『富士山』尖って無いゾ、ランディ印の短編集

2006年06月06日(火) 22時18分
「富士山」★★★
田口ランディ著、277ページ

全てが富士山をキーワードにした短編。
この作家のエツセイは興味深いテーマが多く、
よく読んでいるが何故だか小説は苦手だ。

たぶん登場人物の殆どがすでに出来上がっていて、
そこに自分の考えを重ねることが出来ないからだ。


それだけ書き込まれ、完成されているということも言えるが、
本読みの楽しさは、わずかに残された空間で
遊ぶことにもあると考えているので、
その点で何だか息苦しいような感じを受けてしまう。


「樹海」は子供たちの‘スタンド・バイ・ミー’もどきの短編。
子供の心理描写がすんなり入ってこないのは、
ここに書かれているのは大人の考える子供がいる
ということが常に頭のどこかにあるからか。


「ジャミラ」ゴミ屋敷の老女と役場の青年が主人公。
文章のあちこちに時々「富士山」が現れるが、
象徴としての「富士山」のイミがいまひとつ伝わらず、
読後感も強引さが印象に残る。


「ひかりの子」富士山に登る女性たちを描いて、
この連作短編のうちのラストを飾る作品。
他の作品と一線を画するような飛びぬけた傑作。
書かないことが、書きすぎないことが
登場人物の気持ちを雄弁に語る、
象徴としてでなく目の前の壁のように立ちはだかる富士山を
全身で感じながら、
それでも何故か人は癒されるのだと語る。


★新幹線で富士山を見ることが出来ると、
なんか得した気分になる。夜や天気の悪いとき、
目には見えない暗闇の中の富士山を見つめる。

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