デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー342 生きてるってサイコー!!

November 21 [Wed], 2018, 8:55
 もうニューヨークは水遊びするには無理な寒さなのに、昼から、もうそろそろ夕方になるまで
 ニューヨーク港をモーターボートで往復しているタフな連中がいる。
 その中でも、特に一台やたらはしゃぎまわっているボートがあった。
 モーターボートは左右にくねり、何回も急激にターンして、あわや転覆しそうな騒ぎだ。
 ボートに乗っているのは二人の男。金髪の若い男は大声で爆笑し、同乗する別の男が
 隣でボートが回転を繰り返す度にぎゃあぎゃあ喚いたり、
 野太い悲鳴を上げる。
 金髪の男は隣の男のパニックぶりを楽しんでいるように、
 わざと危ない運転をしてはひっくり返りそうになって大笑いだ。
 しかしハンドルを切り損ねてボートが横に水面を飛び跳ねた勢いで一瞬半分沈んで持ち直すと
 大きな波のしぶきを浴びてすっかりずぶ濡れになった金髪もちょっと焦った顔になった。
「今のは危なかった!また死んじゃうとこだった!アハハハハ、フーッ!!ワオワオワオー!」
「ほんっとに止めろレオン!胃が、口からゲロ吐きそうだからやめてくれえええええ!!」
 爆笑しながらモーターボートを走らせ白い波を立てている金髪の男は
 クリスの肉体を乗っ取ったレオンだ。生き返ったのが嬉しいし、大好きな海での
 運転が楽しくて仕方ないレオンは子供のように悪ふざけばかりして遊んでいる。
 赤いダウンジャケットにピンクの花柄シャツ、黒い革のパンツというチャラい姿はチンピラ。
 とても組織のボスとは思えない。
「アハハハハ、サイコーだ!サイコー!!フーッ!!風が冷たくてマジでサイコーだ!
 ガクガクぶるぶるして生きてるって実感するヨ!ボクは生きてる!
 ああ、生きてるってサイコーッ!!」
 レオンがおおはしゃぎでボートを運転する横にいる部下で友人のエイブラムは恨み言を喚いた。
「俺は寒くて死にそうだ。雪が降る前に早く帰りてえよ!
 マジでお前の馬鹿さ加減には呆れるよレオン!いったいどうしてあのまま静かに消えないで
 こんな手の込んだ芝居を打つ気になったんだ?」
 レオンは更にもう一度ボートをターンして、エイブラムが酔って吐きだしたので、
 仕方なく止めると、運転をやめたレオン自身が踊りながらボートの上でターンして
 左右に揺れたボートが転覆しそうになったせいでエイブラムは汚物を自分の服にまき散らした。
「バカやめろ!!服にゲロがついたぞ!!」
「ワオー!!洗えばいいじゃん!!」
 寒いわ、酔うわ、吐くわでボートに転がったエイブラムに、レオンは少し前に尋ねられた
 エイブラムの問いに答えた。
「この計画はジュードのように考えてみたからサ。死人は自由になる。まあ本当に死んでるけど。
 ジュードのやり方を真似たのさ。」
「ジュード?う、うげええ。」
 エイブラムはまた口に上がってきた胃の内容物を海に少しはいて、落ち着いてからレオンに
 指摘した。
「違うぜ、ジュードなら派手な演出はしないだろう。あいつなら生きていても
 死んだふりして静かに消えるさ。」
 レオンも一応頷いた。
「オオ、そういえばそうだネ。ジュードならきっとそっと静かにいなくなる…。あっ。」
 レオンが言葉に隠された意味に途中で気づき、エイブラムもジュードの死から
 2年もしてからやっと気づいた。
「レオン、まさか?!!」
 そうしてレオンとエイブラムはハッとしたようにお互いに顔を見合わせた。






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見捨てないでくれてありがとううですうううう。

デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー343 舞台の幕を開けよう

November 23 [Fri], 2018, 12:00
「アハハハハハ、ハハハハ!そうか、きっとそうなんだ!!誰もジュードの
 死体は見てないんだろう?」
 レオンは肩を揺らして仰け反って笑い、隣のエイブラムも立ち上がってから、
 レオンの肩をバンバン叩いた!
「騙されたぜ!あははははは、確かにジュードの死体は見つかってないぞ。屋敷は燃えて、
 誰も戻ってこなかったから
 きっとジュードも森のどこかで腐乱死体になったんだと思い込んでいたが、
 もしかしたら死んだふりして組織に戻ってこなかっただけか!
 ジュードだったらボスの座について、裏稼業の恐ろしさに怖くなって
 組織を捨てて逃げるのもあり得たのに、今の今まで俺たちは気づかなかった。
 ジュードの奴、さすがは組織一の臆病者だ。」
 二人で爆笑しながらもレオンは愛する従弟を庇った。
「おいおい、ボクの従弟だぞ?せめて知恵者と言ってくれ。」
 ジュードが生きている可能性と、欺かれて泣きじゃくった恥ずかしさで笑いが止まらない
 レオン。
 しかしエイブラムの携帯に連絡が入って笑い転げていた二人は息を整えた。
 電話をかけてきた相手はレオンの友人だ。
 レオンはエイブラムの携帯を受け取ると陽気に話し始めた。
「アレサンドロ!ボクの頼みを聞いくれてありがとう!丁度さっきボクらの昔を思い出してたヨ。
 海は最高だ。波の音と匂いで武器取引したあの頃の気分が蘇った。懐かしいヨ。
 お前との武器取引はわくわくして楽しかったネ。
 スマートでフレンドリーな取引がボクらの持ち味だ。」
 レオンと話している相手はニューヨーク港に向かっているクルーザーの持ち主だ。
 まだ陽が落ちていないのに派手なライトを照らして船上パーティーをしている様子は
 金持ちの船遊びに見えるが実際は南米にある武器密輸組織の息子でレオンの幼馴染だ。
 部下のエイブラムが二人の間を繋いでレオンの計画を伝えていた。
 レオンがアレサンドロと呼んだ相手も、とても嬉しそうに弾んだ声音だ。
「レオン!親友の頼みだから当然だ。しかし、お前の部下からの話を最初は信じられなかったが
 本当に本物のレオンなんだな。
 まさかお前が生きているとは思わなかった。なんの情報も出てこなかったから
 てっきり死んだと思っていた。
 俺の方はシナリオは全部分かってる。こっちの準備は完璧だ。後は大根役者が来るのを
 待つだけだ。お前の部下よりはずっと俺はいい芝居をする自信があるぜ。
 だけどレオン、お前なんでわざわざ危険を侵して素人の寸劇を見に来た?
 もしかしてお前、本当は警察に捕まりたい願望でもあるのか?」
 波に揺れながらレオンはクルーザーの上に立つ男を遠くに見ながら答える。





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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー344 レオン、取引復帰

November 25 [Sun], 2018, 12:54
「ボクの脚本演出だから絶対見たいよ。劇を隠れ蓑にしてボクは今夜裏ルートで南米に向かう。
 ネエ、クルーザーを爆破するって最初のアイデアはやっぱりダメ?」
「俺の船だぞ!!爆破はクレイジーすぎるだろ!このイカレ野郎!」
「オー、派手で面白いと思うんだけどなあ。」
「自分の船を爆破しろ。だけど顔も見れないまま別れるのは寂しいな。
 今度はいつ会えるレオン?俺も今は厳しい状況だ。昔はよかったな。」
 向こうのクルーザーとこっちのモーターボートで話している親友たちは、顔は見えないが
 昔からの思い出を巡らせて笑みを浮かべている。レオンは短く答えた。
「次は地獄で会おう。」
「ハハハ。」
 電話を切るとレオンは大掛かりな劇が始まるのを待って胸を弾ませた。

 その頃ニューヨーク港の地上と海上にはニューヨーク市警と港湾警備が組んで張っていた。
 レオン・サム・ソングが捜査網をかいくぐって本拠であるニューヨークに舞い戻るだけでも
 信じられないのに、大胆にも組織のボスとして現場復帰したというタレコミがあったのだ。
 指名手配されてから2年間、一切手掛かりなしの所へ全く突然のタレコミ、
 垂れ込んだ相手はレオンの父・アマデウス・サム・ソングの部下である幹部の
 その手下だ。ボス・アマデウスを殺した憎い仇を警察に売った。しかし丁度今朝化け物が
 出現した事件があり、
 軍だけでなく多くの警官たちがそちらに手配されていて、こちらは手薄だ。
 果たしてそのタレコミが真実であるかどうかもわからず、警官たちはレオンが本当に
 現れるかを陸側と海側の複数の場所から望遠カメラで見ていた。
「タレコミがあったお陰で化け物対策に回されなくて俺たち助かったな。」
「ラッキーだと言うのはまずいけど、俺も化け物よりレオン・サム・ソングの暗黒街復帰に
 立ち会えて嬉しいよ。」
「奴の組織がどんどん縮小して奴も隠れてられなくなったんだろうな。
 しかしアマデウスの部下はガキに仕切られるのを嫌って裏切り、タレこんだ。
 ケツの青い若造がボスじゃ年季の入った古株どもにはやってられないんだろうよ。」
「内部からの協力で今夜ソングの逮捕速攻ムショ送りで凶悪犯たちのアイドルデビューだ。」
 無駄話をしているポリスたちに無線でチームリーダーからの指令が入った。
「各自、予定時刻に車が入ってきた。スタンバイしろ。」
 レオンの友人の船がニューヨーク港に入り、ニューヨーク港埠頭には2台の車が走ってきた。
 2台の車が停車すると中から運転手以外の部下たちが降りて、先頭で走っていた車から最後に
 金髪に黒のサングラス、白いスーツの若い男が降りた。
 ポリスたちはその背格好からレオンだろうと考えた。
 情報は真実だったようだと、ポリスたちに逮捕への緊張が走った。
 レオン・サム・ソングは顔を変えて戻ってきたという。
 しかし顔が違うとはいえ、昼間から堂々と全米指名手配犯が歩いているという無鉄砲さに
 呆れる。頭が悪いという情報は本当だ、バカだアホだとポリスたちは各々しゃべっている。
 見ていると次々人相の悪い男たちがレオンの後ろを固め、ボスを守る為に付き従った。
 先頭のレオンと部下たちは、ボスとの力関係が一目でわかるある種の距離感があった。
「来たぞ。レオン・サム・ソングだ。」




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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー345 実権を握るのは

November 27 [Tue], 2018, 13:03
「来たぞ。レオン・サム・ソングだ。」
 レオンは隣の部下と何か話し、背後を守る部下に指を鳴らしている素振りで
 何かを命じると、男たちはそれぞれ二人づつ周囲に動いて、警戒しながら
 ボス護衛の配備をした。
 黒サングラスの金髪は船が来るのを警官に見張られているとは知らず堂々と待っている。
 タレコミ通りやってきた船と車。その様子をニューヨーク市警の刑事たちが狙っている。
 埠頭にクルーザーが停船するとレオンとその部下はクルーザーに乗り込み、
 クルーザーで武器取引の相手と親し気に話し始めた。
 今日は組織の実権を取り戻した挨拶と武器取引再開で買う武器の品定めが目的だという。
 どちらも犯罪者でありながら堂々と商売をしているマフィアたちは大胆であり、無頓着だ。
 陸と海の警官たちは殺人犯逮捕に動き出そうとした。しかし、事態は急変した。
 レオンらしき人物と取引相手は船の上で大声で怒鳴りあう様子で、
 いさかいをはじめ、すぐに銃を打ち合う音がしてきた。
 そうして警官たちが監視している目の前で、レオンらしき人物は撃たれてその身体を
 クルーザーの向こう側に投げられて海に落ちた。
 そうして船は急スピードで海に走り出した。
 そしてそれに呼応するように、周囲にいた複数の小型ヨットやボート、埠頭で待っていた
 二台の車もが、一斉に四方に散った。
 周囲を囲っていたのは全てレオンの部下と友人のマフィアたちだった。
 何がどうして殺し合いに発展したのかさっぱりわからないが、大量殺人犯レオンは死んだ。
 あっという間の出来事だった。アメリカに戻ってきたレオン・サム・ソングは警官たちの
 見ている前で死亡し、死体は海の底に沈んで消え去った。
 
 その現場から一斉に逃げ出した本物のレオンと部下たち。
 モーターボートで走りながらこのバカげた劇の脚本を書いたレオンは自分の死んだ様子を
 見てウケまくっていた。
「アハハハハハハ、あいつもしかしてホントに死んじゃったんじゃないか?
 ボクもう可笑しくて腹がよじれて痛いヨ!」
 レオンの役をやったのはレオンの部下だ。上手にレオンの真似を演じ、撃たれて、
 クルーザーの船体向こうの
 海に落ちた後は服を脱いで必死で近くのボートまで泳ぎ、死にそうになりながら
 他の仲間に拾われて逃げのびた。そんな部下の苦労もレオンを楽しませているが、
 何よりも自分の思う通りになって大喜びだ。
「アハハハハハッハ!これでもうボクは死んだってはっきり見せられた。
 レオン・サム・ソングはもう指名手配犯じゃない!!
 全ての問題は解決したんだ。ボクは自由だ!!自由だー!!フォ―――――ッ!!!
 アハハハハハハハハ。」
 しかし隣のエイブラムはレオン程は浮かれられず、懸念を示す。
「だが、お前の替え玉だってバレないか?」
「別にそれでもいいんだヨ。」
 レオンの真の目的は自分が「白い悪魔」とは別人だと印象付けること。
 レオン・サム・ソングがこれまで生きていたと思せれば既に死んだ男と、今死んだ男が
 同一人物だとは誰も思わない。
 レオン自身は既に死んでこの世に肉体はない。いくら探しても絶対に見つからないが、
 白い悪魔もレオンも死んでいても、愛する万里子は生きている。
 万里子を巻き込んだ歴史的事件が、レオンと白い悪魔の関係からいつか万里子に追及の手が
 向かうのを回避したかった。




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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー346 全てはマリコの為に

November 29 [Thu], 2018, 12:30
 万里子を愛する故に世界を欲したが、万里子はそれを許さなかった。
 喜んでもらえると勘違いしていたレオンを罵り、死ぬしかない撤退をレオンに求めた。
 もちろんレオンは全て万里子に従った。万里子が愛を試すならレオンは命も捧げる。
 それとは別の問題として、レオンが「白い悪魔」として行った惨事は、世界の全てを
 敵に回す殺戮ゲームだった為に、「白い悪魔」を生み出した国を
 アメリカは特定しようとしている。アメリカだけではない。カナダもイングランドもだ。
 関与を疑われている国も身の潔白を証明しようと互いにどこの国が背景にいたのか
 探り合う状況が続いている。
 それだけ凄まじい破壊をもたらした兵器だった。個人でやれるような犯罪ではないと
 世界中の軍は決めつけた。白い悪魔は誰なのか?どの国に所属し、誰に操られていたのか?
 そうした探り合いの中、
 どこからどういう関連で万里子とレオンが直接関わっていた事実と、国家犯罪に万里子が
 関連した疑いが掛かって一生監視されるなどという面倒が起きるかわからない。
 自由に生きるためにはレオンには「レオン・サム・ソング」が邪魔だった。 
 白い悪魔と同一人物である可能性を完全に消したらどうかな?とレオンなりに考え、
 思考錯誤した結果
 それが何よりも重要だと気づいたレオンは、ニューヨークにいるこのチャンスに賭けた。
 逃亡中のレオン・サム・ソングが生きていてボスの座に復帰した今日死んだとなれば、
 2年前に死んだ男、世界を破壊しようとした「白い悪魔」とは完全に別人だ。
 レオンが2年前からのニュースを調べたところ「白い悪魔」の死はCIAのスパイが
 目撃していたという。いくら思い返してもあの時いつどこに潜んでいたのかレオンには
 思い当たらないが、レオンと部下を殺戮した化学兵器が実はアメリカ政府の開発したものなら
 レオンと部下数十人を一瞬で溶かしたあれだけの兵器が作られた理由に合点がいく。
 とにかくアメリカ政府の発表なので「白い悪魔」の死の確実な証明になった。
 万里子を守るため、レオンは自分の死を見せる必要があった。
 これでレオン・サム・ソングから白い悪魔への繋がりが闇に消え去った。
 完璧だ。なんの懸念もない完璧な新しい人生。クリスは消え、白い悪魔も消え、
 レオン・サム・ソングも消した。
 これで準備は完了だ。マリコ…やっと逢える…。
 レオンは愛の女神に会うために自らの死を画策し、見事に成功した。

 警官たちはレオン・サム・ソングの暗黒街復帰の立ち合いと死の目撃証言者になり、
 全米歴史上で最も美しい殺人犯の死は、次の日全米のニュースになった。
 そのニュースは小王国に潜伏してアメリカのニュースを日々チェックしている
 ジュードに大きな衝撃を与えた。

 ヨーロッパの端にある小王国は中世の建物がそのまま残っている街だ。
 内装自体は新しく快適な生活をしているが、周囲を太古の森に囲まれた国全体が
 時間が止まったような風情を醸し出している。首都、王都も同じく、古い建築で、
 それが観光の資源でもある街のアパートメント一室。
 長い金髪で、顔の半分を隠した整った顔の青年が住んでいる。
 この街ではレオン・ヴァレンタインと偽名を使っているその男は、レオンの母方の従弟で、
 ジュード・ヴァレンタインだ。レオンが探していたニューヨークからはるかに遠い国で
 新たな人生を生きていた。





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