彼とあたしのあいだ

2005年05月18日(水) 8時55分
『矛盾と背中あわせなんだよね、人って』


『そうだよ』と、頷いて悠は腕をほどく。


『弱ってるくせに気持ちがなびかないなんて、本気なんだな』

泣きそうな顔のまま、あたしは無理に笑顔を見せた。


『キンモクセイはあきらめきれないの』
あたしがそう言うと

『がんばれ、とにかく会えないかと思ってたから会えてよかったよ』
力強く悠は言った。

『元気でな』


少しの−ま−ができる。


『逃げてきてもいい?』

自分を逃がす場所が欲しかった。悠は少し目を閉じたあと

『今の環は、誰に抱かれてもおんなじだよ、おんなじ』

黙ったまま、何も云えないあたし−。

『俺のこと、愛せるならこっちに来てもいいよ。そうじゃないなら、もう会いに来たらだめ』
悠の言葉の意味はすぐにわかった。わかったのが辛かった。


『環の想いの隙間に入り込むような男には、もうなりたくない』


頷いて−元気でね−とひとこと伝えてあたしは車を降りる。
そして、あたしは何度か振り返っては大きく手をふって歩いた。



もう置き去りにした過去はない−

あたしは目を閉じて、ぱらつく小雨をまぶたで受けながら。

今日は家に着いたら眠ろう−
しばらく、こころとからだを休めよう−

誰かが言ってた。
あらゆる快楽のあとには
眠るという快楽が待っている−と。
少なくとも、感覚がなくなっているあたしにも
唯一、眠るという快楽はあるのだと。


裏返しの現実−
あたしは永がいないとだめになる。
それは永も感じているんだろう−

『環がいないと俺はだめになる』

居場所がある−という気持ち。
あたしにとって永なように、永にとってもあたしだということ。
思い込みじゃない、かん違いでもない
どんなに歪んだって、捩れたって
居場所はお互いにそこにしかないということ−


あたしの胸のなかの夜はおだやかな黒になる。
音も匂いも鮮明になっていた。


雨風を眺めながら、感覚だけがふわふわと永に会いたがっていた
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