さあ世界を征服しよう!−255 父・セオドアがクリスを売る謎

October 01 [Sat], 2011, 11:38
 クリスの美しい青い目がやや伏せられ金色のまつげが揺れる。
「私は会社の道具か?私は何の為に生きているんだ?」
 深くシートに沈みこみクリスは息を吐きながらそう言った。
 ハーバートはクリスがそう嘆こうとも同情する気はサラサラ無い。
 クリスの整った顔を見つめ、男に抱かれたその身体を今すぐ抱いて
 男の匂いを消したいそんな欲望を隠しながら考える。
 そんなに嫌ならスワン家から出て行けばいいじゃないか。
 セオドア・スワンはクリスを愛していないからクリスが失踪しても探さないだろうし
 スワン社の権利はフランス女が産んだ息子、
 次男のジョシュア・スワンに喜んで全部譲り渡すだろう。
 ああ、もしかしてクリスを追い詰めて自発的に相続放棄させたいのかもしれないな?
 何の落ち度も無い優秀な長男の権利を、頭の悪い放蕩息子の次男に譲りたいなら
 クリスが自殺でもして勝手にいなくなってくれるのが法的にも世間的にもいいからか?
 俺だって父親が息子を売るのは余りに酷いとは思う。
 俺はクリスが出て行くならクリスがやっていけるように支えていくつもりだ。
 俺はガキの頃からこのお坊ちゃんを守ってきたし、
 この先だってクリスが世間に馴染める様になんでもしてやる。
 自分を犠牲にしてあの冷酷な父親に愛して貰いたいなんて哀れな希望を抱くより
 自由気ままに生きればいい。
 しかしそうできない大きな理由が今はあるんだ。
 マリコ・ハイツファイザー伯爵夫人だ。
 クリスはスワン社のスーパーパワーを失えばマリコ夫人に見捨てられると
 本気で考えそれが恐ろしいんだ。
 自立できないファザコンのクリス坊やはマリコ夫人の愛人になって
 ますます不自由になった。
 ハーバートは昔からクリスに恋をしているのでマリコに激しく嫉妬し、
 クリスがマリコの為に罪を犯し、
 結婚も諦め人生を捨てる気なのがとても気に入らなかった。
 もちろんクリスが父親の命令に従い男達に身体を売り歩くのも気に入らないが、
 どちらがもっと気に食わないかと言うとハーバートとしてはクリスの身体より
 心を奪われる方が堪らなく辛い。
 むしろ嫌々男に抱かれるクリスを見るのはサディスティックな喜びが湧き、
 マリコに逢いたがって恋しがるクリスを見るのは氷の海に沈むように落ち込む。
 だからいつもクリスがマリコに会いにいく時間を少しでも遅らせようと
 ささやかな抵抗をするのだ。
 夜の街が流れていくのを背景にクリスもハーバートも機嫌悪く黙り込んだ。
 それからクリスは何気なく携帯をチェックして驚いた。
 1時間前に万里子からの着信がある。
 マリコ!
 どうしてマリコが?
 クリスは自分の身体がふんわりと浮き上がるような錯覚を感じた。


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クリスお仕事お疲れ様。はい、スッポンドリンク飲んでまたがんばってね。
……。
クリスは激しくご立腹ですから私が100本頂きましょう!
   ゲイパーティーでめんどりを噛み千切ってやります。

さあ世界を征服しよう!−256 クリスと万里子揺れる想い

October 03 [Mon], 2011, 11:43
 クリスへ万里子から連絡があったのは桐生親子の暗殺を依頼された時だけだった。
 それ以外はいつでもクリスから万里子へ連絡している。
 もしかして…私の声が聞きたくなったのか?
 突然クリスは光が溢れる幻想に包まれた。
 万里子がもしかしたら自分に惹かれてきているのではないか?
 そんな素敵な幻想で今さっきまでの苦痛が全て消えてクリスは夢心地になった。
 どうして連絡をくれたのだ?何かあったのか?まさか私に会いたくなったのか?
 胸が甘くうずく。
 すぐにかけなおそうとして迷った。もう小王国は真夜中だ。
 それに…もう一度マリコの方からかけてきてほしい。
 クリスの目が昇天が合わず少し幼なく見える表情をハーバートは懐かしく見た。
 寄宿学校でたまにこんな顔をしていたな。
 しかし好きな相手を苛めたいハーバートはぼんやり何か思い巡らせているクリスを
 現実に戻してあげた。
「どうしましたクリス?あの男のアレがそんなによかったんですか?」
 クリスは思わずふっと微笑んだ。
「今の私にはお前の皮肉も素敵な音楽に聞こえるよ。」
「それはよかったですね。」
 再び物思いに耽りクリスは焦燥しだした。
 やはりすぐかけなおすべきじゃないか?マリコのきまぐれかもしれない。
 かけなおさないことで私をますます嫌うかもしれない。
 そう思うと今度は不安で仕方なくなった。
 たまらなくなってかけようとし、また躊躇う。
 もう一度マリコに電話をかけてきて欲しい。
 だが、気まぐれかもしれない…もう一度掛けてきてくれる保証はないと、
 やはりクリスは暗い気持ちになった。
 空港についてクリスは万里子から連絡がなかったので失望し
 自分からかけ直した。やはり万里子のきまぐれなのだろう。
 それでもいい…しかし電話をかけたが電波が悪くて繋がらなかった。
 仕方なく連絡を出来ないまま電源を切りジェットに搭乗した。
 何か靄のようなものを掴むような心もとない想いにクリスの心は揺れた。

 万里子はクリスが電話をかけ直して来なかったので不安でいっぱいになった。
「クリス…。」
 万里子はもう一度電話をかけようとしたがしかしもう夜も遅いので迷った。
 クリスがどこにいるかわからない万里子は
 もしかしたらクリスが眠っているかもしれないと思い受話器を置いた。
 とにかく朝まで待って、…でももし外国なら怒られるかも…。
 万里子の弱い心は恐怖で脅え心臓がもう止まりそうだ。
 万里子は弱くて器用ではなく判断能力もあまりよくない。
 天才である旬と比べて万里子は精神的に幼く頭も弱いのだ。
 ふっと、クリスはもうわたしに飽きたのかもしれないわ。
 そんな考えが湧いた。
 クリスと罪を共有して離れられないと考えた時には
 早く気が変わることを願ったが今この重大な時に心が離れたかもしれないと
 考えると万里子は不安で仕方なくなった。
 クリスが自分を愛していてくれている事が前提で頼りたいが
 愛は一瞬でなくなってしまう。
 万里子は自分に愛を囁く男達は万里子のうわべの姿だけを欲しがっている
 暗く会話もつまらない自分にはすぐ飽きるとも思っている。
 わたしは出会った瞬間から晃を愛し、喪った今も愛しているのに…。
 晃はとっくにわたしを忘れていた。
 晃には派手な女性達がたくさんいたわ。
 相手にされてもいない晃をこんなに時間が経った今更嫉妬で殺した…。
 万里子は可愛い唇を噛む。
 もしかしたらクリスにも新しい出会いがあって
 もうわたしに気持ちがなくなっていたら…。
 クリスはマフィアに誘拐された旬を助けようなんてそんな大変な事を
 引き受けるはずもない。
 愛は頼りない…万里子は晃とクリスを思い比べた。


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さあ世界を征服しよう!−257

October 04 [Tue], 2011, 12:19
 男の恋なんて一時的なものでしかないわ。
 もしかしたらクリスも誰か女性と一緒にいてそれで出なかったのかも…。
 一人でマフィアと交渉すると思うと心細くて万里子は心臓が苦しくなった。
 胸がつぶれそうな思いで考え悩む万里子。
 どのみちクリスはもう自家用ジェットに搭乗し携帯は電源を切られてあった。
 飛び立つドイツの夜景を眺めながらクリスは愛の痛みで万里子を想い、
 万里子もまた旬の命が失われる不安で泣きながら朝を待った。
 ハーバートに促されクリスは一旦イギリスのスワン社支社へ出向き必要な書類に
 目を通しやるべき事をかたずけて小王国へ赴こうと考えていた。
 クリスはまだ万里子からの電話を待っていた。
 マリコ…。

 その頃晃は甘栗にずっと張り付いて大声で頼んでいたが
 以前ロバートに教えて貰った寝入りに夢で旬の居場所を教えようと考えた。
 しかし、旬を探して甘栗は疲れきっていたが家に戻っても眠ろうとせず
 じっと座って考え込んでいるので晃は横に座って頼んだ。
「甘栗さん、頼む寝てくれ。あんたの身体も疲れきっている。」
 何か、たぶん警察か旬本人からの連絡を待っていたのだろう甘栗が
 やっと時間が経ち疲れて目を閉じ眠りだした。
「よしチャンスだ!」
 晃は以前やったように甘栗の頭に自分の手を置いて目を閉じ念じた。
 甘栗さん、旬は地下牢にいる。リバーサイドビルだ。
 晃なりに一生懸命念じているうちに晃に甘栗が見る夢が見えてきた。
 夢の中で甘栗と旬が数メートル離れて立っている。
 旬は甘栗を脅えた様な表情で見ている。
 桐生君、帰っておいで。
 甘栗が近寄ると旬は少し後ろに引いた。
 そんなに頑張らなくていいから。ぼくは君が大好きだよ。
 甘栗が再び近寄ろうとするとまた下がる。
 甘栗は仕方なく立ち止まり旬が自分から甘栗を恐れずに側によるのを待つ。
 晃は甘栗の旬への思いを見て切なくなった。
 こんな風に旬を愛してくれる人がいる。旬は誰からも嫌われてきた。
 俺や万里子ですら旬を嫌ってきた。疎んできた…。
 本来愛してやるべき母親と父親にすら見捨てられてきたあいつを
 あんたは好きになってくれたんだな。
 ありがとう。甘栗さん。どれほど感謝しているか。
 晃はこんなに旬を心配する甘栗に今旬が地下牢に捕まっていると伝えるのが
 申し訳なくなった。
 …この人に伝えても地下牢に単身で助けになんて行けるわけ無い。
 ただ不安や心配をかけるだけだ。
 それならウォーレン刑事に伝えた方がいい。
 そう決めた晃は全面ガラスへ走りそのまま水に飛び込むようなポーズで
 ガラスの向こうの夜空へ飛び込み飛んでいった。

 少し前、ロバートもウォーレンが眠るのを待っていた。
 ロバートが見ているとウォーレンは仲間と話し合い、あれこれ調べて走り回り
 真夜中分署に戻って自分のデスクに座り今日処理しなければならなかった書類などを
 かたずけたその後真夜中一旦自宅に帰り、一人暮らしの暗い家に戻った。
 部屋に入り、疲れたウォーレンは目頭を指で押さえながら部屋の中を歩く。
「ふー。」
 それからチェストの上にある写真を眺める。
 ウォーレンの家族の写真だ。離婚した奥さんと3人の子供たち。
 その中で一番下の息子の写真を持ち、顔を指で撫でる。
 ウォーレンは旬に一番下の10歳の息子と重ねて心配してしまう。
「シュン、何処なんだ?」
 ウォーレンは写真をおきシャワーを浴びやっとベッドで眠り始めた。
 ずっと待っていたロバートはウォーレンの頭に手を掲げ、目を閉じ念じた。
 リバーサイドビルの場所のイメージと建物のイメージ、
 地下にあるたくさんの牢屋とたくさんの女達、そして旬の姿。
「シュン!」
 ビクッとしてウォーレンは目を覚ましベッドから飛び起きた。
 それからパソコンの電源を入れてデータを調べ始める。
 アマデウス・サム・ソング所有の建物の映像をいくつも見る。
 その中の一つに夢に見た建物にある。
 ウォーレンはヨハンの武器密輸のカラクリに絡むマフィアの兄・アマデウスが
 所有するバーやクラブが入ったリバーサイドビルを調べて見ようと考えた。
 ウォーレンの後ろでパソコンの画像を見てロバートはホッとした。 
 ここに旬が捕まっているのでウォーレンに働きかけたロバートは喜んだ。
「わかってくれたんだな。」
 晃はウォーレン刑事の家を探したが、暗いのと記憶があいまいなのとで
 迷ってしまったが、それでもとにかくロバートと合流したい気持ちもあり必死で探した。
 やっとここだと見つけた時にはすっかり朝だった。
 晃が階段を上がると上からウォーレンとロバートが降りてきた。
「アキラ!」
「ロバート!どうだ?」
「ああ、ウォーレンはこれからリバーサイドビルに行くはずだ。」
「ほんと!?よかったー!」
 晃はホッとしてロバートの肩に頭を乗っけた。
「俺、夢で伝えようと思ったんだけど甘栗さんは凄く参ってて、
 俺伝えるのが申し訳なくなった。」
「…そうか。なんとかウォーレンがこの事件を解決してくれたらいい。」
 ウォーレンは車に乗り晃とロバートもウォーレンの行動を確認するため
 一緒にリバーサイドビルに向かった。
「頼むウォーレン刑事、リバーサイドビルに行ってくれ!」
 晃は目を閉じて祈る。


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さあ世界を征服しよう!−258 動揺 

October 05 [Wed], 2011, 11:49
 小王国で眠れぬ夜を明かした万里子はクリスがもう起きただろうと思う時間に
 もう一度電話をかけた。
 それより前にクリスは空港からまっすぐイギリス支社へ向かい徹夜で仕事を処理し
 なんとか今日中に万里子に会いたいと願っていた。
 顔色も悪く働くクリスにハーバートがコーヒーを持ってきた。
「どうぞ、クリス。」
「ありがとう。お前は私に付き合わなくていい。もう帰りなさい。」
 ハーバートのいれたコーヒーを少し飲んでクリスはハーバートを気遣う。
「帰ったところで10分もしないで戻って出社しなければならないですよ。」
 ハーバートは腕時計をわざとらしく見せてそう言った。
「ジェットの手配をしてくれたら今日は休みなさい。
 小王国へは私一人で向かうから気にしなくていい。」
「それはどうも。」
 ハーバートは別段嬉しくもなさそうに、ややイラ立ちながら支社長室を出て行った、
 ハーバートが出てい行くとクリスは携帯を持ってまだ早いだろうかと
 もしかして掛けなおしてくれないだろうかと、何度目かの葛藤の後
 携帯を置いて仕事を続けたその時、携帯がなった。
「マリコ!」
 夢がかなった。2回もマリコは自分に電話をかけてくれたのだ!
 うっかりクリスは喜びで動揺し机に置いていたコーヒーカップを倒してしまった。
「くそっ。」
 しかしそれどころではないとクリスは慌てて電話に出た。
 あなたの声が聞きたくなって。
 あなたに会いたいの。
 クリスは万里子が甘い声でそう囁くのをつい期待してしまった。
 おまけにそう言われる前なのに、そう言われたような気持ちで答えてしまった。
「マリコ!ああ、すまない。忙しくて行けないんだ。会いたくて仕方ないよ!」
 しかしクリスの耳に万里子の声が何かいつもより小さく脅えて聞こえる。
「クリス…。ええ、だいぶ元気になったわ。心配をかけてごめんなさい。」
 万里子はクリスがどう反応するか心配で声が小さくなっている。
 その力のない声を聞いてクリスはどんどん不安になった。
「マリコ?…何かあったんですか…?」
「あなたに…相談したい事があって…。」
 相談…昨夜からほんの少しでも愛を囁いてくれるかもしれないという
 期待があまりにも大きすぎてクリスの心は灰色に萎んでしまった。
「もちろん、どんなことでも私はあなたの為に行います。どうか安心してください。」
「クリス…。」
 クリスの力強い言葉を聞いて心底万里子はほっとした。
 万里子の表情が少しだけ和らぎ、万里子は息を吐いて目を閉じた。
 クリスの言葉に万里子は支えられ電話をして良かったと思う。
 クリスの存在を頼もしいと万里子は今強く思いながら話を続けた。
「…昨晩遅くに…アマデウス・サム・ソングという人物から電話が来ました。」
「アマデウス・サム・ソング?知り合いですか…?」
 万里子が男の名前を口にするとクリスは不安になる。
「いいえ、知りません。でもどうしてだかわたしの部屋のナンバーを知っていました。」
「あなたのナンバーを?」
 クリスは自分も裏から万里子のナンバーを調べさせて手に入れていたので
 金をかければナンバーを探る事自体は別段ある事だと気にしなかった。
 しかし次の万里子の言葉を聞いてクリスはショックを受けた。
「アマデウス・サム・ソングはわたしに言いました。
 あなたの息子シュン・キルユーの命を握っていると。
 わたしの子供を地下牢に閉じ込めていて、ニューヨークに来て妻になるなら
 解放するけれど妻にならないならば、あの子は殺して死体を海に捨てると。
 私の息子の旬を…私と交換で逃がしてくれるというから…。
 私、ニューヨークに行くことにしたの。
 でもわたし一人では不安で…だからクリス、あなたについてきて欲しいの。」
 万里子はまるで女友達に付いてきてという様にクリスにお願いしたが、
 クリスはほんの僅かな甘い期待も何もかも吹っ飛び激しく動揺していた!
 万里子を力ずくで奪おうとする男が現れたからだ!
「馬鹿な…!信じられない。その男はマリコの愛を欲しくないというのか?
 愛するマリコに嫌われる事を考えたなら私なら気が狂う。それなのに何という奴だ!」
「くすん。くすん。ひっく。」 
 万里子の可愛らしい泣き声を聞いてクリスは堪らなく抱きしめたくて仕方なかった。
「待っていてください!これから小王国に行きます!
 絶対にあなたを渡しません!」
 電話を切るとクリスはすぐにハーバートに電話をかけた。


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さあ世界を征服しよう!−259クリス激高!アマデウス抹殺命令

October 07 [Fri], 2011, 12:07
 車を自宅に走らせながらクリスからの連絡にハーバートは溜息をついて出た。
「なんですかクリス?まだ家についていません。」
「急用だ。すぐに戻ってくれ。」
 ほらね…とハーバートは舌打ちしながらUターンして会社へ戻った。
 支社に着くと秘書がハーバートに飛びついてくる。
「社長が今日のスケジュールを全てキャンセルするよう命令されましたが
 もう最初のお客様が到着されるので無理だとお伝えしてください。」
 秘書も何か面倒が起こるとハーバートにお願いしてくるから
 ハーバートは何かと忙しい。
 クリスのオフィスに入ると早速ハーバートは切り出した。
「今日のスケジュールは変えられませんよクリス。」
 だがクリスはクリスなりに仕事を少しでも処理しようと努力している真っ最中の様だ。
 忙しそうにしながらクリスはハーバートが部屋に入ると厳しい声音で言った。
「鍵を閉めてくれ。」
 と言う事は何か危ない話だなとハーバートは判断した。
 クリスが万里子に依頼されて桐生晃を殺した時もこのハーバートが
 全て手配している。
 ハーバートはクリスが最近見た事もない程張り詰めた表情をしていると驚いた。
 何か怒りを隠しているようだが全身からピリピリした今にも怒鳴りだしそうな
 怖いムードが漂っている。
 何があったんだ?…ハーバートがクリスの側に近寄るとクリスは言った。
「今すぐ小王国に飛ぶ!」
「どうせ自家用機の準備にまだ時間がかかります。
 既にいらしてるお客さんとは会合して行って下さい。」
 どこか皮肉で小馬鹿にした表情のハーバートに怒りを燃やしつつクリスは命じる。
「ハーバート、カンパニーにニューヨークマフィアの
 アマデウス・サム・ソングを調べさせてくれ。すぐに。」
「は?マフィアに何の用ですか?」
「アマデウス・サム・ソングを抹殺する。奴の部下も。」
 ハーバートは驚いた。
 イギリス貴族が何故ニューヨークマフィアと戦争する必要がある?
 しかし物騒な話だがクリスはそうしようと思えばする男とハーバートは知っている。
「わかりました。すぐクラウンカンパニーに調べさせます。しかしどうしてですか?」
「マリコから連絡があった。マリコの息子を誘拐し、
 …あるまじき事にマリコと引き換えだと言ってきたそうだ!」
 クリスは遂に我慢出来ないと声を荒げ立ち上がった。
「なんという破廉恥極まりない男だ!
 息子の命と引き換えに、この私からマリコを奪おうなど!
 ころしてやる!奴の組織全員を皆ごろしにしてやる!
 私を怒らせた事を後悔させてやる!」
 クリスは部屋を歩き出し、側にある物をガンガンと蹴りだした。
 その様子を見ながらハーバートはまたもマリコが発信の厄介ごとかと
 疫病神・マリコに腹を立て、しかし頭を傾げる。
「クリス、マリコ夫人は息子をころしたがっていたはずですよね?
 何故今更助けようとするんですか?放って置けばころしてくれるんでしょう?」
 クリスは立ち止まって深刻な表情で俯く。
「…マリコは…。」
 マリコはアキラ・キルユーを殺した事を深く後悔し…息子へも愛情が蘇った。
 そういう言葉を口に出すのが辛いクリスは言葉を思いつかず黙り込んだ。
「マリコ夫人は他に理由があるんじゃないですか?
 例えばあなたの気を引きたくて可愛い女のフリをしているとか?
 真に受けないほうがいいですよクリス。女なんてすぐに気が変わる。」
 クリスの美しい青い目が悲しげに伏せられる。


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