デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー222 道の選択

October 01 [Sat], 2016, 12:20
 あまりにも思い出に浸りすぎて、意識が混乱し始めたレオンはこの幼い頃の
 思い出からも逃げ出そうと思った。
 立ち去る間際に、門から女が顔を出した。女は死人だ。かつてレオンの恋人だった女で、
 レオンに殺された後もレオンに未練を残し、この屋敷に呪縛されているようだ。
 愛してるわレオン…。
 女の死霊はレオンに手を伸ばしたが、レオンは後ろに引いて
 冷たく言った。
「ゴメンね。もうボクは君を愛していないんだ。」
 その言葉に絶望して恋人だった女の死霊は泣きながら消えてしまった。
「天国に行ってくれ。」
 レオンは過去の恋人に懺悔もしないまま、自分の悲しみに浸って涙を零し、
 泣きながらタクシーに乗るとニューヨークに向かわせた。
 丁度今からマンハッタン側に戻るなら再び橋を渡るだろうレオンと、
 レオンとジュード、ヨハン、ハンス、アマデウス、サム・ソング一族全員を滅ぼす
 きっかけになった桐生旬の乗るタクシーがニュージャージーに向かっている
 タイミングだった。
 このまま走ればレオンが高級住宅街を抜けて橋を通過する時間と、
 旬が大学院からタクシーで走って丁度橋を渡る時間が重なる。
 スミス教授に追けられていることも、レオンの復活も何も知らない旬は丁度
 大学院を出てニュージャージーの元サム・ソング家の兵器工場に
 向かっていたので、橋ですれ違う可能性があったかもしれない。
 しかし、レオンは途中でニューヨークに戻るのを止めて進路を変更した。
 もちろん本当にすれ違っていたかどうかはわからない。
 なんにしろ橋を渡る旬と道を変えたレオンは結局互いにその存在を
 気づかないままで済んだ。

 レオンはニューヨークに戻らずにリバティステートパークにタクシーを走らせた。
 それは心を癒す為だった。酷く陳腐な、レオンらしくないことをする為だ。
 ニュージャージー側から自由の女神を見るフェリーに乗ったのだ。
 観光客と一緒にリバティ島に向かった。自由の女神を求めて。
 別段ジュードとの特別な思い出があるわけではなかった。
 自由の女神は日常の風景で、ジュードとも見ていたし、女の子とのデートの思い出も
 あったが、そういうことではなく、自由の女神というネーミングに改めて、
 というか、なんだか初めてその言葉の意味や、重みを感じた。



人気ブログランキングへ
にほんブログ村
また来てねクリックありがとうございます。

デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー223 幻惑の女神

October 03 [Mon], 2016, 13:14
 自由。ボクは自由になったんだ。…地獄からも父・アマデウスからも、運命からも
 自由になったレオン。
 今日もまた終わる。地獄から生還して二日目が終わろうとしている。
 レオンはフェリー最上階で川と街を見つめた。
 リバティ島が見えて、自由の女神が目前に大きく見えてきた。島に上陸すると、
 女神のクラウンに上る人ははしゃぎながら歩いて行くが、レオンはクラウンには
 興味がなく、ただ自由の女神を見上げていたかった。
 この世界に家族はもういない。
 そう思いつつ、自由の女神を見上げると、
 これまで女神像をただそこにあるだけのシロモノだと思っていたレオンの心に
 不可思議な感情がわいた。
 ジュードは天国に召された…。ボクも地獄を脱出した。ボクにはチャンスがある。
 人生をやり直して、マリコと結婚して、良い人間になって今度は天国に行く。
 そうすればジュードに会えるカナ?ジュードに会う可能性がボクにはまだ
 あるのかもしれない…。レオンの唇が動く。
「ボクの女神。」 
 女神。自由を示す女神。ボクの生きる道を教えてくれる女神。
 女神よ、どうか道を示してくれこのボクに。
 自由の女神は青銅の色。しかし、レオンはその女神に万里子を見た。
 青銅の女神像が、ウエーブの掛かった黒髪、輝く白い肌の麗しい美女に変貌する。
 そうだ。女神への巡礼をレオンはしにきたのだ。
 黒髪の女神は裸体を自分の腕で隠しながらレオンをみとめ、見下ろして
 艶やかに微笑んだ。
 レオン…。
 マリコ…。
 レオンの、肉体はクリスの目から涙が溢れる。
「マリコ。」
 もう本当に君しかいなくなったヨ。ボクの世界には君だけだ。
 レオンがそう思考するのと同時に別の意識も同じくそれを感じた。
 私の世界にはマリコしかいない…。
 レオンの意識と重なって、クリスの意識が目を覚ます…。
 レオンと一緒に像を見上げるクリスの青い濃い瞳は愛する女神を見つめて涙を流す。
 ボクの、
 私の、
 マリコ…。




人気ブログランキングへ
にほんブログ村
また来てねクリックありがとうございます。

デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー224 そんなにクリスが好きなの?

October 04 [Tue], 2016, 12:56

 レオンの横顔はマリコに祈って涙を流す。
 レオンと重なって、クリスもそこにいる。
 同じように孤独の痛みを抱く二人は、同時に同じ女神を求め、祈り、
 泣いた。
 その二人の目に映る、幻の万里子はキラキラ輝く黒い瞳を細めて、優しく微笑んで、
 囁く。
 あなたには私がいるからもう、何も…怖くないのよ…。
 クリスは涙を流し、目を閉じた。
 目を開けたのはレオンの意識だ。
「ボクにはマリコがいる…。」
 私にはマリコしかない。
「会いたい…この世界で最後に残ったボクの希望…。」
 私にとって唯一つの光…。マリコ…。
「マリコ…。」
 レオンは目を閉じて、もう一度目を開けた。幻は消え、作り物の硬質な巨像に戻った。
 自由の女神像は片手を天に上げて、炎を模した松明を掲げている。
 その松明の示す先に幻の明かりが見えた。
 会いに行こう。ボクのマリコ。
 レオンの心は痛みから立ち直る為に、ジュードへの未練を捨てて、小王国に向かうと
 決意した。心が決まったレオンは女神を見上げて少しだけ微笑む。
 そうして女神への巡礼を終えたレオンを乗せたフェリーがリバティパークの
 フェリー乗り場に戻った。
 観光客に紛れて、レオンも船を下りた。
 今日のホテルかモーテルを探そうと思って歩いているレオンが、突然笑った。
「ぷっ!くくく。」
 別れた家族を思って悲しんでいたレオンだったが、やっとレオンらしい表情に
 戻って、いたずらっ子のように肩を震わせて笑い出している。
 降りていく客の向こうに、身長190cmはある長身の男が立っている。
 きっちりスーツを着て、黒髪を丁寧に梳いた、真面目そうに見えるそいつを一目見て、
 レオンは可笑しくなってしまったのだ。それはハーバートだ。
 クリス・スワンを愛する男がクリスを探し当てて目の前にいる。
 ハーバートは愛するクリスの無事に安心したが、緊張した顔だ。
「クリス!!」
「お前、そんなにクリスが好きなのか?」
 クリスの行方を追うハーバートはレオンがクレジットカードを使う支払い履歴の明細を
 カード会社から更新情報を受け刻々調べ上げ、このフェリーに乗った時間と
 帰りの時間を計算し急いで、というか決死の走行でニューヨーク側から車で爆走し、
 待ち構えていたのだ。



人気ブログランキングへ
にほんブログ村
また来てねクリックありがとうございます。

デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー225 恋の執念

October 07 [Fri], 2016, 10:32
 レオンはもう可笑しくて笑いが止まらない。
「クククク、おまえさ、ほんとにストーカーだ。」
 その執念に驚く以上にこいつバカジャネーノ?という腹がよじれる可笑しさだ。
 いくら貴族の坊ちゃんでも成人男性だぞ?2、3日いなくなたってそんなに
 心配することないだろ?これじゃあクリスが嫌がってストーカー呼ばわりする訳だヨと、
 クリスの迷惑が実感できた。
 クリスとハーバートの過去も色々あったんだろうなと推測出来、
 あのセオドア・スワンといい、このハーバートといい、クリスも可哀想にと、
 他人の不幸で笑っている。
 しかしハーバートの執念のお陰でレオンは腹から笑えたし、ちょっと元気になった。
 悲しみは終わりだ。
 レオンはジュードにいつか会うんだと決心した。
 クリスの顔をしたレオンはハーバートに向かって走った。
「ハーバート!会いたかった!」
「クリス、正気に戻ったんですか?!」
 正気のクリスなら会いたかったなんて言わないのだが、ハーバートもテンパっている。
 笑顔で向かってくるクリスを抱きしめたいのか、捕まえたいのか、曖昧な気分で
 両腕を大きく広げると、レオンは地面を蹴ってそのハーバートに勢いよく
 膝蹴りをかました。
「う!」
「きゃー!」
 悲鳴を上げる通行人を無視し、
 どおっと倒れたハーバートの上をポーンッと飛び越えてレオンは振り向いて
 舌を出した。
「べー。こっちから連絡するから放っておいてヨ!」
「待ちなさいクリス!!」
 御主人に向かって命令する恋の下僕は急いで起き上がり、レオンを追いかけた。
 そうして恋心でバカになった男とレオンは追いかけっこで走りだした。
「アハハハハハ。」
「クリース!」
 他人を押しのけ、ぐるぐる回って、わざと公園内を駆け抜けると、
 レオンはタクシーを待たせていたので、ハーバートを十分振り回して遊んでから
 タクシーに急いで乗り込み発車させた。そうしてレオンは再び車の後部席の窓から
 手を振ったり、アッカンベーをしたりして逃げて行った。
 ハーバートは去って行くタクシーを足で追いかけて走ったが、気を取り直して、
 駐車している自分の車に戻って追いかけようとした時にはもうどこかに行ってしまい、
 諦めて、顔を歪めて唸った。
「くそ!!」



人気ブログランキングへ
にほんブログ村
また来てねクリックありがとうございます。

デモンドリーム・マンハッタンの悪夢ー226 異形の獣

October 08 [Sat], 2016, 13:04
 シュン・キルユーを追って秘密の地下倉庫に侵入したスミスは恐るべき光景を目撃し、
 思わず恐怖で後ずさりした。
 コンクリ壁で囲まれた広い殺風景な倉庫の通路扉寄りの空中に極端に頭が小さく、
 手足胴体が細長く曲がった異質なモノが空中で暴れていた。
 スミスの目は大きく開き、ぶわっと冷や汗が流れる。
「ば、化け物…!!」
 まるで蜘蛛が人間に変身しようとしたのに失敗したか、もしくは
 蜘蛛が人間になったかのような化け物は牙の生えた口を開けて絶叫した。
「グアアアアアアアアアアアアアア!アアアアアアアアアアアアア!!!」
 その咆哮は体の大きなスミスですら体をびくっと強張らせるような腹に響く
 振動を与えた。
 この声だけで子供などは恐怖で気絶しそうだ。
 スミスが空中でもんどりうつ化け物に驚愕している最中、旬は敬愛する甘栗が
 無事なのを確認し、転がるように駆け寄っていた。
「せんせええええ!!!」
「桐生君!」
 駆け寄る旬は甘栗先生がケガをしていないか気にして泣き顔だ。
「先生!!よかった!!無事だったんですね!!」
 スミスの聞き取れない言語でシュン・キルユーが翔っていった先には、
 化け物を繋いだの鎖の付いた寝台の腕側に眼鏡をかけた極々普通の日本人タイプの
 背格好が小さい男がいて、化け物を捕らえている鎖を必死で握ってなんとか
 抑えようとしている。
化け物は赤い目を剥き、凄く小さい顔を左右に振り、身体を仰向けにしているが、
 どうやら下にある寝台に鎖で繋がれているため空中で飛び上がったまま
 鎖を外そうと腕や足を左右に激しく動かして苦しそうに絶叫しているとわかった。
 そして足側にも男がいた。こちらは背が高い、顔は東洋人らしい吊目、凶悪な人相で、
 腰を落として両足を力いっぱい踏ん張り、飛び上がる化け物を抑えている。
 足側のほうが下に引っ張る力が強く、腕側にいる人物は抑えきれないようで
 やや足が浮きそうだ。
 よくよく見ると何故か化け物の首には点滴のチューブが付いていて、
 点滴袋は落ちてしまっているが、チューブだけブンブン飛び回り、
 チューブですら当たれば凶器と化す救いようもないほどの強暴さだ。
「桐生君!!」
 甘栗の声はかなり苦しそうだ。横嶋も悲鳴を上げた。
「き、桐生うううううう、助けてくれえええ、うああああああああああ〜〜〜。」
 化け物を抑えるのが限界の二人は汗だくだ。
「グウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」
 化け物の吠え声は謎の地下空間に響き渡り、スミスは正直ずっと体が震えている。
 シュン・キルユーは、背の小さな男の鎖を一緒に引こうとした。
 しかし化け物がのたうち非常に細くて曲がった手足を振り回すと、手枷足枷に繋がれた
 銀色の鎖はまるで鞭のようにしなって蠢きキルユーはうまく握り切れていない。
「先生!!」




人気ブログランキングへ
にほんブログ村
また来てねクリックありがとうございます。
P R
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:sibaenn
読者になる
https://yaplog.jp/sibaenn/index1_0.rdf
2016年10月
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
月別アーカイブ