「春の雪」心に雪は積もらない

2005年10月31日(月) 1時00分
「春の雪」★★★☆
妻夫木聡、竹内結子 主演

仰向けに小船に寝そべる
主人公の恍惚にも似た
表情が画面を横切る

そして幼なじみの聡子が
あでやかな着物で登場、
彼女の顔を今度は下から
ゆっくりとカメラは横切っていく。


どのシーンもひとつの絵のように完結している。

同じ景色の輝く光に包まれた夏の日、
やがて同じ窓から、雪の降る光景が見える。

小説に書いてしまえば
一瞬のことも
視覚で表現するのは
難しいことと実感する。


主人公、清顕は
己の美意識から
自分の心のうちをうまく伝えられず
それが悲劇的な結末を導いてしまう。

こんなに有名な作家の作品を映像化するのは
困難な作業と思うが
作品世界は見事に映されていたと感じた。

しかしそれぞれのシーンを、あまりに
文章から想像した視覚的な展開にこだわるあまり
大事な「人の心」の描写が希薄になったのが
残念だ。


一枚の絵に収まった主人公たちは
動き、言葉を発していても
それが、見ているこちらには届かない、
それは完璧な一枚の絵にしか見えないから。


ただ、小説世界も
本心をありのままに伝えるのが不作法な時代に、
美意識にがんじがらめにされた
主人公の心の内はやはり、
何かに囚われていたのだとすると、
この映画は小説世界を
描ききったといえるかもしれないが
映画的な伝える何かを、
その一番大切な「何か」を
唯一描けていないのかもしれない。


美しい映画、主役も輝くほど美しい。
でも足らない、そこには伝える何かが決定的に欠落している。
残念。

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「残念」とまで書いているが、評価は★3つ半なので上々。
期待しすぎなので、見ても損ナシ。

絶賛した「蝉しぐれ」が出来が良すぎたので、肩透かしを
食ってしまったが、よく出来た作品だった。
ただ「蝉しぐれ」が、同じように美しい景色を描きながらも
ちゃんと絵の中から主人公の「心の声」が聞こえていたところが
決定的に違っている。

でもこの調子で、このレベルの作品を作り続けてほしい。
そのうちに唸るほどいい作品にめぐり合えそうだ。

「単騎、千里を走る。」高倉健さん、走る走る。

2005年10月30日(日) 9時05分
「単騎、千里を走る。」★★★☆
高倉健主演、チャン・イーモウ監督作品
2006年1月公開予定、東京国際映画祭にて

10年来、音信の途絶えた
息子がガンで入院したと聞き、
逢いに行くが、病室の前で
拒絶されてしまう。

息子の妻から
渡されたビデオで息子の仕事ぶりを
初めて知り、また中国で
遣り残している仕事があることも知った。

ではその遣り残した息子の仕事を
自分がやろうと、彼は中国行きを決意する。

荒波に向かって身じろぎもせずに
立つ主人公の姿に何かが重なる。

意思の疎通の難しい場所で苦労し、
日本とは違う風習に戸惑いながらも、
この撮影が出来たら
自分は息子に近づけるのではないかというよに、
周囲を巻き込んでいく。

中国の奥地で撮影された風景は
息を呑むという言葉通りの絶景で
その中を小さな点のようになって
主人公は走る。

言葉が分かり合えても
意思を通わすことは難しい。

日本から遠く離れた地にいながらも、
息子が何を感じ、何を考えていたかが
やっと分かったような気持ちになれたのは
皮肉なものだ。

でもきっと、そんなものなのだ。

近くにいても、言葉にしなければ分かり合えない、
分かり合えたと思えても、
100%同じ思い思いというありえない。

それでも人間は、せっかくめぐり合えた人と、
なんとかはかない望みを持ちながら
言葉を発するのだ。

村で知り合った少年が
主人公からもらった笛を吹くことで
伝えたい何かを伝えることができたのだから、
言葉や文字には希望がある。

きっと耳を澄ませば、彼の吹く笛の音が
雑踏のすきまでも風に乗って聞こえるだろう。

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このい映画、中国映画なのだが「邦画」カテゴリーとした。

「愛シテ、イマス1941」フィリピン映画、東京国際映画祭上映

2005年10月29日(土) 0時35分
「愛シテ、イマス1941」★★★
フィリピン・アカデミー受賞作

東京国際映画祭、
「アジアの風」部門での
上映作品。

インドネシアが
日米開戦の中、
日本に支配されていた時代、
自国は自分たちで守るという
ゲリラ戦が盛んに行われた。

日本人の将校に
気に入られた女性は
実は男性で、彼は住民に
頼まれてスパイとして
将校と付き合うことを承諾した、
何より子供のころから好きだった
幼なじみに頼まれたからだ。

どう見ても男なのを
ファンタジーとして見るのだが、
やはりそこは戦争という時代背景で
殺しあうシーンもあり、
中途半端は否めない。

ただかつて第二次大戦中の
日本軍が他国からどのように思われていたのか
知ることもでき、ちょっと
胸が痛かった。

今更ながら日本はこういうことを
ちゃんと償っているのか気になった。
作品の出来よりも、作品が伝えた真実が
胸に響いた。

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「私の頭の中の消しゴム」ソン・イェジンの存在で成立する映画

2005年10月28日(金) 18時22分
「私の頭の中の消しゴム」★★★★
ソン・イェジン、チョン・ウソン 主演

すべての音を消して
彼女のこわれそうな
笑顔を見ていたい。

光に溢れ
何も恐れず、疑いもせず
輝く笑顔を繰り返し、繰り返し。

傷ついた心を抱えながらも
お互い無垢のような心で
相手を受け入れる二人。

魂の出会いがあるとしたら、
この映画でその稀有な場面を見てしまったのかも。

劇的なことが次々起こるような映画じゃなく、
ラスト30分までは、何気ない日常を描く、
仕事やお互いの過去や
幸せな気持ちや誰もが感じることが積み重ねられていく。

でもそれはやはりとても大切なこと。
誰かと向き合うこと、
そして自分の立つ現在の環境
すべては計画なんてなく、訪れるもの。

役者の持つ資質を熟知して
うまく作り上げた物語を
一本の映画として普通に楽しみたい、
韓流ブームとかでなく
ここにはスターの輝きを持つ二人の役者がいる。

大切なことは忘れない?
仕事上ワリと多くの人と出会うが
見事に名前を忘れてしまう。
それは自分にとってそのくらいの関係だったのか?

答えはこの映画の中にもある。
大切なことは忘れない。
それはきっと形を変え、
自分の心を豊かにしてくれているのだから。

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「スクラップ・ヘブン」にオダギリジョーが飛んだ

2005年10月28日(金) 0時26分
「スクラップ・ヘブン」★★★
加瀬亮、オダギリジョー、栗山千明主演

バスジャックに偶然
居合わせた
男2人と女1人。

「腐った世界を潰す」

加瀬亮が演ずる警察官が
オダギリジョー演ずる
清掃会社で働く男に
巻き込まれていく。

「初めから計画していたのか、オレが警官だから」

それは分からない。

「世界を一瞬で消す方法が分かったよ」

これもよく分からない。

ただもし、この手の中に
ほんの少量で大きな爆発を起こすものが
あったら・・・、
もしくは、多くの人の命を左右するものが
あったなら、
人はあるイミ、開放される。

自分がもっと大きな神のような存在に感じられそうだから。

オダギリジョーはこの映画の中でも
オダギリジョーであり続け、
とらえどころのない人間を嬉々として演じている。

「オレ、今なら飛べそうな気がする」

一方、加瀬亮の方は、
心情を吐露する場面で泣きすぎで
ちょっとこの映画の乾いた感じにそぐわない。

変わった映画でストーリーを追っていく見方だと
ツライ。
どこかに少し「切なさ」が欲しかった。

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栗山千明は義眼という設定なので
あの大きく美しい瞳をサングラスで隠している、
彼女はあの後、どこへ行ったんだろう。

「春の雪」を横尾忠則語る

2005年10月27日(木) 20時25分
本日付けの朝日新聞で
横尾忠則が「春の雪」を見た
感想を寄せている。

豊饒の海4部作、
「春の雪」「奔馬 」
「暁の寺」「天人五衰」の
最初の作品。

妻夫木聡、竹内結子主演
行定勲 監督作品



映像に主眼を置いてみた見た場合、
この映画は、美しいカメラワークで
三島文学のエッセンスである
「死とエロティシズム、耽美世界」に
どこまで迫ったか
自分の目で確かめてもらいたいと書く。

こういった新聞などに書く場合は
その影響を考慮して
あまり悪いことは書かないとは思うが、
TVでは美輪明宏も、この映画の
映像を褒めていたことを考えると
出来は期待できそうだ。

評価された原作、そして用意された舞台、
役者と揃っていても邦画には
裏切られることが多いので
過分な期待なしにそれでも楽しみにして劇場に行きたい。

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蝉しぐれ」に続いて、今年の収穫となるか
公開はこの週末。

ラオスータイを結ぶ鉄道

2005年10月27日(木) 8時20分
メコン川に架かる
タイ・ラオス友好橋は
川を渡って隣国に入国できる
ちょっと変わった体験ができる
橋だ。

その友好橋まで伸びている
線路を、ラオスの首都
ビエンチャンまでつなぐ鉄道の
建設が始まろうとしている。

以前この橋を渡ってタイ側から
バスで入国し、
そこからタクシーに乗り換えて
ビエンチャンに滞在した。

その同じ道を鉄道で行けるなら
また是非行ってみたい。

ノーンカーイの川べりから
向こうのラオス側を見ると
ポツポツと暖かい光が見える、
そのわずかな瞬きは
タイとの圧倒的な経済格差であり
それとは別の安らぎも
知らせてくれた。

物資が鉄道で渡ることで
この国にももっと光があたるのかもしれない。

これはもともと
シンガポール→クアラルンプール→バンコク
→プノンペン→ホーチミン→ハノイ→昆明
という各地を一本の線で結ぶSKRL構想での
会合のときに発表された。

この鉄道も完成したら、一度は乗って
各地をゆっくり旅したい。

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ラオスの首都ビエンチャンは、
道路が整備されているが、交通量は
まだ少ない、のんびりとした旅が楽しめる。

露天のお茶をよく飲みました。

「ARAHAN」期待のリュ・スンボムを見よ!

2005年10月26日(水) 7時20分
「ARAHAN/アラハン」★★★☆
リュ・スンボム、ユン・ソイ、アン・ソンギ主演
韓国映画、2004年

リュ・スンボムは、
今年5月にソウルへ
行った際に見た
拳が泣く」←
での、チェ・ミンシクとの競演と
心に響く迫真の演技が
鮮やかな印象で、チェックしていた役者

冴えない警官が
カンフー・マスターに出会い
亜羅漢という最高の聖者への
道を見出すストーリー。

コミカルでありながら
押さえどころのアクションシーンは見事。
アン・ソンギの出演も映画の雰囲気を
軽めになりがちなところをうまく抑えている。

渾身の力作というわけではないが
なにより勢いがあり、
エンターテインメントに徹した作りは
安っぽくもなく。劇場向き。

若いという、揺らぐ信念が
修行によって、そして戦うことで
いつしか何もかもを飲み込んだ
聖者というより、行き方を見つけた強さを
垣間見せてくれる。

これからもチェックしたい役者を見つけた。

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★リュ・スンボムはブームの韓流スターからは
外れているが、これから注目の役者。
とにかく「拳が泣く」の公開を待ちたい。

「ビューティフルボーイ」生きることは闘いだ

2005年10月25日(火) 7時55分
「ビューティフルボーイ」★★★☆
タイ映画、2003年

オカマのボクサーとして
日本でも話題になった
実在のムエタイボクサーの
リングの闘いそして
性同一性障害との闘いの物語。

訪タイは20回くらいで、行けば必ず
タイの映画を見ています。
この映画は予告だけ劇場で見てから2年あまり
やっと機会があり見ることが出来た。

報道で知る彼女(彼)は
浅黒い肌に目立ちすぎる化粧の
「美」というより扮装した姿を連想した。

そういう先入観があったが
映画は全く違うものだった。
人がどう思おうとやはり個人個人の
心の中はなかなか理解できないもの。
映画もそんな感じで
彼の心の中を深く描いていく。

戦いに勝つことで家族を養い、
とうとう最高峰のルンピニで戦う頃には
彼は勝つことで自分の心の迷いとも
戦いそして自分なりの答えを見つけていく。

映画は多くのセリフが英語で
製作時から海外での公開を意識した作りと
なっている、完成度は高い。

違和感のある化粧にも見慣れた頃
彼の顔が泣いているピエロの様にも
見えた。
でも悲しい感じはなかった、
気高く美しいと感じた。

★タイでは映画上映前にタイの国歌が流れ
国王がどこへ行かれたか等の「皇室アルバム」のような
映像が流れる、観客はその間、席から立ち上がり礼を尽くす。
ちょっとしたことも、海外にいるのだなと感じる瞬間

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「長恨歌」色と情念が匂い立つ絢爛

2005年10月24日(月) 0時30分
「長恨歌」★★★★
サミー・チェン、レオン・カーファイ主演
スタンリー・クワン監督作品、香港
東京国際映画祭で上映

上映後のティーチインで
監督は10年前なら
作れなかった映画だと
答えた。

文化大革命のシーンの一部が
中国の検閲でカットされたが
作品全体には影響は無いと。

すごく重い言葉だ。

享楽の上海を体験し、
匂い立つような美しさを
放ちながらも
ただひとつの愛を求めた主人公。

そして彼女の美を見出しながら
彼女の心を捕らえることが出来なかった
カメラマンの心の痛み。

人は老いるものだ。
そして美はもっと残酷に時を告げる。

ラストにそれでも街は変わらず
また活気溢れる人たちが行きかうと
告げているが、
それでも人は自分の生を
精一杯生きていくのだ。

彼女は幸せだったのか。
それは見る人に委ねられる。

ただ彼女は間違いなく、自ら選んで
生きていた。
けっして振り返らずに。
美しさは消えてしまうものだとしても
どう生きたかその道程は消えない。
気高く美しいことに変わりはない。

非常に完成度が高く、
美意識に貫かれた秀作。

見終わるとある意味、脱力する。
リラックスして見ることなんか許さないえいがなのだ。

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★主演のサミー・チェンと監督も来場した
映画祭、画面では迫力さえ感じたのに
ちっちゃくて可愛いサミーをずっと見てました。
入り口近くなので出入り時には手が届きそうでした。
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