さあ世界を征服しよう!−453 怖いのか?だったら帰れよ

July 01 [Sun], 2012, 11:44
 万里子にもう一度会いたい…あの吸い込まれる様な瞳が見たいと思い、
 ここまで来てしまったが…万里子が王子を愛しているのか、
 あの金髪巻き毛のハンサムな男を愛しているのか…
 晃はドキドキドキドキ心臓が高鳴って胸が苦しくなってきた。
「どうしたアキラ、もうすぐマリコが見られるぞ。」 
 やはりロバートはファンなだけだから、晃ほど深刻な気持ちはない。
「ロバート…俺…無理だ…怖くて…足が震える…。」
「え?バカだな、いいじゃないか、見るだけなんだし。
 ちょっとマリコを見たら帰ろう。」
 ロバートはなんとしてももう一回万里子を見ると決めているようだ。
 しかし晃は情けない程弱って、臆病になってしまった。
 不安な表情で苦しそうに手で喉を押さえた。
「ハアハアハア…俺…く、苦しい。」
「あはは。本当にバカだな。俺たち死んでるんだぞ、苦しい訳ないだろ?」
「本当に苦しいんだ。心臓がバクバクして苦しくて…。」
苦しそうに首を押さえて俯いている晃をロバートは苦笑いする。
 生きている時のストレス反応を再現してしまってるんだな、
 男は真実に愛する女の前では小さいもんだと自分にも当てはめた。
「わかった、わかった。」
 気楽なロバートは珍しくはしゃいで晃の気持ちをからかうように背中に回り
 そして晃の首を掴んで軽く促しロバートは万里子の小宮殿のある森に入った
 神秘的な森だ。強い月光が森を明るく照らす場所と陰を作る。
 その合間を晃とロバートは飛んだ。
 しばらく飛ぶとまた晃が空中で止まる。
「どうしたんだ?まあ確かにちょっとわかりにくいかな。少し上に上がるか?」
「いいや、俺、やっぱり怖い…。」
「…何が怖いんだ?」
 ロバートは晃を追い詰めない様に気をつけないとと、穏やかな声音で尋ねた。
「…見たくない。…知りたくない…。」
 晃は万里子が金髪巻き毛の男か、王子かどちらと愛し合っているか
 決定的な事実を見るのを恐れすっかり脅えてしまった。
 ロバートは肩をすぼめてそれから優しく言った。
「怖いんならお前は来なくていいよ。屋敷を探して俺だけ見てくる。
 帰れよ。そうやって逃げて行けばいい。」
「……。」
 万里子にちゃんと関わるのを恐れて逃げてきた自分の
 心弱さを指摘されて晃は深刻な顔だ。
 少し厳しい言い方をしたかもしれないとロバートもすぐ後悔した。
「悪かった。お前の気持ちは良く分かるよ。俺もずっと妻から逃げてきたから、
 意地悪で言ってるんじゃない。本当に先に帰っていいんだぞ。」
 そうしてロバートは屋敷を探す為にやや上空に飛び上がった。
 ロバートに置いて行かれて暗い森の中で晃は心細くなった。


人気ブログランキングへ
にほんブログ村
いつもありがとうございます。
万里子…。

さあ世界を征服しよう!−454 今更恐れたって遅い

July 02 [Mon], 2012, 11:50
 ロバートにしかられるでもなく帰っていいと言われると
 晃は逆にここまで来て帰っていいのか?
 次にいつこんな勇気を持てる日が来るか?そう思って暗い森を見つめた。
 すぐそこに万里子がいる。
 ロバートの言う通り俺はずっと万里子から逃げてきた。
 万里子を愛して万里子を取り戻すんだと会社を大きくしてきたけど
 実際にはそれも逃げだ。現実逃避だ。今なら分かる。
 万里子は俺を嫌って出て行った。
 俺がどんなに出世したってあいつが戻ってくるはず無かったんだ。
 その現実を受け止めたくなくて俺は…。
 俺は言い訳を重ねて万里子から、現実から逃げていただけだ。
 死んだ今はもう言い訳したって仕方ない。
 アンの言う通り、あいつは俺がいないと思ってるんだ。
 あいつにとって俺はもういない。今更何を恐れるんだよ。
 あいつにとって俺はとっくにいない存在…あいつが誰を愛しても
 現実から逃げ出した俺にはもう関係ない話なんだよな。
 そうだよ、つくずく俺はバカだ。
 晃はロバートの後を追って上空に飛び、空中で浮遊してるロバートに
 思いつめた顔で言った。
「俺も行く。」
 情けない顔で追いかけてきた晃をロバートは微笑み近寄って肩を叩いた。
「なんなら俺が先に屋敷に入って、もしこの間の男がいたら教えるよ。
 お前は二人を見ないまま帰ればいい。」
 なんて言われるとまたも晃の心臓が縮みあがり涙目になる。
 …なんで女一人の為にこの俺がこうまでビビらなきゃいけなんだよ。
「しかし屋敷はこの森のだいぶ深い場所にあるようだな。もっと上に行くか?」
 ロバートが懸念するが周囲を見回した晃が指を指して示した。
「いいや、あった。万里子の屋敷だ。」
 森に囲まれた美しい小さな湖を前に白い小宮殿はあった。
 緑の美しさ…鏡の様な湖の美しさ…天空は輝く満月が飾っている。
 美しい景色にロバートも晃も見とれた。
「マリコにぴったりの美しい宮殿だ。」
 ロバートが感動してそう言うが、晃はもう声も出ない。
 ロバートはクスクス笑いながら晃の腕を掴んで万里子の屋敷にスッと入った。
 小宮殿内は白を基調とした美しい調度品と花に飾られた美麗な屋敷だった。
 すでに夜だから屋敷の者はみな眠っているようだ。
 万里子を探してロバートは晃を引っ張りながらふわふわ飛んだ。
 一つの部屋から光が漏れてきた。しかしその光は電灯の明かりではない…。
「あそこがなんだか変だ。俺が見てくるからアキラはちょっと待ってろ。」
 ロバートはそう言うと不思議な光が漏れる部屋に入った。
 何かもっと違う光…キラキラと溢れる光をロバートは不思議な思いで見、
 その部屋に入った。
 そこは万里子のベッドルームだった。


人気ブログランキングへ
にほんブログ村
いつもありがとうございます

さあ世界を征服しよう!−455 万里子の結界

July 04 [Wed], 2012, 12:06
 しかしベッドルームは森の中にあった。
 万里子の部屋の境界があいまいで窓や壁は消えて、
 外にあるはずの森と湖が万里子のベッドのすぐ側にあり足元は部屋の絨毯と
 外の地面、草、木々が絡まるように続いている。
 ベッドには万里子が横たわって美しい肢体に黒髪が広がって静かな寝息が聞こえる。
 万里子の部屋が外と中の境界がないようだが、それよりロバートが驚いたのは
 凄い数の男たちが静かにそこにいる事だった。
「これは…。」
 その数は数千、もしかしたら万に及ぶ数の男達がぐるりと万里子の部屋を
 囲んで見ている。
「小さな霊界が出来てる。」
 不思議な思いでロバートはこの光景を見た。
 ロバートは先に偵察し終えると部屋の前で不安そうに待っている晃に話した。
「ここがマリコの寝室だ。金髪の男はいないから大丈夫なんだが、
 ちょっと大変な事になっているぞ。」
「大変な事?」
 晃が真面目な顔で緊張するのにロバートが晃の肩を掴んで扉に押し込んだ。
 扉から晃が部屋に入り込むと驚くべき光景が広がっている。
 万里子の実際の部屋を囲んで左右上下に円形の劇場を囲む観客の様に
 男達が大人しく並んでいる。
「な、なんだこいつら?」
 晃もつい驚いて声を上げた。
 部屋を突き抜けて並んだ男達は遠くまで見渡せば数万人以上くらいはいそうだ。
 晃は死んでからこれだけ大勢の死者を見たことがない。
「なんかのコンサート会場みたいだな。なあ、あんたどうなってんだ?」
 晃は近くにいる男に声をかけた。
「マリコ…愛している…マリコ。」
「へ??もしかして万里子のファンクラブか?」
 男たちはうっとり万里子を静かにまるで芸術作品を堪能するかのように
 見とれている。
 その中にはそもそも万里子を日本からイギリスに連れて行き今の人生を与えた
 外交官の男もいる。外交官は恋い焦がれた万里子に逃げられてうつ病になり
 その後首つり自殺してしまった。また外交官から逃げた万里子を友人として
 援助し恋人になる間際でやはり逃げられ銃で自殺した黒髪の男もいた。
 皆まるできちんと規制されているかの様に万里子を少し離れた所で
 大人しく鑑賞している。
 どうして誰も乱れることなく全員が規則を守るかのように静かなのだろう?
 晃もロバートも異様な光景を不思議に思う。
 するとロバートがその原因を探り当てた。
「見ろアキラ…。結界だ。これはマリコの心の結界だぞ。彼女は凄い霊力がある。」
「え…?なんだそれ?」
 ロバートが部屋の中央に近寄り手を伸ばして見せた。
 ロバートの手はなにか見えない透明なガラスの壁みたいな物に遮られているかの様に
 その先には進めずに跳ね返されて進めない。
 だからみんなおとなしく万里子を見ているのだ。


人気ブログランキングへ
にほんブログ村
いつもありがとうございます

さあ世界を征服しよう!−456 招かれる晃

July 05 [Thu], 2012, 11:47
 見えない結界…晃は不思議な気持ちで空間を見つめた。
「これはマリコの心がはねつけてるんだ。あらゆるものを…。」
「万里子……。」
 晃はロバートの側に近寄りそして見えない空間を確かめようと万里子の結界に
 触れてみようとしてみた。
 晃が手を上げて見えない結界に触れる。すると…
「え?」
 晃の手が触れるより前に結界からガラスのような見えない細い手が
 晃の腕を掴んだような感触を感じた。
 そして晃はスーッと結界に引き込まれた。
 そのまま晃の手、そして身体は万里子の結界を全く難なく
 結界が水の中に入るような波紋を広げつつ誰も入れない万里子の心の世界に
 静かに入って行った。
「アキラ…。」
 それが何を意味するかロバートは理解した。
 晃はそうしてそのまま迎え入れられるように万里子の心象世界に入った。
 揺れる結界の向こうは結界の外から見るよりもかなり広く静かな空間だった。
 ロバート側には晃が万里子の世界に入っているのが見えるが
 晃にはさっきまで見えていた男たちもロバートも見えない。
 鮮やかな色の美しさで左右に広がる森と鏡のような美しい湖が広がる。
 そして空も鏡だった。鏡の空が逆さまに晃の姿と心の真実を映した。
 晃は少し左右を見回したが、すぐその目は真っ直ぐ万里子に吸い寄せられた。
 鏡のように美しい湖の真ん中にベッドが浮遊し
 万里子が静かに眠っている。
 晃の目は万里子を見つめ、全てが引き込まれるのを感じた。
「万里子…。」
 晃は魔法が掛かったかのように万里子の側に行こうと鏡のような湖に足を踏み入れた。
 晃の足は沈むことなく湖を歩いた。鏡のように湖は晃を映し、
 鏡の天空も晃を映す。たくさんの晃が歩いていく。
「くすん、くすん、ひっく。」
「え?」
 晃の耳に小さな女の子の泣き声が聞こえ、
 ハッと横を見ると5歳くらいの女の子が泣いている。
 女の子はウェーブの掛かった巻き毛の黒髪を肩まで伸ばして俯いている。






人気ブログランキングへ
にほんブログ村
いつもありがとうございます
ご訪問をいつも嬉しいく思ってます。

さあ世界を征服しよう!−457 ずっと、ずっと、ずっと待ってたのよ…!

July 07 [Sat], 2012, 11:38
 俯いた幼女は小さな手で何度も涙を拭いていたが顔を上げて晃を見上げ、
 じっと晃を見つめる。
 その幼い顔に晃は感動した。
 子猫のような可愛らしすぎる顔、旬が5歳の頃にそっくりだ!
 しかし強い眼差しの旬と違って幼女の大きな黒い瞳には涙がいっぱいで
 開けていられなくなった様に伏目がちになり涙はポロポロ零れてくる。
「万里子?」
 幼女は一生懸命な顔で晃に言った。
「どうして?どうして来てくれなかったの?
 ずっとずっと、ずっと待ってたのよ?」
 小さな万里子は幼い幼女の声で、ボロボロの泣き顔でそう言った。
 晃は向こうで眠る万里子と、目の前の万里子を見比べ幼女に手を差し伸べると
 小さな万里子は泣きながらベッドで眠る万里子の方へ走って行き、
 ベッドに辿り着く前に女の子の輪郭は薄くなり、…消えた。
 それは万里子が見ていた夢がヴィジョン化したものだった。
 ずっと、ずっと、ずっと…待ってたのよ。
 女の子の声が湖に、鏡の空に、森にこだまする。
 万里子の世界全部から響くような声を晃は見回しながら聞いた。
 そして晃は初めて会った瞬間から愛し続けた万里子を見つめて問うた。
「万里子…俺を…俺を待っていてくれたのか…?」
 晃は沈むことはなく水の上を波紋を広げながら歩き、
 晃が来た事を世界が喜ぶように湖の波紋は少しずつ大きくなった。
 ゆっくり近ずく晃…万里子が穏やかに眠っている…美しい寝顔…静かな寝息…。
 身体にまとわりつく絹のネグリジェの下で万里子の心臓が万里子の胸を震わせている。
 何年も想い続けた万里子の寝顔…黒い艶やかな髪がベッドに広がる…。
 晃は万里子の寝顔を見た。晃の眼に涙が溢れる。
 愛している…万里子…こんなにも…お前を…。
 ついに万里子の側に立ち、
 晃は万里子の髪に触れた…13年ぶりに晃は万里子に触れた。
 万里子の髪が手に触れる…万里子を感じる!
 晃は電流が流れたような衝撃と快感を感じた。
 晃と万里子の波長は今、完全に同調している!
 死んだ今…生きていたら会えなかった万里子に会っているのだ……。
 死んでから一切湧かなかった欲望が晃に湧いてくる…愛する者と一つに結ばれたい…
 それはとても神聖な感情として晃の心を満たした。
 万里子の頬を撫でて、万里子の美しい顔に晃は口付けした。
「ん……。」
 万里子が目を開ける。万里子は晃を見た。初めて愛した恋人。愛する晃。
 明るい柔らかな茶髪、クリクリの可愛い目、そして晃だけが持つ輝き、
 晃の光と熱が晃を失い、脅え苦しみ凍え続けた万里子を包んだ!
「万里子…俺を感じてくれるのか…?」
 万里子は今眠っていて、晃の信号を受信している。
 いや違う、晃は既に万里子の心象世界にいるのだから晃が万里子に取り込まれたのだ。
 晃は万里子のキレイな胸をそっと触った。感じる。万里子の暖かさ、弾力を…。
 ゆっくり優しく万里子の胸を揉んで万里子が息をはいた。
「晃……。」
 晃は衝撃を受けた。万里子が自分の名を呼んだ!




人気ブログランキングへ
にほんブログ村
いつもありがとうございます
P R
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:sibaenn
読者になる
https://yaplog.jp/sibaenn/index1_0.rdf
2012年07月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
月別アーカイブ