株式会社黒木本店【No72いい会社視察2012/9/4】

August 27 [Tue], 2019, 6:00
今回は2012年9月に坂本先生の授業『中小企業経営革新論』の自主視察先として学生数名でご訪問した『株式会社黒木本店』さんをご紹介致します。
視察当時4代目の黒木敏之社長にお話を伺い、尾鈴山蒸留所を見学させていただきました。


●概要 (訪問時に伺った内容をベースに現在のHPを参考に加筆) https://www.kurokihonten.co.jp/
設立 1885年(明治18年)
代表 黒木信作(現在5代目)*視察時は4代目の黒木敏之社長
資本金 2000万円
業務内容 蒸留所・混成酒製造業
従業員 約社員40人(正社員30人)+農業法人4人
本社所在地 宮崎県児湯郡高鍋町大字北高鍋776
関連会社 株式会社尾鈴山蒸留所
主な商品 麦焼酎「百年の孤独」「中々」、芋焼酎 「爆弾ハナタレ」「橘」、米焼酎「野うさぎの走り」
関連会社 株式会社尾鈴山蒸留所の主な商品
     麦焼酎「山猿」、芋焼酎「山ねこ」、米焼酎「山せみ」
販売方法 販売先は卸販売や専門店ルートのみ。直売はしない。

●黒木敏之社長(当時)の経歴
1953年 宮崎県高鍋町に生まれ
1977年 立教大学経済学部卒業後、ソニープラザに入社
1980年 ソニープラザ退社、生家の黒木本店入社
1985年 長期醸成の麦焼酎、「百年の孤独」を送り出す
1994年 社長就任
1996年 自然の中で焼酎造りをするために尾鈴山蒸留所を設立し代表に就任
2004年 環境リサイクル型の農業生産法人「甦る大地の会」設立し代表に就任

●「百年の孤独」
黒木敏之氏が実家にもどったあと、当初は山芋で作った焼酎がヒットしましたが、数年後からは売れなくなってしまいました。
仕方なく売れ残った焼酎を樫樽(かしだる)で数年熟成させたことから“百年の孤独”が生まれます。斬新なボトルや商品名は焼酎に新しい価値観を加えています。そして手に入れたくてもできないほど希少価値を生んでブランド化します。
一時期、「百年の孤独」が売上の約80%を占めており、経営者として怖かったと率直にお話くださいました。今は主力3銘柄で80%程。「百年の孤独」は10%程度です。

黒木敏之社長のお話の中で、
・「百年の孤独」が売れたことは何を意味しているのか。何をすればいいのか。
・焼酎が世界のブランドになるために何かをすべきなのか。
・海外のお酒は必ず地元の原料を使っているが、焼酎は海外から原料を買っていた。南九州の焼酎は文化。この土地に根付いた焼酎文化をこれからも育てるためには農業を始めることが必要であり必然だった。

黒木敏之社長のお話は、世界視点の発想において、主観的でありながら同時に物事を演繹的・帰納的に捉えた言葉に強く惹かれました。事業と人生の両方が重なり合って同時に歩んでいると感じました。

●98年に尾鈴山蒸留所がスタート
 
綺麗に掃除された敷地はとても居心地がよく、足を踏み入れた瞬間からものつくりが始まっていると感じられる特別な場所でした。

黒木社長は新しい蒸留所建設はチャレンジとチャンスだったとお話されました。
自分の中にエネルギーがあった時期であり、焼酎の増税が3年続いた時期でもありました。
尾鈴山蒸留所はスコットランドの記憶をイメージして山の中の密造所の発想で作られています。

●農へ参入とリサイクル
  
農業者として農業委員会の認定までに5年間。(如何ともしがたい)特有の事情が絡み、最終的には倒産状態にある農業法人を助けることを条件に参入を認めてもらっています。
麦は政府流通の枠では、どこの生産かわからなくなるため自社製品をつかえるように申請しています。
焼酎造りでは100%リサイクルだと言います。製造工程で出る廃棄物は有機肥料としてリサイクルしています。その製造設備にはいままでに数億円投入。視察に伺った当期も1億円。ある企業の設備は使い物にならず数千万円無駄になってしまったこともあるとのことでした。そこまで自然循環型の6次産業に取り組んでいます。

●黒木敏之社長のお話
今回の視察では、普段の視察では察知しにくい経営者の生々しい感性にふれることができました。自社をどのように導くか、そこの自身の想いや感覚を真剣に融合させていく経営だと感じました。
そこには4代目の黒木敏之社長の多くの苦悩がありました。当日のお話は感性を大切にした一つ一つ選ばれた言葉が印象的でした。

・近隣に良かったと言ってもらえる会社にならなければならない。
・社員全員で近所500メートル以上の範囲を掃除している。
・地域では役を頼まれれば引き受ける。
・商工会議所でも導入に2年かけて朝の掃除をするようにした。
・農業は大変。就農者は自分のライフスタイルと結びついていることが大切。
・理想的には農業法人が黒木本店を支える構造が良い。

また2000年に日創研のセミナーに参加してから意識が変わったとお話されました。セミナーを受ける前は数億円の売上でしたが10年ほどすると20億円台になっています。
尾鈴山蒸留所と農業法人の設立は、同社を“逆6次産業化”させて、まさに大地に根付かせる大きな一歩だったと感じました。

●最後に
いちばんの悩みは後継者だとお話された黒木敏之社長(視察当時は翌年60才)
実は黒木敏之社長自身がお父様との意見の相違から事実上お父様を経営から排除しています。そんな過去を背負いながら、後継者を思う気持ちは想像できないものでした。
今では5代目の黒木信作社長となっている黒木本店。いつか伺って、黒木信作社長の生の言葉を聞いてみたいです。


***補足***
この投稿では2012/4〜2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)
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坂本光司
人を大切にする経営学会会長 人を大切にする経営大学院塾長

元法政大学大学院政策創造研究科教授。 NPO法人オールしずおかベストコミュニティ理事長。 日本でいちばん大切にしたい会大賞」審査委員長。 他に国・県・市町・産業支援機関の公職多数。 専門は、小企業経営論・地域経済論・福祉産業論

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