「夜市」

January 03 [Wed], 2007, 17:20


ホラーが苦手だけど読みたい気持ちが募って意を決して読みました。
私が思っていたホラーとしての怖さはなく、逆に展開が気になる程面白かった!
描写が緻密で現実味のある心理表現が一般的なホラーのイメージを払拭しているように思う。
収録作品は「夜市」「風の古道」の2作品。
第12回日本ホラー小説大賞受賞作。

<夜市>

『過去に弟と行ったお祭りで裕司が森の奥の青白い光に誘われ、弟を連れ森に入った。そこは何でも売っている「夜市」だった。裕司はそこで野球の才能を買い、その代償に助けに来ると言い残し5歳の弟を人攫いに渡した。「夜市」は何も買わずに元の場所へ戻る事を許さない生き物だった。
裕司が無事に「夜市」を抜け出すと、裕司の記憶以外に弟の存在はなかった。そのまま生活を続けても誰にも咎められる事はなかったが、2度目の「夜市」の発生を聞き裕司は高校の同級生だったいずみを連れて弟を買い戻す為再び「夜市」に足を踏み入れる』

この話の展開には驚きました。
いずみが危惧していた「夜市」からの脱出方法を見事に裏切りましたね!
そして男が明かした真相といい、短いページでよく収まったなあという感じです。
短い上に展開も衝撃的な事ばかりなのであっという間でした。
「夜市」で何が起ころうと、確実に「夜市」は生き続けていく。
ラストの続きを夜みたいけれど、あのまま終わっているから「夜市」という作品をより魅力的に仕上げているんだなあと思います。

<風の古道>

『7歳の時花見をしに出かけ父とはぐれて迷い込んだ道に花見客はおらず、唯一歩いていたおばさんに道案内をしてもらった記憶を秘密にしていた。12歳の夏休み、クラスメイトで親友のカズキにその記憶を打ち明けると、カズキがそこへ行こうと言い出した。その記憶が確かである事の証明をしたかった事もあり、2人でその記憶を頼りに古道へと足を踏み入れる』

「夜市」の倍の長さがあり内容も濃いです。
私個人ではこちらの方が好きですね。
レンの生い立ちやホシカワとレンの関係は興味深く読めました。
あの古道でレンに出会っていなかったら主人公達はどうなっていたんだろうか。
コモリにも会う事はなかっただろうし、カズキの運命も大きく違ったはず。
でもレンに会ったから古道のルールを知る事も出口を知ることもできたんですよね。
語りが主人公の過去話になっていたので主人公がどうなるのかは予測つくけど、これが過去話でなかったら、展開がまったく読めずもっとハラハラしたと思う。

どちらの作品にしろ老紳士やレンといったサブキャラの素性の重要度、普通の世界に隔てられた空間に子供が迷い込む事から話が始まる点、そしてどちらの世界にも終わりがない事など共通点が多々あり、それもまた巧みだなあと思います。

「夜市」
恒川幸太郎著 角川書店
  • URL:https://yaplog.jp/sanbun/archive/222
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