企画SS《104-2》

October 24 [Mon], 2011, 7:32
企画SS《104-1》の続きです。



***
鈍い音が部屋内に響いた。

「…っ、お怪我はございませんか?」
「うん、せっちゃんは?ホンマに平気なん?」

至近距離で刹那の顔や体をペタペタと触りながら木乃香が言う。刹那は苦笑いをしつつも頬に触れていた木乃香の手を取り指先をハクッと口に含んだ。

「…へ?」
「あ…」

二人の間に微妙な空気が流れる。意外にも先に照れたのは木乃香の方だった。

「きゅ、急に何するんっ?」
「そこにお嬢様の指があったので、つい……って何を言っているんだ、私は!変態か!?変態なのか!?申し訳ございません!お嬢様から美味しそうな匂いがしたので…」
「美味しそうな匂い…?もしかして、これのこと?」

木乃香は風呂敷に入っていたお弁当箱を取り出すとその下段、おにぎりの入った所を開けて見せた。

「さっきまで詰めてたんよ。ちゃんと手洗ったんやけどな…何や、せっちゃんお腹空いとるん?」

木乃香の問いかけに、刹那は朝食を抜いたことを思い出して「そうかもしれません」と小さく言った。

「ほかほか」

刹那の答えに満足そうに笑った木乃香は、小さな俵型のおにぎりを一つ手に取るとそれを刹那の前に差し出す。

「はい」
「え…」
「食べひんの?」
「よろしいのですか?」
「ちょっと作りすぎてしまったんよ。やから、良かったら食べて?」

刹那は眼前にあるおにぎりを見つめて、ごくりと喉を鳴らす。

「い、いただきます」

おにぎりを口に含むと程良い塩梅で味が調えられていて、刹那は頬を綻ばせる。

「美味しいです」
「ほか、それはよかった…ん、やけどな…」

歯切れの悪い木乃香に刹那が視線を向けると頬を赤らめて下を向いてしまった。

「お嬢様?」
「もしかして…気づいてへんの?」
「え…」
「それ…………ウチの手」
「っ!?」
「もう、食いしん坊さんやな」

木乃香に手ずから食べさせてもらっていた事実に刹那もようやく気が付いて真っ赤になる。

「申し訳ございません!」
「ううん」

そう言って照れ笑いをした木乃香は、自身の手に残っていたご飯粒をパクッと食べた。

「ん、おいし」








***

「寒くないですか?」
「平気やよ」

遅刻ギリギリの時刻。
刹那と木乃香は学園に向かう電車をホームで待っていた。

ホームには二人以外にも沢山の麻帆良学園生徒が溢れていて、この生徒全員が次の電車に乗るのかと思うと、刹那はうんざりしたのと同時に申し訳なく思う。
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