凶美少年の甘い蜜は媚薬・麻薬・毒薬ー164 恋心…悲しくて

October 01 [Wed], 2014, 12:06
 旬が顔を洗いに行って、緊張が解けた大人は微笑む。
「助かった。もう、まるで赤ん坊で我々も困り果ててました。」
「すみませんでした。普段はむしろ大人びて冷静な子なのです。私も驚きました。」
 やっと静かになってみんな一息ついてお茶を飲んだ。
 しばらくすると泣きはらした旬が恥ずかしそうに怯えた感じでふらふらやってきた。
「す、すみませんでした。」
「うむ、桐生君。出かけたいなら一言私に断ってから行きなさい。」
「……はい……総司さん。」
 すっかりしょげきった旬の肩をぽんぽん叩いて総司は言った。
「あの女の子がみゆきちゃんか?」
 旬は黙ってコクンと頷いてまた泣き出した。
「ううう、ぐすっ、ひっく。」
「彼女の映像はここで消去する。いいな?」
 旬はがくーっと首を落として頷き、総司がフーッと一息ついてからカメラを取って
 警察の皆さんの見ている証人の元みゆきの画像を消去した。
 それを見ながら旬の目はまた涙涙でいっぱいで、ずーっと止まることなく
 流れ続けていた。
「うううう、うえええええん。ふうう。ふええええええん。」
 総司は目を閉じて、この大きな赤ん坊の、ずっと昔の孤独な幼い頃を思った。
 この酷い情緒不安定な子供を私はどう扱うべきかなのか……。
 子供を持ったことのない総司の手に余る問題だった。
 旬は総司に連れられて警察に挨拶してヘリに乗った。
 空を飛びながら旬はずっと項垂れたまま声もなく死にそうなくらい落ち込んでいる。
「……。」
 総司は旬があまりに深いダメージを受けているのでどう接していいかわからず
 黙りこくった為に二人ともお通夜みたいな状態になってしまった。
 ホテルに戻り旬を部屋に連れて総司はそっと自分の部屋に戻った。
 旬はベッドに突っ伏してそのままもう二度と会う事のない少女を想い続け…泣いた。
 次の日の朝、総司が行ってみると、旬はベッドで寝込んだまま起き上がれなかった。
「桐生君、どうだ朝食はいけそうか?」
「……僕…いいです。総司さん一人で行ってください……。」
「うむ。」
 総司は部屋に朝食を運ばせていたが、シェフに頼んで旬の為におかゆを作らせた。
「私は仕事だ。君は今日は学校も事務所も休みなさい。おかゆをここに置く。
 少しでも食べられたら食べなさい。」
「…………。」
 


人気ブログランキングへ
にほんブログ村
また来てね

凶美少年の甘い蜜は媚薬・麻薬・毒薬ー165 立ち直れない旬

October 02 [Thu], 2014, 12:38
 総司はおかゆをトレーごと旬が突っ伏しているベッドのサイドテーブルに
 置いて、隣の本社に仕事に向かった。
 旬は起き上がれずにずーっとみゆきの優しい穏やかなキラキラ光る笑顔を想い泣いた。
 もうとっくに自分の中で整理ついたと思ってたのに…こんなにまだ愛してたんだ。
 旬は自分の中にいかに深く強くみゆきが根付いていたのかを再確認したが
 それはあまりにも辛く苦しい想いだった。
 永遠に手に入らない想いなのに…あの光を求めている…。
 昼に一旦総司が本社から帰って旬の部屋を覗いたが朝と全く同じ姿勢だった。
 お粥も手付かずだ。総司はカーテンを閉めた暗い部屋に入ってベッドの横に立って
 声を掛ける。
「……少しは食べないといかん。」
「……すみません……。」
「昼食に行くぞ。」
「無理です……。」
 総司は一人食事に行き、帰りにお粥とジュースを部屋に持ってくるよう指示した。
 総司はお粥とジュースを置いたトレーを持って旬のベッドの横に座って話した。
「今日はまだ何も食べていない。さあ、ジュースだけでも飲みなさい。」
「……。」
 旬はやっと起き上がり差し出されたジュースを飲んだ。
 なんだかボロボロで、ふにゃふにゃの泣き明かした赤ん坊にみえる旬に対し、
 何をどうしていいのか…子育ては難しいとつくづく総司は実感した。
 総司はとりあえず旬を置いて会社に戻り仕事を早めに終えて帰ったが旬は昼と全く
 変わらず寝込んでいた。そしてまた夕食も食べず…。
 寝る前にもう一回様子を見たがお粥をまた残している。
「ふー…。」
 総司は子供の成長過程はどうだったか考えたが、一旦頭を振って自分が旬と
 同じ年の頃はもっとしっかりしていたと思い直した。
 次の日の朝も旬はベッドにふせっている。
 総司はまたお粥とジュースを用意させてベッドの横に置くと旬の携帯が鳴って
 若宮からなので代わりに出た。
「私だ。」
「社長?おはようございます!あの矢上君は昨日事務所に顔を出さなかったのですが?」
「うむ。彼は風邪をひいた。当分行かんな。」
「そ、そうですか、困りました。
 実は作曲家がデモを作るから一度矢上君に歌いに来て欲しいそうで…。」
「わかった。調子がよくなったら知らせる。」
 携帯を切って総司は旬の様子を見て考え、秘書・村田に電話を掛けて命じた。
「村田。私だ。ヘリの用意をしてくれ。」



人気ブログランキングへ
にほんブログ村
また来てね

凶美少年の甘い蜜は媚薬・麻薬・毒薬ー166 優しさのかけかた

October 04 [Sat], 2014, 12:48
 それから総司は旬の上から屈んでそっと背中を叩いた。
「準備しなさい。これから出掛けよう。」
「…僕動けません。」
「駄目だ。これは命令だ。」
 そう言って総司は旬の両肩を強く掴んで起こそうと身体を動かした。
 総司に上半身を起こされ、旬はでも抵抗する気力もなく、
 総司に抱えらるように動かされベッド端に座った。
 なんだか本当にすっかり体重さえ軽くなったような旬の、憔悴仕切った表情は
 一日経ってもっと弱々しくなってしまって、総司が知る桐生旬のイメージ、
 生意気で傲慢でタフなクソガキというイメージと一切被らない
 儚げな、消えそうな、弱々しい雰囲気に驚き、別人に見える程違って見えた。
 その印象は、旬の母・万里子が持つ儚い姿とよく似ているが、
 もちろん総司は知らない。
 これでは弱って本当に病気になってしまうな、冗談抜きで総司はそう考え、
 いつもなら兄に対して責任問題と悩むところだが、あまりに弱った旬の姿に
 自分の責任問題よりも旬自身をどうにか元気にしてやりたい、
 可愛げがない小生意気なクソガキでもいいから普段の様子に戻したいと
 損得なしで考えていた。
 総司に抱えられて立ち上がった旬はしんどそうに歩いてシャワーを浴びて
 着替えてきた。
 突っ伏していても眠れなかったし、食事をとっていないからフラフラだ。
 総司はどの辺りまで力を貸すべきかわからず、フラフラしながら準備する旬を
 心配しながら見ていた。
 支度を終えた旬を気にかけながら総司は隣の甘栗本社に向かった。 
 総司についてふらふら旬は歩き隣の本社屋上に用意されたヘリコプターに乗った。
 ずーっと飛んで…途中から旬はこのヘリがみゆきのいる場所に行くんだと気がついて
 不安になった。
「総司さん……どうするんですか?」
「うむ。君にみゆきちゃんを会わせてやる。」
「えっ、画像のこと言うんですか?!」
 旬は脅えた表情を浮かべたが総司は穏やかに笑った。
「いいや。ただもう一度だけ二人でそっと彼女を見よう。」
 旬は寂しそうに俯いた。
「総司さん…僕…とっくに諦めたはずだったんです…。」
「うむ。人の心は難しいのだ。」
「………。」
 旬は悲しい不安な苦しい顔をしてじっと黙ってしまった。
 ヘリは少し街から離れた所に降り、後はタクシーを呼んで学校まで移動した。
 高校が終わってたくさんの生徒が帰るのを旬と総司は少し離れた所でじっと待った。



人気ブログランキングへ
にほんブログ村
また来てね

凶美少年の甘い蜜は媚薬・麻薬・毒薬ー167 旬の父になる

October 05 [Sun], 2014, 8:58
 背の高い総司の横に並んでいた旬だが総司の後ろに身を隠す様に何気に動く。
 するとみゆきが友人たちと校内からやってきた。
「みゆきちゃん…!」
 旬がビクッとして心臓を掴んだのを見て総司が動いた。
「総司さん?」
 総司は足早にみゆきの側に駆け寄り話しかけた。
「みゆきちゃん。覚えてますか?桐生です。4年前、親子でお世話になった。」
 総司は旬からみゆきと出会った頃、みゆきの家に泊まった頃の話をちょっと聞いていた。
 突然呼び止められたみゆきはその人物の顔を見てにっこり微笑んだ。
 総司は亡き父・桐生晃のフリをして話しかけたが、みゆきは4年前に一度だけ
 会っただけの晃をちゃんと覚えていてくれたのだ。
「はい。こんにちは。桐生さん。よく覚えてます。今日はどうしたんですか?」
 みゆきの友人や他の学生たちは背が高くスタイルのいい芸能人の様なハンサムな男性に
 驚き、きゃーきゃーっと赤くなって騒いでいる。
「うむ。息子と一緒に旅行で来ました。ちょうど君を見かけたから
 挨拶しようと思ってね。旬!旬、来なさい!」
 その様子を木の裏に逃げ隠れて見ていた旬は突然呼ばれてパニックだ。
「そ、総司さん…。」
 旬はあんまりドキドキして顔は真っ赤っ赤で意識も朦朧としてきている。
 大声で呼んでも来ないので総司は旬の側に歩いて行き真っ赤になった旬の手を
 引っ張りみゆきの前に連れて行った。
「旬、久しぶりだ。みゆきちゃんに挨拶しなさい。」
 旬の後ろに立って肩を抑えて励ますように総司は促した。
 旬は敵には強いが好きな人には本当に弱い。
 旬が僅かに震えていると分かって総司は挨拶も出来ないのかと困惑した。
「…………。」
 しかし旬が声も出ないでいるとみゆきはあどけない可愛い声で言った。
「こんにちは、お久しぶりです。また会えたね、旬君。」
 みゆきのぽっちゃりした可愛い笑顔が旬に向けられる。
 みゆきちゃんが今俺を見ていてくれている。俺だけを…。
「み、みゆきちゃん……。」
 みゆきちゃんがこんな自分を忘れないで覚えていてくれた!
 みゆきの可愛い声が自分を呼んでくれた…それだけで旬の心は天にも昇る気分だ!!
 もう何も出来そうもない旬の代わりに総司が応えた。
「お母さんとお父さんによろしく伝えて下さい。」
「はい桐生さん。またね旬君。」
 みゆきはちょっと頭を下げて友達と一緒にクスクス笑って笑顔で駆けって行った。



人気ブログランキングへ
にほんブログ村
また来てね

凶美少年の甘い蜜は媚薬・麻薬・毒薬ー168 心に輝くみゆきの光

October 07 [Tue], 2014, 12:22
 その様は本当に可愛くて、キラキラキラキラ…。
 輝きながら旬の愛する光は遠くに行ってしまった。
 これだけだった。
 それでも旬の心はみゆきの放つキラキラの光にあたって癒された。
 旬はぼんやり今の夢のような瞬間に浸った。
 ――また会えたね旬君。
 ぽっちゃりしたみゆきの可愛い優しい笑顔は旬の闇にキラキラの星を輝かせた。
 ずーっといつまでもみゆきの後ろ姿を見る旬を総司は苦笑いで見ていた。
 …桐生君は実はかなり幼いのだな。
 旬のぼんやりに付き合ってから総司は言った。
「さあ、帰ろう。今日は食事はとれるな?」
「はい…。」
 二人でタクシーに乗ってヘリに向かう。
 旬が静かなので総司が肩越しに顔を見ると物凄い笑顔でにこーっとニヤケている。
「まったく。」
「総司さん、ありがとうございます。僕これで諦められます。」
「何故諦める?好きならそう言えばいい。」
「駄目です!僕はみゆきちゃんにふさわしくない!僕じゃ駄目なんです。」
 旬は愛するみゆきの名誉の為とはいえ多くの人間をつい最近抹殺したばかりだ。
 懲りずに再三殺人を犯してしまった自分を省みて恥じた。
 僕は闇…闇は光に憧れるけど…光が強すぎれば生きていけない。
 みゆきのぽっちゃり可愛い笑顔が自分を見て微笑んだ…もうそれで十分幸せだった。
 ホテルに帰っても笑顔が止まらない旬を見て総司は連れて行ってよかったと思った。
「いただきまーす。」
 旬は二日ぶりに食事にありつきガブガブ食べ散らかした。
「落ち着いて食べなさい桐生君。のどに詰まるぞ。」
「ふぁいほーじひゃん。」
「…ちゃんとよく噛んで飲みこんでから話しなさい。」
 旬はお代りを繰り返し、空腹を満たすと総司に再度感謝し直した。
「本当に、本当にありがとうございます総司さん。僕、必ずこの御恩はお返しします。」
「恩など感じなくていい。元気になってよかった。君が干物になったら兄が悲しむ。」
「せんせえ…。」
 旬は赤くなって笑顔で照れた。
 すっかり元気になった旬は次の日も笑顔で学校に登校した。
「行ってきます。総司さん。」
「うむ。悪さはするな。遠出する時は連絡しなさい。」
「はーい。」
 旬は昨日からずーっとニヤケどうしで総司は呆れて内心苦笑いし続けた。
 旬は足取りも軽くスキップスキップで登校し、
 いつもクールな美少年が笑顔でスキップしているのでみんな振り返った。
「あの転校生、宝くじでも当たったか?」
「らりらりほ〜。」



人気ブログランキングへ
にほんブログ村
また来てね

P R
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:sibaenn
読者になる
https://yaplog.jp/sibaenn/index1_0.rdf
2014年10月
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
月別アーカイブ