さあ世界を征服しよう!−1 晃と旬・新しい人生の始まり

October 10 [Sun], 2010, 11:25

 真っ青な空の下には真っ白な雲が流れその合間からジャンボジェット機が
 太陽の光を反射し輝きながら超高層ビルが立ち並ぶアメリカ・ニューヨーク上空に
 降りてきた。
 ジョン・エフ・ケネディー国際空港へ飛んだジェット機は無事着陸し
 飛行機から降りたたくさんの人々が空港へなだれ込みワイワイガヤガヤと
 歩き回っている。
 ケネディー空港内には世界中の人種が集まりあちこちからたくさんの国々の言葉が
 聞こえてくる…その中で、日本語で話す少年がいる。
「わ〜〜〜、凄〜〜い、先生!みんなぜーんぶ外国人です!」
 まだ13歳になったばかりの身長は150cmもない小さな少年、
 これは桐生旬という。
 サラサラの黒髪に大きな揺れる黒い輝く瞳の整った顔の超可愛い美少年だ。
 旬は無邪気にそこらじゅうにいる外国人達を見回しているが
 その旬の可愛い顔を周りの大人達は覗いて微笑んでいる。
 その後ろに明るい茶髪、スラリと背の高い大きなくりくりした目が印象的な
 ハンサムが背広姿で立ってる。こいつは桐生晃。桐生旬の父親だ。
 晃は立ち止って空港内を口を開けて見回す息子の前に後ろからサッと出て、
 自分の体で覆い両手を広げて後ろの旬に背中越しに声を掛けた。
「気をつけろよ旬。アメリカはな、とにかく人種のルツボだ。自由なだけでなく
 色んな国の犯罪者もいっぱい紛れてるんだ。油断するなよ!」
 晃はそう言うとまるで要人警護のSPの如く最愛の息子・旬に襲い掛ってくる奴が
 いないかを探る様に挙動不審に身構え真面目な顔で左右をキョロキョロ見回し
 キラリと目を光らせた。
 イケメン・晃がバッ、バッと妙にポーズをキメてSPごっこをしているのに
 なんだか緊張感のない声が語りかける。
「桐生君、長旅で疲れちゃったね、なんか食べてこうね。」
 身長160cmくらいしかない小さなおじさんもいたようだ。
 頭髪がぼさぼさで眼鏡をかけヨレヨレの背広姿の平凡以下、地味な目立たない男だ。
 超美少年・旬とイケメン・晃の側にいるとその平凡さが際立つ。ややビンボー臭い。
 しかしこの地味なニコニコ笑顔のおじさんこそ、世界でも上位にランクする大金持ち 
 甘栗グループ総帥・甘栗太一その人なのである。
 しかしその素顔は謎で誰も知らないからこうしてのほほ〜んとフツーに生活してる。
 晃も旬も出会った時は甘栗の正体を全く知らず、
 ただアメリカの大学教授だと思っていた。
 旬の現在後継人、晃に代わって旬を育てる親代わりの甘栗が優しい笑顔で旬に言うと
「はい、せんせえー。」
 旬は前にいる晃を全く無視して甘栗に世にも可愛い笑顔でゴロゴロニャンニャン
 仔猫の様な甘えた顔を向ける。
 するとなんと旬の前で護衛ごっこしているイケメン晃を旬は通ってすり抜けた!
 しかしそんな馬鹿な事が起きたにもかかわらず周囲の誰も驚かない。
 それどころか周囲も旬も甘栗も晃の肉体を通り抜けたという事実に
 気付いてさえいないのだ。
 何事もなくゴロゴロニャンニャン甘栗の後をついて行く愛息子・旬の後ろ姿を見て
 晃は大げさにがくーっと首を落として大きな溜息をつく。
「はあ〜〜〜、俺、寂しい〜〜〜。」
 甘栗の後を旬と晃が並んで歩いているが晃は見えない存在だ。
 桐生晃は既に死んで肉体を失っているのだ。
 だから傍から見ると甘栗と旬の二人が並んで歩いているだけにしか見えない。
 しかし晃の側からすると生前の肉体の反応は全て霊体にコピーされ肉体があるのと
 同じ反応をするので晃自身は肉体を感じ、暖かさも感触も汗や動悸息切れまで
 生身の時にしたパターンを反応してしまい死んだ気がしない。
 むしろ自分以外の人間達の方が全部死んで立体映像・幻になったかの様な状態だ。
 だから愛する愛息子の旬も実態のない幻の様にすり抜けてしまうのだ。
 今も混雑する空港を歩いて誰かにぶつかっても晃はすり抜けるので全くよける必要が
 ない。これは生きている人間同士では互いに脳内の電子信号世界を同時に感じあい
 実体があると互いに同時間的に感じるが、死んだ晃は感受する肉体はないわ波長が
 変わってしまったわで同時共振的感受性信号がズレている為にこうなった。
 つまり晃からすると晃だけ完全にシカトされた孤独の世界にいるのである。
 晃は明るく目立ちたがり屋でいつでも仲間の中心、女は全部晃の虜、
 スケベキングの異名?を持ち、女を食いまくり遊び倒した。
 女は晃を争い男は晃を羨みいい気分で我儘放題してきた。
 でもどんなに我儘をしてもいつでもなんでも許された人気者だった。
 そんな晃にとってこんなに寂しい思いは生れてから死んでみて初めてなのだ。
 うっかりすると涙が出ちゃう…死んだ晃はちょっと乙女だ。
 それでも愛する息子の側を離れたくなくてこうして無視された世界で頑張っている。

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また遊びに来てくださってありがとうございます。
晃、旬、はい御挨拶。
ばぶばぶ。ばぶばぶ。
晃、子供がえりしすぎ…。

さあ世界を征服しよう!−2

October 11 [Mon], 2010, 11:18
 旬と甘栗は空港内のマックでハンバーガーとフライドポテトとドリンクを買って
 店の前に並んでる白いテーブル席にテキトーに座ってもぐもぐした。
 食べながらまた左右をキョロキョロする旬。
 やっぱり食べ物が違うせいか日本と違う匂いが充満している。
 そして回りの大人達を見て背が大きいだけでなく凄く横幅も大きいので
 旬は自分がすっかり小さな子供に返った気がしていた。
 これじゃあ俺なんか10歳くらいに見えるんじゃねえか?
 ちょっと小さなガキ扱いされて舐められそうでムカついた。
 晃は旬がハンバーガーを一生懸命噛んで口にほうばりもぐもぐしてるのを
 晃は指を旬の目の前にもっていきトンボにするようにクルクル回して暇を潰している。
「あ〜あ、腹も空かないし…することねーな。」
 晃がダレて顔をテーブルに突っ伏してるといつの間にか二人は立ち上がり
 いなくなっていて、晃が突っ伏している椅子を誰かが引いてドッカと
 巨大な白人のおっさんが座って晃はびっくり飛び起きた。
「うわー!人が座ってんのになんだよこのオヤジー!って、あれ?旬??」
 何?二人が何処だと立ち上がって見ると二人はもう遠くを歩いてる。
「待ってくれ―!」
 油断するとすぐ見捨てられると晃は慌てて追いかけた。
 甘栗と旬は食事を終えて車に乗り込みこれから住む二人の新たな家に走って行く。
 旬は甘栗をそっとうっとり見つめて思った。
 大好きな先生とこれから一緒に暮らせるんだ!俺、先生に嫌われないよう頑張ろう!
 旬はついおととい死んだ晃の事を考えた。
 あいつとの生活はハナから(生まれた時から)失敗だった……。
 でも、俺…今度はちゃんといい子になって先生と仲良く暮らすんだ!
 旬は晃が死んで悲しむより新生活を今度こそ成功させることに集中していた。
 何しろ旬は生まれる前から意識があった天才だ。
 残念な父母・晃と万里子は二人とも旬を愛さず疎んでいた。
 なぜなら晃も万里子もどちらもがもう一回育てなおしたほうがいいような子供なのだ。
 絶世の美女―万里子は旬を憎んで捨てて行き、晃は旬を連れてけ迷惑だと怒鳴った。
 現在晃は長い時間をかけてやっと死ぬ間際に父性のスイッチが入り旬に愛情を感じて
 いるが正直1、2年前までは要らない子供を押しつけられた程度の考えしか旬に対し
 てなかった。おまけに未だ未練たらたらの元妻・万里子に瓜二つな旬を万里子の
 身代わりにキスさせてと追いかけまわす変態バカダメ親父だったのだから、
 旬からしてみれば自分の存在を否定し愛してくれない上に万里子の身代わりした
 迷惑な奴でしかなかった。
 そんな時に甘栗太一と出会い、旬は急速に甘栗の優しさに心を開いていった。
 旬にとっては突然現れて暗い闇の中で凍えて震えていた自分を救いだしてくれた
 甘栗の方がよほど大事な父親なのである。
 そんな旬の思惑も気付かず晃は車中ではしゃいでいた。
「おー、旬、このままいくとたぶんセントラルパークだぞ!
 もしかしてあのマンションかな?甘栗さん金持ちだからなー、わくわくするなー。」
 晃は37歳になってすぐで死んだが、
 まったく精神年齢が低いまま成長しないガキ男だったので、
 死んで何気に若返って22〜4歳くらいの姿に見える今は精神年齢に近ずいた感じだ。
 いや、本来もっと幼く15、6歳くらいの不良少年のまま止まってるかもしれないが、
 万里子と出会った頃、旬が生まれた頃の自分が気に入っているのだろう…。
 甘栗と旬と晃を乗せたタクシーは晃の予想通りセントラルパーク沿いに建つ建物の
 ガラス全体的に反射し青い空を映すキレイな超高層高級コンドミニアム前に停まった。
 車から降りて超高層コンドミニアムの上〜の方をずーっと見上げて晃と旬は
 目を丸くして驚いた。



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きゃぴきゃきぴきゃっきゃっ!
(わーい。わーい。嬉しいなー。)
晃、おととい死んだのにすっかり元気ね。
サンポアルケバスグワスレル…

さあ世界を征服しよう!−3

October 12 [Tue], 2010, 10:55
「わ――――、凄ーい!」
「見ろよ旬、でっけーなー。ここが俺たちの新しい家なんだなー。」
 住む家がどこか分かればこれで旬が帰る場所が分かるから安心だ、晃はホッとした。
 晃と旬がずーっと上をワーワー言いながら見つめていると甘栗が笑顔で旬を手招いた。
「桐生君、今日からここが君のうちだよ。僕もパパが死んでから住んでるんだ。」
「先生のお父様がお亡くなりになられてから?」
「うん。それまでは同じマンハッタンだけど違う地区の普通のアパートだったんだ。
 ぼく研究所の研究とアメリカの大学で臨時講師しながらアマグリケミカル特別顧問
 してたの。甘栗グループの給料は全部株に変えてもらって、ぼくは講師の給料で
 暮らしてたんだ。ぼくできるだけ普通の暮らしがしたかったから。」
 旬は感動した。
 甘栗グループの力を傘に着ないであくまで研究者でいたい先生は格好良い!
 それに比べて思いっきり甘栗グループの傘を着て偉そうにしてる弟・甘栗総司とは
 大違い…。旬は改めて先生大好きです、と心の中で訴えた。
「おーい、旬、甘栗さーん、早く―早く―。」
 甘栗と大差ない大人のくせに晃ははしゃぎ回ってうるさいが、もちろん見えてない。
 甘栗はドアマンに笑顔で挨拶し、旬と晃もぐるぐる回りを見回しながらついていった。
 エレベーターが最上階に向かって最高の見晴らし最高にダダ広い部屋に三人は入った。
「わー、凄ーい、広いですー先生ー。」
 旬はこんな豪華な部屋見たことないので目を丸くし晃はあちこち走りまわった。
「おい旬、凄いぞ部屋が10はあるぞ!俺どの部屋にしよーかなー。こいよほら旬ー!」
 晃が立体映像を走り抜けるとほとんどの部屋には白い布が家具やベッドに
 かけられていて使われていない様子だ。
 旬は晃と違ってはしゃぎまわると言うより驚いて、考え込んでしまった。
 晃と旬がおとといまで住んでいたマンションも広い4LDKなのだが
 この部屋はその3倍くらい広い。旬はほんのちょっと不安になった。
 こんなに広いと掃除が大変だ…。
 旬は赤ちゃんの頃に虐待されたのでハウスキーパーに家に入って来て欲しくない。
 晃との暮らしでも掃除・洗濯・炊事・晃の世話と何でも一人でこなしてきた。
 だからここでも家事は全部やるつもりなのだがこんなに広いと
 掃除だけで1日終わるぞ、勉強できないぞと心配になったのだ。
 しかし甘栗は旬が勉強している間にハウスキーパーに掃除などをしてもらって
 旬とは顔を合わせない様に計らうつもりだからそんな心配は要らなかった。
「君と暮らそうと思ってもう君の部屋に必要なものを揃えてたんだ。
 まだ晃さんに許してもらってなかったんだけどね。
 ほらこの部屋が見晴らしが凄くいいから君に…。」
 甘栗が旬の部屋にと決めた部屋は広さ20帖ほどで、全面ガラス張りの向こうの
 景色はセントラルパークの緑緑緑の美しい自然がこんもり見えた。
 部屋にはベッドや机やソファーや素敵な顕微鏡や、色々な本や洋服全部揃えてある。
「桐生君と一緒に暮らそうと思ってこの部屋をかたずけて準備してたんだ。」
「せんせえー、僕…僕…。」
 自分と暮らせる保証がない時から自分の為に全て選んで用意してくれていたんだと
 知って部屋の真ん中に立って見回しながら…
 旬の大きな黒い瞳はもう涙涙でいっぱいだ。
 こんな僕の事を先生は本気で一緒に暮らそうと考えて用意してくれてたんだ…。
 旬は自分という存在を受け入れてもらった事がないので胸が震えるくらい嬉しかった。
 肩を震わせて泣く小さな旬を晃は胸の痛む思いで見ていた。
 旬……俺がお前を無視していた間…お前はずーっと寂しかったんだな……。
 俺はお前に普通の人と同じように感じる心があるとは…思ってなかった……。
 許してくれ……晃は幻の様な旬を抱きしめるような恰好をした。
「桐生君。」
「先生…。僕いい子になります。」
 泣いている旬を甘栗はぎゅっと抱きしめて言った。
「桐生君はそのままでいいんだよ。桐生君はすごくいい子なんだから。」
 旬は甘栗に暖められながらずーっと泣いた。
 その後の生活は旬にとって夢の様な幸せな時間だった。
 甘栗太一は現在亡き父・甘栗泰三の後を継ぐ弟・総司がまだまだ全てを取り仕切れ
 ないので甘栗が出来る手段で甘栗グループの仕事とアマグリケミカルの仕事、
 更に弟にも秘密の仕事を同時にこなす為ほとんど時間がないのだが、ケミカルの
 仕事を長期休止することで休日を作って出来るだけ旬の為の時間にあてる準備をした。
 休日になると甘栗は旬を観光名所にあちこち連れて見せに歩いた。
「わー、これが本物の自由の女神かー。」
 旬はずっと小さな世界に籠っていたからテレビではなく自分の目で見る本物の世界に
 感動し本当に可愛らしい子供らしい素直な態度で喜びを表した。
 また甘栗は旬が大学で勉強したいという希望を叶える為に色々考えてくれた。


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さあ世界を征服しよう!−4

October 14 [Thu], 2010, 11:19
 旬はまだ13歳になったばかりで本来なら日本の中学一年生の義務教育をしてる最中。
 しかし中学入学ほんの2か月で水泳部監督に強制わいせつで襲われそれを返り討ちの
 血まつりにしてからは不登校でほとんどまともに学校に行っていなかった。
 しかし旬は生まれる前から意識がある天才で自分なりに進路を決め、独学で高校卒業
 程度の学力はあるし今は自分の好きな遺伝子工学の勉強に打ち込んでいる。
 しかし英語力試験のTOEFL(トフル)の試験資格が16歳からで
 旬は受けられない為に甘栗は、甘栗グループ経営の語学学校に特別入学させて卒業
 させる事でTOEFLを免除してくれる大学への条件付き入学を考えた。
 甘栗自身アメリカのあちこちの大学講師をしていたのでコネはいくらでもある。
 いくらでも旬の為に推薦状を書けるしもちろん甘栗グループという財力を行使出来る。
 旬は基礎英語はもう出来るのでこの語学学校は卒業の形だけ得られればいいのだが
 しかし大学での高度な勉強に備え甘栗が用意した科学で必要な専門用語の獲得に励み
 同じクラスに入った旬より年上の生徒達はその内容の高度さに舌を巻いた。
 ニューヨークにある甘栗グループ系列の語学学校長は
 社長・甘栗総司直々に頼まれた子供に対し失礼のないよう異常に気を配った。
 しかし、甘栗太一は顔を知られてない総帥なので、送り迎えしてくれる使用人の様に
 見えたらしく、この男がまさか総帥とは知らない校長は態度が高飛車だった。
「ああ君、ちゃんと旬お坊ちゃまを送り届けるように。間違っても余所見運転などを
 して事故を起こしてはいかんぞ。もしもの時は君に責任を取ってもらうからな。」
 旬はイラついて睨んだが、甘栗は笑顔ではいと頷いた。
「ええ、この子は大切な預かり子ですからね。」
 語学校長は偉そうに大きく頷いて学校に戻り、旬は胸を痛めて甘栗の顔を見たが
 甘栗は全く気にしていなかった。
 それで旬は懐の大きい甘栗をますます尊敬した…先生なんて心の大きな人なんだろう!
 甘栗太一は本当に毎日毎日旬の行き帰りを車で送り迎えしてくれた。
 弟・総司社長就任でだいぶスケジュールを減らせたがまだ甘栗グループ総帥として
 しなければならない仕事がいっぱいあるのにどんなに忙しくても予定を変えてでも
 甘栗は旬の安全の為にそうしてくれた。
「先生、無理しないでください。僕、地下鉄で一人で行けます。」
「うん、もう少し街になれたら桐生君も自由に遊びに行けるようになるから、
 もう少しね。」
 旬は大変な美少年なので子供に対する性犯罪が多いこの大都市で旬が犯罪者に狙われ
 ないように気遣っているが甘栗はそうとは言わずあくまで自分がそうしたいんだよと
 言った。もう少し大人になったら近所くらいは遊んでおいでとも言ってくれる。
 しかし晃は心配だ。
 旬はそう言われるのが一番嫌なのだとは知っているが、旬は母親・万里子に瓜二つ…。
 日本にいた時もその麗しい顔のせいで変質者に狙われた。
 アメリカは日本の比じゃない犯罪大国…旬頼むから危ない所には行かないでくれよ…。
 晃は旬の小さな肩を抱くそぶりをしその可愛い顔を見つめた。
 語学学校で周りは大人ばっかりで旬は全く問題行動を起こさず大人しく静かに
 勉強した。晃は自分の知る旬とは全く違う子供のようで驚いたくらいだ。
 晃の知る旬は殺人鬼だ。殺人未遂の数々、暴行事件の数々、そして遂に旬を誘拐した
 犯人5人全員へのさつじんの完全犯罪の成功など背筋の凍る思い出ばかり。
「旬……ほんとにいい子になったな〜……。」
 可愛い顔でおとなしく勉強する旬の顔をずーっと飽きずに、
 本当に飽きずに見つめ続ける晃。
 晃は感動しながらも……つくずく俺は駄目なオヤジだったんだな…といつも落ち込む。
 甘栗と暮らして旬は恩を少しでも返そうと朝食と夕食を作った。
 広いキッチンで小さな子供が一生懸命フライパンを振って野菜をいためている。
「うーん、いい匂いだねー。」
「せ、先生は待っててください!僕全部やります!」
 甘栗が出来上がった料理の入った皿を持って行こうとすると旬は慌ててそれを止めて
 パタパタ働く。そして甘栗の背中を押してテーブルの前に連れていく。
「先生、先生はここに座ってて下さい。」
 旬はこういうときは少し寂しそうな不安そうな笑顔をするので晃は万里子の悲しそう
 な笑顔を思い出した…万里子はいつも寂しそうに笑っていた。



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万里子…

さあ世界を征服しよう!−5

October 15 [Fri], 2010, 11:23
 万里子のあの笑顔も俺に嫌われたらどうしようという不安な思いがあったのか…?
 万里子と暮らした日々が甦り、万里子の寂しそうな笑顔が浮かんで、
 しかし晃はその考えがあまりにも自分に都合のいい考えに思えて振り払った…
 そんな訳ない…。万里子は俺を嫌って出て行ったんだ。
 晃を焦がす嫌な考えを振り払おうと旬だけをひたすら見る。
 万里子と瓜二つの顔…でも今は旬に万里子を投影はしていない。
「旬…お前…。お前がそんなに気を遣ってるとこみたの初めてだ……。」
 旬は哀れなくらい甘栗に気を遣い旬の地を知る晃は可哀想に感じ、甘栗も胸を痛めた。
 そうこうするうちに旬はテキパキ手際よくテーブルに料理を並べた。
「先生!お待たせしました!」
「わー美味しそう!ありがとう桐生君。」
 そう甘栗に言われると寂しそうな笑顔が嬉しそうな笑顔にパッと変わる。
 テーブルの上には毎日旬が一生懸命作った手料理が並ぶようになりそれを甘栗は
 本当に嬉しそうに美味しい美味しいと言って食べてくれたので旬の想いは報われた。
 旬は自分の料理を美味しそうに食べる甘栗を見ながら嬉しくって頬を染めて見てる。
 こうして一生懸命頑張った事を受け入れるのも思いやりなんだな…
 晃は甘栗に感謝して頭を下げた。
 英語の勉強や大学入学の勉強で分からない事は全部甘栗が教えてくれる。
「先生、ここなんて書いてますか?」
「うん、ここはね……。」
 深い知識を優しい笑顔で旬に教えてくれる甘栗を旬はいつも半べその顔で見つめてる。
 甘栗は旬の不安や胸の痛みがわかるから静かに穏やかに旬を見守った。
 二人の時間が静かに過ぎて冬のクリスマス時期に甘栗が注文した素敵に大きい
 クリスマスツリー用のモミの木が部屋に届けられた。
 バカ広〜いリビングの真ん中にモミの木が置かれて晃と旬は大きく口を開けて驚いた。
「すげーな、おっきいな〜旬。」
「わー。おっきー。」
「さあ、二人でツリーを飾ろう。」
「はい、先生。」
 大きなツリーに電飾やサンタの人形や星や鈴やらのオーナメントをたくさん
 飾りつけながら旬はまた嬉しくって涙がこぼれる。
 ポトポト零れる涙をぬぐう旬の姿は晃が考えた事もない一面だった。
 甘栗と出会う前の旬ならこんなの興味ないなんてクールな顔で嘲笑うだろう。
 実際本気でそう思っていた。
 旬自身、自分がこんな事で泣くなんて信じられないくらいだ。
 晃も、そして旬本人も知らなかった本当の気持ち…。
 認めたくなかったけれど旬は本当はこうしてあちこちの家族が
 幸せそうにツリーを飾るのを胸が痛むくらい羨ましい孤独な想いで見ていたのだ。
 クリスマスは晃は毎年友人達や女達と派手に遊び歩いて旬のことなんか忘れていた。
「旬……。」
 甘栗から見えない反対側でこっそり泣いている旬を晃は胸を痛めて見ていた。
 旬の涙は俺が放っといた孤独の涙なんだ…俺こんなに寂しい思いを旬にさせてたんだ。
 晃は時間を戻せるなら、この間まで住んでいた晃と旬の家に帰って
 ツリーを買って二人で飾りたいと願った…
 しゅーん、ほらツリーだぞー。
 うるせーな、ガキかお前は。
 きっと旬は嫌〜な顔で…どーでもいい、勝手にしろ晃…なんて言って俺は
 腹を立てたろうけど今ならそれはうわべだけの顔で本当は喜んでるんだってわかる…。
 どんなに嫌な顔してたって気にしないで旬をもっと可愛がってやればよかった…。
 こっそりまだ泣いている旬を抱きしめるようにしながら晃も目を閉じた。
 夜中、部屋で旬はこの余りにも大きな人生の変化を改めて不思議に感じていた。
 晃はたくさんある部屋の中で結局旬の部屋で旬の側で暮らしてる。
 静かな部屋で晃は旬に向かい合いベッドに並んで横になっている。
 見えてないからいいが見えてたら怒るだろうくらい晃は旬にべったり張り付いていて
 寝る時は旬の隣でぺったり頬をくっつけて寝ている…しょーもない甘えん坊。
 肉体が死んでから晃はずっと孤独な世界にいるから寂しくて仕方ないのだ。
 ただでさえ甘えん坊大魔王の晃…でもこうなってみて実感する事がある。
 無視された孤独な世界を何年も旬が感じていたんだと、どれだけ寂しかったかと…。
 晃はやっと旬がどんな思いで暮らしていたかわかった。
 今一緒に居ても旬には晃が見えず、晃には旬が立体映像のようで触れない。
 こんな…目の前に居るのに…どんなに近くても他の星にいる様に遠い存在…
 晃は旬の可愛い顔を眺めながらいつも寂しくて涙がこぼれる。
 なんでこんなことになったんだろう…俺なんで死んじゃったんだろう…。
 死にたくなかった…生きていたら旬とケンカしながらでも一緒にいられたのに……。
 晃が泣いてそう思っていると旬が独り言を始めた。



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万里子
      …晃…
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ばぶばうー。(幻聴だ。カース。)
このクソガキー!
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