デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー378 親父、逃亡!

August 18 [Sun], 2019, 8:52
 東京都内の晃の自宅マンションで、桐生晃は休日だったが買い物と言う言い訳でちょっと
 女をナンパしてこようと支度をしていた。
 大きな全身鏡の前で新しく買ったシャツと細めのダークブラウンのボトムス、
 それに秋物のジャケットをいくつか合わせて服装を決めている。何を着てもカッコイイ。
「マジで俺ってイイ男。」
 ナルシーにもほどがあるイケメン晃は鏡の中の自分に惚れ惚れしていて
 背後から迫ってきている小さな物体に気づかなかった。
 背後には1歳になったばかりの赤ん坊・旬がヨチヨチ歩きながら生えたばっかりの凶器である
 乳歯を剥き出しながら近寄っている。
 そうして晃が仕事でもないのにいそいそオシャレをしているのを怪しみ、
 こいつまた逃亡する気だなという怒りで晃の太ももに向けてダーッと飛びつき、
 足に抱き着き、ガバっと大きなお口を開けて思いきりかぶりついた!!!
 乳歯だから破壊力はそこそこなのだが、旬の怒りパワーが晃の太ももに食いついた瞬間、
 獣に食いつかれたかと勘違いするほどの激痛で晃は叫んだ。
「ぎょおおえええええええええええええええええええ!!
 いてええええええええええええええええええええええええ!!」
 うわあっと喚きながら晃が太ももにしがみつく悪魔の子を振り払おうとする。
 足を振り、手で悪魔の赤ちゃんをとっ捕まえた。しかし…
「むぎゅう。」
 赤ちゃん・旬は中々しぶとい。離れないで食いついている。
「やめろ馬鹿!!痛てええ、噛むんじゃねえ!!俺の足は食い物じゃねえんだよおおお!!」
 旬は口を離し赤ちゃん声で文句を喚いた。
「アキラああ、てめえ外いって夜まで帰ってこない気だろ!おれもつれてけ!!」
 至極まっとうなご意見。1歳児を家に置いて遊び歩くなど育児放棄なのだと
 今の旬は知らなかったが晃の素行の悪さはよーくわかっているので正論を吐いた。
 晃は焦りながら旬から離れ、野犬に襲われているかのように自分を守ろうと
 手で防御しながら後ろ向きで玄関へ向かった。
「あきらあああ!」
 晃を追いかけて両手をあげて旬がパタパタ走ると逃走犯・晃はバックにターンして
 玄関へ向けてダッシュした。襲ってくる?旬に晃は言ってはならない泣き言をいう。
「俺だってまだまだ親になんかなりたくなかったんだよおお!
 恨むなら万里子を恨め!!」
 そう言いながら靴を履きつつドアに飛びつき、バンッと開けると急に世界が下に向かって回り、
 というか晃が下に落ちたというか、今ちゃんと立っていたはずなのに地面に向かって
 うつぶせ、下向きに顔を伏せてしまった。
 しかしマンションの廊下のはずが、草ぼうぼうの地面が目の前にあり、
 晃は自分が突如倒れている異常事態に驚いた。
「う?ううう??なんでドアの向こうが地面なんだああ?」
 晃は何が起きたか訳が分からないまま目を開けようとし、うつぶせていた体を起こそうと
 両手をついたが何か地面がふわふわしておかしい。
「俺、知らない間に酒飲んだっけ?おい、旬?」
 すると晃の背中に小さな物体が乗っかったような感触があり、やっぱりこれは飲みすぎて
 おかしくなってるんだと晃は思いながら背中の旬に声をかける。
「旬、ヤバイ、俺めまいがする。水、水を持ってきてくれ。」
 すると晃の手の甲に生暖かい水がかかる。
「は??」
 この嫌〜な感触は旬が生まれたてのほやほやの時によくひっかけられた感触だ。
「お、おしっこ??お前、おしっこしてるのか?バカ、おしっこじゃねえ、
 持ってきてほしいのは水だ、みずううううう!!」
 晃が目が回った状況で手を差し向けるとそこに小さな茶色の物体がぽてっと落ちてきた。
 これもさんざん悩まされた物体。旬のうんちだ。






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また読みに来てくださってありがとうございます。
ヤプログ終わりだってさ
ぶ?









デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー379 俺んちがない!!!

August 21 [Wed], 2019, 8:08
「くあああ!うんこはやめろおおおおお!!」
 いつのまにか晃の目の前に小さなお尻を出してうんちをしている旬がいる。
「くそがきいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
 晃はもう許せねえと、両腕をもがき、全身が脱力したまるで金縛りにあったかのように
 動かない事態だった身体を動かそうと、必至で両肩に力をこめ、
 膝を動かし這いずり、なんとか四つん這いになると、クソガキ旬をとっつかまえてやろうと
 立ち上がった。その時晃は自分の体がふわりと浮かび上がったような気がしたが、
 それも酔っているからだろうと深く気にしなかった。
「クソガキ、こう見えても俺はお前の親だぞ!やっていいことと悪いことがあるんだよ!」
 と背後にいるだろう赤ん坊に、後ろを向きざま大きな声で怒鳴ったやったが、しかし
 そこには旬はいなかった。
 いや、旬だけではない。誰もいない。というか家もない。それどころかマンションすらない。
 しかもさっきまで朝だったのに真っ暗な夜だ。
 晃は目を大きく開けて、周りを左右上下見回した。
「え?えええ?な、なんだ?は?ちょっ、俺んちは?俺の家はどこだよ?
 今俺家にいたはずだぞ??旬???」
 晃は自分がいる場所がどこかわからず、周囲を何回も回転し、どこを見回しても我が家はなく、
 しかも大きな川がそばを流れ、足元は草、木々が生い茂り、
 おまけに対岸には巨大高層ビルが立ち並ぶ風景に背筋を凍らせた!!
「嘘だろおおおおおおおおおおおお!ここどこおおおおおおおおおおおおおおおおお??」

 それは10分ほど前に戻る。
 大橋での旬と化け物になってしまったマイケル・バンダムの戦闘で、旬を助けるために
 マイケルに憑依し、
 憑依失敗した晃がマイケルの脳内で意識を失い活動停止状態で行方不明になっていたのを
 小王国からニューヨークのマイケル・バンダムを探して瞬間移動で飛んできた
 レオン・サム・ソングにマイケルの脳から取り出され、放り出され、救出されはしたが
 マイケルに乗って逃げてしまったレオンにそのまま川に放置されてから、
 すぐには覚醒できず数時間眠っていた晃の、ふんわりした茶髪、魅力的な横顔、
 口元がわずかに動いたのが、10分前だった。
「う…。」
 晃はマイケルの脳の中でマイケルの動きを止めるカギになっていた時は
 夢さえ見れない絶望的事態だったが、マイケルから抜き出されて眠る間に少しづつ晃の
 回復が進んで、少し前からもやもやと夢を見ていた。
 夢は過去の夢。まだ旬が赤ちゃんだった頃の夢だ。
 よちよち歩く赤ん坊が口を開け、開けた口には牙が生え、小さなお手てで晃を捕まえ
 噛みつくというずいぶん昔の頃の記憶をもとにした夢だ。
 晃はうつぶせで倒れていて、うなされてる。
「くそがきー、…なんで俺が…。やめろ、噛むんじゃね…。うんちするなあああ…ん??」
 晃の両手の上に可愛いお尻を向けて旬がうんちを出した。くっせーっと匂いまで蘇る、
 大昔にされた旬の嫌がらせの夢で晃の目がなんとか少し開いた。
「…うん??え??」
 薄目を開けた晃の目に入ったのは草だ。
 それからすぐそばの川の流れの音。晃は自分が何故か地面に這いつくばっている意味が
 理解できず自宅から出た途端倒れたと思い、酔って幻覚を見ているのかと思い違いをした。
 そして思い出の中の赤ちゃん旬のおしっこ&うんち攻撃に怒りパワーで、
 半分寝ぼけながら立ち上がりはしたが、
 何日も余りに深いこん睡状態だった晃はガバっと起き上がった時に異常にふわっとし、
 不自然に体が軽いなど感覚がおかしいのも、まだ意識がぶっ飛んでいるので
 自分が死んでる事も忘れててっきり生きていると思い込んで、何か不思議なことが起きたと
 思い込んでしまった。






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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー380 そういえば俺、死んでた!

August 23 [Fri], 2019, 8:54
 日本の自宅にいるはずなのに見知らぬ大きな川にいる、そんな異常事態にパニックを起こした。
「嘘だろ、なんだこれ!!怖、怖いよー!!誰か助けてええええええええええええ!!」
 この川がどこの川なのか晃は必死で記憶をたどった。どこで飲んだかも思い出そうとした。
 晃が育った児童養護施設の徒歩圏には大きな川があったが、旬と住む自宅の周囲は
 川がない。いったいここはどこなんだと焦る晃は、
 川の向こうに立ち並ぶ高層ビル群を見て、たまに仕事と称して女と遊びに行った
 ニューヨークの風景そっくりだと思って悲鳴を上げた。
「マジかああああああああ、俺異次元の世界に入ったのかあああああああああああああ!!」
 どうみても対岸はマンハッタンの夜景。日本からアメリカにいつ来たのかわからない。
「何これ、ここどこ?俺宇宙人に誘拐されちゃったの?助けてくれ!!助けてええええ!
 異次元からニューヨークに来ちゃったの??俺の財布は?俺のパスポートは??
 俺どうやって日本に帰るんだよ―――――っ??父さん、母さん、
 助けて万里子おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 マンハッタンの夜景に向かって心の底からの恐怖で絶叫して3分、
 思う存分叫び終わってハッと記憶が戻った。
「ま、まてよ?!俺死んでるじゃん?」
 晃は自分が何年も前に殺されちゃったと思い出し、大騒ぎした分腹の底から可笑しくなって
 大笑いした。
「バカじゃねえの俺。あはははははは。でもなんか忘れてないか??」
 腹を抱えて一人で爆笑しながらまた記憶をたどった。
 旬が空から飛行してマイケルと戦ったあの夜、晃はクモ人間の中に入り込んで強烈な電気が
 全身バリバリ流れてそれ以降意識を失ったのだ。
 笑ってる場合じゃないシリアスな現実を思い出して晃は笑いが収まり、今度は青ざめた。
「お、思い出した!旬、ロバート、うわあ、どうなったんだあれから???」
 ここ至る経緯を全部思い出したがその後を知らない晃は、今度は愛しい息子の無事が
 心配になった。
「旬、逃げ切ったのか?どうなったんだ?やべえ!!こんな所にいる場合じゃない!!」
 旬の無事を知りたい晃は、立っていた川辺からふわっと飛び上がり、
 ハドソン川を横目に旬がいる倉庫に向かって飛んで行った。
「旬、ロバート、しゅ――――――――――――んっ!!」
 旬を思いながらクリア・フューチャー開発局の地下秘密倉庫に飛んで行った晃は
 そこでも驚いてまたも大声で叫んでしまった。
 倉庫にいるはずの旬たちがいないだけでなく、治療中のマッドの姿もない。
 倉庫はがらんとしている。
 晃は大きく口を開け、目も大きく開け、倉庫の中を誰かいないかと探し回った。
「何がどうしてこうなったんだよ―――――――っ!!!
 旬もロバートもいない、もしかして10年くらい時間が経ったんじゃないよねええええ??」
 晃は頭がクルクル空回りしてSFのように時間が加速してしまったか、
 長いこと寝すぎて時間が過ぎ去ったかもしれないと、
 そんな妄想で再度その場で大騒ぎした後、また思い出して、今度は自宅の甘栗の
 高層コンドミニアムに飛んだ。
「まさか、まさか、あそこにも誰もいないなんてことないよなあ。神様お願い俺を助けて。」
 とか祈りながらセントラルパークを臨む高級高層コドミニアム最上階に飛んで戻った。
 摩天楼の夜景と空、黒い森、そういった景色も晃の目には入らない。
 ひたすら愛息子の無事だけが心配だった。

 セントラルパーク横という立地に建つ高級コンドミニアム最上階の広い家に久しぶりに
 帰った甘栗と旬。そして旬にとっては来なくていい余計な男たち二人も一緒に今みんなで
 広いダイニングルームにいる。大きなダイニングテーブルには旬が通う大学院の
 スミス教授と院生オスカーが両手いっぱいに買ってきた品物を全部出していた。
 複数の店でテイクアウトしてきた料理とケーキ屋で買ったケーキ。それに酒もだ。
 不貞腐れた顔の旬も皿とグラスを出してパーティー準備を整えた。
 本当なら先生と二人きりで俺の手料理食べてもらうのに…。






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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー381 せんせえ事件はまだ解決していません!!

August 25 [Sun], 2019, 10:05
 旬は満面の笑顔を浮かべるスミスとオスカーをこっそり睨んでいる。
 当のオスカーとスミスも旬の恨めしそうな顔には気づいていたが、しかしそこは
 非常に素直ではない性格の旬が恥ずかしがっていると解釈し、小生意気な子供も
 本当は誕生日パーティーが内心嬉しいんだと決めつけて自分らを睨む子供に対し、
 その睨みを上回ろうと明るい笑顔を向けていた。
 ちっ…睨みが効果なしなので旬は心の中で舌打ちした。甘栗太一は優しく言う。
「お酒はいっぱいあるからみんなどんどん飲んでね。」
 この家の主人である甘栗がそう言い、高い酒も何本か出してきてスミスは目を丸くした。
 大人は酒。子供はジュースをグラスに注ぎ、さあ乾杯と言う前にスミスとオスカーは
 互いに示し合わせ、何かが入った袋に手を突っ込み、さっと後ろ手に隠すと
 いっせいのせいで旬に向けてソレを発射した。
「キルユー、ハッピーバースデー!!」
 パン、パーンとクラッカーが弾けて色とりどりのキラキラテープが旬の頭にひっかっかった。
 ふざけんじゃねえ。
 変なテープをかけられてアホみたいな格好にされた旬だが、目をつむり、怒りに耐えた。
 …いいだろう。今日の所は許してやる。俺だって先生の手前というのがあるからな。
 旬はしぶしぶ目を開けるとスミスとオスカーは第二弾の準備をし始めた。
 て、てめえら、何をする気だ!?
 スミスとオスカーは今度は甘栗にクラッカーを向ける。
 クラッカー攻撃が笑顔の甘栗を襲うと思った旬は心の中で身を挺して先生を守ろうと
 する自分を想像した。
 せ、先生を侮辱する気か?マジでやめろ!!おまえらあああ!!
 旬の心の願いも届かずスミスたちは数個のクラッカーを同時に引いた。
「退院おめでとう!そしてキルユーの尻ぬぐいでクモ男になったデブを人間に戻す治療薬の
 作成成功おめでとう!これで事件は解決したも同然だ!」
 パンパンパーンと旬より多めのクラッカーのテープを被って甘栗はにこにこした。
「ありがとう。全部君たちのおかげだよ。」
 甘栗も笑顔で答えたが、そんな甘栗にさすがの旬も困惑した。
 先生、まだ事件は解決していません!!
 …今ここにいる連中の中で唯一現実的だったらしい旬は残り三人の勝ったも同然の
 はしゃぎように、余りにも楽観的過ぎて呆れるのを通り越して、理解不能でおののいた。
 それでも敬愛する甘栗が感謝の意を示し、頭にかかったクラッカー攻撃も、
 楽しんで笑っているので旬としても無理やりでも笑顔を作ろうと頑張った。
 しかし、旬の目は怖いまま口の端を無理に釣り上げて笑っているのでちょっと怖い笑顔。
 そして見境なくなったかのようなスミスとオスカーは何十個も
 買ってきていたらしいクラッカーを袋に残った全部掴むと両手に持って打ち上げようとした。
 旬の時間はスローモーションのようにゆっくり動き、大きな可愛い目を驚愕の眼にして
 愚行を止めたいように手を伸ばす。
 先生を祝うのまでは許す!しかし、それはやめろ!!!それ以上は許さねえぞクラ
 と心の中で怒鳴り散らす旬。
 だが、旬はスミスとオスカーの愚行の前に無力だった。
 オスカーとスミスは広いダイニングルームの四方八方を向いて喜びのクラッカーを
 まき散らした。
 パンパンパンパーンと色とりどりのテープがダイニングルームのあっちこっちに散乱し
 旬は呆然とした。
 おまえら、それ掃除するの俺だぞ?
 …先生の手前我慢しかできない旬は後の迷惑を考えないでおおはしゃぎするスミスに
 完全敗北した。
 スミスは誕生日の歌や、聞いたことのないマイナーな歌まで歌い、大人たちはグラスを持って
 何回も大きな声で乾杯した。暗い所に缶詰めだった反動が凄かった。
 旬以外は楽しいパーティーを同じ部屋にいながら奥にひっそり佇み、見ている男がいた。







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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー382 アキラ、お前がいなければ…

August 28 [Wed], 2019, 8:06
 ずっと4人が騒いでいるのに誰一人その男には声をかけない。旬も誰もその男をチラとも
 見ていない。まるでその男はこの部屋にいないかのようだ。
 男は濃い栗色の巻き毛、背は高く、顔もまあまあイケメン。優しいブラウンの目は
 今にも泣きそうな悲し気な様子だ。それでも男は可愛い旬の為に聞こえていないだろう
 声を出した。
「誕生日おめでとう…シュン。」
 そうして男とは相いれない向こうの世界を見つめながら、どうしようもない孤独感に
 苛まされた。
 男の名前はロバート・スヴェン。晃と同じく、もう死んでいる男だ。
 晃がこのニューヨークに来て初めて知り合った男だ。
 晃とはすぐに親友になり、苦楽を共にしたロバート。
 二人は生きている時に関わった誰よりも互いに信頼を寄せた関係だ。
 ロバートは霊界を拒み、自分の犯した罪の大きさで永遠に孤独であるべきだと自らを責め、
 数十年以上孤独にニューヨークを彷徨っていた。
 凍り付くような寂しさと痛みを感じていたロバートと晃は出会い、同じく迷って霊界に行けない晃も
 誰とも関われない孤独に苦しんでいた。
 晃はいつでも友人の中心にいたのに死んでひとりぼっちになった。
 晃の人生でそれは生まれて初めての事だった。
 晃は初めて自分以外に話せて触れ合えるロバートに会えた瞬間、晃は泣いてロバートに抱き着き、
 その晃の熱と子供のような素直な行動でこれまでの孤独の氷が解けてロバートは
 その日から晃の傍にいたいと感じた。
 ロバートにとって晃は閉ざされた氷の世界に太陽の光が差し込んできたような存在で、
 ロバートの氷は全て消えて今は晃の光に温められている。
 晃にとってもロバートは自分の存在を認めてくれる存在でもある。
 しかし今はロバートの傍には誰もいない。晃がマイケルに取り込まれてそのまま消えた後、
 必死で探したがロバートには見つけられなかった。
 もう二度と晃に会えないかもしれないと救いようのない絶望感に落ちた。
 晃が消えたロバートはこの世のどこにも存在しない幽霊でしかない。ロバートは思う。
 …アキラが傍にいたから俺は存在していたようなものだ。
 アキラがいなければ俺はいないのと同じだ…。
 ロバートは明るくはしゃぐ四人を向こうに見ながら項垂れていた。
 
 晃はマンハッタンの空を飛んで旬の暮らす高級コンドミニアムを前に不安になった。
 もしもあの家に誰もいなかったら、それどころか誰か見知らぬ住人に代わっていたら
 どうしよう、旬もロバートも探しようがなくなってしまうという不安な思いで
 コンドミニアムの全面ガラスの建物をすり抜け、建物内に入った。
 
 甘栗の家は使っていない部屋が多い。電気は点いているので誰かは居ると思いながら
 人の気配を探し、大声で話す人の声にひかれてダイニングルームの後ろの部屋の壁から入った。
 ダイニングテーブル前では旬、甘栗、スミスと誰か知らない奴が酒を飲んではしゃいでいる。
 晃から見て手前には親友ロバートも立っている。
 みんなここにいたんだ!!
 晃はホッとした。しかもダイニングでパーティーをしている甘栗たちは
 口々にめでたいとかよかったとか解決とか言っているので、
 晃はくりくりの目をくしゃっとさせて笑顔になった。
 そうして一人向こうを向いて項垂れている親友・ロバートの背中に大喜びで飛びついた。
 旬たちを前に項垂れていたロバートは、どんっと急に誰かのぬくもりを背中に感じて驚き、
 目を大きく開けた。
「!!!!」
 そのぬくもりが誰であるかすぐにわかった!
 ロバートは背中に飛びついた男を想い笑顔と同時に嬉し涙が溢れてきた。
 普段は冷静なロバートだが、背中に感じたぬくもりでその表情が少年に戻ったかのように
 泣き笑いでくしゃくしゃになった。
 背中から抱き着いた晃は親友・ロバートの肩を抱いて、振り向いたロバートを見ながら
 笑顔で喜んだ。
「やったな!やったな、ロバート!!」
 ロバートの横で何もなかったように笑顔を向ける親友・晃。
 もちろん晃だとすぐに分かってはいたがそれでもやはり晃の顔を見ると
 ロバートは感動した。
「アキラ…!」
 死んで孤独に落ちた二人にとってお互いだけが温かいぬくもりを感じあえる存在だ。
 喜びも悲しみも怒りも絶望も同じ時に同じように一緒に感じた。
 それで晃は全ての問題が終わったんだと思い違いをしてロバートの泣き笑いを
 自分と同じ気持ちだと解釈している。
「ロバート!」






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