さあ世界を征服しよう!−191

July 02 [Sat], 2011, 11:30
「先生。僕子供の頃から母に似たこの顔のせいで、変な男に狙われてました。
 その意味をほんというとよくわからなかったんです。
 ただ自分を見下された気がして腹が立って、それでいつも酷い暴力をふるいました。
 …さっき横嶋が男同士でも男女間のような性行為ができるって…
 その方法を僕に教えたんです…。
 僕…ショックでした。僕を…男なのに女みたいに…みんな見てたんだと知りました。
 でもその反面僕自身の中にもそういう欲望があるって知ったんです。
 そうしたらその変態達の気持ちと重なって僕自身が気持ち悪くなって…。
 …僕…なんか男性恐怖症になりそうです。
 男なのに変ですよね。」
 甘栗は少し考えて答えた。
「うーん。桐生君は僕らの性別がSRY遺伝子で決まるって知ってるよね?」
「はい、本来全ての人間は女です。しかし僕たち男はSRY遺伝子を持ちそれが
 男性ホルモンを合成して女にならないよう頑張るから男になります。」
 それを聞いてロバートは呟く。
「じゃあ、俺がころした女の子も、もしかしたら男の子だったかもしれないのか?」
 甘栗は旬の頭を撫でながら続けた。
「そう、僕らは本来全てメスだよ。おまけに脳の男性化は妊娠の最後1ヶ月で決まる。
 この時に男性ホルモンのシャワーを浴びなければ脳は女の子になる。
 この頃母親にストレスを与えると、このシャワーが出なくなって性同一障害とか
 性的嗜好とか色々と変わってしまう。僕らの性別はそんな風に繊細で難しいんだ。」
「僕の脳はよく男の子になれたなって思います。だってその頃の万里子は毎日僕のいる
 お腹に向かって怒ってました。あんたのせいでって…。しねばいいって。
 僕天才だからもう言葉がわかりました。」
「そう…辛かったね…。」
 旬の話を聞いて甘栗は泣きそうな顔になり、晃の表情も泣き顔になった。
 旬はじっと甘栗を見た。甘栗はまさに母親の様に見える。
 だからと言って女っぽいって言うのとも違う。澄みきった月の様な不思議な人。
 旬は小さな声で囁いた。
「それなのに僕ら人間は性別にこだわり、欲望に囚われます。
 …それでころし合いさえ起きる。」
「人間は動物の中で唯一想像する能力を持つからね。
 人間の世界は動物の世界とは決定的に違う。
 自分達の脳回線の配置と情報伝達物質の作用で発生した愛や憎しみ…欲望が想像力で
 大きく広がって動物には見えない世界…想像の世界が生まれた。
 人間の現実は想像で成り立ってるんだよ。
 でもね桐生君。僕らは生命の本質を見通す研究者だ。
 僕らは生命の本質を見失っちゃいけない。地球の海から陸までの生命全てが同じ細胞
 の分化であり、僕らが同じ唯一つの生命なんだっていう事実を。」
 旬は思った…地球中のすべての生命は形が違うだけで元は同じ細菌。
 甘栗と話しているうちに旬の心は落ち着いてきた。
 性もまた生命の進化で分化したもの。自分が恐怖したものもSRY遺伝子を
 無くしてしまえば形が変わってみんな女になる。
「僕…僕も本来は女の子なんですね。」
「そうだよ。君もぼくも女の子だ。」
 旬の顔が綻んだ。旬がとても可愛く笑ったので甘栗も嬉しそうに微笑んだ。
「先生。僕…先生に産んでもらいたかったな。」
「うん。今度生まれ変わったらぼくが産んであげるからね。」
「はい。先生。」
 旬はやっと落ち着いてそして疲れ切ってしまったのか、うとうとと寝てしまった。
 その後も甘栗はベッドの横に座りずっと旬の頭を撫でてあげた。
 旬を優しく撫でてくれる甘栗を見ながら晃は手を合わせて頭を下げた。
「ありがとう。甘栗さん。」
 そうして晃は再々、もう何度も繰り返したお礼をした。
 正直甘栗と旬の話は、男そのものの晃やロバートにはイマイチ納得できないが
 性別があやふやに扱われて混乱した旬を救ってくれて本当にありがたいと拝んだ。


人気ブログランキングへ
にほんブログ村 脚本・シナリオ
いつもありがとうございます。

さあ世界を征服しよう!−192 戦利品にワクワク

July 03 [Sun], 2011, 11:40
 マンハッタン島の摩天楼の零れるような美しい夜景が川の向こうに見える。
 マンハッタン島の対岸の夜闇にヨハンは一人立って電話をかけていた。
「レオン…私だ。」
「叔父貴!連絡とって大丈夫か?」
「ああ、すぐに人をよこしてくれ。工場から武器を全て動かす。…私は全てを奪われた。
 マリコ…マリコの人形に。」
  ヨハンの暗い声に対し電話の向こうでは明るい声が素っ頓狂な感じで答える。
「何を言ってるんだ叔父貴?お人形だろ?たかがガキの娼婦ごときに何ができるのさ?
 ハンスの事でおかしくなったのか?可哀そうだけどあんたはポリに狙われてる
 ボクは今家なんだ。オヤジにバレると怖いからジュードをよこす。
 船と、何人必要だ?」
「レオン…兄はなんて言っている?私を怒っているか?」
「あの馬鹿げたスキャンダルでソング家の恥曝しだとオヤジは怒り狂ってたよ。
 なんならジャマイカにでも逃げる?ボクが手配してやろうか?」
「いや、このままでは許せん…マリコ人形を殺す。」
「ふーん。まあいいよ、死にたくなけりゃいい手土産持ってきなよ叔父貴。」
 ヨハンは携帯を切って2時間ほど待った。
 すると真夜中静かに小さな船がやって来て中から数人男達が降りて来た。
 その中にレオンと双子のようにそっくりな金髪の美青年の顔も見える。
 しかしヨハンはその顔を見ても何も語りかけず目で合図するのみだ。
 ヨハンの目配せに誰もがその手順を知っているらしく無駄口を叩く者もなく
 静かに行動した。

 元気になった旬はさっそく自分が手に入れたヨハンの会社、ソング社の工場に行った。
 マンハッタン島の高層ビル群を対岸に見渡すあまり人気のない川沿いに
 化学工場と兵器製造下請け工場の二つの工場は並んでいる。
 飾り気のない幅広の白い大きな建物だ。
 横嶋の話では兵器製造下請け工場に横嶋が作った宇宙船の設計図を基に
 横嶋自身が組み立てたエンジン4ユニットとその他のパーツを組み立てた宇宙船の
 試作品が保管されているはず。
「おい旬、なんだここ?」
 晃は旬に尋ねたのに旬は独り言で答えた。
「宇宙船、遂に拝めるな。楽しみだぜ。」
「宇宙船?まさか。ありえない。
 あのSFみたいな構想をシュンは本気でやる気なのか。」
 工場を眺めてから旬はゲートに歩き出した。
 しかし13歳の子供の旬が工場に入ろうとするとゲート前で引きとめられた。
「おかしいな。僕はソング社の新社長の桐生だ。既に話はいってるだろう?」
「あ、いや、その…。工場長に確認いたしますので、少しお待ち下さい。」
 社員は困った顔で走って行った。工場でも急に社長が交代して
 まだパニック状態だった所に旬が連絡せずにいきなり来たからみんな右往左往だ。
 しかし旬はヨハンに従う者が宇宙船を隠すと困るから急襲した。
 少しして連絡を受けた工場長が慌てて走って来た。
「ああ、僕は旬・桐生。聞いてるはずだ、新しい社長だ。」
「申し訳ありません、まだこちらでのシステム変更が出来ていませんので
 何かキルユー様である証拠をご提示いただけませんか?
 でなければ一旦お戻り頂き工場の手筈が整いましたらお迎えに上がるなどで…。」
 何の手筈だよ…これはもう既にヨハンから何か連絡いってるなと旬は睨んだ。
「僕の証拠?甘栗グループの社長からの連絡と僕の顔写真がいっているはずだが?
 いい。僕もすでにパスを作ってもらっている。ホラ?これでいいだろう?」
 旬はまだ何かと引き留めようとする工場長に冷たく言い放った。
「うん。君はもう来なくていい。」
「えっ?」
「クビだ。」
「ええ――――っ?!も、申し訳ありません、どうかお気を治してください。
 どうぞ、工場はこちらでございますキルユー様!」
 やはり旬の顔はちゃんと知られているようだと旬は工場長を冷ややかに見る。
「ふん。まあ、今回は許してやろう。しかし次回は僕への無礼は許さない。」
 工場長は必死で何度も何度も日本人が好むであろうお辞儀をへこへこして案内した。
 広い工場のあちこちを案内されたがしかし、宇宙船がない。
 どこもかしこも見たが、ない。
「おかしい…おい、他にはないのか、前社長の部屋に連れて行け!」
 旬はヨハンの社長室に行った。
 社員を追い返した後、部屋の壁を叩いて音がほんのわずかでも違う部分を探す。
「うん?この後ろがおかしいな。」
 旬はそのおかしい部分を何度も調べた。
 すると壁の一部がひっくり返って裏に電子錠を見つけた。
「なるほど。」
 からくりを突破する為に一旦旬はタクシーを走らせて大学に戻り横嶋を迎えに行った。
「お〜〜、また探した〜、お前なにやってんだあ?」
「横嶋、来てくれ。お前ならわかるだろう。」
「お前と居るとなにかと楽しい〜。」
 横嶋はドラマさながらの展開にコーフンしていた。
 現在クリア・フューチャーのものである元ソング社の工場に着くと横嶋は驚いた。


人気ブログランキングへ
にほんブログ村 脚本・シナリオ
いつもありがとうございます。
ばぶーきゃっきゃっ!
お前立ち直り早いな〜。

さあ世界を征服しよう!−193 畜生!計画の失敗!

July 04 [Mon], 2011, 11:43
「…なんでヨハンのおっさんの工場に〜?」
「昨日から僕のものになった。」
 横嶋は再び驚き、顎が外れそうなくらい大きく口を開けた。
「なに〜!!ヨハンから貰ったのか〜?あいつお前にこんなもの貢いだのか〜?」
 横嶋は自分は旬にあげられるものがないので困ってポケットの中を探し、
 ヨレヨレのガムを差し出した。
「こ、これやる。」
「いらない。この工場は僕の金で買ったんだよ。」
「なに〜?先生の金だろ〜?」
「僕の親父が死んであいつの会社を相続してるんだ。その会社の金で買収したのさ。」
「うげろ〜、ありえねえ〜、お前が社長〜〜〜?カッコ良すぎだあああ〜〜〜〜〜。」
 横嶋は顔を真っ赤にし身体をくねくねさせて恋心を表現した。
 旬は子供のくせに偉そうに胸を張ってゲートで指図し、
 社員は先程の工場長とのやり取りからクビにされる恐怖で
 この美しすぎる少年社長に土下座しそうな勢いでヘコヘコ頭を下げた。
「ああ、もうわかっている。ついてこなくていい。お茶もいらない。」
 横嶋を先ほどの部屋に連れて行くと、
 廊下に社員が誰もいないのを再度確認して旬は先程の壁のからくりを横嶋に見せた。
「これだ、この電子錠開けてくれ。」
「簡単だあ。」
 横嶋はいつも携帯している七つ道具?を持つとあっという間に電子錠を解錠し壁は
 開いた。一見何もないかのような壁はエレベーターの扉だったようだ。
「こってるな、あいつ。」
「はあ〜〜、カッコよすぎ…夢みたいだ〜。」
 旬と横嶋はエレベーターに乗って降り、結構下だぞ?と考えていたら着いた。
 扉が開くとかなり広い倉庫のような空間があるがそこには何もなかった。
 旬はガランとした地下倉庫を見て本当に焦ってエレベーターから飛び出て怒鳴った。
「なんだとうっ!?何もないじゃないか!」
 やられた!!あの野郎っ!やりやがったな!!
 広い地下倉庫を走り回りどこかに秘密の部屋がないかを旬は探ったが、ない。
 冗談じゃないぞ!あの宇宙船を第三国に持ち出され科学者に分析されでもしたら
 特殊合金の秘密が暴かれる!!
「俺の全ての計画が狂うっ!」
「何の計画だああ〜〜、お前だいたい何考えてる〜?恐ろしすぎるぜ。」
 旬はガランとした秘密の基地を必死で走り回って外へ通じる廊下を見つけた。
「ここだっ!ここから侵入し、そして宇宙船を持っていきやがったんだ!
 くそうっ、あの野郎!ぶっころしてやるっ!」
 旬は怒りを露わにしながらやや傾斜した一見長い広い廊下の様な所を上にかなり歩き
 外へ通じる出口に到着したが、この出入口にも電子錠が付いている。
 旬はイライラして横嶋に怒鳴り散らした。
「開けろっ!横嶋っ!」
「お前なんでそんなに怒ってるんだああ〜?もっと優しくしてくれよ〜〜〜。」
 横嶋は悲しかった…こんなに好きなのにちっとも優しくしてくれない。
 電子錠が開けられて旬が慌てて外に出ると川沿いの雑草だらけの空き地だった。
 後ろを振り返ると工場からかなり離れている。
 ヨハンは武器の密輸をしていたから工場との関連を疑われないようわざと遠くに運び
 たぶん運河を利用してここから他の倉庫か、取引相手と直接売買に運んだのだろう。
 宇宙船はここからまた別の場所に運ばれたのだと考えた旬はヨハンに激しい
 怒りを燃やした。
 完璧に遂行されたと喜んだ計画は最後の最後で失敗した。
 特殊合金が他国に流れれば全て無駄になる。
「くそったれーっ!」
 怒り狂った旬はその辺の雑草をむしりとり地面を蹴り上げそれでも静まらず吼えた。
「おあああああああああああ!ぶっころしてやるあの野郎おおおおおおおおおおおおお!」
「超怖ええ〜。」
 激しく怒り狂う旬に脅え横嶋は草むらに身体を隠した。
 晃とロバートは旬が昨日あんなにダメージを受けていたのに
 あっという間に立ち直った上に、もう次の行動を始めて喜ぶより
 ハラハラしてしまった。
「旬、おまえどうしてほんの少しでも大人しくしてられないんだ…。」
「アキラ、少しでも俺たちが出来る事をしよう。」
 広い空き地で激しく怒り狂う旬を恐ろしい思いで見ながら
 晃とロバートは呆然と立ちつくした。


人気ブログランキングへ
にほんブログ村 脚本・シナリオ
いつも}ありがとうございます。
ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
よしよし、泣き止んでくれよ。誰か、助けて!

さあ世界を征服しよう!−194 旬の殺害依頼

July 05 [Tue], 2011, 11:32
 良く晴れた青空に突き刺さるようにそそり立つマンハッタンの超高層ビルの
 上階ではなくはなく地下をわざわざ好む者がいる。
 光が入らぬ地下をヨーロッパの古い城の内装のように飾り、
 大きな豪華な椅子に深く座る男。
 男はニューヨークでも恐れられるマフィアのボスだ。
 そのマフィアのボスの前に髪は乱れやせ衰えてボロボロのヨハンが座って泣いていた。
「兄さん…ハンスが死にました。私はそのうえ会社も市議会議員の地位も家も何もかも
 失いました。全てはシュン・キルユーのせいです。あいつが私を騙し、私達親子を
 操りその裏でアマグリグループによる買収を実行させていた。
 私はあいつが憎い。どうかあいつにこの世で最も無残な死を与えてください。」
 ヨハンの前に座る男は骨太で筋肉質な体格でヨハンと同じ金髪を
 しかし肩まで長く伸ばし洒落た高級なブランドスーツを貴族然と着こなした男だった。
 たぶん50歳くらいだろうが青白い顔に鋭い青い目をしている。
 ヨハンやハンス親子は口が曲がっていたがこの男の口はきれいに整っていた。
「ヨハン。愛する弟よ。もちろんお前の望みを叶えてやろう。
 ハンスの事は私も残念だった。そのシュン・キルユーには死を与える。
 ところで私が知りたいのはお前とハンスが争ったという売春婦・マリコの事だ。
 そんなにも魅力的ならば、シュン・キルユーの死の見返りに私が欲しい。」
 それを言われてヨハンは黙って頭を下にうな垂れた。
 いつまでも黙って答えないので、兄はヨハンの座る椅子をガンッと強く蹴った。
 ヨハンはビクッとして背中を丸め囁くような小さな声で言った。
「す…すみません。兄さん、実はマリコはシュン・キルユーの娼婦名なのです。
 その名でドレスを着せて働かせる予定でした。」
 兄は右手で自分の顎をさすりながら少し口元に沸いた笑みを隠した。
「ふん。なぜ名前をマリコにした?」
 ヨハンはさらに黙って答えないので兄はヨハンの足を蹴り、
「オオウ!」
 ヨハンは痛みと恐怖で背中を更に丸め兄から顔を背けるように
 身体をねじったまま話しを続けた。
「兄さん、ごめんなさい…シュン・キルユーはマリコの息子なのです。
 だから彼女の名で売り出そうとその名をつけました。」
「ふん。一晩40万ドルだそうだな。」
 兄は知っていてわざと言わせたのだ。ヨハンは青ざめたが兄は話を続けた。
「そんなに似ているのか?マリコ・ハイツファイザーに。」
「ちょ…ちょっとだけです。よく見ると似ていません。」
 ヨハンは何故かまだ嘘をついた。それで兄はヨハンの急所をドガッと容赦なく蹴った。
 ヨハンはヒーッと悲鳴を上げて床に倒れて転がった。
「たいして似てもいない売春婦に40万ドルの値段は付かないだろう。
 写真を見せなさい。持ってるんだろう?」
 ヨハンはもう逆らわずに胸ポケットから写真を渡した。それを見て兄は驚いた。
「マリコ…。」
 ヨハンと同じく兄も万里子の虜だった。ヨハンの兄は深く座りなおし優しく言った。
「がっかりしたよ、お前といい、レオンといい。
 お前達が私にこの事を言わなかったのは私に奪われると思ったからだろう?
 こんなに弟思いの兄を疑うとはな。」
 ヨハンは床に座ってまるで土下座をする様に頭を下げ兄の怒りを静めようと努力した。
「申し訳ありません、兄さん。その子供は私を愛していると言ったのに裏切りました。
 全て嘘だったんです。私は騙されました。どうか復讐してください。」
 兄は低くクククと笑った。
「たかが13歳の子供の戯言を真に受けるなど。お前が13歳の時はどうだった?
 そのひん曲った口で牛乳を飲んでも口の端から零れいつも服を汚していたじゃないか。
 そんな餓鬼が本気で40越えた中年男を愛するわけがない。
 そもそも愛のなんたるかなど知らん。
 その買収にしたってどうせ、そのソージ・アマグリが子供を操り
 お前に近ずけたのだろう。」
 ヨハンの兄は少し眼を閉じ愛を知らない自分の心に芽生えた愛の正体、
 心の闇を照らす光り輝く女神を思い描いた。



人気ブログランキングへ
にほんブログ村 脚本・シナリオ
いつもありがとうございます。

依頼を以来に文字変換間違えしちゃってた。

さあ世界を征服しよう!−195

July 07 [Thu], 2011, 11:34
「それよりこの子はマリコの子。あのマリコの子を私は欲しい。
 私が育ててレオンの代わりに完璧な暗黒の王子に仕込んでやろう。
 マリコ…あの小王国に籠ってもう何年か…彼女をちらとも見ることすらもうかなわん。
 彼女にたかる男どもにマリコは嫌気がさしたのだ。
 あの王子との結婚が成立すればもはや王国の王妃。もう完全に手の届かない高根の花。
 薔薇色の天使…暗黒の女王…血の薔薇…闇に浮かぶ月の女神…マリコ……。」
 ヨハンの兄はうっとりと眼を閉じ万里子の麗しい姿を思い浮かべた。
 ヨハンもまた万里子の光り輝く姿を想い、そして後悔した。この兄に頼んだ事を…。
 万里子を見初めてうかれたヨハンは可愛がっていた甥のレオンに写真を見せ、
 レオンが欲しいというので写真をあげた。
 ところがレオンが恋した美女の写真を見てこの兄まで恋をした。
 こうしてヨハンが万里子をこの兄に教えてしまい、
 それがこの一族に数々の悲劇を生む事になった。
 兄を恐れ、項垂れたままヨハンは考える。
 自分で殺るしかない…きっとこの兄は殺さずマリコを奪うに違いない。
「兄さん…私は新型の兵器を持っています。まだ完成されてはいないが……。
 一機でも素晴らしい破壊力を持ちます。
 どうかそれと引き換えにシュン・キルユーをころして下さい。」
 兄は頷き、まあ休めと言い、部下を呼んで部屋に案内した。
 案内された部屋はベッドもバスルームも付いていたが小さくて窓がなかった。
 兄は明らかにここにヨハンを幽閉する気なのだ。
 ヨハンはドアの外に何人見張りがいるかを考えた。
 ここから出たいとヨハンは思ったのだ。旬をころす為に……。
 数日してヨハンの部屋のドアがコンコン鳴らされ、ヨハンは兄が来たのかと緊張した。
「叔父貴。」
 しかし入って来たのは年は25、6歳くらいの金髪の美青年・レオンだった。
 顔はとても美しいのに服のセンスはイマイチで、
 何故か派手なアロハシャツに半ズボンをはいている。
「レオン!助けてくれ!ここを出してくれ!」
 ヨハンは立ち上がりレオンと親しげに呼んで美しい青年の肩にしがみついた。
「おお嫌だ、冗談じゃないよ。せっかくあのオヤジの下この年まで生きながらえたって
 いうのにさ!ほら、陣中見舞いだ。叔父貴の好きなパイナップル持って来たぜ。」
 そういうとレオンは大きなパイナップルをテーブルに乗せ、真ん中辺りをざっくり
 半分に切った。
 甘い良い匂いが部屋中に漂ったがヨハンはレオンから差し入れられたパイナップルに
 目も向けずベッドに腰掛け直した。
「…頼むレオン…。お前に私は随分親切にしてきたはずだ。3年前にお前が失敗して
 組織に損害を与えた時、私が兄にお前の命乞いをしたじゃないか。」
「あの時の事はボクもありがたいとは思ってるよ。けど…。」
 ヨハンは随分やせてげっそりした青い顔でレオンを食い入るように見る。
「お前は自分だけが恐怖に脅えて来たと思っているのか?
 私はお前よりもずっとあの兄と長く生きたのだ。お前は知らないだろうが、
 兄は18歳の時、実の父母を殺した。説教されて気に入らないという理由でだよ。
 私は知っていて何も言えなかった。逆らえば私が殺されると分かっていたからだ。
 10年前に妻を生きたまま川に捨てられたあの時も、
 私は兄に泣いて感謝するしかなかったのだ。
 お前も母を目の前でころされたからわかるだろう?――あの恐怖と…痛みが。
 私にとって息子のハンスと、
 愛するマリコへ想いのみが兄の恐怖から救う大切な宝だった。
 それなのにシュン・キルユーはその二つを私から奪ったのだ。私のマリコへの真実を!
 復讐しないわけにはいかない。頼む、私が逃げられるほんのわずかの助けをくれ。」
 レオンはじっと黙って聞いて、そして明るく言った。
「そうそう、今日はオヤジは帰らないぜ。他のシマのボス達と会合でドンパチやるかも
 しれないからここの連中もほとんどいない。ああ、ボクは女とデートだから
 呼ばないでよ。じゃーねー。」
 レオンはそう言うとそっとヨハンの側により口の前に指を立ててしっと合図しながら
 銃と金を渡しそれをしっかり受け取ってヨハンは更にレオンをガシッと抱き寄せ
 感謝した。
「ありがとう。レオン……。」
 レオンは整った顔で笑い、鼻歌交じりに出て行った。
「ああ、オヤジが鍵はもう掛けるなって言ってたよ。」
 レオンは見張りにそう言い、その声をドア越しに聞いてヨハンは再び感謝した。
 夜になって見張りも減って、ヨハンは鍵の掛っていない部屋をこっそり抜けた。
 外に何とか這い出て、煙と車と人ごみのけたたましい夜の街を隠れながら裏路地へと
 走った。


人気ブログランキングへ
にほんブログ村 脚本・シナリオ
いつもありがとうございます。
もう十分暗黒の王子だからそっとしといて。
P R
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:sibaenn
読者になる
https://yaplog.jp/sibaenn/index1_0.rdf
2011年07月
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
月別アーカイブ