『そんな彼女』

February 14 [Tue], 2006, 17:51
濱原 恭子
会社員

家路につくなり持っていた鞄をソファーへと投げつけた。

彼女は結構後先を考えていない。
後で中の手鏡が割れていることに気付くことになるが、
今はどうやらそんなことはどうでもいいようだった。

「なんなのよ!まったくもって使えないわ!」
ソファーの前のテーブルに忍んでいた猫が、驚き払った様子でどこかに逃げ込んだようだ。
飼っている猫はラザニアン。
名前はチビ。
彼女は名前などあまり気にしない人間らしい。
もしくはネーミングセンスがないのかもしれない。

「あ〜もう、ムカつくわ!結局私が全て一人でやったんじゃないのよ!ほんっとに使えない部下だこと!」
彼女はものすごく部下というものに怒りを持っているらしい。
それはもう近所迷惑な程の一人言なわけだから。

しかし彼女のマンションは大きい。
これだけの一人言でもおそらく外部には蚊の鳴く声であろう。

「はぁ…、若きOL時代が懐かしいわ。
あの頃はニコニコしていたらよかったんだもんねぇ。
偉くなっちゃったもんだ…」
彼女は今では会社のプロジェクトの班長を担っている。
そこそこの地位は持っているといっていい。

そんな彼女でも、新入社員の時はチヤホヤされていた。
彼女が美人だったこともその要因にはあっただろう。

だが今ではもうチヤホヤなんて言葉もなくなり、彼女の周りからもそれはなくなっていた。

時が経つにつれ、彼女は何かを得て何かを失った。
それは当たり前のことなのだけど。

「私が、頑張ればいいんだよね…」
彼女は努力家だった。一人で全て背負う癖があった。

人を信じていないわけではない。
信じれる人が現れていないというだけなのだ。

誰かに愚痴を言おうかとケータイを取り出したが、それはさすがに迷惑だろうと止めておいた。

鞄と同じように、自分の体も勢い良くソファーに投げ出す。
深呼吸をしてみる。
少し気持ちも落ち着き、テレビをつけてみた。

知らない歌手がテンポの早い歌を歌っている。
若者数人のグループのようだ。
若いころも良いものだと思う。
でも、彼女は今も好きだと思えている。

本人は気付いてないのかも知れないけれど。

ラザニアンのチビが、カーテンを揺らしながらニャアと鳴くのが聞こえた。
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