先行研究の引用の仕方

2006年02月27日(月) 9時45分
 論文の書き方で、初め必ず戸惑うのが、先行研究の引用や参照の仕方です。先行研究(「従来の研究」ともよく呼ばれます)が、それじたいに価値があるのはもちろんのことです。しかし、論文を書く場合の先行研究は、それの価値として完結しない、ということを念頭に置かなければなりません。

 もちろん、研究論文や評論そのものを研究対象とする場合には、その論文や評論の比重は、それを論じる論文の中では非常に大きなものになります。しかし一般には、あるいはその場合であっても、いやしくも論文とする以上は、自説の主張にいちばんの力点を置かなければなりません。これは当然のことですよね。

 先行研究の引用ばかりしている論文、あるいは、先行研究によりかかりすぎている論文は、しぜん、評価が低くなります。それは俗に「引き出し整理」と呼ばれることもあります。確かに、研究史や先行研究の解釈は大事であり、それをきちんと書くことは習熟を必要とする作業です。しかし、やはり「その先」がなければならないのです。

 そこで、私は先行研究を適切に参照し、しかもそれに飲み込まれないようにするために、次のような書き方を勧めています。

1)「論文の最初に、その論文の目的を明らかにするために、先行研究を引用・参照し、それと対比する」

 この論文は研究史や研究状況において、どのような意味を持つ研究なのか、それを明確にするためには、これまでの説との対比において述べるのが、最も分かりやすいと思われます。大事なのは対比です。引用・参照そのものではありません。

2)「論述の途中に、論旨を明らかにするために、先行研究を引用・参照し、それと対決する」

 対決とは、批判・展開・補足など、やはり対比と言ってもよいものです。論旨を明確化し、自説の研究上の位置づけをはっきりさせるために引用するのです。引用して終わり、では、何のための引用か分かりません。きちんとそれを解釈し、論述に組み込むことが肝要です。
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コメントありがとうございます。

仰ることが少々分かりづらいのですが、引用しようとする先方の本の中に、既に先行研究の引用が含まれていて、こちらへ引用する際にそれと、それに対する論者の言及も一緒に引用するということでしょうか。

その場合であれば、引用先に含まれる先行研究を元の文献にあたって引用し、それに対する論評として引用先の文章を引用する、という二段構えにするのが厳密と言えます。

誰の何という文章の引用かを明記するのが、著作権上の引用の原則です。
2014年09月13日(土) 16時46分
加倉井尚太
どうも。 茨城の大学生で、もうじき大学院受験する者です。 自分、今、論文を書いているのですが、引用するときは、本の中の研究のみで、それに対する著者の指摘やなんかは要らないのでしょうか? 

 ふだんから要らないとこは引用しないようにしているのですが、本によっては、「これに対し、筆者は…」ではなく、「しかしながら。・・・・」などのように、先行研究との境が分からないほどになっているので、どこまでが先行研究か分かりずらいのです。 何か、見分け方というか、うまい引用の仕方があれば、教えていただけないでしょうか?
 よろしくお願いしますm(--)m
2014年09月13日(土) 16時20分
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