4:過去と未来

July 12 [Tue], 2016, 23:30
4:過去と未来

日曜日の別れ際はいつも、彼女のバッグに僕のちぎれた腕が入っている。
大事そうに抱えているのがすごく滑稽で、でも少し嬉しくて、その片腕をどうしてるのか気になって聞いてみた。

「そんなに大事そうに抱えて、君はいつもそれをどうしてるの?」

いつも僕は自分のちぎれた腕を自分の一部だとは思えなかった。
老廃物のように、いちど体を離れてしまうとそれは物体となり、ましてやそれに関しての使い道なんて思いつきもしなかった。

「今日の日付と場所を手の甲に書いてね、クローゼットにしまってあるのよ。」
彼女はさも当たり前のように説明した。僕はすぐに彼女のクローゼットを想像したんだけれど、うまくいかなかった。

「で、それは何に使ってるの?」
「眠れない夜にね、あなたの腕を枕にして寝るの。そうするとその手の記憶が夢に反映されて、当時の夢を見ることができるのよ。不思議でしょう?」
「へぇ、そんな事ができるんだ。でもズルいな、僕が君のことを考える夜はいつもひとりだけど、君は僕の腕枕で僕と話をしたり並んで歩いたりしてるんだろ?」
 
そう言った瞬間、過去に自分の一部だった腕と腕に記憶されている過去の自分に少し嫉妬した。

「でもそれは、あなたが経験していることよ。私たちの過去の話なんだもの。それに未来の話はあなたと一緒にいる時じゃないとできないわ。」
「うん、わかっているんだけどね。僕の知らないところで、君は過去の僕と歩いているんだと思うとすごく複雑でさ。」
 
彼女は少し困ったような顔をして、僕の言葉に言葉を重ねた。
「全部、これまでのことよ。これからのことは今のあなたのその腕に聞くわ。」

僕は自分の腕をつねって、この腕は僕の一部だということを確認した。


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まぁめずらしく、写真なしのテキストだけでやってみました☆
昔のBBS時代はテキストオンリーだったからね、かなり趣向を凝らしてましたけど。

で、ついに、4/5編まできました。
感動のラストはまた明日!!!

まぁ、たいした感動じゃないけどね(笑)
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