり
ああお金がなくても(才能にあふれていて儲けようとすれば儲けられただろうに)
愛だけあればと生きていく姿に優しいほんわりとした涙が出てきました。

私はとても好きな作品です。


★★★★★

シェイプ・オブ・ウォーター

2018年03月09日(金) 16時19分
解説:『パンズ・ラビリンス』などのギレルモ・デル・トロ監督が異種間の愛を描き、第74回ベネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いたファンタジー。米ソ冷戦下のアメリカを舞台に、声を出せない女性が不思議な生き物と心を通わせる。『ハッピー・ゴー・ラッキー』などのサリー・ホーキンスが主演し、『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』などのオクタヴィア・スペンサー、『扉をたたく人』などのリチャード・ジェンキンス、『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』などのマイケル・シャノンらが共演。 シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ:1962年、米ソ冷戦時代のアメリカで、政府の極秘研究所の清掃員として働く孤独なイライザ(サリー・ホーキンス)は、同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)と共に秘密の実験を目撃する。アマゾンで崇められていたという、人間ではない“彼”の特異な姿に心惹(ひ)かれた彼女は、こっそり“彼”に会いにいくようになる。ところが“彼”は、もうすぐ実験の犠牲になることが決まっており……。

オスカーの前から予告編でも見たいと思っていた作品でした。
やはりとりましたがオスカーというほどでもない気がしました。
でもこれをオスカーにするということは
現在のアメリカ政治をギレルモが批判しているんだなあと。
セクハラだったり権力だったりそんなことを
現代におきかえた作品にしたら直球すぎるし
ギルレモが普通の恋愛映画を描くのもなんだか違う気がする。
この時代設定と「彼」。

この時代設定はギレルモワールド、彼の世界観と
センスの良さ、カメラワーク、1つ1つの所作、色合い、音楽。
すべてがギルレモワールドで手慣れた感じもありますが
この作品では私はこのあたりが一番良かったと思っています。

内容としては
昨年の「ムーンライト」よりは全然良いです。
今回、オスカーを獲るかと思っていたヒロイン役のサリー・ホーキンス。

最初から腕が鍛えられてるな〜と思ったんですが
彼女、かなりこの作品で脱ぎますから
年齢的にはやはり鍛えなくちゃスクリーンには出れないですからね。

彼女の「静」の抑えた演技も良かった。
でもやっぱりマイケル・シャノンの怪演に食われてる感があります。
ロマンティックな異生物との恋愛と思いきや
指をとられたマイケル・シャノンの接合した指がどんどん腐っていったり
セクハラ発言、パワハラ発言もなんとやら。
ほんとに彼の存在感で
作品が単なる恋愛ものではなくなるわけです。
出てくるたびにはらはらドキドキしてしまう。

そしてリチャード・ジェンキンスもとっても良かった。
とにかく主要の出演者がすべてよく
これにサリー・ホーキンスが食われちゃったのかな。

川のほとりで捨てられていたイライザ。
首を何かに掻き切られ言葉を失ったイライザ。
そんな彼女はラストは異生物と川に還り
ラストを迎えます。

あらすじとしてはどうということはないのかもしれませんが
ギレルモの世界観、すばらしい俳優陣、そして政治批判の比喩に
オスカーが輝いたというところでしょうか。

オスカーとなると大きすぎるけど
個人的には好きな作品でした。


★★★★☆

15時17分、パリ行き

2018年03月02日(金) 13時05分
解説:クリント・イーストウッド監督が、2015年8月に高速鉄道で起きた無差別テロ事件を映画化。列車に乗り合わせていた3人のアメリカ人青年がテロリストに立ち向かう姿を描く。事件の当事者であるアンソニー・サドラー、アレク・スカラトス、スペンサー・ストーンを主演俳優に起用し、当時列車に居合わせた乗客も出演。撮影も実際に事件が起きた場所で行われた。シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ:2015年8月21日、554人の客が乗るアムステルダム発パリ行きの高速鉄道タリスに、武装したイスラム過激派の男が乗り込み無差別テロを企てる。乗客たちが恐怖に凍り付く中、旅行中で偶然乗り合わせていたアメリカ空軍兵スペンサー・ストーンとオレゴン州兵アレク・スカラトス、二人の友人の大学生アンソニー・サドラーが犯人に立ち向かう。 シネマトゥデイ (外部リンク)

観たことのない俳優たちばかりだと思っていたら
このテロで実際にいた青年3人が俳優として登場していたんですね。
イーストウッド、すごい。
素人でしかも彼らは軍人なのに演技もわざとらしくなく自然でした。
屈強な体もまさにアーミーといったところでしょうか。

この作品はどちらかというと
テロ当日の列車での出来事ではなく(出来事はラスト30分程度)
何の日の目を見ず
小学生のときは問題児として扱われ
軍へ入れば能力が足らずに希望の部署へはいけない
さえない日々を送っていた3名のごくごく普通にいる軍に属している
若者の話。

幼いころからこの事件までの経緯を
彼らの青春とともに綴っているといったところでしょうか。

テロ自体はあっという間に終わってしまう一瞬の出来事なのですが
もしも精神的にも肉体的にも優れている若者が
この列車に乗っていなかったらどうなっていたのか。
大惨事は免れることはできなかったでしょう。
ではこの精神的にも肉体的にも優れた若者は
どんな生い立ちだったのか?

そこにイーストウッドがスポットを当てます。
さらにここで本人たちが主演なんて発想がすごすぎる。

シラク元大統領もすごく似ていたのですが本物なのかな??

作品としてはイーストウッドの手慣れた感じで
飽きることなく
ヨーロッパ旅行に行きたくなる前半。
そして後半に彼らの鬼気迫る本気と称賛で終了。

これからのこの3人の若者の人生を楽しみに・・。


★★★☆☆(3.5)