デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー335 不機嫌な総司

October 06 [Sat], 2018, 12:00
 スミスが思うに絶対に今回の事件で精神的ダメージがかなり大きいはずの甘栗が
 笑顔でいるのは自分にはできない忍耐力で、ある種の男らしさに感じ入った。
 …この悲劇の発端が養い子のおふざけで作った組み替え細菌で、それを飲んじまった別の
 教え子がバケモンになったのだから誰よりも参っているはずなのに
 全くタイチは大したもんだな。
 そう思いつつスミスは問題児・旬を見る。
「おばさんがいる地区からはだいぶ離れている。よかった。」
 旬は本音を呟き、カップヌードルを食べながら、携帯でマークかマイケルが食事をした
 周囲を調べていた。再び川を渡って別の地域に逃げて居場所の見当がつかなくなるのが一番
 厄介だが、どうも兄弟は行動範囲が狭く、少しづつ移動はしているが近所をうろうろ
 する程度なので広範囲を探さなくて済むのは旬にはありがたかった。
「とりあえず俺が助けに行くまで二人ともそこからあんまり動くなよ。」
 安心して残りのラーメンをズルズルと口いっぱいに法張り、スープを飲み込んだ丁度の
 タイミングで電話が入った。相手は甘栗総司だ。
「う。やばい。何の用だよ。」
 電話が鳴って嫌〜な顔で携帯画面を睨んでいる旬を見ているスミス。
「キルユーの好かん相手だな。」
 旬を観察しているスミスは、キルユーがわかりやすく嫌そうな表情になったのを見て
 掛って来た電話の相手は相当嫌いな奴だと分かった。
「本当にわかりやすい子供だなキルユーは。」
 向こうの方でスミスに観察されながら旬は出たくない、朝っぱらからやだな〜と
 思う気持ちから電話に出られなかった言い訳を考えたが、
 用事があるなら再度かかってくるだろうから鳴らしていてもしょーがないので
 嫌々出ることにした。
 総司さんも大橋での化け物騒動ニュースを見てるなら事件の内容はわかっただろう。
 だけどまさか俺が関係してるとまではわかるはずない。 
 普通の状況でも旬にとって苦手な相手だが、今は非常事態なので少しでも勘付かれたら
 立場が危うくなる旬は、別の緊張感がある。しかし声音はいたってクールに出た。
「はい。おはようございます。」
「何故すぐに出ない。メールを読んだか?何をしている、手は空くか?」
 いきなり暗い、怖い声音で不機嫌そうに総司は矢継ぎ早に問う。
 この野郎…相変わらずめんどくせえな。
 メールに返信がなくイラついているようだが旬はメールなんてチェックしない。
 しかし、旬は先ほど甘栗先生から誕生を祝われたので、もしかして総司もお祝いメールでも
 くれたのかとちょっと狼狽えた。
「…、えっと、朝ご飯作ってます。」
 当然そのタイミングを狙っていた総司は電話の向こうで頷いた。
「そうか、マンハッタンで化け物騒動があるな?」
「う、は、はい。」
 旬はギクッとした。…いきなりその話か…。
「かなり危険な猛獣が中心部に入り込んだというな。化け物の動画を見たがあれは信用ならん。
 たぶん密林にでもいる珍しい動物を誰かが放したのだろう。
 所で私は今度ニューヨークに出張で行くが宿泊はしない。どうだ、私の帰る折りに
 兄と一緒に化け物が捕まるまで私と一緒に東京に避難しないか?」
 東京…当分行きたくないと旬は思っている。




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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー336 恋心を餌に旬を釣る

October 08 [Mon], 2018, 12:00
「避難って、総司さんそれは大げさです。あれの出現場所はこっちとは逆です。」
「どこに出るかわからんからマンハッタン全体を軍隊が化け物を捜索中だろう?」
「ええ、ですから軍が投入された以上今はマンハッタンは安全です。」
 お陰でマークとマイケル捕獲の邪魔になって旬は大迷惑だが。
 総司の思う様に話が進まないので総司は苛立ち、仕方ないので本題を言わざる負えなくなった。
「実は現在君の曲が日本で売れている。初登場から第一位だ。」
「は?曲?何を言ってるんですか総司さん??」
 疲労困憊の極みでバンダム兄弟を助けることしか頭にない今の旬は突然今の日常とかけ離れた
 話、それも覚えのない曲が1位と言われても旬の頭は真っ白けだ。
 真面目に何を言ってるかわからなかった。
 総司はあんなに夢中になっていた少女への贈り物を忘れているようだと話の噛み合わなさに
 益々苛立った。
「君があの少女への謝罪を聞かせたくて歌にしただろう。
 あれが爆発的に大ヒットしてしまったのだ。」
「あ!!!そうだった!!!」
 この場にそぐわない、あの小太りな少女の顔がキラキラ浮かんで、突然思い出がよみがえった
 旬は甘くて苦すぎる失恋の、忘れたい恋心でパニックになった。
 じゃあ、あの歌が街に流れてあの子も聞いたのかな?あの作詞が僕だってわかったかな?
 ちゃんと全部聞いて貰えたら…僕の気持ちわかったかな?
 考えてみれば謝罪ではあるが、二人が学校帰りに並んで歩いたあの短い時間に
 お互いに意識していたと勝手に思い込んでいる内容なので、無我夢中で想いを綴ったが、
 あの少女は同じように意識していたのかどうか、横に並ばれてどう思われていたか考えて
 耳までボッと赤くなった。
 化け物とむさくるしい男しかいない薄暗い倉庫で赤くなって一人もじもじしている旬。
 しかし総司はそうした少年期を体験していないので時間を無駄にしないで商売の話がしたい。
「あの楽曲のプロデューサーが会いたいというが抑えている。
 しかし相手は大物だ。顔を立てて一度私と兄が同行するから形だけ挨拶して約束を果たした
 格好に出来ないか?」
「え…。」
 総司の裏切りを察知した旬は恋のトキメキから一瞬で現実に戻ってすーっと覚め、
 旬の目の表情がきつくなった。
「総司さん。僕に何があったか知ってますよね?」
「…会食に顔だけ出してすぐに帰ればいい。」
 旬は電話口で大きな息を吐いた。
「いえ、無理です。僕は大学院での授業があるし、先生も学会での発表があるんで
 物凄く忙しいんです。それに時間があっても絶対に会いたくありません。すみません。」
「む…そうか。」
 打つ手なし。総司も黙り込んだ。
 数秒気まずい空気が流れた後、総司は旬の弱みを揺すってみた。
「ではあの曲を聞いた少女からもし連絡があったらまた電話する。」
「え???!!!!!!!」
 旬の胸がざわざわした途端総司は電話を切った。
 少女の動きが気になった旬が自分から東京に来たがるのを期待しつつ。
「あう。」
 旬は固まった。なんて嫌な奴なんだ甘栗総司!!!




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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー337 旬と総司、結局ケンカ 

October 11 [Thu], 2018, 13:22
「いや、いいんだ。僕の目的はあの子に聞いて貰って僕が悪気がなかったのを知ってもらえれば
 それで。それが目的だったんだ。そうだ。決して連絡が欲しいなんて
 そんな嫌らしいことを一度も考えた事ないんだ。」
 諦めた恋だ。歌に下心は本当になかった。それなのに恋心を揺さぶる総司を恨んだ。
 で、旬との電話を切ると総司はすぐに兄・太一に電話をかけた。
 向こうの甘栗先生の携帯が鳴ったので今度は先生に頼む気だなと旬は思った。
「総司、元気にしてる?」
「兄さん、ご連絡が遅れてすみません。先日からの化け物騒動の件ですが…。」
 甘栗はにこにこ笑顔で弟の気遣いに感謝した。
「ありがとう。総司もお祝いしてくれたんだね。」
「…お祝い?」
 今日は兄の誕生日ではなかった。何を祝うのか今度は総司の頭が真っ白になった。
 甘栗はちょっと失望して声が小さくなった。
「桐生君の誕生日…。」
 ハッと思い出した。旬の誕生日に桐生晃が殺され、総司が迎えに行って初めて出会ったのだ。
 しかも旬の父、桐生晃は総司と同じ顔で前々から迷惑な存在だと不快に思っていた男だ。
 忘れたくても忘れられない程ありえない出来事と結びついた誕生日をあっさり総司は
 忘れていた。
「すみません、すぐ掛けなおします。」
 失念していた総司が兄の電話を中断するとすぐ旬の携帯に掛けた。
 少女の事でまだクヨクヨうじうじしている最中の旬の携帯が再度鳴る。
「はい?」
「誕生日おめでとう桐生君。」
 忘れていただろーがてめえ…と思ったが、大人になった旬はそうは言わなかった。
「あざーっす。」
「なんだそのふざけた態度は。」
 祝ってやったんだぞと言わんばかりの総司に旬のイラつきは急上昇した。
「は?ふざけてないです。喧嘩なら別の日にしませんか?僕本当に疲れてるんです。」
 総司も仕事の疲労が溜まっている。喧嘩で興奮して寝つきが悪くなると明日の仕事に差し障る。
「そうだな。それではまた掛ける。くれぐれも化け物捕獲などという馬鹿な真似は
 してはいかんぞ。」
 一応くぎを刺した総司の鋭すぎる指摘にギクッとした旬は、過去の想いで感情が
 乱れまくっているせいもあり、普段のように冷静に受け流せなかった。
「いや、そんな、どうして、そんな、僕がするはず、…。」
 あわあわと取り乱した電話向こうの声音の、怪しいクソガキの様子に総司の目がカッと開いた。
「君には前科がある!本当に化け物捕獲を考えていたのか?この馬鹿者があ!!」
 総司はただの注意のつもりが本気で怒り出した。
「何もしません。勉強してます。あの、片づけて学校行くんで電話切ってもいいですか?」
「駄目だ。悪さをしようと考えていたなら今すぐ白状するんだ。」
「白状って、何もないです!だいたいなんでいつも頭ごなしなんですか?」
「君が無茶ばかりするからだ。いくらしつけても良くならん!」
「僕は大人です。しつけなんてクソくらえです!」
 スミスは日本語でわめくクソガキを横目に講義内容をチェックし、
 甘栗も二人の不穏な雰囲気を気にしている暇はないので
 2時間前から投与を始めた改良治療薬の適合を調べるためにマッドの血液を
 採集しようと注射器をマッドの腕に刺した。





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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー338 マッドの異常

October 13 [Sat], 2018, 8:59
 筋肉で覆われた細い腕に極太の注射針が入っていくその時、
 マッドが目を開け、口も大きく開けた!
「マッド?」
 甘栗はマッドの腕に刺している最中にマッドの全身が震え出したのでマッドの顔を見た。
 マッドは真っ赤な目を見開き、ぐうううっと仰け反っている。
「ガガガガガガガガガガガガガガガガ、グググググググギギギギ、
 ギヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
 ガガガガガと大きく開けた口から異音を発したマッドの全身が凄まじく震え出した。
「しまった!!」
 新しい治療薬がマッドに持続的に投与している麻酔の効く時間を短縮させたのかもしれない。
 それはマッドが暴れることを意味する。マッドの傷は癒えている。つまりは強力な筋肉で
 暴れればここに居合わせる4人が食い殺されるという事だ。
 寝台に横たわる化け物の咆哮が響いて、スミスもオスカーも驚愕して化け物を見た。
「タイチ!!」
 特にオスカーは化け物が眠っている状態しか知らないのでショックが大きすぎた。
 恐怖で足が震え、腰に力が入らないまま床にへたり込んだ。
「うわああああああ、アマグリ教授!」
 スミスは駆け寄り、逆に腰を抜かしたオスカーは逃げようと後ろにお尻で這いずった。
「うわあああ、うわああああ、助けてくれ、ひー!!」
 こうなるともう恐怖でオスカーは役には立たない。
「先生!」
 マッドが吠え声を発した瞬間、総司に奇声を聞かせるとバレると思った旬はすぐに電話を切り、
 総司が掛けなおした場合の着信音がマッドを刺激するとその音で危険が倍増すると判断して
 携帯の電源を切って放り出し、甘栗を助けようと寝台に走った。
「先生、マッドー!!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
 物凄い奇声でガタガタガタガタ全身震えて揺れる寝台には4隅に特殊合金で
 被膜された鎖がある。
 甘栗はその一つを握ってマッドが暴れるのに備えた。
「桐生君、スミス、オスカー君、急いでマッドの鎖を抑えて!」
 スミスと旬がそれぞれ鎖を握る。
 オスカーは震えて泣き顔で立ち上がろうとしたが足腰に力が入らず出来なかった。
 鎖を引っ張りながら旬は言った。
「先生!総司さんから電話が掛かってきます!」
「そうだね。」
 旬の指摘で甘栗も弟の電話が危険を呼ぶ可能性からすぐ電源を切った!
 突如切れた電話に向かって総司は呼びかけていた。
「桐生君、どうした桐生君?」
 電波の問題か?しかし突然切られる寸前に総司にも電話口で異様な音が聞こえた。
 猛獣の泣き声とも違うなんとも形容しがたい音。
 恐ろしい何かが起きたような妄想で総司は兄に電話をかけた。
 だが兄と養い子の携帯に掛けなおしたがどちらも出なかった。
 マッドは寝台の上で細く曲がった両手足を天井に向けて突き上げ、頭をひねり折る如く
 右側に曲げ、代わりに上半身は左に捻じ曲げ、激しくガタガタと身体を震わせた。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
 その恐ろしい苦悶の表情は甘栗を助けようと駆け寄ったスミスをも怖気させた。





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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー339 死ぬなマッド!!

October 15 [Mon], 2018, 12:00
 マッドの絶叫は以前のような逃げようとする怒りや暴れ方とは違った。
 酷く苦しみももがく様子から、マッド自身の内部に恐ろしい変化を及ぼしているようだった。
 凍り付いた旬。治療の失敗…、そう連想した旬の瞳に脅えが浮かんだ。
 まさか、マッドが…死ぬのか?
 こんな姿になっても旬にとっても甘栗にとっても風船のように膨らんだマッドのまま。
 お菓子をもぐもぐしながら笑顔のマッドが今死の寸前の苦しみでのたうち絶叫している、
 そう思う旬の胸が悲しみで潰れそうになった。
「グアグアグアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァアアアア…。」
 右に曲げた首が反対側に曲がり、手足が指先から肩にかけてグルグルと捻り、
 足も同じように足指から太ももまでギリギリと骨が捻り曲がり、
 腸が飛び出るのではないかと思うほど上体が上下に蠕動し、全身から汗が噴き出たマッドの
 口から断末魔の悲鳴が漏れた。
「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ…。」
 そしてマッドは動かなくなった。
「マッド、マッドおおおおおおおおおおおおお!!」
 旬が死んでしまったマッドに飛びつこうとしたがスミスが抑えた。
「待てキルユー!」
「離せ、離せええええ!!」
 もがく旬を大きな太い腕で抑えたスミスが驚愕した。
「おお、見ろキルユー、化け物の変身が!!」
 死んだように硬直したマッドの肉体に再び異変が起きた。
 ぶわーっと全身からあふれた汗が蒸発するほどの熱がマッドの肉体から発せられて、
 普通の半分くらいに縮んだマッドの顔が人間らしい骨格に変わり、腕も関節から元に戻り、
 足もぐるりと回って股関節の
 位置も元に戻り、全身硬直がとけて、両手、両足がだらりと寝台に横たわった姿は、
 化け物の姿は消えて完全に人間に戻っていた。
「先生、マッドが!」
 甘栗はこの様子を実に冷静に見守っていたが、変身が終わるとすぐに
 マッドの両眼を開けて瞳孔を調べ、心電図や脳波計の値を見て、処置を開始した。
 呆然とするスミスは甘栗の冷静な行動を称賛した。
「信じられない…この事件は解決するぞキルユー!!!」
 やったなタイチ!!!…スミスは感動さえした。
 遂に甘栗の愛弟子を救いたい執念は結果をだした。
 旬の遺伝子組み換え細菌がマッドの中で死滅し、元に戻るかどうか怪しかった肉体の異常から
 元の正常な姿に戻したのだ。
 大きな両手でスミスが旬の両肩を強く叩くと旬は弱々しくふらついたが、その目には、
 絶対に認めないだろうが涙が浮かんでいた。
「せんせえ…やったんだ。」
 呆ける旬と仁王立ちのスミスの前で小さなおじさん甘栗太一は一人慌ただしく緊急処置を
 していたが、腰を抜かしていたオスカーも化け物が消え去ったので、
 人間に戻った患者を助けようと隣に立って甘栗の手伝いを始めたのを見て、旬も我に返って
 寝台のマッドに何か出来ないかと話しかけた。
「マッド、マッド、しっかりしろ、僕だよ。」
 すると奇跡が起きた。マッドが目を開けて旬を見たのだ。
「キルユー…。」




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