ラビット・ホール

March 24 [Sat], 2012, 15:09
Rabbit Hole

耐え難い悲しみが訪れた時、人はどのようにそのあとの人生を生きてゆくのかを静かに描写。

抑えた演技の中に秘める感情の機微を繊細なタッチで描く、ピューリツァー賞受賞の戯曲の映画化。

どんな悲劇が襲ったとしても、残された人間の人生は続いてゆく。
最愛の幼い息子を失った夫婦と、彼らの周囲の人々の姿を通して、現実を受け入れつつ生きることに折り合いをつけてゆく心の葛藤を淡々と描いていくこの作品の監督はなんと(?)ジョン・キャメロン・ミッチェル。これまでの作風とはガラリ変わった静謐なトーンが秀逸。
喪失からの再生という、極めてベーシックなテーマを声高になることなく浮き彫りにする。

美しすぎる郊外の妻・ベッカと誠実な夫のハウイー。
一見、何の不自由もなく静かに暮らすふたりの間には、幼い息子を不慮の事故で亡くすという、大きな悲しみが動かすことのできない大きな岩のように横たわっていた。
息子を亡くした経験を持つベッカの母や折しも妊娠した妹たちを巻き込みながら見えてくる、ふたりの息子の死への向き合い方は全く異なる。現実から目を背けることでしか自己を保てないベッカに対し、息子の想い出を留めておくことを願うハウイー。どちらがより正しいわけでもない、それでもどうやって現状を乗り越えて、自分自身が生きていくのかは本人だけが探る道を知っている・・・。

ラビット・ホール、つまりうさぎの穴は不思議の国のアリスが落ちた穴。
表面上は何も変わらない日常の世界なのに、ベッカにとっては不可思議そのもの。そんな彼女にきっかけを与えたのが、事故を起こした高校生の少年との触れ合いだった。
とても静かなトーンの作品だけれど、戯曲が原作だけあって胸を打つささやかなシーンや台詞が多く登場する。
悲しみは消えることはないけれど、耐えやすくなる。ベッカの母が大きな岩とポケットの小石になぞらえて言う台詞は、人間の感情という生き物を的確に表現しているものだと誰もが感じると思う。悲しみだけではなくて、怒りも、喜びも。だからこそ人は生きていける。

やっぱり、人は自分がいちばんだから、その時は誰にも自分を理解できない、と絶望と共に思う。
そんな時に思い起こすことができるという、誰もが幸せに暮らすもうひとつの世界、パラレル・ワールド。それこそがもしかしてウサギの迷い込んだ不思議の国?
軽やかに流れるような、独創的なコミック・アニメーションが素晴らしい。
  • URL:https://yaplog.jp/sally-c/archive/491
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