1. 箱庭

November 30 [Sun], 2008, 13:13
あれはたぶん、偶々ではなかったと思う。


 ― 3年と少し前、僕がまだ大学生だったあのころ。



遊ぶために入ったような大学で、遊ぶために入ったようなサークルで、

くだらない友達と、くだらない話しかしていなかった毎日。



そしてその日も僕は、そんな自堕落な学生生活の帰り道なのに、まるで人生に疲れたような顔をして歩いていた。

ビルと車と忙しそうな人々しか見えない埃まみれの空気の中をやっぱり埃まみれで歩いていた僕は、

何かの拍子にふと一瞬だけ、鼻と目を同時に奪われて立ち止まった。




路地の一角に、小さな小さな花壇。1M四方のレンガに囲まれた小さな小さな空間だ。

花壇。と表現して正解だろうか。

植えられていたものは正確には「花」ではなく、木とか、草とか、そういった緑のもの達ばかりだった。

それは、街中に気を利かせて備え付けられたカラフルな鉢植えとは程遠く、

かといって道路の中央分離帯にドッカと現れる不自然な街路樹ともまるで違う。

箱庭、とでも言おうか、森の一部を切り取ってきたような違和感が漂うその空間に、

僕はなぜか吸い寄せられ、すうっとその場にしゃがみこんでいた。




盆栽に愛情を持つどころか、都会の喧騒を疎ましく思う歳にすらなっていないのに。



きっとその小さな森には妖精か何かが住んでいて、不思議な力を発しているからだろう、

などと幼稚で幻想的過ぎることを思う。





しかしどうやらその「不思議な力」は僕にしか通用しないようで。

立ち止まって、さらにはしゃがみこんでまでこの緑の箱庭を眺める人物は、

自分一人だけだと気づいたから。



  • URL:https://yaplog.jp/pinkpinkpower/archive/4
Comment
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー 絵文字 プレビューON/OFF

不正な自動コメント投稿を防ぐため、チェックボックスにチェックをしてください。

利用規約に同意
 X 
禁止事項とご注意
※本名・メールアドレス・住所・電話番号など、個人が特定できる情報の入力は行わないでください。
「ヤプログ!利用規約 第9条 禁止事項」に該当するコメントは禁止します。
「ヤプログ!利用規約」に同意の上、コメントを送信してください。
2008年11月
« 前の月  |  次の月 »
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30