「舞い落ちる薄紅の花弁と貴方の緋色の髪の毛と」子ヒノ弁・小説

September 28 [Wed], 2005, 17:33
ああもう、失敗した。

鬼若――後に武蔵坊弁慶と呼ばれることになるこの少年――は深く溜息をついた。

季節は春の候、そろそろ桜が満開になるころである。
それに朝からガタガタと戸を揺らす強い風が吹いていて、この様子だと桜が綺麗に舞うであろう。
太陽は頭上でぽかぽかと暖かい光を発する。
そう、今日は絶好の花見日和であった。
先ほどから家の者が酒はどこだだの、食べ物は足りているかだの忙しなく走り回っている。
花見に行くためだ。
本来ならばこの家の主、藤原湛快の弟である鬼若も花見の準備で走り回っているはずなのだが、当の本人はしかめっ面で机に向かっている。
机の上には二つの巻物があった。
一つは鬼若が無理を言って知り合いから借りてきたもので、お経が書かれていた。
鬼若はそれをもう一つの巻物に写すという作業をしているのだ。
巻物は明日返すという約束で借りてきた物だが、どうも気が緩んでいて中々作業に取り掛かる気になれず、明日やろう明日やろうと思いつつ、どんどん時間ばかりが過ぎてしまったのだった。
気付いた頃には鬼若にはもうすでに取り返しのつかない位の時間しか残されていなかった。
今からやって間に合うかどうかはわからないが、その借りてきたお経というのはとても貴重な文献で、鬼若はどうしても自分の巻物に写してから返したいと思った。
そのためにはせっかくの花見の宴を蹴らなくてはならなかった。

すっと障子が開けられる気配がして、ちらっとそちらを見ると湛快が出かける装いをして立っていた。
心配そうな顔をしている。

「鬼若、本当に行かないのか?」
「ええ、行きませんよ。僕はこのお経を明日までに写さなくてはいけないのですから。花見にいっては間に合わないのです」
「そうか・・・じゃあ、俺たちはいってくるから・・・頑張れよ」
「はい」

鬼若が返事をすると、湛快は未だに残念そうな顔をしながら障子をゆっくりとしめた。
鬼若は障子を睨みながら湛快の足音が遠くなっていくのを聞いていた。
暫くすると、屋敷の中は水を打ったように静かになった。
聞こえる音といえば、強風が戸を揺らすガタガタという音だけだった。
鬼若は本日何度目かの溜息をついた。
・・・
ヒノエがいない、ヒノ弁じゃないという突っ込みは禁止です・・・
どのカップリングが好きかとか創作してるとか、全く知らせないまま小説を載せるのには少し抵抗があるのですが・・・語りや感想を書く時間が無い場合は小説になると思います、ご了承下さい。カップリングは2,3とも天地青龍・天朱雀×地朱雀が多めになると思われます。あ、でも将弁は期待しないで下さい・・・ちなみにこれ、続きます。酷く季節はずれのネタで申し訳ないです。
昨日「紅葉舞」が届いたので、日曜日にでも感想を書きたいです。それまでは少し忙しいのでこのヒノ弁の連載を載せていきます。
  • URL:https://yaplog.jp/saraso-jyu/archive/4
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