デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー266 死は一瞬だった

February 03 [Fri], 2017, 12:40
 ニューヨーク上空から見ると大きなハドソン川にかかる大橋はライトアップされて
 逆に川辺の周囲の森が真っ黒になって際立つコントラストの風景だ。
 その大橋に立つ金髪巻き毛の美青年をロバートはよく見直した。
 ロバートの濃い栗色の巻き毛と対照的に輝く黄金の巻き毛。整った顔に青い青い瞳。
 そしてロバートは自分が支配している犬と一緒に歩き、晃の横に立って晃の横顔を見る。
 背の高いロバートよりも少し背が低い晃。
 ふんわり茶髪のクリクリの目。その笑顔にロバートは救われた。
 なのにその晃の顔が憎悪で歪んでいる。
「アキラ。」
「……。」
 ロバートが知る明るく呑気ですぐはしゃぐ性格の晃とは思えない憎悪の表情。
 こんな顔の晃を見たのは俺は初めてかもしれない。…ロバートは晃に同情した。
 殺されて、勝手に人生を奪われたのだから仕方ない。
 人生を失った晃の後悔、父親として旬を、夫として万里子を、
 自分の感情優先で二人をちゃんと守らなかった己の未熟を悔やむ晃の死んでからの
 苦悩を誰よりもよく知る親友・ロバートだからこそ晃がクリス・スワンを憎むのも
 理解している。
 そうではあるが、しかし、と懸念がロバートによぎり晃に注意した。
「だが、ここにクリス・スワンがいるはずがない。他人の空似じゃないのか?
 お前とソージのように、瓜二つの他人の可能性があるだろう?」
 晃は首を左右に振ってきっぱり否定した。
「いや、あいつはスワン本人だ!!絶対そうだ!
 だって総司君と俺だって良く見れば雰囲気が違うだろ?
 スワン、あいつの顔だけじゃなく、あいつの雰囲気でわかる。間違いない。
 あいつはクリス・スワン、俺の敵だっ!!
 ロバート、お前の言いたいことはわかってる。だけどそれを俺に要求しないでくれよ?!
 だって俺、俺があいつをこの手で殺してやりたいくらいなんだ!
 それが出来ないこの状況が恨めしいくらいなんだ!
 ロバート、俺は俺から万里子を奪った男を助けない!!
 俺の目の前で苦しんで死ねばいい!!殺して、あいつを永遠に万里子から
 引き離してやりたい!!頼むロバート、お前もあいついだけは助けないでくれ!!
この可愛い犬たちの命ををあいつの為に捧げないでくれ!!」
「…アキラ…。」
 晃の声音は本気だった。そんなことを、アキラですら想うんだな…。
 晃を殺したのは万里子だ。
 万里子の願いを真に受けてクリス・スワンは晃を暗殺者の手で殺させた。
 死は簡単だった。
 一瞬で先程まで生きて酒を飲んでいた晃を投げ落として肉体から追い出した。
 何も抵抗さえできないまま、死ぬとは全く思わないまま、奪われた…人生を。
 しかし、万里子を憎む気持ちはこれっぽっちもない。
 そんな晃でも実際に手を貸した男は許せないのだ。
 お前もやっぱりそうなんだな…アキラ…。
 ロバートは妻に裏切られて妻を自分の激情に任せて殴り殺した。
 晃は妻を許し、恋敵を憎悪している。
 自分を追い出し、最愛の妻を奪った敵をこの世から消し去りたいという。
 それはたぶん万里子の本心を知ったからだ。
 まだ愛の復活の可能性がある二人にとって、クリス・スワンの存在が邪魔なのだ。
 マリコの心が変わるのを、マリコがあの男を愛する日が来るのを
 きっとアキラは恐れているんだろう。
 そう考えていたロバートは別の重大な異変にも気づいた。
「?待てアキラ、もう一人いるぞ!!」
「もう一人?」





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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー267 レオン、何故お前がここに?

February 08 [Wed], 2017, 13:09
「待てアキラ、もう一人いるぞ!!」
「もう一人?」
 晃の憎悪の眼はクリスに向けられているがロバートはクリスに重なるように立つ
 別人を見出した!!
「もう一人って、どこだ…?」
 晃もロバートに指摘されて自分が何を見落としているのか探した。すると、
 確かにもう一人の人間が見えてきた!!さっきまで見えなかったのに。
「何?!」
 クリス・スワンの姿に重なるその姿を、その男の顔を、晃はよーく知っている!!
 これもまた万里子を奪おうとした敵、
 クリス・スワンよりある意味やっかいすぎる強敵だった男。
 もし旬が殺していなかったら、
 世界中に更なる被害を与え、もしかしたら万里子も巻き込まれて
 儚く死んでいたかもしれない。
 許しがたいその男、まさに因縁のありすぎる男の顔であると気ずいて晃は正直混乱した。
 ふわりした金髪、どこか少女のような美しい顔、甘えた表情。
 そのくせ、その性格は冷酷で残酷。面白がって他人を殺せるサイコパス。
 世界を支配しようと無謀な戦いを仕掛けた男!!
「レオン・サム…ソング!!何故ここにいるんだ?!!!」
「確かに、アマデウスに地獄に引きずりこまれた…。」
 ロバートの言うとおりイギリスに拠点のあるクリス・スワンが何故ここにいるのか
 不思議ではあるが、それよりもレオン・サム・ソングがよりによって
 クリス・スワンに張り付いて
 この地上にいる不思議よりはまだ偶然も含めてありそうだった。
 レオン・サム・ソングはここにいるはずのない男。地上に這い出るには偶然は
 あり得ない。
 晃とロバートはこの異常事態が何を意味するか見極めようと暗がりに立ち止まった。
 闇に潜む晃と光に立つクリス…。
 大橋の歩道に立つクリスの前に現れた化け物は暗闇から静かに這い寄ってきている。
 大きな体の一匹に比べれば一回り小さい一匹。
 バンダム兄弟は両手足を左右それぞれ別々に動かしカサカサ地面に突いた指先で
 音を鳴らしている。つまりマークたちは手足の指だけで移動しているのだ。
 だからどこか重みを感じさせないし、少し地面から浮いて見える。
 そのせいでクリスの傍らに立って、突然現れた異形の獣を見るレオンには
 バンダム兄弟が闇から這い出した霊魂に見えて焦っていた。
「おいおい、なんだいこいつは、地獄からの使者か?なあ、
 お前はボクを連れもどす為の処刑人か?
 じゃあ、親父はどうしたのサ?スネークマンに負けたのかい?
 それってボクにとって良いのか悪いのか…。
 だけどどっちみちボクは地獄には帰らないよ?
 この男がボクの寄りしろになっている限り、お前はボクを地獄に連れ戻せない。
 この寄りしろ、クリスが殺されない限りね?」
 レオンはクリスの後ろに引きつつクリスの表情を確認すると、冷静な顔で、
 しかしクリスが同じ物に視線が合っているとわかって驚いた。

 


 

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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー268 クリスに死なれちゃ困る

February 13 [Mon], 2017, 10:30
 虚ろな目でこちらを見る化け物と同じくクリスも虚ろ…化け物を無感動に見ている…。
 そのクリスの視線と化け物を見比べるレオン。
「あれ?クリス、君にもこの魔物が見えているのかい?もしかして…知らなかったけど
 君には霊能力があるのか、それともまさかこの化け物は生きている実体で
 悪霊じゃないのか?」
 クリスの目に見えている…どちらの可能性か?
 レオンは改めて蜘蛛男を観察しなおした。
 不気味な蜘蛛のように細い手足の指先を地べたについてバンダム兄弟は
 獲物を逃がさないように見つめながらかさかさ歩いて暗がりから橋に這い入り、
 大橋のライトの下で影ができたので、生き物だとわかった。
 魔物が実体であるほうが不思議だが、地獄からの迎えではないようだと思い、
 改めて別の意味で驚きなおす。
「ワオワオー。こんな化け物実在したんだ。じゃあビックフットもいるのかな?
 なんで大都会ニューヨークにこんな化け物がいるのか凄く興味深いヨ!
 それにしてもクリスは生まれて初めて見る化け物に対峙しているのに、
 ぜんぜん驚きも喚きもしないんだネ。君ってさすがボクの親父を
 抹殺しようとしてくれただけあって豪胆なところあるんだ。
 顔は女みたいなのに感心するなー。」
 と、自分も似たり寄ったりのくせにレオンは褒めた。
 別段恐怖で動けないわけでもないクリスは見た目と違って男らしく見えるがしかし
 クリスは死にたいのだからこの化け物が自分に死をもたらそうと何も
 恐れる必要がないだけだ。
 男のプライドはだいぶ前に粉々にされていたが、それでもスワン家のスーパーパワーを
 いずれこの手に奪い、穢された過去を乗り越えられると画策した。
 そのスワン家の権力財力を剥奪された以上、クリスはただのその辺にいる若い男
 でしかない。クリスは貴族の御曹司として育ち
 なんの嫌がらせかセオドアの意向で帝王学も学んできた。
 そんな男が普通の男になるのは、無理なのだ。
 万里子の前でみっともなく生きるくらいなら死にたい。
 惨めな人生を終わらせたい…そんな風に死に場所を探していたクリスの前に
 現れた化け物は、この醜悪な人生を終了させてくれるかもしれない救いの天使に
 思えた。 
 しかし生き返りたい、生きて人生をやり直したいレオンは逆にクリスの死で
 全部終わるから寄りしろが死ぬのは怖い。
「つまりこいつは危険な状況だ。クリスはさっきっから死のうとしている様だったけど、
 死のうなんて、ジョーダンじゃない。ボクは許さない。ボクとしては君に死なれちゃ
 困るんだ。」
 それからレオンは二匹の化け物の頭の中を探った。
 クリスに対してしたようにチャンネルを合わせてみたのだ。
 二人をスキャンし始めてすぐにレオンの意識はマークにハジかれた。






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デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー269 脳をスキャン、感染の悲劇

February 15 [Wed], 2017, 13:16
 二人をスキャンし始めてすぐにレオンの意識はマークにハジかれた。
 しかしはじかれる寸前にマークの脳から一部情報を得た。
「オー、誰だい?なんだか風船みたいに丸っこいデブがお菓子を食べている
 イメージが見えたよ?あれがこいつの正体なら随分痩せたね。まあいい。」
 次にマイケルに意識を絞って脳をスキャンした。すると、何もない。何も感じない。
「オオ…こいつは器だ。何もないぞ。意識がないというか、何もない肉だ。
 これならクリスと違って今すぐボクが簡単に操れる。」
 マークはどうやらまだ自我が残っているようでレオンの侵入をセキュリティーが
 防御した。だが、マイケルは空虚で書き換えできそうだ。
 それは旬にとっては悲劇だ。たぶんマイケルだけが組み替え細菌「みゆき」を
 再び食したせいで脳の深部まで感染してしまったのだ。
 可哀相なマイケルが廃人になった事実は全員の無事を願う旬を苦しめるだろう。
 そうしてレオンはマイケルの脳に命令データを送って支配を始めた。
「フフフ。それにしても面白いなー。いったいこいつらはなんなんだ?
 アメリカ政府の人体実験で生まれた生物兵器だったら、ワオー、
 そういうのコーフンする。
 ゲームみたいだ。この生物兵器を操ってゲームがしたい。アア、そんなことして
 遊んでる場合じゃない。
 ボクは悪ふざけは卒業してマリコと結婚して女の子と男の子をマリコに生んでもらって
 一生幸福に暮らすんだ。だからアメコミゲームは卒業サ。イイネ?わかってるネ?」
 自分に言い聞かせブツブツ一人ごとを呟きながらレオンの透明な青い瞳が光り輝く。
 大橋の出入り口付近の暗がりに隠れるロバートは晃に話しかけた。
「何かおかしいぞ。」
「ああ、マイケルは何故じっとしてるんだろう?さっさとクリス・スワンを
 食えばいいのにさぁ。」 
「アキラ…。」
 穏やかではあるが咎めるようなロバートの声音に、晃は反発した。
「なんだよ。だって俺はそんなにいい人間じゃないよ。」
「いいや、俺は知ってる。お前はいい奴だ。」
「違う…生きてる時は悪い事もしたんだ…。」
 晃は過去に自分が奪い取った会社の社長を自殺に追い込んだ苦しみを過ぎらせ
 不安そうに何回か瞬きした。
 晃は人が食い殺されるのを楽しめる性格じゃないとロバートは信じている。
 例え敵であっても、後できっと罪悪感で苦しむだろうとロバートは
 晃を心配しているのだ。
 レオンはマイケルの脳支配を急ぎ集中した。
「器、お前にボクのチャンネルを刻んでやる。」
 レオンは右手をマイケルに向けて抑えるような素振りをした。すると、
「―――――。」
 クリスの前に屈んでいるマイケルはまるで何か見えない大きな手で頭を
 抑えられているようにぐーっと地面に頭から上体を落として歩道に顔を寄せた!!




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色々故障でキッツイ事態だよ〜〜!!

デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー270 生物兵器を入手

February 19 [Sun], 2017, 10:37
「器、お前の脳にボクを刻んでやる…!」
 レオンは右手をマイケルに向けて抑えるような素振りをした。すると、
「―――――。」
 クリスの前に屈んでいるマイケルはまるで何か見えない大きな手で頭を
 抑えられているようにぐーっと地面に頭と上体を落としてコンクリに顔を寄せた!!
「フフッ。」
 レオンの瞳の中で大きな体のバケモノは小さくなって見える。
 マイケルの脳に今レオンは自分の記憶を逆送信してコントロールできるようにしている。
 この生きた兵器がどこの機関から逃げ出したか知らないが、
 ちょっとお気に入りの武器を見つけて自分のコレクションにしたくなったのだ。
 理性ではほうっておけばいいと思いながら、欲しい物をみつけた子供の感情は
 やっぱり欲しい欲しいと止まらない。
 昔から武器を扱ってきたレオンだから、たまたまみつけた掘り出し物のお宝武器を
 やっぱり放置できないのだ。なんとなくこの化け物は使えると直感が教えている。
「アア、懐かしいな…。」
 あの晩を思い出す。叔父貴・ヨハンの遺産、超破壊兵器の試作機をスクラップと呼んで
 見過ごしていたが、
 顔を失った絶望の中、少しの希望にすがって初めて起動させた夜。
 上空に集まる暗雲に向けて光の一撃が、
 神に逆らい天上を閃光が焼き払ったあの夜の衝撃、
 そして腹の底から湧き上がる喜び。
 今、化け物に刻印しようとするレオンはあの超兵器を手に入れた時と同じように
 宝物ゲットにわくわくしている。
 レオンがマイケルをスキャンしている最中、クリスは襲ってこない化け物に失望し、
 自分から近寄ろうと歩き出した。スッと前に動くクリスに唖然とする。
「ええ??」
 自分を置いて歩き出すクリスにびっくりしたレオンは罵る。
「おいバカヤロー、待てヨ、まだ上書きしきってないぞ?!」
 当然クリスの背中は無視だ。
「クリス、君マジで死ぬ気なのか?一回モーテルに戻って一晩寝てから決めようヨ、
 朝飯を食えば気分も変わるサ、っていうかそんなに死にたいなら霊魂だけ
 体から勝手に出て行って要らないこの肉体はボクにくれよ!!」
 もしクリスが死ねばレオンも寄り代を失う!地獄でアマデウスが待っている!
 スネークマンでも嫌だ!!レイプ三昧の愛人になんかなりたくない!!!
 少し後ろにいるマークもマイケルの異変を感じ取ったのだろうか?
 上半身と首を左右に動かし、
 自分より少し大きくなった弟の様子を気にしているようだ。
 マークはそんなに腹が減っていなかったが、せっかくだから近寄ってくる餌を
 食べようとカサカサ前へ進んだ。
 クリスの無茶に焦ったレオンはマイケルの支配に集中できず、
 そのせいでマイケルも金縛りが解けて動きだす。
 マイケルは空腹だ。口を大きく開けて、涎を流しながらギザギザの牙を見せた。
 そうしてクリスは目を閉じた。
 マリコ…死んだら貴女に見えないように貴女の傍で…貴女を見守り続ける…。
 そうしてマイケルが吠えた。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」




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最近心身ともに病みが悪化。
みなさま、お元気ですか?
P R
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