『ネットメディア覇権戦争』を読んだ。

January 22 [Sun], 2017, 1:30
ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか (光文社新書)
藤代 裕之
光文社 (2017-01-17)
売り上げランキング: 1,089


 『ガ島通信』こと藤代裕之先生が、Yahoo、LINE、日経、スマートニュース、NewsPicksを中心に日本のメディア環境についての成り立ちと現状での課題をまとめた一冊。ここでは、「猫とジャーナリズム」という特に無料メディアが抱える問題と、「偽ニュース」の問題について感じたことを記しておきたい(特にYahooが抱えている「メディアかプラットフォームか」といった問題については、別途書こうと思う)。

 「猫とジャーナリズム」というのは、SNSでニュースが拡散していく上で猫に関するコンテンツが著しくシェアされるというBuzzFeed創業者のジョナ・ペレッティ氏の実験に端を発している。実際、BuzzFeedでは政治・社会系の記事からクイズまで硬軟相混ざった記事が並んでいる。ほかのポータルサイト=プラットフォームにしても、ウェブメディアにしても猫画像のような「柔め」な記事を多数配信しているし、本書で一章設けているスマートニュースにも『ねこチャンネル』がある。
 ただ、例えばSNSを駆使しているISISが「銃と猫」をあわせた写真をTwitterやInstagramで流している。これらを「面白コンテンツ」として流通させるのは本書では「偽ニュース」だと断じている。「事実」は「事実」でも文脈をぶった切って「面白い」「カワイイ」だけを切り取ると読者に誤解を与える可能性が高い、という実例といえるだろう。
 2015年のバイラルメディア騒動や、2016年末のDeNAの『WELQ』に端を発したキュレーションメディア閉鎖の問題は、クラウドソーシングサービスを介して「記事を書く人も読む人も不幸になる仕組みだった」と本書では総括している。ここ数年で、メディア運営をするにあたって「倫理」を欠いた場合、どのようなことが起こるか我々は目の当たりにしてきた。
 一方で、例えばファッションコンテンツが主だった『MERY』は女子から休止を惜しむ声もある(参照)。こういった無料で情報を受け取ることが当たり前になった読者の存在がある限り、この問題はついて回る。

 もう一つ、本書で指摘されているのはスマホでのニュースの「見え方」だ。特にネットメディアは、トップページ(ブランド)からのアクセスが1割に過ぎず、検索サイトに上位に来た記事やSNSからの流入が大半を占めるため、ユーザーは「見たいものしか、見えない」状態であるというグロービス経営大学院の川上愼市郎氏の「キメラ」説を紹介している。
 私もネットメディアでデスク・ライターをしているからよく分かるのだけど、例えばインタビュー記事のような「かため」の記事がプラットフォームやニュースアプリに拾われることが稀だし、「ネットで話題」=「テレビでの芸能系の話題」に偏りがちになり(スマートニュースにはそういう記事が掲載される傾向がある)ため、「ジャーナリズム」をやりたければ「猫」を数倍記事として出さなければならない、という状況に多くのネットメディアが直面している。ただ、上記のようなプロパガンダに引っかからず、ユーザーにとって有益な情報を出しつつ、「倫理」をもって「ビジネス」とバランスを取りつつ出して「猫」と付き合わないければならない。これは想像するよりずっと面倒くさい作業だ。

 個人的に気になるのは、「ネットの編集者やライターは質が低い」という言説(著者がそう断じているわけではない)。
 思うに、ネットメディアに人材が不足しているのは事実だろう。とはいえ、ページビューでもパイビューでもいいが、数字が厳然と示されるネットの世界ではKPIが紙の「媒体」よりも「記事」単体、もっと言うと書き手に向かう。その上、SNSなどでコンテンツの内容に関する反応に晒される。両者の耐性をつけることが出来る人間が果たしてどれほどいるのか。失敗をすれば盛大に叩かれ、よい記事を出しても大して褒められないという世界で、長くやっていける人材を育てるのは相当難しいように感じられる。それも人やメディアの「質」がなかなか上がらない理由として挙げられるように感じられる。

 いずれにしても、著者が書くようにネットメディアが「マスゴミ批判」や「ネットで話題」でアクセスを稼ぐ「ニセモノ」のままか、本物になれるのか、岐路に立っているということは肌感覚からも理解できる。個人的に、そこにどのようにコミットしていくのか、ということが課題として突きつけられた、というのが正直な感想になる。

 まぁ、そうは言っても、生活があるからね。そことの折り合いもつけながら、無理せずにやっていかないとね。
 

著作権なんて、フェアユースでいいんじゃない?

January 03 [Tue], 2017, 2:35
 あけましておめでとうございます。2017年はもう少しブログなど個人の発信を増やしていこうと考えているので、どうぞよしなにお願いいたします。

 昨年はネットメディア、特に「キュレーションメディア」に関する問題が顕在化して、中でも著作権法違反のコンテンツを大量にアップしていたことが問題視されていた。ファッション誌なんかでも、目次の横にSNSやブログでアップすることをやめるように求める注意文を載せるケースもあって、宣伝にもなったはずなのにもったいないな〜、と感じたりもしたのだけど、『MERY』などの手口を見ているとそういった遵法意識を高める必要もあるだろう、とも思う。
 とはいえ、一般のひとの著作権法への意識って正直なところゼロに等しいよね、というのは、『BuzzFeed』の鳴海淳義氏が指摘する通りだと思う。

 著作権なんて、実はみんなどうでもいいんでしょ。(Blog @narumi) 

 個人的には、著作権にフェアユース規定を米国並みにしてもいいんじゃないか、と思っている。アメリカでは批評、解説、ニュース報道、教授、研究、調査等を目的とする場合はフェアユースを認めており、著作物の内容が事実を伝えたり、著作物の使用量が少なく、また核心的部分に触れていない場合も認められる公算が高いという。一方、利用の目的と性格で営利性を有すると認められるとフェアユースは認められにくくなるので、別メディアによる「剽窃」には一定の抑止になる要素は残されている。
 要は著作権をもう少し柔軟に運用できる状況でないと、SNSやブログなど一般のひとによる発信が意図せざる触法行為になってしまうし、TPPによる著作権法の非親告罪化によって立件に及ぶ可能性が高くなっているのと合わせて考えると、誰も彼もが10年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処せられるかもしれないのだ。

 インターネットに限らず、表現や発信はできる限り自由であるべきだと私的には思うし、窮屈でクソつまらないネットになってほしくはないので、フェアユースの議論や啓発はもっとなされてもいいんじゃないかなー、という話でした。

 そんなこんなで、重ね重ね、本年もよろしくお願い申し上げます。



 
 

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