日記体小説

2006年09月12日(火) 9時01分
 日記体は、ドキュメント形式の一つです。書簡体・日記体・手記体の3大ドキュメント形式のうち、書簡体と日記体は、多くの場合、フラグメント形式とも重なりを有します。また、ドキュメント形式は一般に、ドキュメントと、それが属する上位の物語との間の虚構の水準の差を伴うので、額縁構造とも重なるのです。もちろん、文芸テクストの法則性など、例外だらけのフレキシブルなものですが、このような尺度が、全く無意味というわけでもありません。

 日記体は一般に、次のような特徴を帯びています。

1)記事間の断絶と連続

 毎日、少しずつでも違う出来事が起こるから日記は成り立ちます。従って、各日の特記事項によって、日記体は断絶を含み、極端な場合には断章集積形式となります。反面、日記はそれを書く主体と、時間の一貫性によって連続性を確保します。日次(ひなみ)の記、つまり毎日コンスタントに書かれる日記では、この連続性はより鮮明となります。ということは、日記体はフラグメント形式と、ストーリーラインと、両方の可能性をはらむということです。

2)主体の一貫性

 単なる断章群と日記体との違いは、それが一人の主体によって書かれ、一人の主体の生の時間が刻印される、という印象にあります。毎回、全然違う人格として登場する人物の日記があれば、それはたいそう面白いでしょうが、あまり日記らしくないでしょう。ただし、交換日記、集団的日録の場合には、書簡体(デュエット、シンフォニー)に近づきます。

3)内密性の発話

 ドキュメント形式一般が、隠された真実の暴露という性質を帯びていますが、日記体は書簡体と並び、その最たるものです。公開を前提とした日記もありますが、多くの場合、日記は最も私的な性質を持つ内密性の発話です。ために、それは私的秘密の暴露という、広い意味でのスキャンダリズムの欲望を満たします。

 この性質は、ブログ現象の説明にもある程度寄与するようです。日記ブログで、「赤裸々な私生活の暴露」をやる人はあまりいないでしょう。けれども、些かなりともそれは、余人の知りえない私的秘密の公開であり、だからこそ、書く者読む者双方のスキャンダリズムを満足させるのです。私は、臆面もなく自他の私生活を暴露する日記ブログは、反吐(へど)が出るほど嫌いです。もちろん、ブログの機能は日記だけではありません。
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TBさせていただきました。

断章形式の文学に、強い関心をお持ちのようですね。
私の関心領域のレーゼシナリオ(舞台劇ではなく映像劇の脚本形式の文芸)というのも、それに重なるような気がします。もちろん、脚本の各シーンも、ひとつのまとまった筋を持った映像劇全体の構成要素であるから、厳密には断章とは言えないかもしれないですが、映像劇の場合、演劇よりも各シーン間の飛躍が大きいと思うのです。
2007年01月30日(火) 13時29分
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