桐生親子の事件録−2

August 19 [Wed], 2009, 10:30
「万里子…。」
「…………。」
 万里子はまだ名前を覚えていなかったのでじっと見つめたまま何も言わない。
 晃は万里子を抱き寄せてそのままキスをした。
 そのキスはとても情熱的で、どうやら万里子の心も冗談から本気へと動かした。
 背の高いハンサムな青年ともの凄い美女のキスシーンはまるでドラマのワンシーンの様だ。
 晃は180cmはあるが万里子も170cmはあるようなので遠くからでも凄く目立つ。
 街行く人々はその光景をうっとりと見とれ隣の車道を走っている車のドライバーも
 そのキスシーンに見とれてしまった為に気を逸らし前方不注意で信号待ちの車に追突し
 その後ろの車も次々激突し辺りは騒然となったが
 晃と万里子の二人はそのまま何度も何度もキスを繰り返して止めなかったので
 やじ馬はごった返した事故現場で事故とキスシーンを交互に見比べた。
「行こう、万里子。」
 かなり長〜くキスをしている間に晃が連れてた女の子達も万里子にたかったていた
 男達の群れもいつの間にか去っていた。
 万里子は晃の腕の中でうっとりしながら晃を見つめて可愛い声で言った。
「あなた、名前なんて言うの?」
「晃だよ。万里子、俺は桐生晃。万里子は桐生万里子になるんだ…。」
「あきら…。」
 晃は万里子を抱き寄せてくりくりした目でにこーと笑ったから万里子はすっかり
 晃を好きになった。
 二人で高級ホテルのレストランで食事をし、そのままそのホテルに泊まった。
 その晩は万里子の華奢な身体を抱きしめて晃はとても幸せを感じた。
 こんな気持ちは初めてだった…女好きの晃はたくさん恋人がいる。
 でも実は一度も惚れた事がなかったんだ、あれは恋でも愛でもなかったんだと初めて知った。
「万里子…愛してるよ…。」
 すごくしっとりした肌を抱きしめながら晃は初めて本気で愛を語った。
 万里子は晃を一生虜にするその黒い目で見つめながら吐息を洩らす。
「晃…あなた…わたしを救える?」
「ああ、救ってみせるよ……。」
 と言っとけばウケルだろうと晃は口説き文句として言った。
 万里子はじっと晃を見る。その眼は晃の心を奪う。晃は万里子をずっと抱いた。ずっと…。
 次の日晃は自分の住んでるマンションに万里子を連れて行った。2DKの小さな部屋だ。
 晃はちょっと恥ずかしそうにその辺にちらばる洗濯物やゴミをかたずけて
 万里子にここに座れよとベッドに連れてった。
「今日からここに住めばいいよ。」
「うん…。」
 万里子は可愛く頷き、晃は万里子にそっとキスをしてそのままベッドに二人で転がった。
 晃と万里子はそのままその日からいっしょに暮らすことにした。
 雨が降る静かな夜に二人は手を握りしめ互いを見つめながら互いの事を語り合った。
 晃は小さな頃に交通事故で両親を亡くし、施設で育った。
 万里子も母が亡くなり、実の父とは縁を切っているという。
「わたしの母は父の愛人だったの。わたしは私生児。父は私たちを捨てたの。
 母は優しい大人しい人だった。母は自殺したのよ……。」
「………………。」
 晃は万里子の深い孤独を知った。
 それでわたしを救えるかと聞かれた時、全く深く考えなかった事を晃は悪く思った。
「俺達、寂しい人間同士だったんだな……。」
 寂しい二人は互いに魅かれて運命を感じた。少なくとも晃はそうだった。
 万里子の黒髪がベッドに広がって、綺麗すぎる花の様な顔にかかるのを晃はそっと触れた。
 ただ黙って、晃は万里子を見つめ、万里子は晃を見つめ、二人は朝まで互いを見つめ続けた。
 それからほんの一週間後に晃と万里子は教会で結婚式を挙げた。
 雲ひとつない青空の下、真っ白な教会の中に今二人はいる。
 祭壇の前で純白のウエディングドレスの万里子と黒いタキシードの晃が二人並んでいる。
「貴女は病める時も老いる時も死が二人を分かつまでこの男を愛することを誓いますか?」
 神父の言葉に万里子は可愛い声で答えた。
「はい、誓います。」
 次に神父は晃に向いて尋ねた。
「貴方は病める時も老いる時も死が二人を分かつまでこの女を愛すると誓いますか?」
「はい!誓います!」
 晃はそれこそ満面の笑顔でそう言ったので万里子は恥ずかしそうに笑った。
 晃と万里子は互いに指輪を交換し、
 晃は万里子の顔にかかった純白のベールをあげてそっとその唇に口ずけた。
 教会の豪華なステンドグラスの前で互いに愛の誓いのキスを交わす万里子と晃の姿は
 あまりに美しくまるでドラマのワンシーンのようだった。

 
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