恋の連鎖

2006年01月14日(土) 10時14分
今日の朝、起きると彼女は僕が昨日買ってきたヨーグルトを食べていた。

スプーンでその新雪のようにやわらかい表面をすくっている。
そしてそれは直接口の中へ。

一口、また一口。

そのヨーグルトを食べるのを眠れないほど楽しみにしていたわけではないし、実を言うとたまたまコンビニで安かったから買ったものに過ぎないのだが、朝は気分が悪い僕は自分の獲物を取られたような気がして妙に腹が立った。

「それ俺が昨日買ってきたんだけど」

と僕。

「また買ってくればいいじゃない」

と彼女。

「そういう問題じゃないだろ、勝手に人のものを食うなって言ってるんだよ」

僕の声は上ずっていて、部屋の中に醜く響いた。

「何よ、そこまで言う事ないでしょ。私がそんなに悪いことした?」

彼女は信じられないといったような表情で僕をにらんでいる。その視線は今まで一人で生きてきたんだと言いたいような強さを含んでいる。

そして沈黙の5分間の後、彼女はいつものように部屋に閉じこもってしまった。

僕は彼女の部屋のドアをただ寂しく見つめて、はぁ、とため息をついた。

またやってしまった。

最近はこんな喧嘩ばかりだ、と反省したのは何回目だろう。
彼女と付き合い始めたのは、僕からの猛烈なアプローチがあったからだった。

彼女に恋をしてすぐの時は、バイト先でちょっとした話ができるだけで満足だった。

しかし仲良くなるにつれてもっと話したくなり、一緒にいたいと思うようになった。

そしていつしかそんな気持ちは彼女を自分のものにしたいと思うように膨らんでいった。

それから付き合い始め、自分のものにしたいという僕の気持ちはいっそう強まった結果、僕らは同棲を始めた。

そして今では少し彼女が遅く帰るだけで嫌な気分がする。

自分の思い通りにならないと僕はいてもたってもいられなくなるんだ。


「人を所有することは誰にもできない」

そんなことは百も承知だが、なぜか心が落ち着かないんだ。



結局、彼女の部屋のドアの前で僕は頭を下げた。

悪いのが自分だということはわかっている。

「ごめん、俺も怒りすぎた」

謝るしか僕に残された道はなかった。

「いつもそう言うけど直らないじゃん」

彼女が言う事は正しく、僕も心の中ではまた同じような事を繰り返すのはわかっていたが、とりあえず謝り続けた。

「ごめん、本当にごめん」

しかし傲慢な彼女は決して部屋から出てこなかった。

そんな彼女の応対に疲れた僕はリビングのソファーに座ることにした。
そして上を見上げてから、何か飲もうと思い、立ち上がってから冷蔵庫の方へ向かった。

その途中で僕の目に入る一つのカップ。

机の上には食べかけのヨーグルトがわびしく置かれていた。
  • URL:https://yaplog.jp/shortstory/archive/5
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