デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー373 絶対に帰るもんか!!

July 02 [Tue], 2019, 10:00
 渦を巻いて吸い込もうとする黒いトンネルからいきなり現れた巨人の手にレオンは恐怖した。
「親父ーっ!!」
 雲が巨大な手になった様子からレオンの父・アマデウス・サム・ソングが迷惑な息子の
 お迎えに来たと思ったレオンはなんとかその手を逃れようとクロールで飛んで逃げた。
 地獄の鎖に捕まりたくない、地獄に連れ戻されるものかとレオンは必至だ。
「畜生、親父、ボクは親離れしたいんだヨ。」
 大きな巨人の黒い腕はレオンを掴み、もやもやした雲の形は本物の筋肉の塊の腕に変わっていく。
 人間一人掴める掌、しかしその腕は全体にうろこが見えている。
「鱗?」
 雲が黒く速く回転する地獄への穴から鱗の張り付いた腕がレオンを掴もうと一度空をかいた。
 だが腕は一旦地獄の穴に引き込まれ、その代わりにいきなり地獄への穴から竜ほどの大きさの
 蛇が顔を突き出して上下に牙を生やした大きな口をばっくり開けた。
 巨大な蛇の顔は大きく開けた口でほとんど見えなかったが、その牙の鋭さはよく見えた。
 レオンを一口で食らうことが出来る程の大蛇は顔だけで、体の方は人間のような姿を
 している。蛇は腕だけでなく体も地獄から抜け出たいように肩と腕両方を出そうともがき、
 地獄の門から這い出ようとしている。その化け物を見てレオンは軽いショックを受けた。
「ウワアー!!スネークマンか?!嘘だろ?親父が負けたのか?」
 大蛇は口を閉じて赤い目でレオンを見た。すると大蛇の頭に蠢く髪があり、
 その髪は全て小さな蛇であるのも見えた。レオンもよく知る男が迎えに来たようだ。
 蛇男は話しかけた。
「レオン、ちょっと目を離した隙に俺から逃げるなんざスルイじゃねえか。
 お前がいないと寂しいぜ。
 俺はお前に惚れたんだ。だからこうやって俺の方から迎えに来てやったぜ。」
 てっきり父親の手だと思ったが、父のライバル蛇男の仇名を持つ男の手だった訳で…。
 レオンが地獄を脱走したとき、父・アマデウスとスネークマンとは互角の戦いを楽しんでいた。
 どちらも力が接近していたのでいつまでも決着がつかず、お陰で父の支配の目を逃れて
 レオンは地獄を脱出できたのだが、しかしそうは言っても結局父が勝つんだろうと思っていた。
 父・アマデウスはレオンにとって越えられない巨悪だ。地獄ではほとんど化け物になった。
 その父を倒したとなればとてもレオンには太刀打ちできない相手が迎えに来たとは。
 まさに絶体絶命だ。
 地獄で隣り合う結界を互いに荒らしあう父のライバル・スネークマンはレオンを狙っていた。
 捕まればスネークマンの愛人にされてしまう。
 それも地獄に戻りたくない理由の一つだったのだ。
 アマデウスでも蛇男でもレオンは捕まれば悲惨な生贄になるのは同じだが、
 最近父親との関係がよくなってきていたし、なんだかんだ地獄では強い力を持つ
 アマデウスの庇護に守られ、助けられていた。
 それがスネークマンのモノになれば容赦ない性的拷問がレオンに待っている。
「くそお、ボクは絶対に帰らないゾ!!」
 何が何でも帰るもんかとレオンはクロールを加速させる。
 スネークマンの鱗で覆われた蛇顔がずるずると這い出て、腕が両方穴から出てきた。
「レオン、連れて帰ってたっぷり可愛がってやるぞ。お持ち帰りだ。」
 両手でレオンを捕まえてペットの様に頬に摺り寄せる。
「やめてくれええええ!!!気持ち悪いヨオオオ!!」
「お前はキレイだ。地獄の花だ。俺の恋人だ。」
 長い蛇の舌でレオンの全身を食べたいように舐め回すスネークマン。
「ああ、ヤ、ヤメロオオ!!」






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大雨大丈夫でしょうか?
早く雨がやみますように…。










デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー374 地獄で待ってるぞおおおぉぉぉ

July 04 [Thu], 2019, 8:01
 レオンは大蛇の舌に舐められて性的に感じるのが嫌で体を左右によじると、その動きが
 スネークマンの舌に伝わり、レオンが喜んでよがっているように感じて楽しそうだ。
「やはりアレの感度がよさそうだ。今夜が楽しみだ。うお?」
 しかしスネークマンの顔に後ろから巨大な腕が絡みつき、黒く長い爪で巨大蛇の口を
 上下に引き裂き、口を裂かれたスネークマンは痛みで吠えた。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 スネークマンを裂いた巨大な腕は片手でスネークマンの口を掴み、首にもう片手を絡めて
 絞めあげ、スネークマンの後ろから巨大化した角をはやしたアマデウスの顔が現れた。
 アマデウスはスネークマンに穏やかに話す。
「俺の息子だぞ。お前にはやらん。」
 スネークマンは力を失いレオンを掴んだ手を緩め、レオンはその手から逃げ出し
 心配したよりも全然元気そうな父親に感謝した。
「パパサンキュー!」
 とレオンは笑みを浮かべてちょっとだけ父の愛?らしきものを感じた。
 アマデウスはスネークマンの両肩に腕をかけ、自分の全身の体重をかけて後ろにひっぱり、
 地獄の大地めがけてスネークマンともども自分ごと地獄に連れ戻そうと落ちていった。
「くそおおお、残念だああ!!
 レオーーーン、早く俺の腕に帰って来いよおおおおおおおおおおおおお!
 初夜を楽しみに待ってるぞおおおおおぉぉぉぉぉぉ…」
 レオンの初夜?を楽しみにしていたスネークマンの本当に残念そうな悲鳴が遠のいて
 二人の巨大な化け物が地獄に舞戻っていくのをレオンは耳で状況を聞き分けた。
「親父、助かるヨ!そのまましっかり離さないで地獄に捕まえててくれ!!」
 そしてレオンは意識を集中し、レオンの依り代を探した。
 だが、探している依り代はクリスではない。
 今のクリスはレオンの付け入るスキをみせないはずだ。
 一分もゆっくりしていられないレオンには、
 とにかく地獄から逃げる為に自我を持たない依り代が今、必要だ!
 レオンが探しているのはこの間大橋で見つけ、気に入った元人間の生物兵器。
 レオンは心を失ったマイケル・バンダムの脳に自分の意識を繋げる暗号キーを埋め込んで
 自分の持ち物にしていた。
 地獄に捕まる、この最大の危機にレオンはマイケルに憑依することを決めて、
 マイケルを探し、見つけた。
 ニューヨーク、ハドソン川だろう川岸に姿かたちを変形させた化け物がレオンの透視する目に
 見えた!
「いたぞ!!」
 レオンの瞳に生物兵器の姿がよぎり、生物兵器の脳とレオンの精神が一瞬でつながる。
 レオンがマイケルの脳にシンクロすると、二人の波長は完全に重なり、
 精神が繋がったと同時に地獄の門の前からレオンは姿を消し、
 マイケルの生命反応のある場所へ一瞬で飛んで行った。
 小宮殿の上空からフッとレオンが消えると、地獄に繋がる黒い穴は獲物を失って突如塞がれ、
 黒い穴がスッと消え去り、残ったのはただの雨雲になった。
 そうして風も静かになり、まだ雨がザーザーと森に降り注いではいたが、
 やがて少しづつ雨音も静かになっていった。
 万里子の小宮殿をとりまく深い太古の森の雨も弱まっていく。
 鏡のような美しい湖水に落ちていた雨が作り出す円の波紋も小さくなっていった。
 瞬間移動でレオンが出現したのはハドソン川大橋から少し上がった川辺だった。
「ニューヨークだ!助かったのか?」
 マンハッタンは良い天気だ。小王国との時差でまだ午前中だ。
 レオンはもう戻る気のなかった故郷を対岸に見て、マンハッタン高層ビルの並ぶ風景に
 少し安堵したが、まだ生物兵器に乗り込んでいないので焦っていた。
「早く依り代に憑依しないとまた地獄に通じてしまう!」
 先ほどまでヨーロッパの片隅、愛する万里子の傍にいたのに、
 今はまたニューヨークに舞い戻ってしまったレオンは泣きたいほど寂しかった。
 しかもクリスの肉体から追い出されただけでなく、クリスは憎悪でレオンを拒絶した
 最悪の事態だ。
「クソ…!!」
 レオンはとにかく地獄に繋がるのを恐れて、依り代になる乗り物、先ほど見えた
 生物兵器を周囲に探した。
「あれだ!」
 マイケルは草木に擬態し、まるで折れた木枝のようになって仮死状態になっていた。
 人間の目ではマイケルは動物には見えなかった。枯れた木。腕や足も折れ曲がって
 太い枝にしか見えない。軍を上げて探索しても見つからなかったのはこの能力のお陰だった。
 レオンも目で探したなら見つからなかった。




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予想以上の大雨にただ恐怖です。
九州のみなさまが無事でありますように。










デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー375 アキラ・キルユーがハマってる??

July 06 [Sat], 2019, 12:43
「擬態できるとは面白い。」
 やっと生き物に触れてレオンはこれで地獄の監視を逃れられるとホッと息をついた。
 川辺の草や低木の合間で静物として横たわったマイケルにとにもかくにも
 レオンは急いで憑依しようと念じた。生物兵器は眠っているというより生命反応が
 エネルギー0に限りなく近い活動停止状態のように見える。
 レオンは化け物の脳を動かそうとしたが、しかし内側から拒絶する何かを感じる。
「ハ?こいつの中に何か入ってるゾ????」
 レオンは化け物に鍵が掛かっていることに戸惑った。またこっちも面倒が起きている。
 先に自分がカギの暗証番号を登録しておいたようなものだったのに、
 そこに何かがハマっているのだ。
「なんなんだよ!畜生!!こっちは大ピンチなんだ!マジで急いでるんゾ!」
 レオンはクリスにしたように化け物の頭に直接腕を突っ込んでハマっている何かを
 ズルズルと持ち上げてみた。
「掴んだぞ?ん??」
 すると、化け物からなんと!人間がずるずるっと出てきた。
「ハ???」
 化け物の頭は小さいが、そこから等身大の人間の頭が出てくるのはかなりシュールで
 その上出てきた人間の顔を見てレオンは思いもよらなさ過ぎてびっくりした。
「ハ??ナンダコレ???」
 マイケルの脳から顔を出したのは桐生晃だった。
「マジ?なんでアキラ・キルユーがハマってるんだヨ???」
 レオンが死んで間もなくに一度晃と会っている。
 当時のやりとりで、結構印象が強く、顔はいいけど頭は悪いマヌケなイメージを
 晃に対して抱いている。
 レオンは化け物の頭からズルズルと晃の体を引き出して、全身をマイケルから引きはがした。
「ふざけるな!」
 構っていられないレオンは晃をその辺に転がし、今度はマイケルの頭に腕を突っ込んで
 電流を流した。
 脳に電流が流れてすぐ、死んだように動かなかったマイケルの目が薄く開いた。
 赤い目が、眼球が左右にギョロリと動く。生き返ったような生命反応を感じて
 レオンは笑顔を浮かべた。
「フー!!これがあって助かった!とにかくしばらくこれに乗って避難しよう。」
 化け物となったマイケルは擬態をやめて生き物らしく動き出した。
 体を低く地面に這わせ、長くて折れ曲がった手足を地面につけ手の指、
 足の指で地面から少しだけ浮いたように見える独特の移動方法で今にもカサカサ擦れ音を
 出しながらどこかに行きそうだ。
「おっと、お前はボクのモノだ。オオ、カッコイイ。」
 レオンはひらりとマイケルの背中に乗ると馬を扱うような身振りでマイケルの横腹を
 数回足で蹴って見せた。
 実際にはマイケルからすればレオンは立体映像だが、レオンはマイケルの脳に向けて
 直接情報を送っているので、まるで本当に蹴られたようにマイケルはビクンと反応し、
 足で踏ん張り、曲がった姿勢で一回立ち上がった。
「よしよし、ドウドウ。お前を手に入れておいて本当によかったヨ。」
 レオンはマイケルの頭をなでて、マイケルはレオンを乗せたまま静かにしている。
レオンは空を見上げてその透明な青い瞳で高い空を見上げているようにじっとした。
「感じるヨ、クリスお前はボクを追い出したと思ってるだろうけど、まだボクらは繋がっている。
 お前はボクのマリコを殺そうとした。お前のその姿はまるで自分を見ているようだったヨ。
 ボクも昔はボクと少しでも感じる心が一緒でなかったら恋人を殺してきた。
 でもマリコは違う。マリコが何を感じてもボクは許せる。マリコの心は自由なんだ。
 マリコの自由を何があってもボクは守る。やっぱりボクの方がマリコを愛してるんだ。
 お前より遥かに深い愛情さ。」
 レオンの脳裏にクリスの意識が読めてきた。
 プライベートジェットに乗り込む姿と、考えが言葉になって聞こえてきた。






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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー376 まずは逃げよう

July 08 [Mon], 2019, 12:31
「フフ。そうか、ニューヨークに戻ってくるつもりなんだネ。まだボクには愛の女神が
 力を貸してくれてるようだ。まだボクにはチャンスがある!!ハハハ!!」
 レオンは嬉しくなってマイケルをロデオゲームの馬のように見えない手綱を操って
 その場でグルグル回転させた。
「さあ、これからどうする?オー、何も思いつかない。でも、この化け物も軍に狙われてるから
 とにかく逃げるしかない。それからどうするかゆっくり考えよう。」
 レオンは見つからないように川を歩かせて隠れ場所を変えようと考えた。
 その場を立ち去ろうとしてふと晃を見た。うつぶせで気絶している晃の整った顔を見て
 溜息をついた。
「マリコって実はメンクイなんだな。ボクが昔聞いた話じゃアキラ・キルユーはもっと
 獣じみた大男だと言われてたのに。クリスもアキラ・キルユーも引けを取らない顔だ。
 もちろんボクもだけど。
 つまりマリコに気に入られるためには美しくなきゃダメなんだ。」
 そうしてクリスへの恨みと怒りを蘇らせてもう一度あの肉体を奪ってやろうと決意した。
 レオンはこの腕に抱いた万里子の香りと柔らかい体を思い返した。
「愛しているよマリコ。ああ、まるで夢のようだった。ボクは負けない。君を必ず
 迎えに行くからボクを待っていて。マリコ、キミはボクのモノだ。ボクの奥さん。」
 目を閉じて幸福そうに微笑み、そうして目を開けて悪魔のようにギラギラとした目で
 悪意ある笑顔を浮かべた。
 見つかってはまずいと、レオンはマイケルの背に乗って操り、低い姿勢で移動させて
 その場を去った。
 草と大きな川の流れを背景に、意識を失ったまま横たわっている晃が残された。

 夕方、ニューヨーク・マンハッタンにある甘栗グループ所有の病院、
 アマグリホスピタル出入口から
 サラサラの黒髪にキラキラの黒い瞳の超美少年・桐生旬とその保護者、
 背が低く丸い眼鏡をかけた優しそうな小さなおじさん・甘栗太一が笑顔で出てきた。
「桐生君心配かけてごめんね。でもしっかり休めて疲れがだいぶとれたよ。」
「はい先生。僕もです。でも先生はまだまだ疲れがたまっているから無理をしないで
 家に帰ったら夜まで休んでください。」
 昨日マッド・バンダムを緊急入院させた旬と甘栗だったが、そのまま疲労で甘栗は倒れ、
 個室に入院し、旬もまた疲労で一緒の個室で寝込んでいたが、
 点滴による栄養補給などもあって二人は無事退院した。
 出る間際にマッドの容態を見たがマッドは安定して眠っていた。
 再び意識が戻ったら病院から連絡が来る予定だ。とりあえず旬と甘栗は自宅に戻ることに
 なった。同じようにスミス教授も院生オスカーも自宅に帰って疲れをとっている。
 そう思いタクシーで自宅のあるセントラルパーク界隈に走っていくと、
 甘栗の携帯に電話が入った。スミス教授からだった。
「タイチ、具合はどうだ?これから君の退院祝いとキルユーの誕生日会と今後の作戦会議を
 兼ねて集まらないか?」
 素敵な提案にもちろん甘栗は承諾した。場所は甘栗の自宅だ。
 旬にはサプライズしようということで内緒になった。
 ちなみに旬も甘栗もよく寝すぎて総司と電話で話したことがすっとんでいるが、
 そんな総司も朝起きると甘栗グループのネットショッピング部門で不具合が起きて
 不正請求が相次ぎ大騒動になっていてそれどころではなく会社に走り記者会見の準備で
 旬の事は忘れていた。
 タクシーで高層コンドミニアムに到着し、コンシェルジュや警備のおじさんに挨拶して
 エレベーターで上がった。
 久しぶりに薄暗がりの大型倉庫から自宅に戻った旬も甘栗も人間らしい生活を思い出し
 心の底からやっぱ我が家はいいなと思った。


 


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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー377 俺の家に入ってくるんじゃねえ!!!

July 10 [Wed], 2019, 10:03
 キッチンで早速旬は新着のカンガルーエプロンを付けて料理を作るぞと冷蔵庫を開けた。
「なんか懐かしい。」
 冷蔵庫なんて何日ぶりだろうか?肉は凍っているから問題ないが野菜は腐っている。
 買い置きしていた野菜を両手に掴み、旬は睨んだ。
「畜生。腐ってやがるぜ。」
 ブツブツ言いながら献立を考えているとインターホンが鳴った。
「なんだ?」
 と思っている旬より先に甘栗が出迎えて、スミス教授とオスカーが声を潜めて入ってきた。
 両手に持っている袋にはケーキとテイクアウトしてきたメニューと酒などが大量に入っている。
 スミスとオスカーは甘栗の自宅の大きさに感心した。
 オスカーは玄関の広さだけでもうここに住まわせてもらいたいと妄想した。
 そして静かに家の中を移動し、キッチンで調理を開始しようとしている旬に向かって
 声をかけた。
「サプライズだ。キルユー16歳おめでとう!」
 振り向いた旬はスミスとオスカーが並んでいるのを見て頭がハテナになった。
「どうだ驚いたか。驚いたな。しかし反応が薄いぞ。年相応の子供はもっとはしゃぐもんだぞ。」
 どうしていいかわからず固まっているとスミスはとっとと行ってしまった。
「腹減ったな。さあ飯を食うぞ。キルユー、ダイニングはあっちか?
 またでかいテーブル置いてるな!
 オスカー、テーブルに全部出してくれ。キルユーもグラス4人分を用意してくれ。
 しかしキルユーは子供なんだからジュースだぞ。腹が減ってたまらん。飯だ飯だ。」
 ドカドカ歩き、喚き倒しながらスミス教授が主導権を握って指図するので旬は嫌〜な顔をした。
 オスカーはまだそこにいて旬のエプロン姿が余りに可愛くてオスカーは笑顔だ。
 それにオスカーは旬が誕生会に戸惑っているのもわかった。
「笑えばいいと思うよ。」
 などとオスカーは優しく教えると、良いこと言った顔のオスカーに旬は憤慨した。
 は???こいつ何から目線なんだ???
 確かに甘栗先生から祝われる誕生日に旬は嬉しくって恥ずかしくって 
 はにかんだが、スミスやオスカーに便乗されてもうざいだけだ。
 甘栗先生との二人だけの家に勝手に入ってきても欲しくないからイライラした。
 先生が招いたんなら仕方ない。しかし、お前らが勝手にうろうろするのを
 俺は許してないからな。いかにも祝ってやったぞ的なあの態度もムカツくが、
 こいつ、オスカーだっけ?こいつのこの俺を見るお優しい眼差しはなんなんだっつーの。
 おい、何見てるんだ、早く向こうに行けよこの野郎。…と苛立ちマックスの旬は
 いかにも善人らしい優しい笑顔で見守っているオスカーを蹴りたくなったが、
 しかし横嶋や高校の不良相手ならうざいという理由だけでボコボコにしてやる旬だが
 大人しい性格でお節介なオスカーはどうも扱いにくい。
 仕方ないので勘違いするんじゃねー等々と散々心の中で喚いても旬は
 口には出さずにシカトした。
 しかし俺も大人になった…怒りも怒鳴りも殴りも蹴りもしないそんな自分に
 マジで感心した旬だった。

 ハドソン川の流れる音と川辺の草木の風にそよぐ音が晃の耳に聞こえてきた。
 大橋での旬とマイケルの闘いで、晃は旬を助けるためにマイケルの脳に侵入し、
 マイケルの脳内に流れる激烈な電流に縛られて意識を失った。結果的にその晃をレオンは
 助けた格好になった。あのままなら何年も何十年も晃は意識を失っていた可能性がある。
 レオンも万里子との愛の巣への逃避行が成功すればもう化け物にも興味もなくなり
 忘れてしまっていたかもしれない。ということは回りまわって晃を殺した恋敵
 クリス・スワンがレオンへの嫉妬で追いだした為に助かったという皮肉だ。
 レオンが去ったのは午前中だった。
 夕方までは完全意識不明だったが、少しづつ意識活動が回復し、その回復までに
 夜になっていった。






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