デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー384 旬を育てる勇気

September 01 [Sun], 2019, 10:08
「ふっ。」
 皮肉に笑う旬はスミスがこの機会にオスカーをレスリング同好会会員に引きづり込もうと
 考えているなと読み取った。前に見た連中は全員弱そうな奴らばかりだった。
  実際弱いのがスミスの悩み。鍛えればオスカーのほうがまだ伸びそうと思える程度の会員だから、
 スミスは選手が増える期待で小躍りしたい気分を隠して言う。
「ではオスカー君の筋肉トレーニングは私に任せなさい。
 今日は解散。私は明日の講義の準備をする。楽しかったな。おやすみタイチ!
 帰るぞオスカー君。いつまでもお邪魔をするな。」
 巻き散らかしたクラッカーのテープを少しでも片付けようとしていたオスカーだが、
 スミスは有無を言わさずオスカーの首根っこを掴み、襟を引きずりつつ
 食べ過ぎたスミスは腹をナデナデ帰って行ってしまった。

 旬たちが先走り祝いパーティーをしている途中で晃とロバートは二人で話し合う為に
 家を後にし、コンドミニアム建物からすり抜け、高い空から地上へ下りて行った。
 セントラルパークの木々も紅葉もまばらで多くは裸になった木枝がシンプルな姿になっている。
 冬になればスケートリンクになる湖も寒い風景に変わった。
 晃とロバートは夜のセントラルパークを二人で飛んで、ちょうどいい木の枝に座る格好をした。
 太い枝に座って足を組むとロバートがまず晃に尋ねた。
「あれから何があったんだ?」
 そうロバートに尋ねられても晃も本当にちょっともわからないので困惑した顔だ。
「全然わからねえ。全く覚えてないんだ。逆に俺はどうなったんだ?」
「俺が見たのはお前がマイケルに乗り移った後お前が十字架のように両手を挙げて、
 意識を失ったままマイケルの中に沈んだ後に姿が消えてしまったところまでだ。
 そのままマイケルも川に落ちて姿が消えて、
 あれではマイケルも溺れ死んでしまったんじゃないかと俺は思ったし、
 シュンも参ってしまった。マイケルはいい子だったから…。俺はどこかにマイケルの死体が
 川辺に上がってるんじゃないかと探したけど、どこにも見えなかった。
 マイケルの死体が川に浮かんでいてもよかった。俺が探したのはお前だ。
 悪いけど俺にとってはマイケルの中に入って意識を失ったお前を助ける方が大事だった。
 俺はお前が二度と戻らないんじゃないかと不安だった…。」
「そうか。マイケルに憑依して旬を助けようとしたのまでは覚えてる。
 目を覚ましたのはさっきだ。大橋から近いハドソン川で寝ていた。目を覚ました時は
 頭がおかしくなってて、生きてた昔の記憶に飛んでしまっててパニックになった。
 やっと記憶がよみがえって地下倉庫に行ったら誰もいなくて。怖かったよ。
 誰もいないのが良いのか悪いのかわからないから、俺だけ何年も寝てたんじゃないかって
 変なことまで考えた。」
 晃の横顔を改めて見直してロバートは本当に安心した顔になっている。
「アキラ。帰ってきてくれてありがとう。」
「ロバート。」
 ロバートが手を差し出し、晃も強く握り返して二人は目を見交わした。
 じーっと見つめあって、ちょっとしてから照れたらしくお互い目を逸らした。
 晃は今回の事件がまだ解決はしていないが、人間に戻す薬ができたことで、
 スミスと同じく楽観的な気分になっていた。
「マッドが人間に戻ったなんて嘘みたいだな。もう殺すしかないんじゃないかと俺はちょっと
 悲観してたんだ。あの旬が大好きになった友達を死なせたらあいつがどうなるか考えるのが
 怖かった。」
「ああ。アマグリは本当に頑張ったよ。あれだけ眠らずに治療薬を改良してったのを
 傍で見ていて、
 あんなに小さな体なのに、心は凄く強い人なんだなと俺はアマグリを見直した。
 シュンが慕うだけあるよ。シュンは人間の本質を見抜く能力があるから。
 意志力と忍耐力がなけりゃシュンを育てていくのは無理だしな。」
「う…。」
 ロバートは別に晃に対して当てつけて言った訳ではなく、本当に素直に
 旬のような人間を育てる覚悟を持った甘栗が本物の勇気がある人だと
 思い返しただけだが、晃は自分が失敗しているのでつい比較して落ち込んだ。
 ロバートはそんな晃の首を軽くつかんで励ます。






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