桐生親子の事件録―260 予言

October 01 [Fri], 2010, 11:11
「最後に!僕への中傷を許さない事をここに宣言する!
 僕があの変態を誘惑したなどという馬鹿げた嘘を流し続ける者があるならば
 この先、未来のいつであっても君達にきっと災いが降りかかるであろうことを
 僕はここに予言しよう!」
 と言って旬は全員をぐるりと指さしながら睨みつけ、
「失礼する。」
 と言うだけ言うと、とっとと教室を出て行った。
 突然現れ空気を乱しまくって去って行った元貴公子に
 残されたクラスメートは今のなんなんだ?とおっかなびっくり互いを見かわした。
 晃が素早く歩く旬の顔を見ると笑っている。
 教室を出た旬はトイレに行き、右ポケットに隠したビニール袋とその中身の白い
 スポンジの様なものをゴミ箱にポンッと捨てせっけんで手をよく洗った。
 そして左ポケットに忍ばせていた除菌シートで十分両手を消毒した。
「ふっ、オトシマエはつけたぜ……。」
 旬は鏡に映る万里子にそっくりな顔の自分に語りかけ悪魔のような笑顔を浮かべる。
 まさに長年晃が見続けていた旬の本来の顔だった。
「旬、お前何をしたんだ?」
 晃はなんだか不吉な予感で胸が騒ぐ。
 鏡には映らない晃は旬のとなりで旬に話しかけたが、もちろん旬には聞こえない。
 しかし今回は旬が予想するほどの効果はなかった。
 水泳部の変態監督は体力が落ちていた為に死亡したがクラスメート達は10人程が
 腹を下して入院する程度の結果で終わった。
 桐生君とエッチがしたい男子達は××がついた手を洗わず舐めたからで、
 ちゃんと手を洗っていたらたいした事にはならなかっただろう。
 旬は自分への侮辱を許さない。全員死刑だとすでに宣告していた。
 しかし意外にフェミニンな旬は女子は除外だ。
 旬は本気で男子全員皆ころしにする予定だったが残念ながら今回の兵は弱小部隊だった。
 後でこの結果を見て旬は
「ちっ、イマイチだったな。」
 と残念に思うことになる。
 しかし中学校では水泳部監督の突然の死やクラスメートの発症を
「桐生の呪いだ!」
 と長く伝え伝説と化していく。
 もう一人、甘栗総司も疑問を抱く。
「桐生君のクラスの生徒が入院…?監督が死んだ…?」
 桐生君の関わったクラスメート達ばかりがあのタイミングで何故?…と。
 今回助かったクラスメート達もいずれ旬が冗談で作成する化け物やウイルスに次々
 やられてそのうち全員死亡することになる。
 旬自身が言ったことすらすっかり忘れてしまう予言がいずれ実現するのだ。
 旬が玄関に向かうと向こうから総司も歩いて来た。
「総司さん。」
「もういいか?」
 総司が旬を見下ろして尋ね、旬は総司を見上げて微笑んだ。
「はい。」
 総司は頷き旬と合流すると静かに並んで歩き校門側に待たせてあるリムジンに乗った。
 その旬の去り行く後ろ姿を窓際の生徒は今度は静かに見送った。
 今回旬と総司は向かい合って座り、晃は旬の横に座ってさっきの事を考えた。
 旬…お前…何を…お前の心はもう救いようがないのか?
 これが俺がお前にした事の結果なのか…?
 再び静かな車内で旬は外を見ていた。
「……。」
 通り過ぎる街の景色を見ながら晃と過した悪夢のような日々を思い返す。
 虐待、放火、暴行、いたずら、数回に及ぶ傷害事件(うち死にかけ3回)、
 強制わいせつ、誘拐、殺人、
 そして晃の殺害…。
 晃のへらへらした笑顔と万里子の後ろ姿が見えて…目を閉じて旬は呟いた。
「…すべて終った…。」
 晃もまたたくさんの忌まわしい思い出を巡らせた。
 そのほぼすべてが自分が旬に引き起こし与えた事なんだとはっきり理解した今
 晃にとってたまらなく辛い後悔の念が湧く。
 リムジンで通り過ぎる瞬間、晃と旬は同時に近所の小さな公園を見た。
 旬がみゆきと出会いみゆきを待ち続けた公園だが、
 晃にとってはここで旬が自分の女に刺された苦しい場所だ。
 どこもかしこもそんな嫌な晃を責め立てる思い出ばかり。
 俺は…肉体を失った今…この先どうやって旬に償えばいいんだ…。
 晃は暗い顔で広げて座った足に屈むように顔を両手で覆って首を落とした。
 リムジンは旬の黒い思い出の中を通り過ぎて街を走り去った。




にほんブログ村 脚本・シナリオ
(いい子になってくれ旬!そしてキスさせてくれ!)
(間違っているぞ桐生。)

桐生親子の事件録―261

October 02 [Sat], 2010, 11:40
 空港の待ち合わせた場所に着くと甘栗太一が待っていて旬と総司に駆け寄った。
 甘栗の優しい笑顔を見て旬の心にもやもや広がった黒い記憶が遠のく。
「桐生君!総司!」
「せんせえ〜。」
 旬はさっきまでの悪魔の様な表情はスッと消え可愛い笑顔で太一のもとに走った。
 旬の表情が劇的に変わるのを見て総司は再び不可解な気持ちになる…
 私が側で感じた桐生君はとても冷静で冷酷に見える。
 しかし兄といる彼はまるで子猫のように可愛い…いったいどちらが本物なのか?
 しかし、どちらも本物の旬なのである。
 冷酷で無神経、無慈悲で傲慢、これも旬の本質だし
 脆くて繊細、精神不安で気絶する、これも旬なのだ。
 旬の脳回線は救いようがないほどチグハグに接続されているのである。
 しかし甘栗に笑顔で駆けって来る旬は甘栗にはただの子供。
 それどころかこんなに可愛い子供はめったにないくらい素直な可愛い子供だ。
 旬の背中を抱いて甘栗はデカイ弟を見上げた。
「総司、本当になにもかもありがとう。ごめんね、ものすごく忙しいのに。
 でも総司のしてくれた恩は忘れないよ。」
 総司は小さな兄を上から見下ろし穏やかな笑みを浮かべる。
「兄さん。また今度はいつ会えるかわかりません。
 しかし何かあれば私はまたいつでも力になります。」
「ありがとう、総司。」
 兄弟が別れの挨拶をしているのを旬は待てないようで慌てて割って入った。
「総司さん!僕に対して間違ったネタを載せている週刊誌がいくつかあります!
 名誉棄損で訴えてください!なんなら出版社を潰してください!」
 晃より背の高い総司を見上げ噛みつきそうな勢いで喚く旬はやはり可愛げのない
 ムカツククソガキに感じられる。
「…む?」
 旬はどうやら晃にそっくりな総司に晃の代わりに要求が激しくなっているようだが
 総司はちょっと変な顔をしつつもちゃんと受けとめた。
「……うむ、わかった、すべての記事を差し止めさせよう。
 何か不明な点があれば電話をする。最悪の場合は出版社を買い取っても構わない。
 君はもう何も心配しないでちゃんと勉強するんだ。いいね?桐生君。」
「はい、わかりました。」 
 自分の望みを叶えてくれると聞いて旬はあどけなく笑ったので総司もかすかに笑顔を
 返しその場を去った。
 と見えたがしかし、5歩あるくと突然総司は振り返り大声で、
「桐生君!もし気が変わったらいつでも電話をしてきなさい。
 芸能界は君を待っている。」
 と念をおした。
「……………はい。」
 そして総司は自分の戦場に帰って行った。
 旬はその総司に睨みを利かし、チッしつこい野郎だぜ甘栗総司め…と内心舌打ちした。
 晃はそんな総司を睨む旬を見ながら
「おまえ…、総司君にあんなに世話になっておいてその眼はなんなんだつーの。」 
 と総司に申し訳なく思って
「ばいばーい総司君、色々ごめんねーでも助かったよ―。」
 とへらへらした笑顔で手を振って軽〜くねぎらった。


にほんブログ村 脚本・シナリオ
いつもありがとうございます。
(ばいゃばいぁーきゃっ、きゃっ)
(バイバーイ)
(……)

桐生親子の事件録―262 子猫・旬

October 03 [Sun], 2010, 11:07

 総司を見送って甘栗が旬を誘った。
「桐生君。まだ時間があるから空港を見学に行こうか。」
「は〜い。」
 旬はくるっと振り向くと甘栗に可愛く笑ってその後をゴロニャンゴロニャン
 とついて行った。
 空港内を見学しようねと二人で楽しく歩き回る。
 色々なショップをフラフラして、時々旬は甘栗の顔をそっと見て嬉しそう。
 しばしして旬がソフトクリームの大きな写真をじーっと見ているのに気が付き
 甘栗は言った。
「ソフトクリーム食べようか。」
 旬は真っ赤になって俯いてしまった。実は食べた事がない。
 晃は遊びに連れてってくれた事ないからついでに食べるなんて事もある訳ないし、
 男のくせになんとなく女のガキっぽいから一人では食べたかったが、食べなかった。
「何がいい?」
「バニラ…あ、いえ、チョコ…。」
 決められなくてもじもじする旬は中学校での悪魔の様なクールな姿とは全然違う。
「げげ、旬が可愛い!?なんて可愛いんだお前!全然さっきと違うじゃん!」
 晃はあんまり可愛いのでお前別人か?と驚いた。晃の全く知らない旬。
 そうかー、旬は俺の知らない間に甘栗さんと会ってこんなに可愛く甘えてたのか、
 これじゃあ甘栗さんも可愛くなって引き取りたくなるな、
 と甘栗が旬を好きになる気持ちを理解した。
 俺だって旬がこんなに可愛く甘えてくれてたら凄く可愛がったのにさ。
 と思いつつも生まれる前から俺が旬を嫌ってるの知ってたんだから
 それで甘えてくるわけないか、とも考えた。
 生まれた途端に上司にへつらう部下みたいなそんな赤ん坊はそれはそれで嫌だ…。
「バニラとチョコのミックスがいいの?」
 ううんと旬は首を振る。
 どちらか一つにしてちゃんと味わって見たいけど決められない。
「そうなの。じゃあバニラとチョコだね。」
 恥ずかしそうにもじもじする旬の為に甘栗はバニラとチョコの二つを買ってくれた。
「はい桐生君。」
「せ、せんせえ。」
 旬は両手に受け取ると赤くなって恥ずかしそうにはにかんで食べた。
「おいしい〜〜〜〜〜!」
 初めは女の子の様に小さく口を開けて食べたがあんまり美味しいので旬は喜んで
 がぶがぶ動物の様に食いついた。
 その様子を甘栗太一はとてもとても愛おしそうに見守ったが、晃は寂しかった。
 俺に一度もこんな可愛い顔を旬は見せてくれなかった。
「旬……。」
 晃は口の回りにべったりつけて食べる旬をじっと見ながらメソメソシクシク泣く。
「おいしいいい〜〜〜〜〜。」
 そんな晃に全く気付く事なく旬は二つを一気に食べきって頭がキーンッとした。
 旬と甘栗は一緒にはしゃぎながらあちこち回って
 ついにジャンボジェット機へ搭乗の時間がきた。
 実に旬は3歳の頃からずっとキャビンアテンダントのおねーちゃんに憧れていた。
「生スッチー…楽しい。」
 旬はスッチーが待っていると思って笑顔で喜んだ。
 前にみゆきの後をついて飛行機に乗った時はみゆきに夢中でCAどころではなかった。
 だから今回初めてゆっくりCAのお姉ちゃん鑑賞を楽しめる訳だ。
 機内はガラガラ。平日だから仕方ない。CAが笑顔で待っているのが見える。
「ああ、可愛い…!」
 旬が想像していたよりかなりの美人が笑顔で挨拶してくれた。
「最高!」
 その後甘栗と一緒にファーストクラスに行く。
「わ〜〜〜、ファーストクラスだ〜〜〜〜。」
 旬は何もかも初めてでわくわくして目を輝かせ、その表情は年齢よりずーっと幼い。
 甘栗の側にいると旬は素直に自分の感情が現せるのだ。
 広々したファーストクラスに今日は乗客は旬と甘栗だけ。
 全部使っていいのかな?旬は可愛い子供らしい顔で回りを見回す。


にほんブログ村 脚本・シナリオ
いつもありがとうございます。
ばぶーばぶー!(しぇんしぇーしゅきー!)
(いい子だね、桐生君。)
(俺への態度と違いすぎー!)
(私へもだ)
(仲良くしよう総司君!)
(……)
(なんでだよー!)
ペンギンノツブヤキ

桐生親子の事件録―263

October 04 [Mon], 2010, 11:23
 ハッとCAの姿が目に入るとコーフンする旬。
「おお、さっきの姉ちゃんよりかわいいぞ!」
 他のCAを見に行きたくてしょーがない旬がキョロキョロしているのを見て
 甘栗は、
「桐生君。離陸したらゆっくり飛行機の中を探索しに行ってごらん。」
 と笑顔で言ってくれた。
「はい!先生!」
 先生は自分の気持ちを何でもわかってくれる…旬は赤くなってまたはにかむ。
 離陸して空を飛んでいる。
 窓から空を見て旬は嬉しそうにはしゃぐ。
 そしていよいよCAの探索だ。前に国内線に乗ったがジャンボはやはり雰囲気が違う。
 僅かな振動を感じならが床を見たり周囲を見たりしてるふりしてCAを見る。
「おお、さっきの姉ちゃんに比べるとちょっとだな、75点だ。こっちは80点、
 うっなんだこの女!なんでお前ごときがスッチーになれたんだ!
 許せん、貴様は出て行くがいい!30点だ!」
 と旬は心の中でセクハラしていた。
 ひとしきり楽しんで甘栗の所に戻る。
 ボーっとしてるうちに眠くなって眠ると起こされた。
「桐生君ご飯だよ。」
「はい!先生。」
 結構豪華な夕食、でも味がイマイチだなと固い肉を睨む。
 ふと見ると甘栗がお酒を飲んでいる。
 いいな飲みたいな、でも総司さんと同じく怒るよなと、もの欲しそうに見ていると
 甘栗がじーっと自分のお酒が入ったグラスを食い入るように見ている旬に気が付いて
「桐生君、お酒飲む?」
 と旬に聞いてくれた。
「えええっ?でも総司さんがお酒は二十歳になってからって…。」
「総司には内緒だよ。」
 甘栗はお茶目に笑った。
 甘栗は旬に好きなだけお酒を飲ませようとすぐにCAに頼んだ。
「すみませんワイン3本と日本酒3本持ってきてください。」
 旬は昨晩総司に取られて飲めなかった赤ワイン1本を開ける。
「おいしー!」
「桐生君イケるね〜。日本酒は飲んだことあるの?」
「え?ないです!晃はいつもビールばっかで、日本酒は飲んだことありません。」
「美味しいよ。飲んでみる?」
「えええええ!飲みたいです!」
 甘栗は早速日本酒を開けてついだ。自分も1杯飲んで言う。
「ああ、これは良いお酒だね。」
 甘栗もかなり飲む口らしくグビグビ飲む。
「うううめええ!」
 旬も真っ赤な顔でグビグビグビグビ。
 晃は旬と甘栗のペースが早すぎて焦る。
「おい、おい、旬お前、いくらなんでも飲み過ぎだぞ。甘栗さんあんた止めてくれよ!」
 晃は俺だってここまでは飲ませなかったと呆れる程の量だ。
 旬はまだガキだがすでに酒豪並に飲むのでやたらペースが速く
 甘栗も酒好きで二人はどんどん飲みまくりついに旬は
「うい〜っく、ぎゃはははははははは〜。酒もっともってこ〜い!」
 と酒乱と化した。そのうち熱い熱いと言って服を脱いでパンツだけになり
「ぐぐぐぐぐ―――――ん、きいいいい――――――んっ!」
 と両手を水平に大きく広げて大声を上げて騒ぎながら
 機内中を走り回って他の席の乗客の席に飛びかかり
「けけけけけけけけけ――――っ、ひ―――ひひひひひひひひっ」
 と激しく笑いながらめったやたらにドタンバタンと飛び跳ねてCAが悲鳴を上げる。
「走らないで下さいお客様!機内では激しい運動は控えて下さい。」
 しかしパンツ一丁の旬は止まらない。
「旬!馬鹿!やめろ!」
 晃が旬を捕まえようとシートに座る立体映像の人間達の間を走って追いかける。
「あははははははは!」
 ほぼ全裸の綺麗な子供が狭いエコノミーの廊下を人をかき分けガタガタ走るから
 飛行機が大揺れに揺れる騒ぎになった。
「わ―――、なんだこの餓鬼は!」
「何やってるの追い出して!」
「きゃ―――、どこに座ってるのよ――っ!どいてーっ!」
 他の乗客からの激しいクレームで男のキャビンアテンダントがみんなで取り押さえ
 それでも旬が暴れまくるのでロープで手足を縛って、酔いが収まるまでの間
 シートから落ちると危ないのでと言う事で床に毛布を敷いて寝かされた。
 その一部始終を甘栗はにこにこと笑って見守った。
 晃は旬を育てなかったダメ親だったがこの甘栗は旬を甘やかしまくる
 ダメ親になるのである。
 それでも旬にとっては唯一自分を受け入れてくれる温かい師父なのだ。
 なにをやっても許してくれる、その安心感は旬をリラックスさせる。
 晃が旬に与えた緊張の世界がこれから甘栗太一の与えるお気楽な世界に変わる。
 床にロープで縛られてそれでもけけけけと笑い続ける旬が寝ている。
 せっかくのファーストクラスでザコ寝をし狭い隙間に座って
 甘栗は笑顔で酒を飲んでいる。金持ちなのになんとな〜く貧乏くさい。


にほんブログ村 脚本・シナリオ
いつもありがとうございます。
(ぶうううぐぴっ!きゃっ、きゃっ!ばうー)

桐生親子の事件録―264

October 05 [Tue], 2010, 11:08

「桐生君。君はぼくに感謝すると言ってくれたね。でもね、
 感謝するのはこのぼくの方だよ。
 ぼくはずっと孤独だった。もちろんパパもママも総司もいたよ。でもね、
 みんなぼくとは違う星の人たちなんだ。仲良くしていても何かが違った。
 でも君と会って初めて、ああぼくと同じ星に所属する者がいるって強く感じたんだ。
 本当に不思議な体験だった。君はこのぼくの孤独な世界を埋めてくれたんだ。
 ぼくたちはきっとうまくやれる。
 孤独な人生をお互いがきっと埋め合わせられる…
 君と暮らすこれからの人生がぼくはとても楽しみだよ。」
 甘栗はまるで乾杯をするようにグラスを上げて旬にむけた。
 旬は真っ赤な顔でにこにこ笑ったまま寝ている。
 そんな甘栗を見て晃は考える。
「俺も旬もあんたも孤独だったのか…。…万里子もそうだ……。
 ――だのになんで俺達家族はちゃんと愛し合えなかったんだろうな…。」
 甘栗の横で縛られて茹でタコのように真っ赤な顔で転がっている旬がいる。
 甘栗は寝ている旬を可哀そうに思って両手足のロープをといてあげた。
 その旬の横に晃も頭に腕を回して枕にした格好で寝転がっている。
 晃の場合周囲は立体映像だから狭さも関係なく
 もう慣れてきた晃はちょっと立体映像の壁に身体がはまっていても気にならない。
 …晃は死んでもう仕事に行くこともない。
 もともとチャラけて無責任な晃は会社の事はもう別にどーでもいいやと思ってる。
 だって万里子が手に入らないし、旬は甘栗さんが守ってくれるし、
 会社も勝手にやるだろうし…。
 それより今はこうして旬の顔を見てる方がずーっと幸せだ。
 死んで肉体を失った今、晃は女達に興味がない。
 性欲絶倫の晃は処理する女がいないと困ったものだ。
 スケベキング晃にとって女達はおかずどころか漬物のきゅうりとかなすとか
 らっきょうとか刺身のつまとかごはんの米粒一粒一粒だとか、
 まあ、そんな風にもうほんとに単なる遊び以下だった。
 晃は万里子を失った心の穴を性欲処理要員に有名女優やカルスマモデルやアイドル
 というステータスで埋め合わせようともしたが万里子の穴は大き過ぎて
 埋まらなかった。
 しかし死んだ今になっても晃にとって万里子は恐ろしい存在だ。
 もし万里子が王子を本当に愛し、可愛い笑顔を向けているのを見たならば
 晃は気がふれるかもしれない恐怖で万里子の側に行けない。
 怖くて怖くて…その万里子の姿をほんのちょっと思い浮かべるだけで
 晃の心臓は止まり血が引く思いなのだ。
 まあ実際はもう死んでるが肉体の記憶を再現してそんな反応を起こす晃がいる訳だ。
 死んでも万里子への得られぬ愛に苦しみ胸の痛みが晃を蝕む…。
 そんな晃だがやっと旬を父親として愛し、この世で唯一の血を分けた、
 それも万里子と自分との間の可愛い子供・旬への愛が狂気から正気に救ってくれてる。
 全てを失った今こそ晃は自分の最も大切なものが何だったかを知る事ができた。
 失って初めて分かる真実。


にほんブログ村 脚本・シナリオ
いつもありがとうございます。
(ばぶばぶ(メシー!)
(ほら〜旬ミルクだよ〜こら吐くな!)
P R
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:sibaenn
読者になる
https://yaplog.jp/sibaenn/index1_0.rdf
2010年10月
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
月別アーカイブ