このせつSS『桜色の約束』5

March 18 [Wed], 2015, 0:04
このせつSS『桜色の約束』4の続きです。



***

「不安にさせて、ごめんな」

 考えてみれば、昨夜の刹那はどこか余裕がなかったように思えた。ワインだってそんなに得意じゃなかったはずなのに二杯も飲んでいたし、情事のときは意識が何度も飛ぶくらいに激しく責められたし、極め付きは指輪だ。こんなあからさまな独占欲を示されて、ようやく木乃香は刹那の不安に気がつけたのだ。

「私は貴女のパートナーです」
「うん」
「辛いこととか苦しいこと、不安なこと…そういうのを私にも分けてください。一人で抱え込まないでください」

 祈るように刹那に額を合わせられて、木乃香はようやく決心を固めることができた。

「ウチ…来年メルディアナ魔法学校に留学する」

 刹那に再び手を握られて励まされながら、木乃香はどうにか言葉を紡ぐ。

「永久石化についてウチが麻帆良大学で調べとること、せっちゃんは知っとるよね。色々仮説は立てとるんやけど、ここでやれることには限度がある。麻帆良大学の単位はあと一年でほぼ取れることが確実やから、その後休学してあっちに行こうと思うてん」
「あちらには石化したネギ先生の故郷の方たちがいますからね」
「うん…。それにネギくんが卒業しただけあって、あっちは魔法に特化した講義や実技科目がたくさんあってな、ウチ自身の魔法を強化するためにも必要なことやって考えて…それで」
「学園長に相談されたのですね」
「うん。メルディアナ魔法学校の校長はおじいちゃんの友人やから、相談したらすぐにええお返事もろうたよ」

 眉を下げて木乃香は笑う。長年一緒にいる刹那には、その笑顔の裏にある憂いまでも全て手に取るように分かった。

「麻帆良大学は卒業したいから留学いうても四年が限度やね。それでもウチの仮説を立証できへんかったら、こっちに戻って大学を卒業した後、今度は魔法世界も渡り歩いて研究を続けるつもりや」
「その未来のお嬢様の隣に私はいますか」
「……」

 木乃香はそっと視線を上げて刹那を見詰める。刹那は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
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