ひとを見る目

November 28 [Sat], 2015, 6:15
 なんだか眠れないうちに朝を迎えようとしているので、与太話でも。

 2007年に、『サイバージャーナリズム論』という本が出版された。

サイバージャーナリズム論 「それから」のマスメディア (ソフトバンク新書)
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 この新書なのだけれど、そのほとんどが共著者がそれぞれの著書で展開されている論考の再掲という、良く言えば雑誌的、悪くいえば金返せ的な内容で、当時の自分としては憤慨したものだった(摂エントリー参照)。
 それで、ここで共著者に名を連ねているスポンタ中村氏なのだけれど。当時、ジャーナリズム論を盛んにエントリーで展開されていたブロガーで、失礼ながら言論の世界では無名の存在だった。彼の主張は、はたから見ても夢想的だったのだけれど、後に『TechWave』を立ち上げることになる湯川氏が呼ぶ形でディスカッションのパートに参加することで、本書の「共著者」に名を連ねた、というわけだ。
 私の率直な感想として、「ひとを見る目がないなぁ」と思っていたわけなのだけど、ある方が湯川氏のことを「イカもの好き」と評していて、なんとなく腑に落ちた。『ブログがジャーナリズムを変える』という本まで出し、その存在がメディア環境の打破につながる可能性に賭けていた湯川氏にとって、中村氏に通じる何かがあったのだろう。

ブログがジャーナリズムを変える
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 こんな昔話(といってもまだ8年前のことだけど)を蒸し返したのは、津田大介氏が最近なんだか『Twitter』で炎上気味になる機会が多いみたいだから。特に、SEALDs絡みでやや「アツく」なっているような印象を受けている。

 津田大介、SEALDsの資金に疑問を持った人に突如謎の言いがかりをつけるの巻+おまけ (Togetterまとめ)

 個人的に、SEALDsに肩入れ(というと否定されるかもしれないけど)するのは、やはり「ひとを見る目がないなぁ」と思わざるをえないのだけど。これって湯川氏と同じで、津田氏も「イカもの好き」で、彼らの「純朴な社会変革の志」に惹かれるところがあるのかもしれないし、津田氏が20代の頃に出来なかった何かを果たそうとしている存在に見えるのかもしれないなぁ、とはたから見ていて思ったりする。まぁ、ただの妄想で感想ですが。

 しかし。つくづく「ひとを見る目」というものは第六感的で、「養う」というよりもある方向で共振するようにどうしようもなく動いてしまうものなのだなぁ、と感じざるをえない。佐々木俊尚氏あたりもイケダハヤト氏に目をかけていた時期があったし、他の方々にしても「えっ」というひとに肩入れし出すことがあるから、こればっかりはどうしようもないのかもしれないね。

 ただ、ソーシャルメディアがここまで普及した中で、特に政治的な存在への過剰(に見える)ピックアップをすると、周囲からのツッコミも入るし、醒めた視線も集まることになるのはある程度仕方がないだけでなく、その肩入れが原因で、そのひと自身が凋落するきっかけになる可能性は、前より高くなっているように感じる。
 津田氏ほどのひとが、この程度のことで致命的な躓きになるとは考えにくいかもしれないけれど、湯川氏がパッとしなくなったのは「サイバージャーナリズム」からだし、なんとなく雲行きあやしく思えてしまう。余計なお世話だと重々承知しているのですけれどね。

 なんだかとりとめのない上に歯切れの悪い感じになってしまったのだけど。まぁ、何というか、他人の「ひとを見る目」って、よくわからないことが多いよなぁ、という話でした。
 ひとのこと気にしている場合じゃないし、作業カツカツだし、今日も生きていこう!

 

ライターのブレイクスルーは「誰と出会うか」

November 14 [Sat], 2015, 10:15
 朝、ぼんやりネット周回をしていたら、オバタカズユキ氏の連投ツイートを見かけたので、簡単に思ったことをメモ。

 オバタカズユキ氏 20151113 朝の連投 - Togetterまとめ

 連投ツイートはいちいち頷けることばかりなのだけど。ひとつだけ。ブログを書いているうちに物書きのお仕事が貰えて、ぼやぼやしていたら会社をクビになり、そこではじめて本気でライター一本で食べていかなくなった身としては、それ相応の環境がないと「必死」になれず、多くの場合はお仕事や人のより好みをするだけの「贅沢」を許しているから稼げないのでは、と我が身を振り返って思う。
 オバタ氏は、「ネットよりまだ書き手の価値を解する編集が残っている」という理由で、紙媒体の仕事をすることを勧めている。個人的には、縮小産業でもある出版という枠ではなく、広いレンジ(ネットもそうだし、広告や社内報、タウン誌といったものもある)で「書く」というお仕事を探す方が良いように思うが、「書き手の価値を解する」人に出会う率は、確かに出版が多いのかもしれない。
 ただ、私も紙媒体でお仕事をしたことはあるけれど、実感値としてウェブでのお仕事と変わりはなかった。となると、メディアの形態によらず、「誰と出会うか」ということがライターのブレイクスルーとして不可欠だということがわかる。私の場合にもさまざまなポイントでそういう出会いがあったからこそ、今ウェブライターとして「食べて」いけているのだとしみじみ実感する。
 
 それで、これからライターを目指そうという人や物書き仕事を増やそうしている人に言えることがあるとするならば、ライター講座や多くある編集・執筆者のコミュニティの中に入ろうと努力することよりも、とにかく気になる本の著者とか、憧れている人に対して、何らかのアプローチをすべきだ、ということだ。著書の感想をブログやSNSにメンション付きで書くのもいいし、自分の悩みを書いてメールするのでもいい。その方が深い情報が得られて、なおかつ深い一対一の繋がりが生まれる可能性が高いからだ。
 長年、ライターの講座とかネット上のコミュニティを見ているけれど、居酒屋談義以上のものが生まれている形跡はないように感じるし、そこから活躍者が出てくる可能性もあまり見えてこない。そういう場で時間を費やすならば、「この人」という一人を見つけて繋がる方がいい。
 私もそういうことに気づいたのは後年で、一時期はコミュニティの「中」に入ることに努力したりもしたけれど、結局はその文脈とは別のところでお仕事をしている。人生ってそんなものだし、大勢で戯れるよりも孤独を愛する程度の方が生き残っていける可能性は高い。そして、孤独だと思っていても、アウトプットをしている以上、見ている人は見ている。

 まぁ、大変なことも多くて気持ちが折れることも多いけれど。いろいろな人に会ったり、いろいろなところに行けるライターというお仕事がスリリングで楽しいということは間違いない。平穏に生きたい、という人には向いてないかもしれないけれど。

 そんなこんなで時間切れ。今日も書いて生きよう!

『週刊ダイヤモンド』ステマ特集について思うこと

November 04 [Wed], 2015, 6:15
週刊ダイヤモンド 2015年11/7号 [雑誌]
ダイヤモンド社 (2015-11-02)
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 2015年11月2日発売の『週刊ダイヤモンド』の「ステマ症候群」特集。Webでもその一部が読めることもあり(参照)、何人もの方から「あなたはこれについてどう思う?」みたいなことを聞かれたこともあるので、ざざっと知りうる事と私が個人で感じている事についてまとめておくことにする。

 前提として。私はベクトルが作ったというステマ相場表にも記載のある『ガジェット通信』のデスクをやっており(参照)、記事が掲載される経緯について知りうる立場だったりする。
 記事では質問に対して『ガジェ通』は「無回答」となっている。この点について、『ガジェ通』ではPR会社からの記事執筆依頼については、例外なく編集部による掲載可否判断をしており、取材した上で独自の判断で記事を執筆しており、金銭でもって「このように書いて」といった編集権に突っ込まれるような記事を出した事実はない。編集部、記者の独自視点の記事のため、PRという記述も必要なく、これに法的な問題はない、という見解になる。
 つまり、一般社団法人インターネット広告推進協議会(JIAA)の「ネイティブ広告に関するガイドライン」とは立場を異にしているわけです。

 ここからは、『ガジェ通』を含めて自分が記事を書いている媒体とは何の関係もない、私個人の文責による『週刊ダイヤモンド』を読んで思ったこと。ひとことでいうならば、「どいつもこいつもダブルスタンダードですべてが気に入らない」になる。
 とはいえ、この問題を当初よりリードしている切込隊長氏の最新エントリーは、「ステマ」問題について、その構造から懸念点まで丹念に言及されており、私が見てもおおむね事実と違うところはないと思う。

 ベクトル社が名指しステマ記事にホームラン級にアレな反論をして広告業界大困惑の巻

 しかし、さまざまな「?」はある。最初の疑問は、「なぜネットメディアのみが問題視されるのか」だ。
 同誌の特集記事では、過去に『ダイヤモンド・オンライン』で「広告」表記のない記事が出ていた事実を明らかにしており、それ自体は評価できる。ただ、『週刊ダイヤモンド』の「特別広告企画」の媒体資料を見ると、「PRクレジットは入りません」と堂々と記載されている。お値段は100万円でオプションでWebへの掲載がプラス200万円となっている(参照)。
 ダイヤモンド社に限らず、雑誌媒体では広告だとクレジットのないタイアップ企画は他社でもやっているし、ファッション・映画・エンタメといったジャンルではその傾向が強い。その一部がネットにも掲載されポータルサイトに配信されているのは言うまでもない。
 同じように、新聞も一般の記事に混じって一社の製品を紹介するような記事が混じって「おや?」という時がある。これもノンクレジットのタイアップである可能性が高い。例えば広告枠とのバーターという形で記事になっているものもあれば、ネットメディアと同じくしれっと記事になっていることもある。これは特に夕刊紙ではそういうケースが多いように感じる。
 また、ベクトルはWebよりもむしろテレビに強いPR会社。実際に彼らが仕切りの発表会ではTVカメラがずらりと並ぶ光景をよく目にする。ここにもお金が突っ込まれていることは想像に難くない。発表会の模様の映像には、もちろん提供などのクレジットが入ることはない。
 そうなると、ウェブメディアからポータルへの配信経路が絶たれた場合、そこに回す予算が、問題視されていないテレビ・新聞・雑誌に行く結果になるのではないか? ある筋から、「本当はそこまで切り込みたかった」という話を伝え聞いたけれど、ネットメディアの中の人間として見ればフェアじゃないし、オールドメディアを生き残らせたい、というように見えても仕方がないのではないか。
 ちなみに、切込隊長氏は5月のエントリーでノンクレジットについて「新聞、雑誌、テレビなど他のメディアではすでに徹底されている」と記しておられるわけですが、何らかの理由があってしらばっくれていらっしゃるのだと思っていました。

 まぁいいや。次に感じるのはベクトル一社を狙い撃ちにしたところで、出る杭打たれるだけで何にも変わらないのでは、ということ。大手代理店子会社のPR会社は軒並み同じことをしているわけだし(中には本体から案件が降ってくるケースもある)、その出身者の中小のPR会社もそれに倣っている。
 だから、西江肇司ベクトル社長が「編集協力費」を「商習慣」というのは間違っていないし、IR(参照)で「業界全体の慣習の話にも関わらず弊社一社のみを特定し攻撃している」というのもわからないでもない。ただ、「お金を支払うから記事にしてくれ、というやり方はもう今後はやめた方がいい」といいつつ、案件は急には止まれないし、クライアント担当者のすべてが「ステマ」問題に頓着しているわけでもない。今日も明日もさまざまな案件のメールが飛び交うことになるのだろう。
 ただ、IRの「最終的に編集権を持ったメディア側の判断に委ねられるものであり、我々PR会社がコントロールできるものではございません」というのにはカチンときましたけれどね。担当者の口にハロウィンで残ったカボチャを突っ込みたい気分です。
 いずれにしても、各ネットメディアを絞る前に、JIAA会員社の中で「ステマ」をやっているのかいないのか、一度全社で嘘偽りなく話し合ってみる方が先なのではないのか。実際、サイバーエージェントやAppBankが会員にしれっと名を連ねているのを見ると、無理そうだなぁという感想は持ちますが。

 次。この件では、ポータルサイトやニュースアプリ側から、照会の問い合わせが各媒体に行っている。
 Yahooが、『マイナビニュース』と『モデルプレス』を外すという決断をして業界をざわつかせたけれど、個人的にはちょっと乱暴じゃないか、と思っている。Yahooが考える「ステマ」だと思う記事を目視でも何でもリソース割いて確認して配信記事から外すなり削除するなりすればいいじゃん。なんのために編集チームがあるのか、という話ですよ。
 ニュースアプリも同様で、「キュレーション」をうたうなら疑惑を覚える記事をピックアップしないだけで済む話。そういうプログラムを組むリソースや技術がないのかよ、と言いたくなる。
 どちらにせよ、このあたり切込隊長氏はさすがで、YahooJapanが覇権を握ってピラミッドの頂点にいて、なおかつ配信記事に対して十分な対価を払ってないことが現在の状況を招く一因になっていることに言及している。、
 
 「ヤフージャパン一人勝ち」と「報道記事の買い叩き」がステマ横行の原因

 これと同様の事態は、おそらくsmartnewsあたりでも顕在化していくことになるのだと思う。
 ちょっと左翼的な発想だけど、各メディアは記者・編集者・ライターに対して食べて行くのに困らないだけの報酬を支払うべきだし、それができるビジネスモデルを作り上げておくべきだ。その一つがノンクレジット=タイアップ記事となると、次のモデルが軌道に乗るまでは簡単には止められない。
 ならば、各ポータルや各ニュースアプリは、風紀委員よろしく「ステマしてた?」と聞いて回るのではなく、記事本数ベースの定額保証支払いへの移行を検討すべきなのではないか。ほんとうにJIAA基準の「ステマ」をなくしたいと真剣に考えているのならね。

 あと。2012年に2ちゃんねるまとめサイトへの「ステマ」騒動の時に比較して、今回は一部の業界関係者が話題にしたりJIAAの指針に沿ったアジェンダ設定を試みている割に、反応が限定的なような印象を受ける。まぁ、ひろゆき氏から「それってデータあるんですか」「ただの感想ですよね」と突っ込まれそうだが、少なくとも「荒れて」いるのは自分も含めたメディア・PR・広告関係者で、一般消費者は冷静に推移を見守っているように思える。結局AppBankも上場したしさ。
 「嫌儲疲れ」があるのかどうかはわからない。だが、一連の議論においてはお金の流れの話が先行して、「読者・ユーザーのため」という視点はおざなりにされている。「いや、ノンクレジットで読者を騙している!」という理屈はわかるけれど、そこに嘘がなく事実に基づいた情報で、なおかつユーザーにとって面白くためになる記事だとすれば……。お金の流れは、そのユーザーにとっては関係のない話なのではないか。そういった冷静な視点で多くのユーザーが見守ってくれているのだとすればいいのだけれどね。
 いちライターとしては、稿料の多寡によらず、どの記事も真正面から取り組んで頭を悩ませて書いているし、その記事を「ステマ」扱いされるのは心外だ。ほとんどの記者・ライターはご同様だと思うし、この騒ぎで廃業するハメになる人が現れないことを祈りたい。
 
 長くなったのでまとめると、「ステマ」を問題視するのであれば、ネットメディアだけでなくTV・新聞・雑誌といったすべてのメディアも対象にしないとつじつまがあわないし、事態を矮小化しているだけで、長期的に見れば良質なメディア作りをむしろ阻害していると思う。
 本気で「ステマ」をなくしたいのならば、ネットメディアのビジネスモデルを変える必要があり、そのカギを握っているのは、はっきりとYahooJapanとsmartnewsだ。彼らが「風紀委員」から「代表委員」にクラスチェンジしない限り、この状況は続くだろう。
 そして、最終的にすべてのプレイヤーにとって重要なのは、ユーザーに良質な情報環境を提供することだ。そこから外れた議論は大きなムーブメントにならないのでは、と思う。

 最後に。これを書くことで、私自身は相当微妙な立場になる可能性が高い。『ガジェ通』にいられなくなるかもしれないし、いわくつきのライターとして干されるかもしれない。数年前に生活保護一歩手前というところから、ようやくなんとかひとりで食べていけるところまで来たけれど、また逆戻りで「死」を意識しなければならなくなるかもしれない。
 それでも書いたのは、木っ端ブロガー風情と、メディア業界全体の「実感値」を記すことを天秤にかけて、後者の方が重いだろうと判断したためだ。まぁ、とにかく気に入らないし、超むかつくし、360度全方位が敵なように見えるけれど、それでもブロガーはブロガーらしく、書きたいことを書いて石を投げるのが正しい態度だと信じている。

 私からは以上です。

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