イリーナ・メジューエワ「ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ」その1

August 12 [Sun], 2018, 13:52
「語り下ろし」という形式なので、とても読みやすくわかりやすいです。まだ読んでいる途中なのですが、あまりにもメモしたいことが多いので、とりあえずバッハの章について。

バッハではゴルトベルクが取り上げられています。弾き手としてどれがしんどいのか(技術的にあるいは精神的に)が語られているのも興味深いですし、弾き手の立場からこの変奏曲の組み立てられ方が分析されているのが面白い。
そこでやはり気になるのは最後の6変奏(25〜30)。
第25〜27変奏のセットでは「それぞれのジャンルに関しての結論のようなもの」と評されています。歌い方→ヴィルトゥオジティ→カノン。カノンは9度、でも二声で音の数は少ないからシンプルで技術的には易しいらしく、技術的に最も難しいという26変奏からの切り替えが必要。弾き手としては大変なコントロールが要求されるわけです。聴き手の私としては、このセットはどうしても第25変奏の世界に引きこまれて一息、つまりここに切れ目があるかのように感じてしまいます。そして、さあ行くで!!と言わんばかりに第26変奏の目くるめく世界を楽しみ、第27変奏は休憩するかのように聴き流してしまうのですが。今後はちょっと聴き方を変えてみようと思います。
そして最後の1セットについて語るところで「遊び心」「エンターテインメント」という言葉が出てきます。p.22では「バッハの素顔」「エモーショナル」という言い方もされています。トレモロや和音を多用した第28〜29変奏の演奏効果の高さは、聴き手としてもとても楽しみにしているところです。そしていよいよ第30変奏。私の職場では、一日の終わりに「ローレライ」がかかります。メジューエワも閉店間際のデパートの「蛍の光」を弾き合いに出していますが、ちょうどそういう感じの気分を引きだす曲です。ここまでの変奏曲とは少し趣の異なる変奏なのは、当時のポピュラーソング2曲をテーマにしたカノンであるから、なのですが、そうか、そういえば「バスを主題とする変奏」(p.20)なのだった、と思い当たるのでした。ベートーヴェンやモーツァルトの変奏曲はメロディの変奏が普通なのですが、ゴルトベルクはそうではない、ということに今更ながら気づかされたのです。(メジューエワが言及しているブクステフーデの「アリア「ラ・カプリチョーザ」による32の演奏曲をNAXOSのサイトで試聴しました。あ、ほんとだ!と嬉しくなってしまいました。)
最後のアリアは、たとえばケンプはテンポも速めにあっさりと弾いていますが、メジューエワはリピートもしてたっぷりと弾く。何度か書いているように、私はこの曲を「円環」のイメージで捉えていて、ダ・カーポされるアリアはまさに円環を閉じるとても大事な曲だと思っています。だからメジューエワが「終わるのがもったいない」と感じながら弾くというお気持ちがわかるような気がします。

萩尾望都「私の少女マンガ講義」

August 08 [Wed], 2018, 21:14
図書館司書をしている友人に勧められて読みました。
私はあまり少女マンガを読んできていないので、楽しめるかどうか不安でしたが、第1章はイタリアの大学での講演を起こしたもので、とてもわかりやすい内容でした。日本の少女漫画の歴史が語られ、また講演の際に配布された萩尾さんの短編作品が縮小されて掲載されていて、イタリア人の聴衆と同じように萩尾さんの作品の解説を理解することができます。登場する多くの少女漫画家の名前も、作品は読んでいなくても、作品名や絵柄の感じはなんとなく知っています。私たちの世代が如何に少女漫画に親しんでいたかがよくわかります。

萩尾さんが「ポーの一族」を描かれていた頃、私は少女漫画雑誌を購読してはいませんでした。唯一愛読していたいがらしゆみこさんの「キャンディ・キャンディ」を全巻ディテールを覚えるくらい読みこんだのと、あといくつかの作品を読んだ記憶があるくらいです。けれど、単行本の巻末には発売している作品の目録のページがあって、なぜかそれを飽きもせずに眺めていたことを覚えています。だから、読んでもいないのに名前や作品名やおおよその絵柄が浮かんでくるのです。あとは、「少女マンガ入門」という子供向きの本を持っていました。当時人気だった作家の紹介、基本的な用語や技術の紹介がされていて、萩尾望都さんを知ったのもその本だったと思います。
萩尾さんと竹宮恵子さんは、そのなかでも大人っぽいSF作品を書かれている方というイメージで、子供の頃からSFが苦手だった私はあまり手が伸びなかった。でも、今になって萩尾さんの話を読んでいると、当時の少女マンガの奥の深さにほとんど感銘を受けます。外国を舞台にしたり、SFがさかんに描かれていた必然性も理解できて、まったく読んでこなかったことに申し訳ないような気持ちにすらなりました。そして、「キャンディ・キャンディ」以降に、私が好んでいた日本の学校を舞台にした恋愛モノの少女マンガの世界も、日本の少女マンガ史の中での必然の流れだったのですね。そういえば、登場人物の造形は日本人離れしている。髪がフワフワで目の大きな女の子も、足が長くてスマートすぎる男の子も、全然リアルじゃないからこそ無邪気に憧れていたのかもしれません。

マンガは、今でいうゲームなんかと一緒で、子どもにとってあまりよろしくないもののように捉えられていた時代がありました。しかし、その頃のマンガは子供向きに書かれていた割には内容が大人っぽかった。ギャグマンガのネタにも制限が厳しくなく、無節操な笑いが提供されていた記憶があります。それを理解したりできなかったり、取捨選択するように受容していたような記憶があります。豊かな海外文化への憧れ、パラレルワールドの妄想。未熟な想像力を最大限に使っていたと思います。そう考えれば、一種の読書体験といってよいのかも。

大人になってからも少しは少女マンガを読んでいました。萩尾さんの話にものぼった「あさきゆめみし」や「のだめカンタービレ」は熱心に読みました。やはりどちらも自分にとってリアル過ぎないのが良いのでしょうね。小椋冬美や桜沢エリカの世界は、おしゃれな生活感やクールな恋愛を、ファッション雑誌を読むような感覚で楽しみました。
最近は…あまり読んでいませんね。いくつか流行りのを読んでみましたが、リアルすぎて圧倒されてしまう…(笑)。身につまされるのもツラいものがありますしね。

プーシキン美術館展―旅するフランス風景画

July 31 [Tue], 2018, 21:03
土曜日、大阪国立国際美術館で開催中のプーシキン美術館展に行ってきました。
まだ台風の気配もない土曜の午後にしては空いていました。
17世紀から20世紀の風景画65点が展示されています。
いくつか心に残った作品をメモ。写真は図録からですが、実物とは少し印象が違います。

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー「夕暮れ」(1860-1870)。実際は画面がもっと暗いです。イタリアとフランスの風景を融合させた現実には存在しない風景、「スヴニール(思い出)」。画面奥の薄い夕日に惹きこまれてしまいます。

ルイジ・ロワール「パリ環状鉄道の煙」(1885)。172×296の大きな作品です。その大きな画面中央を白い蒸気が横切る構図が大胆です。曇り空の白、蒸気の白、そして濡れた道路の鈍いベージュとグレー。映画の1シーンを観るような気分にさせられました。

エドゥアール=レオン・コルテス「夜のパリ」(1910以前)。パリの街を描いた絵が何点も並んでいたなかで、最も気に入ったのがこの作品。全体に暗い画面の中、両脇の建物内の灯りのまばゆさがとても印象的です。ひんやりとした空気、雑踏のざわめき、お店の賑わいと暖かさに気持ちが軽く高揚します。

クロード・モネ「白い睡蓮」(1899)。暗い色調の絵ばかり気になっていたわけではなく、この真昼の光を描いた作品は、やっぱり清々しく心地よくて、長いこと観入ってしまいました。ジヴェルニ―の庭を描いた作品はたくさんありますが、キラキラとした緑と青と白が圧倒的な美しさでした。

GASPARD

July 27 [Fri], 2018, 21:59

湯治と美術の旅(山中温泉&金沢)二日目

July 26 [Thu], 2018, 21:51
翌日は金沢に出て、近江町市場のお寿司屋さんで腹ごしらえ。
ノドグロやボタンエビのお寿司が美味しかったです。
金沢中心部は温泉地よりは暑かったですが、
それでも連日38度を超えている京都よりは過ごしやすいかな。

メインは金沢21世紀美術館。建築自体がアートな美術館です。
周辺にはお城も兼六園もあるのに、やはり暑いからでしょうか、
チケットを買うのに大行列なほどの人気です。
開催中だったのは
「起点としての80年代」という、日本の1980年代の芸術作品の展覧会と
インドネシアの女流現代作家アイ・チョー・クリスティンの個展「霊性と寓意」。
前者は、絵画や彫刻や空間芸術やメディアアートなど様々な形式の作品が
各展示室に割り振られて展示されていました。
あまり考えずにゆっくりと散歩するように観ていきました。
時々気にかかる作品を角度を変えて眺めてみたり、ぞっとするような恐怖を感じてしまったりと、それなりに感覚が刺激されました。
後者は、これはなかなかに素晴らしい作品展でした。
絵画作品が中心ですが、繊細な鉛筆画やドライポイントも、激しい色彩の油彩やアクリルの作品も、どちらも観入ってしまいました。「あなたの手が必要」というアクリルの作品や「12人の私たち」という鉛筆画は印象に残っていますし、キリスト教に由来・関連する作品がいくつかあった(「マタイ受難曲」を思い出した)のも興味深かったです。

お土産は森八の葛あんみつと加賀棒茶を買ってきました。

盛り付けると…

上品な餡と少しもっちりとした葛をつかった寒天が美味しかったです!

そして、ふと気づけば、金沢に足を延ばしてからというもの腰が痛くない!
腰痛を意識しない日のなんという快適なこと!!
温泉の効果でしょうか…。でしょうね。温泉は素晴らしい!!!

湯治と美術の旅(山中温泉&金沢)一日目

July 26 [Thu], 2018, 21:37
先週末、かねてから悩んでいた腰痛の養生のため温泉に行ってきました。
行先は石川県の山中温泉です。
鶴仙渓を散歩しました。あやとり橋。


せせらぎの音を聴きながら木陰にいると、京都の酷暑を忘れます。
有名なこおろぎ橋。



治部煮を初めて食べました。
見た目はこってりしているように見えますが、
わさびを溶かし込んで戴くと、キリリと美味しいです。
お肉は鴨、地元の野菜が色々入っています。


お宿ではお湯を堪能。腰湯で反復浴。
お部屋の窓からも鶴仙渓が観られ、窓を開けると樹々と水の香りがしました。

Der Abend…

July 18 [Wed], 2018, 23:53
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