デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー321 敵の嘲笑

June 14 [Thu], 2018, 12:00
 クリスの青い瞳は小刻みに揺れて、靄のかかった意識を取り戻そうとしているようだ。
 そして記憶が途絶える直前の状況が蘇ったクリスはハッと起き上がり、部屋の周囲を見回した。
「あの男、レオン・サム・ソングはどこだ?!奴がいただろう?ここに!!」
 クリスは上体を起こそうとしながら敵を探した。
 人格が入れ替わり、ハーバートに対して取り乱した様子のクリスにハーバートは困った。
 かなり不安定で過敏になっているクリスより、今はレオンの明るさの方が楽なくらいだ。
「クリス、落ち着いてください。レオンは貴方の心の中にいます。」
 それにしてもハーバートはクリスが真っ先にレオンの名前を言うので、
 そんなにあの殺人鬼を気に入っていたのかと小さくため息を吐いた。
「今はいつだ?私は何時間寝ていた?あの後の私の記憶がない。
 今まであいつが出ていたんだな?奴は何をしていた?」
 クリスは自分が上半身裸なのに気づいて、あのレオン・サム・ソングがまたも自分の
 身体を勝手に使ったんだと察して怒りを感じた。
「彼は、いえ、貴方は何もしていませんよ。大人しくピザを食べてただけです。」
「大人しいだと?」
「ええ、レオンは、いえ、あなたの別人格は貴方を助けたと言っていました。
 それから悲しいお話を作って消えました。」
「助けた?騙されたな。奴は助けるどころか私を追い詰めたのだ。
 だからあいつが表に出てこれたのだ。」
「だとしても別に…。どうせ貴方自身の影です。治療をすればいずれ消えます。」
 ハーバートは時間が空いた時に人格乖離のケースを検索して調べていた。
 時間が掛かっても分裂した人格を統合することで治療できるらしい。
 クリスはクリスらしくなく激しい怒りを顔に出し、頭を強く左右に振った。
「違う!あいつは私の影ではない。別人、あいつは私とは違う別の人間だ!
 そして奴は私を消したいのだ。そのために脅迫さえしてきた。私は見た。
 確かにあいつはレオン・サム・ソング本人だ。奴は死人だ!!あれは死者の霊だ!」
 ハーバートはどうしていいか困り果てた。
「クリス…、レオン・サム・ソングは逃亡中です。よしんば死んでいたとしても
 死者の霊なんて現実には存在しません。死んだら何も無い。全て終わりです。」
「信じないんだな?だが私ははっきりこの目でレオン・サム・ソングを見たんだ!!
 決して幻覚ではない!あれは虚ろな幻などではない。
 まさに生きている奴の姿が目の前に現れた!
 あの男が鏡の中で私に向かって笑い、指を差して言ったんだ、お前は消えろと!!」
「クリス、落ち着いて下さい。お願いです。」
 怒らせないように、なだめようとハーバートは声を小さくした。
「いいですか、鏡に映っていたのは貴方自身ですクリス…。」
「わかっている。私の頭がおかしいとお前は言いたいんだろう?
 私が見たものをお前にも見えたなら信じるだろう。」
 ハーバートはとても悲しそうな表情でクリスを見つめ、その眼差しの意味に
 クリスは怒りを抱いた。
「やめてくれそんな目で私を見るのは。」
 ハーバートのいかにもクリスを憐れむ悲し気な目は精神の病への同情であり、
 それが堪らなく悔しい。真実を訴えているのに、お前は頭がおかしいと蔑んでいるのだ。
 クリスには侮辱された気分だ。
「アハハハハハ。」
「!!!」
 笑い声だ。クリスはびくっと周囲を見回す。
 クリスが起きたと同時にレオンも目を覚ましていて、交替したクリスの横に座っている。
 そうしてキレイな顔をクリスの美しい顔に寄せて耳元に囁く。
「ハーバートに何かを期待してもムダだヨ?こいつはかなりの無神経で合理主義者だ。
 ハーバートにはボクらの話を聞く気はないし、言っても理解できないヨ。
 言えば言うほど君は自分で自分がおかしいって言ってるようなものサ。
 ボクはそんな言い方はしなかったヨ。そういうのよくわかってるからネ。
 気を付けないと病院に入れられちゃうから。」
 ベッドに座るクリスと、その前に立つハーバート以外にレオンの姿は見えないが、確かに
 レオンの声がクリスに聞こえるのでクリスの顔から血の気が引いた。
「聞こえた!レオンの声だ!今のはお前にも聞こえただろう?」
 声はクリス以外ない。それ以外は部屋は静かだ。駐車場の車の音もない。
 ちょっとだけ顔をあげて聞き取る素振りをしてハーバートは答えた。
「いいえ、何も。」
「嘘だ!!はっきりレオンの声がしたじゃないか!」
「クリス、どうか…。」




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丁度1か月ぶりです!!
また来てくれてありがとおおお!!!

デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー322 悪霊の誘惑

June 16 [Sat], 2018, 12:00
 ハーバートがクリスの肩を抑えてベッドに横にしたいように動くのでクリスは強くその腕を
 払った。
「私は病気ではない!」
 怒って立ち上がりざま、ハーバートの胸を押した。ベッドに座るレオンはおどけた表情だ。
「オウ。お坊ちゃんの君も怒ると怖いね。アア、そういえば、君はボクの親父をなぎ倒したっけ。
 あれにはボクは感動したよ。怖いもの知らずとはいえ、ボクたちには恐ろしくって
 できない真似だ。君はきっと地獄で親父に毎日八つ裂きにされるよ。」
 そうして言いながらレオンは立ち上がり、ハーバートの前に立って振り向いた。
 するとクリスは驚愕して目を大きく開く。
「クリス?」
 ハーバートの横を恐怖でおののくような表情で見つめるクリス。ハーバートもつい横を
 見たが何もない。しかし、クリスは今、ハーバートの横に立ってこちらを振り向くような
 格好のレオンを目にしていた。
「レオン…サム・ソング…!!」
「アレ?見えてるの?」
 と言った途端レオンの姿が消えた。
 消えたレオンに驚き、クリスはレオンを探して視線を泳がす。
「クリス、ボクもいつも病人扱いだったから君の気持ちはよくわかるヨ。」
 すると今度はハーバートの後ろからレオンが顔を出して甘えるようにハーバートの
 肩に手を回した。
 ニヤニヤ笑っているレオン。ここにいるはずのない殺人鬼がまるで本当にいるように見える!
「ハーバート見えないのか?!レオンがそこにいる!」
 それからレオンは高身長のハーバートの身体を通過してみせた格好で手を振った。
「ハーイ?ボクの声はクリアかい?」
「出ていけ悪霊!」
「オー、いいね、でもこれなら君と直で話ができる。ネエ、セオドアが弁護士を通じて君の遺伝子を
 調べるキッドを渡したいらしいヨ。
 まずは自分の子供かどうか調べて、それからあの5人の男たちを調べるんだよきっと。
 君が誰の子供なのかそのロシアンルーレットの結果を待つのも
 楽しみだけど、君が貴族の称号を受け継ぐ予定だったのがなくなるのはちょっと残念だ。
 ボクの家は元はイギリス貴族だ。5人のおじさんは金はあるけど貴族じゃない。
 君も本音では貴族階級から落ちたくないだろう?あのハイツファイザーのクソ野郎を
 喜ばせるなんてボクらのプライドが許さないサ。そうだろう?」
 クリスが豚と呼ぶ万里子の形だけの夫・ハイツファイザー伯爵がクリスより唯一
 勝っているものが爵位の順位だった。
 しかしそれでも同じ貴族階級であり、そのプライドでは負けていない。
 別段レオンは父や叔父ほどは貴族階級に憧れはなかったが、万里子の夫になると考えれば 
 王族は無理でも貴族の称号は捧げたい。
 ハイツファイザーを追い落としてそれに代わる全てを与えたい。
 …ボクはあのクソ野郎をどさくさに紛れて殺したかったのに出来なかった。
 ワシントンクーデター事件を起こしたレオンの要求が万里子の夫の離婚もしくは死だ。
 そのハイツファイザーと万里子が契約結婚した直接の原因が叔父・ヨハンが
 何をとち狂ったのか万里子を襲うなどという蛮行を行いそれを阻止して救出したからだ
 という話を知った時にはレオンは呆れ、アマデウスは激怒した。
 ヨハンも自殺しそうなほど落ち込むなど、割と因縁深い相手がハイツファイザーだ。
 レオンは何かをたくらむ表情でクリスに囁く。
「遺伝子を調べる前にセオドアを殺してしまえば今なら君は自動的にスワン家を受け継ぐ。
 財産と権力と貴族の称号を全部ね。
 ボクはこの間みつけたオモチャをゲットしたからあれを使えば堂々とセオドアを殺せるヨ?
 取引しないかい?いい話だと思うヨ。」
 半分冗談だが、やろうと思えばできるはずだとレオンは考えた。
 大橋で出会った化け物、つまりマイケル・バンダムを操れる自信を持ち、
 あの化け物を道具にしようと考えたのだ。
「ニューヨークにセオドアは父親当ての恐怖のパーティーを開く為にまたくるんだろう?
 あの化け物の騒動に乗っかって始末するからアリバイは問題ないヨ。
 ネエ、セオドアを殺ろうよ?」
 そうしてセオドアの財産をクリスに継がせて、そのクリスを自分が乗っ取るわけだ。
 素晴らしい計画にレオンはご満悦だ。





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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー323 それは重大な真実

June 18 [Mon], 2018, 12:00
 さあ引っかかれれ男娼。ボクはスワン家の血統と繋がっている。君が誰の子供でもボクには
 スワン家の称号を得る所縁があるんだ。
「だまれレオン!お前のくだらないおしゃべりなど聞きたくない!!」
 レオンはびっくり顔になった。
「え?君まさかまだセオドアを慕ってるの?それともあいつの身体が気に入ったの?
 確かに君の頭はだいぶおかしくなってるようだ。」
「やめろ!」
「ボクには嘘や誤魔化しはしなくていいんだヨ。それにしてもああ、誰が君の父親なのか
 考えると面白すぎてボク、ククク、ハハハ。今頃あのおじさんたち家で震えがあがってるよ!
 毛布にくるまってブルブルブル震えてるのが目に見えるよボク!!
 おかしくっておかしくって腹がよじれるヨ!だって、君は全員と寝たんだ!!アハハハハハハ、
 誰が一番よかった?どのおじさんのアレがよかった?なんてサイコーのジョークだ!!
 ボクはあの狂宴を全部鑑賞したからわかってる。 
 誰が君の父親っていう当たりの引き金を引いて自殺するかも見ものだ!!
 今から楽しみ過ぎて考えるとボクは笑いが我慢できなくなるんだ!アハハハハハハハ!!
 アハハハアハハハハハハハ、アハハハハハハハハハハハ!!」
 上体を折り曲げて腹を抱えて大笑いするレオンの笑い声が部屋中に響いた!
 笑い転げるレオンはクリスとクリスの性の相手全員に降りかかった不幸が楽しくて
 仕方ないのだ。
 狂ったような甲高い笑い声!クリスの脳が壊れそうだ。
「やめろ、やめろおおおおおおおおおおおおおお!!
「クリス!」
 クリスが絶叫して、正気を失った様にハーバートが焦り腕を抑えようとした。
「貴方は疲れてるんです。どうか静かに。」
 ハーバートもクリスの身体目的だ。汚らわしい蛇だ。クリスはほんの少しも触られたくないと
 ハーバートを激しく拒絶した。
「やめろー!私は狂っていない!」
「ハハハ、叫べよ。喚けよ。そんなんじゃ誰も信じないしどんどん狂って見えるヨ。
 それでもセオドアは同情さえしないんだから君は本当に可哀相だネ。」
「貴様!それ以上べらべらしゃべるなら今目の前で死んでみせるぞ!」
「オー。出来ないヨ。ハーバートが止めるもん。」
「ならばやって見せてやる。」
 クリスはハーバートの懐に手を入れて持っている銃を奪おうとした。
「やめなさい、クリス!!!」
 ハーバートはクリスのボディガードでもある。当然クリスより腕力も体力もあるし、
 格闘技の技もある。すぐに抑え込み、ベッドに押し倒した。
「どけ!死んでレオンに思い知らせてやる。」
 怒り狂うクリスを力いっぱい抑えながらハーバートは唯一の希望にすがって説得した。
「マリコを!貴方はマリコを愛していないんですか?!」
 死ぬほど愛していると知っているくせにありえない事をいうのでクリスは逆に呆気にとられた。
「愛しているなら会いたいはずです!!本当に、このまま死ぬ気ですか?
 死ぬ前に一度もマリコに会わなくて貴方は本当にそれでいいんですか?
 マリコに一目会わずに消え去って、それでも彼女を真実に愛していると言えるんですか?」
「………。」
 レオンもハーバートもクリスの痛い所を突いてくる。クリスは悔しかったが涙が溢れた。
 マリコに会いたい…。この期に及んでそう願うクリスがいる。
 クリスが抵抗しなくなって、ハーバートは抑える力を緩めた。クリスは両腕で顔を隠して
 泣いた。
「大丈夫ですか?」
「私にかまうな。」
 こんな騒ぎの時にハーバートの携帯が鳴って、ハーバートは相手を確認すると出た。
「俺だ。今忙しい、後にしろ。何?カードの口座はセリーナ・ソング?」
 セリーナ・ソングの名前を聞いてクリスもハッとした。レオンも顔色が変わる。
 相手は暗殺組織、通称「カンパニー」だ。
 クリスの財布にあった謎のカードの正体が分かった。カードに支払われる金の出所、
 その口座名義人の名前にハーバートは衝撃を受けてクリスに話した。
「重大です。カンパニーの報告です。聞きますか?」
「わかった。」






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大阪の皆さま、大丈夫でしょうか?
皆様の無事をお祈りします。

デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー324 暴かれたレオンの繋がり 

June 20 [Wed], 2018, 12:00
 クリスはハーバートの顔色が変わった意味が分かっている。セリーナ・ソングはレオンの
 実の母で行方不明の女だ。
 精神病と疑われるクリスにとってその名前は真実に繋がる重要な情報だ。
 ベッドに押さえつけられていた体を起こしたクリスも一気に頭が冷静になり、さっきまでの
 騒ぎが嘘のように二人ともクールになって、報告を聞いた。
 逆にカードから母の名前を聞いたレオンの口が閉じた。
 クリスの視界からも忽然と消えてしまったが、クリスの目に見えなくなっただけでじっと
 先ほどの立ち位置で黙り込んで二人を睨んでいる。
 ハーバートはスピーカーにしてクリスと二人で詳細な報告を聞いた。
 電話の相手は感情もなく、ハッキング専属のハッカーの調査結果を朗読した。
「提示されたデビットカード あれは証券会社が発行したデビッドカードです。
 カードの所有者は64歳の女性で10年前から所在不明。女性はこの口座で株取引した
 報酬が入金される仕組みですが、
 女性に送金している株取引会社は別の名前の証券会社から送金されます。
 しかしこのどちらもがペーパー会社で実際には存在しない架空の会社でした。
 二つの会社は相互で取引し、そのペーパー会社二つのオーナーは同じ人物で、
 最終的に運営資金として個人銀行から出入金されます。
 この面倒で用心深い仕組みはマネーロンダリングでしょう。
 このシステムを構築した人物はかなりの技術者で、我々のハッカーでさえ、
 このシステムプログラムの鍵を突破するのに手間取りました。
 スイス銀行の口座で、銀行口座の名義人はセリーナ・ソング。現在行方不明の女性の口座の
 総資産は8億ドルです。」
 報告をレオンも聞きながらつぶやいた。
「ジュードの仕事だからネ。ボクと違って頭がいいんだ。」
 レオンはちょっと自慢した。
 …でもジュードのガードを短期間で突破するハッカーとはたいしたもんだ。
 調査内容を簡潔に知らせて電話は切られた。報告はこれだけだったが、
 実に興味深い報告だった。
 じっと聞いていたクリスの表情は自信を取り戻し、逆にハーバートが困惑の色を
 隠せなくなった。
「セリーナ・ソング。奴の母だ。」
 クリスらしい冷たい表情でそういうと、不安そうな顔でハーバートが答える。
「昨夜レオンは母は死んだと言っていました。
 ソング家では行方不明者はみな死んでいるようです。」
 わかりやすくハーバートの口ぶりが変わってクリスは口の端を上げた。
「私を信じたか?」
「信じられません。しかし、信じたほうが説明がつく。
 あのアマデウス・サム・ソングの妻で、レオンの母です。
 セリーナの口座に繋がるデビッドカードです。買い物をすればレオンの母親の口座から
 引き落とされるなら、息子が相続のその権利を持つでしょう。
 貴方がどうやってレオンの母親の口座から振り込まれるカードを手に入れたか謎です。
 たまたまカードが勝手に貴方の財布に入り込む魔法を使われたのでない限りは。
 魔法も霊もどちらも非科学的ですが。」
「誰かが渡した。」
「そうです。あなたの別人格だと思ったレオン・サム・ソングとのリアルな繋がりが
 このカードです。レオンがもし本当に死んでいて霊としてあなたに憑依したのなら、
 レオンの関係者から入手した可能性が想像できます。全くありえない話ですが、
 レオン自身が自分は死んだと言っていました。セリーナ・ソングも死んだと。
 従弟のジュード・ヴァレンタインも全員です。」
 それを黙って聞いているレオンは両腕で自分を抱き、嗚咽を漏らした。
「う、う、う、く…う。」
 クリスの精神が安定するとレオンの泣き声も聞こえなくなった。
 レオンは父親を殺してマフィアのボスの座を手に入れた。
 今も部下がニューヨークにいるだろう。クリスは厄介な事実を予想した。



 

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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー325 裏の裏をかく

June 22 [Fri], 2018, 12:12
「奴は…、奴の部下か、奴に近しい誰かと接触したのだ。それ以外このカードを私の財布に
 入れた理由が考えられない。私が目覚めないと思っていたんだろうが…こともあろうに
 犯罪者が私の身体を乗っ取った。許せない。」
「私は困惑しています。」
 頭が混乱したハーバートはすっかり疲れ果てた顔だ。
「私もだ。敵が多すぎる。」
 クリスも顔色が悪い。事実が分かってすっきりしたが、だからと言って敵が死霊なら
 それにどう対処していいかわからない。
「あの…今、レオンはどんな表情ですか?」
 霊などいないといった同じ口でそう聞いてくる恥知らずをクリスは鼻で笑って見せた。
 クリスを病人扱いしたハーバートが狼狽えているので溜飲を下げ、自分でも不安だったが
 精神病ではないとわかってそれでもほんの少し元気になったようだ。
「セリーナの名前を聞いた瞬間レオンは消えた。」
「そうですか。昨夜もセリーナの話をしている最中に泣きながら眠ってしまいました。
 彼の弱点かもしれません。」
「母親が…。」
「男を狂わす魔女だそうです。」
 レオンの顔が母親似ならばどんな美女かは想像がつく。クリスの母も同じだが、
 魔女が母だと子供は苦労する。
 二人は黙り込んだが、少ししてハーバートは時間を気にし始めた。
「貴方を一人にするのは心配ですが、これから人と会う約束があります。」
「遺伝子検査のキットだな?」
「ええ。…。」
「先ほどレオンが言っていた。」
「すぐに戻ります。」
 青白いクリスの顔色を見るとほんの少しも離れていたくないが、明日が今日より
 マシかどうかもわからない。
 約束の場所はそう遠くはない。ほんの2時間なら大丈夫だろう。それにもう一人、
 レオンもクリスに死んでは欲しくないはずだ。
 ハーバートは足早に部屋を出て駐車場に止めてあるレンタカーに乗って行った。
 一人きりになったクリスは、今にもレオンが姿を現すのではないかと緊張した。
 レオンは傍にいたが、どうやら何もしない様子だ。頭を抱えるクリスを嘲笑い。
 室内にあるデジタル時計の時間を見た。
「ハーバートが出かけなかったら面倒だったけど、クリスが落ち着いてくれてよかったヨ。」

 ハーバートが出かけてから少しして、モーテルのフロントにいる男が、時間を見て、
 何かの荷物を持って受付を離れた。
 それは最近長期滞在をしている客の頼まれごとだ。客は裏黒い背景を持つ男だ。
 受付の男は、背の高い気真面目そうな黒髪の男からは金髪のキレイな男が逃げないように
 金を渡されて監視を任されているが、それより多くの金を監視を頼まれている側の
 金髪の男が握らせてくれた。
 クレジットカードで買い物をし、配送先はフロントにして預けている。それを持って男は
 訳あり金髪の部屋に行った。呼び鈴を数回鳴らすと美人が顔を出した。
 この男は男娼だ。
 それも権力者相手の高級男娼で、ちょっとしたトラブルが起きて隠れているそうだ。
 黒髪は世話役で監視役。可哀相な陰売に同情を少しだけしながら男は合言葉を言った。




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